シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

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実家に帰るので正月明けまで投稿を中止します(ストックを貯める意味も兼ねて)。次回の投稿は1月4日月曜日11時50分となります。
それでは皆さんよいお年をお迎えください。


第四十話「列強の落日8~皇都陥落~」

a.t.s52(皇歴52年)/12/9/10:44 パーパルディア皇国皇都エストシラント

「陛下、残念ですが我らに抗う力は残されていません」

 

皇帝ルディアスはそう断言したルパーサを絶望した表情で見る。ルディアスにはメロ平野の戦いでの結末が伝えられている。同時にエストシラントの陥落も近い事も理解していた。

 

「そうか……、世界を征服しようと考えていたがどうやら余は皇国を繁栄に導く英雄ではなく皇国を亡ぼす愚帝として歴史に刻み込まれることになるのだろうな」

「陛下……」

 

ルパーサは憔悴するルディアスを見て涙ぐむ。ルディアスの相談役として長年仕えてきた彼だがこんな姿を一度としてみた事がなかった。それだけ今の状況に追い詰められているという事でありパーパルディア皇国存亡の危機であると言えた。

ルパーサは心の中に決意を固めながらルディアスに進言する。

 

「陛下、皇都エストシラントからお逃げください」

「なっ!?」

 

ルディアスはルパーサの進言に驚く。まさかそんなことを言うとは思っていなかったからだ。しかし、同時にルパーサの進言は妥当にも思えた。それだけ現在のパーパルディア皇国の状況は酷いのだ。東からはシーランド帝国が、北からはシパールケ共和国が迫ってきている。後者は平時なら犠牲は覚悟のうえで倒せる相手であるがシーランド帝国はそうではない。皇国が誇るワイバーンオーバーロードと地竜は全滅し10万もの被害を出した。パーパルディア皇国を支えていたデュロは真っ先に破壊され各国と取引を行っていたヴェヌも陥落した。南東部は既にシーランド帝国の支配下にあり皇都エストシラントに迫っている軍勢を除けば大した進軍はしていないがそれでも十分脅威であることに変わりはない。加えてフェン王国には未だシーランド帝国の軍勢がいる。これらが援軍としてフィルアデス大陸に上陸すればパーパルディア皇国を降すうえでダメ押しとなるだろう。

 

「陛下は今すぐ身の回りの物を持って避難してください。避難先には西方領土の要であるルパースィがよろしいかと」

「……そなたはどうするのだ?」

「私はここに残りシーランド帝国への使者となりましょう。彼の国が話を聞いてくれるかどうか分かりませんがやらないよりはマシでしょうな」

「……すまない」

 

ルディアスの悲痛そうな言葉にルパーサはカラカラと笑う。

 

「何のなんの、このおいぼれの最後のご奉公ですよ。……それと、レミール皇女も残っていただかないといけません。彼女には悪いですがこの状況の元凶として引き渡す必要があるでしょうからな」

「……分かった。あとのことは、頼むぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後、ルディアスは僅かな供回りを連れて西方領土の要であるルパースィに向かった。運河に囲まれた鉄壁の要塞都市でパーパルディア皇国も攻め落とすのに十年近い時間を必要とした都市である。

そして、それに続く形でアルデやエルトといった重要人物たちが一塊にならないように西へと逃げ始めた。そんな彼らをパラディス城から見送るルパーサは人気が一気に減った王の間にて息をつく。これから行う事は皇都エストシラントを危険にさらすことだが既にパーパルディア皇国に逃げ道はない。そんな中で最善の手を打たない限り未来に残るのは皇国人()()()()()()()()記録のみだろう。それだけは避けねばならなかった。

 

「ルパーサ殿、既に陛下がエストシラントを放棄された話は広がっています。一部の住民は逃げようと門兵といざこざが起きています」

 

ルパーサは再び息を吐くと報告してきた男、カイオスに視線を向ける。

 

「逃げたい者は逃がせばよい。既にこの皇都エストシラントは機能していない。この都市の最後の役目はシーランド帝国に引き渡されるという不名誉な事のみだ」

「……シーランド帝国がここまで行った責任は私にもあります」

 

カイオスが思い起こすのはアルタラス王国での外交だ。あの時はパーパルディア皇国を侮辱された事で怒りを露にしたがこうしてシーランド帝国の実力が分かってきた今では彼らは理性的な存在だったのだと漸く気づかされた。それだけではなく自らが指揮する監査軍がフェン王国にてシーランド帝国の皇太子妃を捕らえた事も影響しているだろう。あれがなければまだ交渉の余地はあった。

 

「……シーランド帝国は占領した地域の住民を見境なく殺している。何人かは殺し損ねて占領地域外に逃げた事でこうして判明したが……。シーランド帝国は本気で我らをみなごろしにするつもりだろう。彼らは属領や属国関係なく殺している。それだけ皇太子妃は慕われていたという事か……」

 

ルパーサは思う。ルディアスやレミールといった皇族が殺されてパーパルディア皇国は怒りを露にするだろうか?おそらく皇国人は怒り悲しむだろうが属領や属国の民はいい気味と思うだろう。それだけパーパルディア皇国は嫌われている。

 

「……シーランド帝国は降伏の合図として白旗を掲げる様です。遠くからでもわかるように巨大な白旗を作らせていますが……」

「最悪の場合わかるように白い布を振るしかないだろうな。……ところで、レミール様はどうしている?」

「自らの邸宅に籠っています。兵士に見張らせているので逃げることはないでしょうが……。何やらぶつぶつと呟いているとの事で」

「仕方ないだろう。パーパルディア皇国を滅ぼすきっかけを作ってしまわれたのだから」

 

レミールは自らが犯した行いのせいで精神的に壊れてしまっていた。少しずつ近づいてくるシーランド帝国に怯え過去の自分に何度も恨み言を吐いていた。そこに皇女として威厳ある姿は何処にもなくただ死に怯える一人の女性の姿しかなかった。

 

「レミール様をシーランド帝国に渡さないと彼らとて怒りは収まらないでしょう。……レミール様だけで怒りが収まるのかは分かりませんが」

「それもすべてシーランド帝国次第だ」

 

ルパーサとカイオスがそうやって話していると兵士が慌てた様子で入ってきた。

 

「報告します!エストシラント東北東にてシーランド帝国と思われる人影を発見しました!おそらく一時間もしないうちに襲来すると思われます」

「漸くか。いいか、決してワイバーンロードは飛び立つな。魔導砲もシーランド帝国に向けるな。敵の鉄竜が向かってきたら白い旗、いや布でもいい。とにかく相手に伝わるようにするのだ」

「は、はっ!失礼します!」

 

矢継ぎ早に兵に命令したルパーサは少しづつ感じてくる胃の痛みに顔を歪めながらパーパルディア皇国皇帝ルディアスの相談役としての最後の奉公をするべく王の間を後にした。

 

未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して

  • 原作での登場まで待つ
  • 作者が想像して書いて
  • 別のオリジナル国家とかに変更する
  • 魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了
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