「うっ、一体何が……」
先ほどまでシパールケ共和国の勝利を疑っていなかった兵士は朦朧とする意識の中体を起こした。耳なりが兵士の感覚を狂わし目はぼやけて焦点が合わなかった。それでも素早く自身の体を触って怪我の有無を確認する。幸い、怪我はなく出血している感触もなかった。
暫くその場に座っていると漸く耳鳴りは収まり視界が戻って来る。そして、周囲が見えるようになった兵士は絶句した。
先ほどまで喋っていた同僚“だったモノ”が周囲に飛び散っており原型はまともに残っていない。もはやただの肉片と化した二人の同僚に何が起きたのかは分からないが自分が運よく助かった事だけは理解できた。肉片の先には大きな穴が開いておりそこで大きな爆発が起きた事が分かる。
建物は崩れおち廃墟と化しておりそれが延々と続いている。クーズの街並みは僅かな間に大きく変貌していた。
「どう、なっているんだ……」
兵士は茫然としつつ立ち上がり歩き始める。生き残った人々が必死に救助や瓦礫の撤去をしているが全員ボロボロであり命からがら助かった事を伺わせた。
兵士は茫然としていたが自然と司令部のある方向に向かっていた。無傷な建物の方が少ない街の中をゆっくりと歩きながら向かうと、他の建物とは違い僅かな瓦礫しか残っていない司令部にたどり着いた。同じように考えたらしい兵士が茫然としており中には絶望のあまり崩れ落ちている兵士もいた。
「これが、シーランド帝国の力なのか……」
自分たちをこんな風にする相手は現状一つしか思いつかない。しかし、そんな事は信じられなかった。兵士はシパールケ共和国が勝つと信じており、膝を付き頭を下げて許しを請う敵の皇太子の姿を笑ってやろうと、そんな事を考えていた。
しかし実際はこうして自分たちがボロボロにされていた。あまりにも強大過ぎる敵に兵士は足元が崩れてなくなる感触を感じる。自分が信じていた事が実際はそうでもなかったという事。自分たちを簡単に殺せる国が今まさに向かってきている事。それは兵士の心を折るには充分すぎる出来事であった。
「シーランド帝国軍だ!」
何処からか聞こえてきたその声に兵士は振り向く。そこには煙を上げながらゆっくりとこちらに向かってくる敵兵の姿があった。空からの攻撃の後の陸での攻撃。これほど合理的なことはないな、と兵士は何処か現実逃避気味に思った。そして自分たちに抗う力が残されていない事が分かり兵士は持っていた銃を無意識のうちに落としていた。
数分後、クーズへの攻撃が開始された。市民への発砲すら厭わないシーランド帝国軍の攻撃は指揮者がいない上にボロボロのシパールケ共和国軍を圧倒。僅かな抵抗を退けた彼らはクーズの占領に成功した。心が折れた兵士以外は皆殺しに遭い、残った兵は縛られて後方に送られていった。
シーランド帝国軍は補給を素早く済ませると更に北上しポーツァへの攻撃を始める。機動戦を受けたシパールケ共和国軍はまともな抵抗も出来ずに敗走。要所であるブラーナ峠にたてこもりシーランド帝国軍を迎え撃つ体制を整えた。
しかし、シーランド帝国軍は兵の休息と後方からの補給を待つために一旦停止しポーツァとクーズの占領統治を開始するのだった。
両軍が攻撃を開始したのはそれから三日後の12月21日であった。
a.t.s52(皇歴52年)/12/21/15:23 ブラーナ峠
「脆いな」
ウィリアムはシパールケ共和国軍の兵士の死体が転がる峠を見てそう言った。シパールケ共和国軍がここから先には通さないという覚悟で挑んだ決戦は僅か3時間で終了した。
第一段階として空軍による空からの攻撃。第二段階に戦車砲や野砲によるロングレンジ攻撃。第三段階で歩兵による接近戦闘だったが第二段階の時点で生き残ったシパールケ共和国軍は撤退を始めており歩兵が前進する時には生きている敵兵の姿はなかった。
伏兵に気を付けつつ周辺地域の安全を確保し終えたのが数分前の事でウィリアムは安全となったブラーナ峠を渡ろうとしていたのである。
「パーパルディア皇国より少し劣る程度の奴らだ。こうなる事は予想していたが……」
三日も間をおいての決戦だったにも関わらず呆気なく潰れた敵にウィリアムはため息をつく。せめてもう少し粘って欲しかったと感じながら彼はブラーナ峠を抜け山道を下っていくのだった。
未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して
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原作での登場まで待つ
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作者が想像して書いて
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別のオリジナル国家とかに変更する
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魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了