第八十七話「前哨戦」
a.t.s55(皇歴55年)/10/3/14:19 シーランド帝国領スコットランド首都エディンバラ
この日、ブリテン島の対潜レーダーが不審な潜水艦を発見した。シーランド帝国はブリテン島を絶対防衛圏として定めており、その為の準備を転移以前から行ってきた。特に敵の早期発見につながるレーダー網の確立は先進的であり、ブリテン島に近づけば対空、対水上、対潜それぞれのレーダーによって簡単に発見する事が出来た。それはこの世界に来てからも変わらず、いや古の魔法帝国に備える目的もあって強化されていた。しかし、この世界に来てから不審な存在を見つける事はなく、今回初の出番となったのである。
「解析完了。旧日本軍のイ400型と同型の潜水艦です!」
「旧日本軍か……。つまりグラ・バルカス帝国の潜水艦の可能性が高いか」
対潜レーダーの責任者であるダニエルは部下からの報告を聞き真っ先にグラ・バルカス帝国の船だと確信した。そもそもこの世界において潜水艦の概念はない。元世界最強の神聖ミリシアル帝国ですら魚雷と潜水艦の概念はなかったのだ。それはつまり古の魔法帝国にもなかった可能性が高い為、この世界では誕生する事すらなかったと考えられていた。
では、そうなるとこの潜水艦は何か? 同じく転移してきたらしいグラ・バルカス帝国の潜水艦だと考えるのが妥当であろう。
「レーダー統合府に連絡! グラ・バルカス帝国の物と思わしき潜水艦を発見! とな。それといつも通りデータ送信も忘れるな!」
「了解!」
ダニエルの指示に従い部下たちが動き出す。こういった場合の対処は徹底して行ってきており、時々行われる突発的な試験で腕が鈍っていないかを確認されるため彼らの動きは常に素早かった。
「統合府より返信! グラ・バルカス帝国の潜水艦と断定して地対潜ミサイルによる撃沈を行うとの事です! 我らは引き続き敵位置の更新を行えときています!」
「よし! ならば我らの役目をきっちり果たすぞ! お前ら! 間違っても敵の位置を間違えるんじゃないぞ!」
十数秒後、地対潜ミサイルが発射された。その様子は対潜レーダー室もリアルタイムで確認できており、画面にはミサイルの着弾予測地点と到達時間がかかれている。
「修正、東に1メートル」
「了解! 東に1メートル修正!」
敵が動けばレーダーがそれを捕らえダニエルが未来位置の予測をしながら修正を行う。本来は複数の目標を同時に相手できるようにAIが搭載されているが少数しか確認できない場合は腕が鈍らないようにと自分で修正を行う事があった。
「海面に着水! 潜航して追尾を行います!」
「よし、後は問題ないな」
誘導式の魚雷は慌てたように逃げ始めるグラ・バルカス帝国の潜水艦ミラにあっという間に近づくと逃げる暇など与えないとばかりに直撃、爆発を起こした。
「敵沈黙! 撃沈しました!」
「統合府に連絡を入れろ。敵潜水艦を撃沈」
「了解!」
グラ・バルカス帝国は自分たちの影響力が低い東方世界にも自らの実力を知らしめるために行った事だが相手が悪すぎた。前の世界では黎明期程度の技術しかないグラ・バルカス帝国の潜水艦等シーランド帝国の前では隠れたつもりでいる赤子を見つけるくらいにはたやすい。10メートル四方の白い紙の上から1メートル近い黒い点を見つける事すら上回る程簡単だ。
これ以降もグラ・バルカス帝国の潜水艦が訪れる事はあったがそれらは全てブリテン島のレーダー網か哨戒中の艦に捕捉されて全て撃沈されていく事になる。
a.t.s55(皇歴55年)/10/10/10:10 シーランド帝国帝都ロンドニウム ロンドニウム国際空港
「漸くここまで漕ぎつけましたね」
外交官のピーターは空港の入り口で部下2名と共に迎えの車を待っていた。彼らは神聖ミリシアル帝国との交渉を終えて帰国したばかりであり、先程まで空の人となっていた。
「これで我らの役目は終わった。今後は上と、軍部の仕事となる」
「ですが上も思い切った事をしますよね。神聖ミリシアル帝国やムーなどの列強国による連合艦隊ですか」
本来ならば世界連合が誕生するはずだったカルトアルパス港襲撃はシーランド帝国によって未然に防がれてしまっていた為、各国は何ら被害を受ける事はなかった。そしてシエリアが宣戦布告を行わなかった事もあってグラ・バルカス帝国に対する感情は最高でも中の下程度に収まっていた。
その為、実質的に敵となったシーランド帝国と被害を受けた神聖ミリシアル帝国以外の国にとってグラ・バルカス帝国は侵略国家以上の感情はなく、結果として様子見している状態だった。
とは言えグラ・バルカス帝国と戦争になった以上シーランド帝国としても動かない訳にはいかない。そこで被害を受けた神聖ミリシアル帝国と隣国でその脅威を感じるムー、そして古の魔法帝国との戦いで重要となって来るシーランド帝国の力をきちんと把握したいエモール王国の4か国連合を結成する事となった。この中では最も技術が進んでいるシーランド帝国が中核をなし、神聖ミリシアル帝国は
「レイフォル州沖では第四潜水艦隊が猛威を振るっている。最近では敵の巡洋艦を3隻も沈めたらしい。少しずつだがレイフォル州への往来は少なくなってきているらしいし干上がるのも時間の問題だな」
そこへ丁度迎えの車が到着したためピーター達は乗り込む。移動する車の中でピーターは神聖ミリシアル帝国が出す切り札について興味を引かれたがその日まで秘匿すると言っており詳細は分からなかった。とは言え元世界最強の国家の切り札である。生半可な物ではないのは確かだろう。
「(神聖ミリシアル帝国は古の魔法帝国の遺跡を解析することで発展してきた国……。古の魔法帝国が原子爆弾を持っていた事を考えると……)」
まさかな、とピーターは胸まで昇って来た不安を無理やり抑え込む。彼らがどれ程理解しているかによるがさすがにそれを用いる事はないだろうと。しかし、その不安は後に的中する事になる。
未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して
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原作での登場まで待つ
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作者が想像して書いて
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別のオリジナル国家とかに変更する
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魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了