シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

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第八十九話「戦場は西へ」

a.t.s56(皇歴56年)/1/9/16:00 ブリアンカ共和国首都ノマロカーリス

「凄いな……」

 

 ブリアンカ共和国の首都は大陸最北端に位置した港町である。交通の要所であるため首都と言う事を抜いても大いににぎわっていた。そんなノマロカーリスの港を埋め尽くすように停泊しているのは補給中のシーランド帝国の統合軍である。彼らはここから陸地などで補給をしないで真っすぐにレイフォル沖に向かう事となっている。

 

「大統領。我々から何か通信をしましょうか?」

「いや、その必要はない。既に停泊前に行っているからな」

 

 ブリアンカ共和国第14代大統領ピーカー・オビパニアは官僚の言葉にそう返事をした。シーランド帝国の同盟国として繁栄しているブリアンカ共和国に対し統合軍の最終陸上補給地点として貸すように要請されていた。ブリアンカ共和国としても今の繁栄はシーランド帝国との同盟があるからこそだと理解している為、喜んで補給地点として貸していた。そしてそれは間違っていなかったとこの艦隊を見てピーカーは確信した。

 

「見よ。どれも鉄の船であるがアクハ帝国や神聖ミリシアル帝国に比べて格段に素早く動いている。旋回速度も高い。つまりそれだけ性能が高いという事だ。グラ・バルカス帝国はシーランド帝国の戦闘機に殲滅させられたと聞く。神聖ミリシアル帝国を倒した彼らが弱いわけではないのだろうがそれ以上にシーランド帝国が強いのだ。つまり、彼らこそ世界最強の国家だ」

「そう聞くとアクハ帝国は不憫と言わざるを得ないですね。今では我が国を除きほとんどの地域が貧困に喘いでいますので」

 

 アクハ帝国の急激な技術革命はシーランド帝国の危機感を煽ってしまった。その結果として二度と技術革命を起せないような状況へと陥り、大陸全体で衰退が起きていた。ブリアンカ共和国だけ無事なのはシーランド帝国の危機感を煽るような技術を持っておらず、敵対していなかったという幸運に恵まれたからだ。出なければ今頃アクハ帝国と同じ運命を辿っていただろう。

 

「幸いにもこの補給で起きる出費はシーランド帝国が全額支払ってくれる事になっている。ならば我らが出来る事は彼らが勝利し、無事に戻ってこれるように英気を養えられるように歓迎するだけだ。町の飲み屋、娼館どれでもいい! 国家が費用を負担すると伝えてシーランド帝国を歓迎するのだ!」

「了解しました!」

 

 ブリアンカ共和国大統領の迅速な対応によってシーランド帝国の将兵たちは皆満足のいく補給を行う事が出来、万全の状態で西へと出港する事が出来た。後の歴史書に中興の祖として広く知られるようになるピーカー・オビパニアの最初の活躍だった。

 

 

 

 

 

a.t.s56(皇歴56年)/1/14/??:?? グラ・バルカス帝国レイフォル州

 列強国が不穏な動きをしている。その情報を掴んだグラ・バルカス帝国はレイフォル州に大艦隊を終結させていた。本来、この地域は原子力潜水艦による通商破壊作戦が実施されていたがグラ・バルカス帝国の海軍戦力を一撃で削ぎ落す為に一時的に中止されていた。とは言え遥か深海の彼方よりグラ・バルカス帝国の動きを監視しており、何かあればすぐにでも本国に通信できる状態となっていた。

 今回、グラ・バルカス帝国が集結させた艦隊は以下の通りとなっている。

 

戦艦(ヘルクレス級戦艦、オリオン級戦艦等)15隻

空母(ぺガスス級航空母艦等)14隻

重巡洋艦27隻

軽巡洋艦30隻

駆逐艦168隻

潜水艦96隻

 

 計350隻にも及ぶ大艦隊であり、数だけを見れば統合軍の3倍近い数がそろっている。しかし、これらは本国より無理やり集められたものであり、駆逐艦などには新兵が多く乗船している為スペック通りの性能を発揮できるとは限らなかった。

 そんな寄せ集めと言っても良い艦隊を率いるのは帝国の三将と呼ばれるカイザルとミレケネスである。帝国内でも有数の将が率いるという事もあり兵たちの士気は高く、シーランド帝国や神聖ミリシアル帝国を追い払ってやると息巻いている。

 

「そんな上手くいくはずがないのにな……」

 

 そんな兵たちとは対照的にカイザルの表情は暗い。前衛をミレケネスが、後衛をカイザルが率いる事になっており、彼は旗艦となっているヘルクレス級ラス・アルケディに乗艦していた。グレートアトラスターが誕生する前は時代遅れとして冷遇され始めていたとはいえ立派に艦隊旗艦を務めていたこの艦に乗っていても不安と死の恐怖に苛まれてくる。

 

「シーランド帝国の艦隊規模は分かりませんが距離を考えれば100前後と思われます。希望的観測で距離の問題から参戦しないという事も考えられますが……」

「確実にシーランド帝国は参戦している。それも威力偵察規模ではなく、大艦隊をな。最低でも150隻は投入してくるはずだ」

 

 副司令官のカオニアは自らの意見を言うがカイザルはそれ以上の規模であり、シーランド帝国の特徴から参戦しない事はないと予測をしていた。実際、カイザルの言う通りであり、都合の良い情報しか入らない本国にいたにも関わらずにシーランド帝国を正確に把握出来ている所に軍神の異名を垣間見せていた。

 

「カルトアルパス港襲撃の情報は一切入っていないが恐らく航空機のみで全滅した可能性が高い」

「っ! シーランド帝国はその様な事が可能な技術力を有していると?」

「アンタレスとてそれらは可能だ。時間をかければ、だがな。だが東征艦隊は通信する事もなく消息を絶っている。つまり通信を送る暇さえなく沈められたという事だ。それがなされるためには機動性と火力が必要だ。……もしかしたらシーランド帝国はジェットエンジンの開発に成功しているかもしれない」

「馬鹿な!? あれは構想上の段階のものですよ!?」

「必要は発明の母と言う。我らはユグドでジェットエンジンの開発に迫られる程ひっ迫した戦況ではなかった。だから、シーランド帝国がいた世界ではジェットエンジンを使う必要がある程、それこそ国力が等しい国家が複数存在していたのかもしれない」

「……!」

 

 カイザルの予測は何の信ぴょう性はない。しかし、この状況を考えればその予測はあっているように感じられた。カオニアは想像する。グラ・バルカス帝国と同等の国家が複数存在していたのなら……。ケイン神王国すら上回る本当の意味で対等の国家。

 瞬間、カオニアは言い知れぬ不安と恐怖等の衝撃に見舞われた。何故そんな想定をしてこなかったのか? もし、そんな状況になっていればユグドは世界中で一進一退の戦争を永遠と続ける地獄のような世界となっていただろう。

 

「……グラ・バルカス帝国は恵まれていた、と言う事ですか」

「そうか否かはこの海戦で決まるだろう。シーランド帝国の力が果たしてどれくらいあるのか? 我々は手も足も出ないのか? それらは我らの命と引き換えに得ることが出来る最悪にして最高の情報となるだろう」

 

 カイザルは自らの死を直感しつつその決戦の時に備えるのだった。

 




グラ・バルカス帝国の戦力は原作の1.5倍増しとなっています。理由としては東征艦隊が全滅している事から原作以上に戦力投入をしないといけないと判断されたためです。

未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して

  • 原作での登場まで待つ
  • 作者が想像して書いて
  • 別のオリジナル国家とかに変更する
  • 魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了
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