第四十六話「驚愕する文明圏外国家」
a.t.s52(皇歴52年)/12/18/10:05 リーム王国王都ヒルキガ
「何と……!」
リーム王国の国王バンクスは宰相からの報告を聞いて顔を青ざめる。報告した宰相も顔は青く体中が震えている。
それもそのはずで二日前に建国されたフィルアデス連邦の情報が今朝漸く届いたからだ。しかし、それはこの場の誰もが信じられない気持ちだった。何せフィルアデス連邦はパーパルディア皇国の領土に建国されたのだから。一部地域で勝手に建国されたのならまだ分かるがパーパルディア皇国を降したうえで建国されたという事に誰もが信じられない思いだった。
とは言えこれは紛れもない事実であり既に第二、第一文明圏にもこの報道は行われており近いうちに世界中を驚愕させる事は違いなかった。
「シーランド帝国とは……、そこまで強大なのか……」
バンクスはそう呟くと同時に心の中で安堵する。約二週間前に訪れたシパールケ共和国の誘いに乗らないで良かったと。シパールケ共和国は何をしたのかシーランド帝国とも敵対しておりパーパルディア皇国を滅ぼす力を持つ彼の国相手に勝てるとは思えなかった。加えて、共に侵攻していたら自国も攻撃されていたかもしれなかったのである。シーランド帝国を過小評価したおかげで助かったのは皮肉だがバンクスはこれからの行動を考える。
「シーランド帝国とは、国交を結ぶべきだ。それも強固な、絶対に敵対してはいけない相手として。それが出来なければ我が国は滅びる……!」
バンクスのその言葉に反対する者は誰もいなかった。列強であるパーパルディア皇国をひと月もかからずに滅ぼしたシーランド帝国。リーム王国に取ってはパーパルディア皇国よりも恐ろしい国であり絶対に敵対してはならないと強く誓う事となった。
「王よ。直ぐにでも使節団の派遣を行います。場合によってはシーランド帝国を“宗主国”とする事も辞さない覚悟で行います。よろしいですね?」
「構わん。なんとしてもシーランド帝国と敵対しない道を模索するのだ」
こうしてリーム王国の属国になる事すら厭わない外交姿勢は結果的に上手く行きリーム王国はフィルアデス連邦で生産される各製品の輸出先として重宝されるようになりそれらの製品でリーム王国の軍事力は少しづつ増大していくこととなる。
a.t.s52(皇歴52年)/12/17/??:?? クワトイネ公国公都クワトイネ
一方のクワトイネではシーランド帝国の快進撃に胸をなで下ろしていた。明確にシーランド帝国側にいるクワトイネは(可能性は低いとはいえ)シーランド帝国が負ければ共に滅ぼされる可能性があったからだ。
首相であるカナタ以下政府首脳部の顔色は良かった。
更に、シーランド帝国からの依頼がありクワトイネの幸運は続く事となる。
「食料を、ですか?」
「ええ、その通りです。現在、フィルアデス連邦では穀倉地帯が戦場となっており近いうちに飢餓が発生すると思われます。その為、食料自給率の高い貴国に食料を提供してほしいのです」
突然やってきたシーランド帝国の外交官の言葉にカナタは困惑するが直ぐに納得した。今までクワトイネの土壌には興味を示していたがそれ以上の事はしてこなかったシーランド帝国がいきなり何なんだと思ったが新たな領土であるフィルアデス連邦関連なら話は別だ。彼の国は人口も多く穀倉地帯がやられた以上食料が必要なのだろうとカナタは考えていたが実際は少し違う。
パーパルディア皇国は第三次産業に集中しており第一次、第二次産業は全て属領に任せていた。しかし、穀倉地帯である北部はシパールケ共和国軍が居りシーランド帝国が侵攻するまで占領される事となる。必然的に戦場となり貴重な穀倉地帯が焼け野原となる可能性があるしシパールケ共和国軍のせいでそうなっている場所もあったのである。
「分かりました。直ぐにでも準備を行いましょう。どれほど必要ですか?」
「取り敢えずこれだけを早急に、自給率が回復するまではこのくらいを……」
そう言って提示してきた量はクワトイネ公国が十分提供できる量でありむしろまだまだ余裕が残っていたくらいだ。カナタはこれでシーランド帝国と交流が深まればいいがと思いつつ外交官からの提案を受けるのだった。
a.t.s52(皇歴52年)/12/17/??:?? アルタラス王国王都ル・ブリアス
「彼の国の寿命は短ったですね……」
ルミエスは設置されたテレビから流れてくる放送を見てそう呟いた。テレビには連邦統括官に就任したフレディ・K・マイソンの姿がありフィルアデス連邦の建国を宣言していた。そしてそのまま連邦の行政や司法についての大まかな説明を行っている。
一度は占領された王国を取り戻してから約二週間。ルミエスとその夫であるアーロンはずっとアルタラス王国の復興に動いておりシーランド帝国軍よりパーパルディア皇国滅亡の話を聞くまで全く知らなかったのである。
しかし同時に多少の同情もあった。彼の国は領土拡張によって国家を維持してきた国である。それをやめれば国家として破綻する為彼らは無謀だろうと戦い続けなければいけなかった。その結果が
「ルミエス、大丈夫か?」
ふと、アーロンの手がルミエスの手を包み込む。ここで初めてルミエスは自分が震えていた事に気付く。そして、何故震えているかも理解し涙があふれてくる。アーロンは何も言わずにルミエスを抱き寄せるとそのまま彼女が泣き止むまで抱きしめ続けた。
父との唐突な別れから祖国の滅亡。そこから奪還、復興と忙しく動き続けていたルミエスはここに来て父の死を現実に感じ涙を流したのだ。
「ご、ごめな。さい……」
「いいんだ。今は泣くといい。次に涙を流せるときが何時になるか分からないのだから」
王女であるルミエスには自分の時間が少ない。その為こうして震わして涙を流す事など次に何時出来るか分からなかった。
ルミエスはアーロンの言葉に甘え父の死を涙を流しながら悲しむのだった。
未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して
-
原作での登場まで待つ
-
作者が想像して書いて
-
別のオリジナル国家とかに変更する
-
魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了