シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

77 / 117
第七十七話「二人の新皇帝」

a.t.s54(皇歴54年)/10 /2/??:?? グラ・バルカス帝国帝都ラグナ

 9日前に起こったクーデターの混乱は未だにグラ・バルカス帝国全土で発生している。皇太子グラ・カバルが首班だったとはいえその実情は軍部の過激派による軍事クーデターに等しく、各都市は軍人たちによる治安統制が行われていた。

 

「グラ・バルカス帝国はこの世界も支配する国である!」

 

 この世界に転移して来た事を支配せよという神の意思だと本気で思っているグラ・カバル新皇帝は戴冠の際にそう宣言した。そして彼は今後この国がどのように動くべきかを語り軍部はそれを歓喜を持って褒め称えた。

 とは言え、帝国の三将と呼ばれるカイザルなどの一部軍人たちはこの一連の動きを苦々しく思っていた。元皇帝グラルークスを始め一部の上層部は粛清もしくは捕縛されていたがその異名と軍部への影響力から恩赦として今後も軍部で働く事が決まった彼は決してシーランド帝国を軽視している訳ではなかった。それどころか内心ではグラルークスと同じ穏健派や共存派と呼ばれるようなシーランド帝国との友好関係構築を目指すべきと主張する人物であった。しかし、この状況になってしまった以上彼にそんな発言が許されるはずがなかった。

 

「(この国は一体どうなってしまうのか……)」

 

 内心でそう声を漏らしながら考えるのはグラルークス達捕縛された者の事だ。彼らは本土にある各収容所に収監されているが決して待遇が悪いわけではないがほぼ軟禁状態に置かれている。カイザルとしては助け出したい気持ちがあるものの、メンバーはばらばらに収監されている為一人では不可能だ。かと言って誰かに協力を仰ごうものなら密告される恐れすらある。何しろ彼の周囲は大半が過激派なのだから。

 

「まずはイルネティア王国だ! 第二文明圏の西部海域を我が帝国の手中に収め、万全の状態で侵略するのだ!」

「ですがムーとマギカライヒに侵攻した場合、シーランド帝国がこちらに攻めて来るのではないですか? 他の国々はともかく両国は関係が深いので……」

 

 軍部の一人がグラ・カバルの言葉に水を差すように意見を言う。それに対してグラ・カバルは一瞬怒りを含んだ目を向けるが直ぐに不敵な笑みを浮かべた。

 

「安心するがいい。その際はシーランド帝国など救援に来れない程のスピードで滅ぼせばいいのだ! その為には両国以外を我が領土としておく必要がある。両国はその後だ」

 

 流石のグラ・カバルもシーランド帝国に負けるとは思っていないが被害が出るとは思っている様で具体的な案を出してきた。しかし、それも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の話ではあったが。それこそシーランド帝国がイルネティア王国侵攻時にでも動き始めればグラ・カバルの戦略は呆気なく破綻する事になるがその事に本人は気づいていない。大半の過激派もシーランド帝国が動いたところで何が出来ると軽視していた。

 これまでの自国の栄華に胡坐をかき、他者を軽視して現実を見れない、見ない。そんな集まりが過激派とも言え、グラ・バルカス帝国の命運を最悪な方向に転がす原因となっていた。

 そして12月10日、グラ・バルカス帝国はシーランド帝国の独立保証がかけられたイルネティア王国に突如として侵攻を開始。僅かひと月あまりで王都キルクルスを陥落させて同国を併合するのだった。

 

 

 

 

a.t.s55(皇歴55年)/1 /1/??:?? シーランド帝国帝都ロンドニウム

 代替わり後2回目の新年を迎えたシーランド帝国は去年と比べて格段に落ち着き、心の底から新年を祝えるだけの安定度を見せていた。この日は誰もが家族とお祝いし、新しい年を晴れやかな気持ちで迎えていたが皇帝ウィリアムを始め帝国上層部の顔色はそれほどよくない。正確には真顔でムー大陸を凝視するウィリアムに顔を真っ青にして上層部が恐怖していた。

 

「……グラ・バルカス帝国は領土拡大に打って出たか」

 

 彼らが短期的に、そして一気に領土を広げるタイミングとしては上出来だろう。その選択肢そのものが悪手であったとしても。

 

「い、イルネティア王国ですが、エイテス第一王子は脱出に成功したものの、そのほかの王族は全滅、した……との、事で……」

「グラ・バルカス帝国は早まったな」

 

 現在他国に外交使節団に交じって派遣されていたエイテスはムーの仲介の下シーランド帝国に向かってきている。ウィリアムとしてもグラ・バルカス帝国を攻撃する大義名分とも言える彼を歓迎するつもりでいる為国賓待遇で扱っていた。

 

「……それで。グラ・バルカス帝国をどうしましょうか?」

「今は何もしない」

 

 ウィリアムの言葉に周囲の人々は驚く。てっきり直ぐにでも懲罰戦争を起こすものだと思っていたがあまりにも予想外の答えであった。とは言えそれはウィリアムも理解していた様で補足する形で続きを話し始める。

 

「後3か月半で先進11ヶ国会議が開催される。国際的な行事の場で今回の事を非難すればいい。イルネティア王国の王子を使えば周囲の国々もこちら側につくだろう」

 

 そうしてグラ・バルカス帝国を完全に孤立させて叩き潰す。それがウィリアムの考えであり今後シーランド帝国が取るべき道であった。他の国々も見ている中で参加予定のグラ・バルカス帝国の外交官を非難する。その後に自国の力をふんだんに使ってグラ・バルカス帝国を滅ぼす。いかにそれが侵略的、蛮族的行為だったとしてもグラ・バルカス帝国の自業自得として国際社会は見るだろう。シーランド帝国のみを頂点とし、武力を前面に押し出して版図を広げたライオネスと、他国と協調しつつ、シーランド帝国の版図を合法的に、誰もが認めるような形で広げるウィリアムとの違いと言えた。

 

「諸君! 残された時間は少ない。先進11ヶ国会議に向けて全力を尽くせ! グラ・バルカス帝国を後悔させながら滅ぼすぞ!」

 

 ウィリアムの言葉に誰もが答える。これよりシーランド帝国は先進11ヶ国会議にてグラ・バルカス帝国を非難するべく準備を始めた。イルネティア王国の王子エイテスとの会談やムーやマギカライヒなどの会議参加国への根回しなどあらゆる準備を整えていった。

 そして、その準備が実る皇歴55年、中央歴1642年4月22日。先進11ヶ国会議の開催日を迎えた。

 

未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して

  • 原作での登場まで待つ
  • 作者が想像して書いて
  • 別のオリジナル国家とかに変更する
  • 魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。