a.t.s53(皇歴53年)/7/28/??:?? ベスタル大陸某所
シーランド帝国による戦争終結宣言から翌日、トリケラス以下数名の部下はベスタル大陸中央部に聳え立つ山脈にて潜んでいた。かれこれ1週間以上は山脈で抵抗を続けていた彼らだが山を下りて偵察をした部下からもたらされた祖国の滅亡と言う情報によって今後の動きを決める必要に迫られていた。
「隊長、降伏しましょう。既に我らには武器も食料もありません。このままでは敵と戦闘する事も出来ずに餓死してしまいます……」
「いや、それなら最後の抵抗をするべきだ! アクハ帝国軍人としての最後の意地を見せつけるべきだ!」
「このまま山に籠る……と言う訳にはいきませんね。食料も武器もない以上近くの村から略奪するしかなくなります。そうなれば山賊になってしまいますからね」
部下たちは自身の意見を言っていくがアクハ帝国軍として見ればどうしようもない意見ばかりだった。尤も、武器も食料も人員すら足りていない現状で軍人らしい動きが出来る訳がなかったが。
「我々が出来るのは精々降伏して命が助かる事を祈るか山賊になりゲリラ戦を展開するか、か……。仕方ない、降伏しよう」
アクハ帝国が未だに戦闘を継続しているのなら山賊となる事も辞さなかっただろう。しかし、アクハ帝国は既に滅びている。忠誠を誓うべき国が存在しない以上トリケラスが考えるのはここまでついてきてくれた部下の事だ。彼らを奈落に落とすような行為は出来ないと決定を降した。
「シーランド帝国が我らの命を奪わないとは限らないがこのまま意地を貫いてもしょうがない。幸いな事に我らはシーランド帝国に一矢を報いたのだ。それで満足しようではないか」
抗戦を主張する部下をなだめるようにそう言ったトリケラスは部下を連れて山を下り、近くにいたシーランド帝国軍に投降した。前線部隊の指揮官でこそあったが地位的にはそこまで高くなかった事、アクハ帝国の帝都や主要都市を吹き飛ばした事が原因でアクハ帝国軍人における一般兵の詳細が分からなくなっていた事が幸いしトリケラス達は捕虜収容所で戦後処理が終わるのを待った後釈放となった。
トリケラスは釈放後は再び軍人としての道を歩み始め、新兵器にも臨機応変に対応できる事を見込まれシーランド帝国軍に所属するようになり、異世界出身者として最初の入隊を果たす事になる。
a.t.s53(皇歴53年)/7/29/??:?? ベスタル大陸西部海域付近
「ここ、は……」
魔王ノスグーラは海に揺られつつ意識を覚ます。至近距離で砲撃を受けたノスグーラだったが幸いな事に防御が間に合い気絶こそしたが助かる事は出来ていた。更に海に漂っていたとはいえベスタル大陸から少しずつ流されていた為シーランド帝国軍に発見される事もなく奇跡的に生きながらえる事に成功したのである。
「そうか……。私は助かったのか……」
しかし、助かった代償と言える物として空腹で死にそうなのとずっと冷たい水につかっていたせいで低体温症になりかけている事だろう。魔王と言う規格外の存在でなければ死んでいただろう。
「体を動かすのも辛い……。このまま潮の流れに身を任せるのもありか……。西に流れて言ってくれればいいが……」
ノスグーラは自力で体を動かす事を諦め潮の流れに身を任せる事にした。空腹はなけなしの力を振り絞り死体だと思って近づいてきた魚を食べる事で凌ぎそれ以外は体から力を抜きただ流されるままとなった。
そして彼の巨体を海は少しずつ流し始め、彼の願い通りやがてその体は西へと向かい始めた。彼が陸地にたどり着くのはおおよそ半年以上先の事となる。彼がたどり着いた島の名はブシュパカ・ラタン。アニュンリール皇国の出入り口である。これが後に彼をどのように導くのかは分からないがこれからも彼のシーランド帝国に怯える日々が続くのは確実な事であった。
a.t.s53(皇歴53年)/7/30/??:?? ベスタル大陸ペルム
テチス・パン=ケアは久しぶりに祖国の土地を踏んだ。しかし、その表情に笑みはない。不安も悲しみも怒りも浮かばずただただ無の感情が浮かんでいた。
「……」
「テチス
「いえ、何でもありませんわ」
突然足を止めたテチスを気遣ってか隣にいた
彼女の祖国ペルムはベスタル大陸統一戦争の初期に併合された国家であるため復興が始まっていたがそれはアクハ帝国式の都市であり祖国の面影は少しずつ消えさっていった。このままシーランド帝国との戦争にならなければ一年以内にアクハ帝国の一地域と呼べるほど同化が完了していただろう。
しかし、シーランド帝国がアクハ帝国との戦争を決意したことでこの地は解放され再びペルム国が復興する事となった。その事をこの地にやって来たシーランド帝国軍から聞いた国民は喜び、帰国を果たしたテチス達を歓喜を持って迎え入れた。その歓迎具合に政治家は少し呆れを含んだ声で呟く。
「まったく……。自らの国がどうなっていくのかさえ分からない愚民どもが……」
「……」
自国の国民を貶す政治家の発言にもテチスは眉一つ動かさない。度重なるライオネスとの交わりは彼女の心を完全に壊し、シーランド帝国にとって都合の良い人形へと変貌させられていた。彼女が心を取り戻す事は二度とないだろう。シーランド帝国にとってもその方が都合がいいのだから。
国民から歓迎を受けながら首都の行政府にやって来た一行は今後の動きについて会議を行う。
「ではこれよりペルムの
政治家のこの言葉から分かる通りペルムは人知れずシーランド帝国の属国と言う立場となる事が決定していた。その証拠としてこの会議に参加するメンバーはテチスを除けば全てシーランド帝国から派遣されてきた人物だ。
「ペルム国はテチス王女による絶対君主制のもと生まれ変わります。反対する者はこの国には必要はありません。そしてテチス王女を我々が補佐します。ここまではいいですね? では次に国内の……」
会議と言う名の国家方針の確認作業は一時間ほどで終了し、本格的にペルム国はシーランド帝国の属国として歩みを始めた。国家を取り戻して喜ぶ国民たちが自分たちの実情に気付くころには全てが手遅れとなり、二度と独立国家として返り咲く事はなかったのだった。
次はアクハ帝国のその後についてです(多分)
未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して
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原作での登場まで待つ
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作者が想像して書いて
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別のオリジナル国家とかに変更する
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魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了