シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

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第六十四話「対照的な陸と海の戦闘」

a.t.s53(皇歴53年)/7/17/??:?? とある海域

アクハ帝国の主力艦隊はシーランド帝国の主力艦隊に備えて周囲の海域を偵察していた。艦船用に建設されたレーダーには何の反応もなかった。とは言えこのレーダーはまだ初歩的なものでありあまり信用できるようなものではなかった。その為、双眼鏡を持って目で見張る兵が大量にいたのである。

 

「そろそろ接敵しても可笑しくないが……」

 

司令長官は未だ見えぬシーランド帝国の艦隊に警戒と不安の気持ちがあふれてくる。それでも自身の役目を果たそうとしている時だった。伝声管を通じて見張り員の悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。

 

【水中を進む影あり!】

「水中だと?」

 

その見張り員は運が良かった。偶々海面付近を進む第四潜水艦隊が発射した魚雷が見えたのだから。しかし、彼らは水中を進む魚雷を止める方法など持っていなかった。

 

【本艦に急速接近中!】

「っ! 回避行動を取れ! 急げ!」

 

司令長官の迅速な命令で回避が始まるが日清戦争くらいの艦船が最新式の現代魚雷を避ける事など出来るはずがなかった。

見張り員は自身の下の部分に魚雷が突き刺さる光景をスローモーションで見ていた。そして、当たると同時に彼の視界は真っ白に包まれると同時に全身に痛みを感じ意識を失うのだった。

 

【右側に着弾!】

「被害はどうなっている!」

【浸水を確認! 復旧は無理です!】

「何と……!」

 

謎の攻撃が装甲艦を沈めるには充分な威力を持っていた事に驚愕するがそんな司令長官を嘲笑うように下から大量の爆発が響き船を一時的に持ち上げた。

 

「ぐっ!」

 

直ぐに落下し司令長官は椅子から転げ落ちダメージを受ける。それは他の者も一緒で中には打ち所が悪くて倒れたままの者もいた。

 

「何が起こった!」

【船底に複数命中した模様! 船底はほぼなくなっています! このままではすぐに沈みます!】

「馬鹿な……!」

 

アクハ帝国が誇る最強の艦隊の旗艦が呆気なく沈む。その事実に目をそむけたくなるが直ぐにあらたな絶望が舞い込んできた。

 

「司令! 他の艦隊も同じ攻撃を受けたようです!」

「何だと!?」

 

司令長官は急いで窓に近づくと様子を見る。そこには同じ攻撃を受けたらしい艦の姿があり急速に沈む様子があった。中には船を安定させる事が出来なかった艦もあるようで横に倒れ込み沈む船もあった。

そこで漸く船が傾きつつあることに気付く。ゆっくりとだが確実に右側に倒れ込んでおりその内脱出も出来なくなると思われた。

司令長官は絶望を感じながら茫然とする船員に言った。

 

「総員、退艦せよ。この船はもうだめだ」

「司令……」

 

悲痛な声で言う司令長官に船員も同じような気持ちになる。自分たちが誇る最強の艦隊。それが呆気なく沈むのはとても悔しかったのである。

数分後、司令長官が乗艦した旗艦はゆっくりと沈んだ。生き残った船員たちは数が少ない救命ボートや瓦礫にしがみ付きながら自分たちの艦隊の最後を見届けるのだった。

彼らは捕虜とするべく艦隊から離れた一部の輸送艦と軍艦に救助された。そして、シーランド帝国の軍艦が自分たちの船より洗練されている事に気付き「艦隊戦を行っても勝つどころかダメージを与える事さえ不可能」と口をそろえて言うようになる。

彼らに取って不幸だったのは木造船ではなく鉄船だったことだろう。魚雷では木造船を沈める事は難しくその場合艦隊からミサイルが放たれるか砲撃船で逃げる暇もなく沈められていただろう。ある意味彼らは木造船ではなかったからこそ生き残れたが想定していた艦隊戦すら出来なかったと言えた。

 

 

その様な似た光景はベスタル大陸東の海でいくつも起きシーランド帝国の艦隊がベスタル大陸に到着する頃にはアクハ帝国の軍船は港に寄港中の物を除き全て沈められる事となった。

その様にアクハ帝国が海軍能力をほぼ喪失した7月18日、遂にシーランド帝国の艦隊はベスタル大陸に到着した。いくつかのポイントに分かれシーランド帝国軍30万は上陸を開始するのだった。

 

 

 

 

 

a.t.s53(皇歴53年)/7/18/??:?? 旧ジュラ共和国の沿岸

シーランド帝国の兵士であるトーマスは緊張した面持ちで砂浜に足を付ける。しかし、後方にはまだまだ兵士がいる為直ぐに少し走りその場でうつ伏せに倒れ敵の攻撃に備える。

地球では弱小国相手とは言え上陸戦を行ってきた為こういった動きの手際は良かった。トーマスも地球では未体験だが転移後はヴェヌ上陸の一番手として活躍していた。

トーマスが上陸した場所は砂浜の直ぐ隣に森が広がっていて視認性は悪かった。事前に軍事施設は叩かれていたがそれでも反撃が無いとは言い切れない。トーマスは敵が出てきても対応できるように小銃を構える。彼の後方では戦車の上陸も始まろうとしておりそれが終われば周囲の偵察が始まる。

 

「ん?」

 

その時、トーマスの耳に聞きなれた音が響く。そしてそれを理解したトーマスは顔を青くしてその場に蹲った。瞬間、トーマスの周りに砲弾が辺り爆発を起こす。更に初歩的なロケット弾らしきものが海上を渡る上陸用舟艇に降り注ぐ。回避しようとしたり迎撃を行おうとする船もあったが一歩間に合わずに船や海上に突き刺さり大爆発を起こしていく。歩兵の損害はそこまでではなかったが上陸前の戦車は全て舟艇と共に海に沈んでいく。砂浜の兵も砲撃が辺り吹き飛ばされたり爆散する者もあらわれておりパニックに陥っていたが砲撃は直ぐに止み周囲を静寂が包み込んだ。

実を縮こませていたトーマスはゆっくりと目を開け周囲を確認する。丁度トーマスがいた付近には当たらず無事だったが他の兵士たちはそうではなく死体や負傷者で埋め尽くされていた。

海にはシーランド帝国の戦車が半分浸かった状態だったり沈んでいたりしており無事な戦車は一両もなかった。

 

結局、このポイントに上陸した兵のうち三十名が死亡、100名以上の負傷者を出した。更にはこの地に展開する予定だった戦車と一部の野砲は使い物にならなくなり著しく力がそがれる結果となった。

これはシーランド帝国がこの世界に転移して初の、敵軍との戦争で発生した“損害”と言える被害であった。この戦闘は楽に勝利できると考えていたシーランド帝国側に大きな衝撃を与えるとともにアクハ帝国が進む未来を地獄へと変貌させる出来事であった。

 

未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して

  • 原作での登場まで待つ
  • 作者が想像して書いて
  • 別のオリジナル国家とかに変更する
  • 魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了
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