シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

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第六話「ロウリア王国の終焉・2」

ロウリア王国の王都ジンハークの上空では第一艦隊より発艦した艦載機が群がっていた。その数は200近い数がおりジンハークを壊滅させるには十分な数と言えた。

 

『全機、攻撃開始』

『『『了解!』』』

 

隊長の言葉に従い一斉に攻撃が開始された。ただ上空を見上げ呆けていたロウリア王国の民にミサイルが、機銃が火を噴き肉塊へと変えていく。家に逃げる者が居ればミサイルにより建物ごと吹き飛んでいき地面に伏せるだけの者はただの的とばかりに銃弾が体を粉々にしていく。逃げる者も隠れる者も命乞いする者も等しく死を与えていく。彼らの助かりたいという願いは全く通じることなくただただ命を奪っていく。

シーランド帝国の圧倒的な暴力は王城にいるハーク・ロウリア34世にも確認できた。シーランド帝国は不思議と王城への攻撃は行っていない。まるで国の主要人物に自らの力を見せつけているようだ。民の悲鳴がハーク・ロウリア34世の耳に入るたびに恐怖が心に募っていく。ゆっくりとだが着実に彼の心をむしばんでいく。指示を出そうにも彼の唇はまるで固まったように動かない。呼吸すら忘れて王都の惨劇を目に、脳に焼き付ける。目を話すことは出来ない。目を話した瞬間、あの力が自分に向けられるような気がして目を話すことができない。

王都から逃げ出そう者がいれば隊から分かれた少数の艦載機が襲い掛かる。王都内とは違い圧倒的な力が彼らのみに向けられる。肉塊ではなく肉片へと変えられた彼らは等しく絶望の表情を浮かべていた。

シーランド帝国の攻撃は約一時間にわたり続いた。途中何機かが王都を離れたがそれだけでは何の気休めにもならなかった。王都の民には等しく死という絶望が与えられたのだ。艦載機が任務を終えて撤退する頃には王都はそれまでの栄光の都市から一変し血と肉と瓦礫の集まりへと変貌した。王城を除き無事な建物は無くそこら中に肉と血と木と石があるのみだった。煙がいたるところでくすぶり香ばしいような肉の匂いが鉄の匂いで打ち消されている。パチパチと木が燃える音を除けば死肉をあさりに来た鳥の鳴き声しか聞こえてこない。生きている人間の声、それどころかうめき声の一つすら聞こえてこない。ロウリア王国の王都ジンハークは今ここに消え去ったのだ。

 

 

 

 

 

a.t.s52(皇歴52年)/2/18/11:43/ギム

その日シーランド帝国皇太子ウィリアム・ロバーツ・ペンドラゴンのもとにロウリア王国の使者がやってきた。二日前にハーク・ロウリア34世の命で降伏の使者として向かわされた者である。彼は破壊される王都を後方に必死に馬を走らせ国境を越えギムへとたどり着いていた。

 

「改めて私が皇太子ウィリアム・ロバーツ・ペンドラゴンです」

「ロウリア王国より参りましたリオンと申します」

 

使者、リオンはウィリアムを失礼にならない程度に観察する。着ている服や姿勢から次期皇帝として必要な要素を満たしているように見えた。少なくとも凡愚の類ではないという事が見て取れた。あとは彼が降伏を受け入れてくれるかどうかであった。

 

「して、私に一体何か用でしょうか?」

「実は我が王ハーク・ロウリア34世より降伏文書をお持ちしました。本来なら正式な手続きが必要なのでしょうが急だったのでご了承ください」

「なんと……!」

 

まさかの降伏の使者だったことにウィリアムは驚く。確かにロウリア王国の艦隊と駐留していた湾港都市は壊滅しそのすぐ後に王都も壊滅したが逆算するに王都壊滅前に王都を発ったことがわかる。艦隊全滅の段階で降伏することを決めたとはウィリアムの目にはハーク・ロウリア34世に抱いていたイメージが崩れ去っていた。ウィリアムは亜人排斥を狙う暴君の如き者だったが今回の件で弱腰もしくは状況判断が鋭い人物という二つのイメージに変化していた。

 

「……ご用向きの内容は確認しましたが残念ながらそれを了承することは出来ません。皇太子と言えど父である皇帝陛下の許可なく了承は出来なくなっています。一度確認するので暫く時間をいただくことになると思います」

 

ウィリアムは悔しそうにそう言った。ウィリアムはかつて現シーランド帝国領ベチュアナランドでの一件で勝手な了承を禁止されていた。ウィリアムは2015年のボツワナ侵攻の総司令となっていた。しかし、ボツワナが侵攻前に降伏しそれをウィリアムが了承してしまったのだ。ライオネスは逆らわないようにするために侵攻して政権を倒すことを常套手段としていたが今回はそれが出来ずウィリアムの指示のもとボツワナ政権の政治家を大量投入した異色の自治領が誕生したのだ。これに対し自分の息子には甘かったライオネスは大激怒し一時期は国家反逆罪で処罰される寸前まで行ったのだ。何とかウィリアムの妹や重臣たちの説得で事なきを得たがそれ以来ウィリアムの権力は大きく制限され自分だけではほとんど何もできない状況になっていた。そしてこれはウィリアムが皇帝即位後もライオネスと同じ思想を持つ宰相に一部権力を奪われる原因となるのだがそれはまた別の話である。

 

「……分かりました。降伏を了承してくれることを願っています」

 

リオンは既にシーランド帝国に対する闘争の意志はなくなっていた。王都の外から見えた破壊されていく王都、ワイバーンが全滅していたとはいえあそこまでの力をワイバーンではできない。そしてギムで見たシーランド帝国の様相。明らかに練度も装備もシーランド帝国が上であった。もし陸でもあの鉄竜の如き力を行使できるなら……。リオンには返答が来るまでの間精神的に追い詰められていくのであった。

 

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