シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

37 / 117
第三十七話「列強の落日5~対応するパーパルディア皇国~」

a.t.s52(皇歴52年)/12/3/11:24 シパールケ共和国=パーパルディア皇国の国境付近の都市ティルロー

パーパルディア皇国にとってシパールケ共和国は信頼する相手であった。その為国境付近には大した軍は配置されておらず加えてシーランド帝国との戦争が始まったため南部に軍を送っておりシパールケ共和国に最も近い都市ティルローには僅か数百しかいなかった。

その為、シパールケ共和国軍15万が襲来した時はまともな抵抗も出来ずに降伏したのは自明の理だった。

 

「スマイラス閣下!ティルローを完全掌握しました!」

「うむ、なら一部の兵士を除きこのまま侵攻するぞ」

 

ヨアン・スマイラスは部下からの報告に満足げに頷くとそう命じた。彼は共和国大統領であるオーガスタの命令によりパーパルディア皇国の北部領の切り取りを命じられている。ティルローだけに固執するわけにはいかなかった。

スマイラスは数百のみティルローに配置し残りの軍勢で一気に南下を開始する。目標はブラーナ峠を超えた先にある都市ポーツァである。そしてその南にはクーズがあり取り合えずそこまでが最終目標となっていた。

 

「しかし、閣下。よろしかったのですが?」

「何がだ?」

「今回の出兵、シーランド帝国には何も伝えていないのでしょう?」

 

部下の懸念はシーランド帝国に関してだった。元々シパールケ共和国はシーランド帝国との関係はない。シパールケ共和国が内陸国でありリーム王国やマオ王国、パーパルディア皇国を通さないとまともに外交が出来なかったからだ。しかし、リーム王国はシーランド帝国との関係は全く持っておらずシーランド帝国の実力を知っている国が多い中戦力の把握も出来ていなかった。マオ王国はシーランド帝国を警戒しており仲介などを頼むのは困難でパーパルディア皇国はそもそもシーランド帝国と敵対していた。

 

「問題ないだろう。我々はシーランド帝国と共同で攻めるわけではない。()()、侵攻する時期が被っただけさ」

「……そうですか」

 

部下はスマイラスの若干希望的観測が混じった思考に一抹の不安を感じつつそれ以上は何も言わなかった。どちらにしろ既に侵攻しているため今更何を言った所で変わらないだろうし何より上層部が警戒する程シーランド帝国が強いという事が信じられなかった。その為パーパルディア皇国が何時攻撃をしてきてもいいように警戒していた。

ふと、部下は上空を見る。そこにはシパールケ共和国が保有するワイバーンロード部隊が居りポーツァに向けて飛んでいた。これから彼らはポーツァに空襲をかけて被害をあたえ本命の陸戦がうまくいくようにするのだろう。

部下は愛用するフリントロック式のマスケット銃を握りながら自らの国の勝利の為に戦おうと決意するのだった。

 

 

 

a.t.s52(皇歴52年)/12/3/15:02 パーパルディア皇国皇都エストシラント

パーパルディア皇国にとってシーランド帝国の強襲上陸よりもシパールケ共和国の侵攻がもたらされたときの方が衝撃が大きかった。同じ民族であり古い同郷が攻めてくる。その事実は一時的にパーパルディア皇国を混乱させティルローを呆気なく陥落させるという失態となった。

 

「馬鹿な……!何故奴らが攻めてくるのだ!?我々はっ、同郷の徒であろう……!」

「陛下、今すぐ対応しないとポーツァまでもが陥落します!そうなれば北方の属領のことごとくがシパールケ共和国に寝返る可能性もあります!」

 

皇国軍最高司令のアルデは迅速な対応を皇帝ルディアスに求める。アルデはシパールケ共和国は皇都エストシラントまで攻めてくることはなく北部の切り取りのみを目標として来る、と思っている。だが、シパールケ共和国といえど他国に領土を切り取られるわけにはいかないため敵を倒す必要性があった。

しかし、それに待ったをかけるように第1外務局のエルトが話す。

 

「だが、シパールケ共和国よりもシーランド帝国を何とかする方が先決ではないか?このままでは東部の領土を失うぞ?」

 

シーランド帝国の侵攻速度は異常なほど早かった。既に南東部はほぼ占領されデュロの目前にまで迫っている。更には皇都エストシラント方面にも侵攻しておりこのままではここも危ないとエストは考えている。しかし、軍務に疎い彼女に分かることを軍人のアルデが気づかないはずはなく既に対策は行っていた。

 

「そちらに関しては皇都のワイバーン()()()()ロードを全て投入している。ほかにも地竜を含む10万近い軍勢を向かわせてある」

「オーバーロード!?そんなものを使用するのか!?」

 

ワイバーンオーバーロードは遥か西方の列強であるムーが新型戦闘機の開発に成功したという報告が上がりワイバーンロードではいずれ性能的に劣勢となると考えられた。その為にワイバーンロードを超えるワイバーンの作成が行われた結果誕生したのがワイバーンオーバーロードである。最高時速は450㎞とワイバーンロードよりも早いがその分ワイバーンロードよりも三倍もの予算が必要となる。とはいえ素だけの価値がある存在でありまさに皇国の切り札と言っていい者だった。

それを投入するという采配にエルトは驚くがそれはほかの者も同じだったようでざわめきが起こる。しかし、それをルディアスが制した。

 

「アルデの話は既に余が許可を出してある。シーランド帝国がすぐ近くまで迫ってきている以上ただの文明圏外国ではないという事だ。奴らを潰さない限りロデニウス大陸や本土への侵攻も満足に行う事は出来ん。何より我らが土地に土足で踏み込んできたのだ。徹底的に返り討ちにするべきであろう?」

 

ルディアスの言葉にその場の誰もが同意した。ざわめきが収まったタイミングを見てルディアスはアルデに命じる。

 

「シパールケ共和国に関しては外交官を派遣すると同時に軍も出す。アルデ、具体的な事は全て任せる。なんとしても追い返せ。ただし、シパールケ共和国に攻め入る必要はない。追い返すだけで十分だ」

「了解しました」

 

アルデは恭しく頭を下げる。

こうしてシパールケ共和国に対して十万規模の軍勢が対応する事となり北上を開始した。同時にシーランド帝国軍とワイバーンオーバーロードを含む軍勢が衝突した。……この時パーパルディア皇国の誰もが勝利を疑わなかっただろう。

しかし、数時間後に来た報告でシーランド帝国の実力を改めて思い知ることとなる。

 

 

『ワイバーンオーバーロード及び地竜全滅。死傷者8万を超えほぼ壊滅状態。……敵への損害は軽微』

 





【挿絵表示】

小説版の地図を見ると皇都エストシラントが微妙に沿岸部によってたので位置を修正しました。

未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して

  • 原作での登場まで待つ
  • 作者が想像して書いて
  • 別のオリジナル国家とかに変更する
  • 魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。