シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

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第九十四話「バルチスタ沖海戦5」

「シーランド帝国の艦艇を少しでも生き残らせるのだ!」

 

 キング・オブ・ライオネスの危機を救おうと雷跡との間に飛び込んだのはムーが誇るラ・カサミ級戦艦ネームシップのラ・カサミだった。ムー機動艦隊は通信が出来なくなったものの空母を守りつつ砲雷撃戦をしていたが結局空母は半数が沈められ、ラ・カサミは敵の砲撃を避け続けている間にシーランド帝国の統合軍の中に迷い込んでいたのである。

 そして、偶々前方を航行していたキング・オブ・ライオネスに雷跡が迫っている事を確認すると迷わずに艦の速力を上げて両者の間に躍り出たのである。

 

「ここまでくれば大丈夫か……」

「艦長。乗員の避難は完了しています。後は艦長の退艦命令に従わなかった馬鹿10数名です」

 

 艦長のミニラルは躍り出る前に退艦命令を出しており、乗員の数百名は退艦していたものの、そんな命令に従わずに艦に残った10数名がいた。彼らはミニラルと共に覚悟を決めた者達であり、その一人である副艦長の雰囲気から無理やりでも退艦させるのは無理だと思わせていた。

 

「……馬鹿だな。死ぬのは私一人で良い」

「艦長一人でラ・カサミを動かすなんて無理ですよ。それにしても……。この事を知ったら上は怒り狂いそうですね」

「それだけの価値がシーランド帝国の艦にはある」

 

 副艦長の冗談にミニラルは何かを確信した様子で断言した。ミニラルはふと、隣を進む20万トンに及ぶ原子力空母の艦橋には誰かがこちらを見ているのが朧げに見えた。そんな彼らに見えてはいないだろうがと敬礼をした。

 

「艦長、それは?」

「シーランド帝国がいた地球の軍人達の挨拶だそうだ。我らはこれから彼らの盾となるのだ。彼らに伝わる方法で礼をしようと思ってな」

「成程……。それなら私も」

 

 副艦長はミニラルの言葉に納得して隣に立つと敬礼をした。それが見えていたのか分からない。だが、こちらを見ていた人も敬礼をしているように見えミニラルの顔に笑みが浮かんだ。

 

「副艦長、グラ・バルカス帝国は必ずシーランド帝国が降す。そうしたら次は古の魔法帝国だ。シーランド帝国でさえ警戒する彼の帝国との戦争の為にシーランド帝国の艦は一隻でも必要なのだ。正直に言って我らでは足手まといだからな」

「ですが我らと同じように科学技術のみであそこまで行けると分かったんです。古の魔法帝国さえどうにかなればムーの未来は明るいですよ」

「そうだな……。ムーが今後も繫栄できることを祈っていよう……」

 

 瞬間、ラ・カサミを大きな衝撃が襲う。8つの水柱が立つと同時に弾薬庫に誘爆したらしく一瞬にしてラ・カサミは船体を吹き飛ばした。乗っていた乗員は全て死亡し、ムー海軍の象徴は木端微塵に消え去った。しかし、その最後は自らの命と引き換えに希望の未来の為の尊い犠牲と言えた。

 

「……」

 

 そんなラ・カサミの一部始終を見ていたフォーブスは敬礼を止め目を閉じる。そして深呼吸をすると目を見開き指示を出す。

 

「撤退する! この状況で我らが出来る事はない! 本来の力を出せないこの状況でこの海戦に拘る必要はない! この一戦が存亡にかかわるものではないのだ! 準備を整えて再び出直す!」

「司令! 大変です!」

 

 撤退を決めたフォーブスが指示を出していると、見張り員が顔を青ざめた状態で報告をして来る。その表情はこれまでに見た事がない程であり、よほどの事態であると嫌でも教えていた。

 

「どうした?」

「ほ、北東より巨大な円盤が近づいてきています! 数は5!」

「円盤だと……?」

 

 UMAを本気で探している国家機関が存在するシーランド帝国でも流石に円盤は架空の存在と思われている。そんな円盤が異世界とはいえ存在するわけがない。そう思ったフォーブスが双眼鏡で北東を確認すれば確かに巨大な円盤が5つ接近してきていた。某国の高級車メーカーのエンブレムにも見えるそれらはゆっくりと回転しながら戦闘区域に近づいてきている。

 

「何だあれは……? いや、まて。確か神聖ミリシアル帝国は切り札を出すと言っていた。5つと報告を受けている以上もしかして……」

 

 数は一致する。方角も神聖ミリシアル帝国の領土から来たと思わせる位置だ。だが流石にあり得ないという思いが出てくる。通信可能な状況であれば直接通信するなり本国に問い合わせるなり出来るのだが今はそれらが全て出来ない。敵か味方なのかを完璧に把握する事は出来なかった。

 

「……一応警戒するように言え。今はあれを神聖ミリシアル帝国の切り札と仮称し、あれらが攻撃した相手を見て判断する」

 

 自分たちに攻撃するのなら敵、グラ・バルカス帝国を攻撃するのなら味方とフォーブスは誤射をして敵に回る可能性を少しでもなくすために到着する前に全艦艇に指示を出した。

 

「しかし……。一体どうやって浮いているのだ? まさかあれ以外にも存在すると言わないよな?」

 

 あまりにも衝撃的な光景はシーランド帝国、グラ・バルカス帝国、ムー全ての人々の視線を釘付けにした。そしてそれ、空中戦艦パル・キマイラの登場によりバルチスタ沖海戦は次のステージに入っていく事になる。

 




三笠の乗員が800超えと言う数字を見た時はびっくりした……
そんな訳でラ・カサミはここで退場です。どちらにしろムーの艦艇では今後独自に動き出す古の魔法帝国戦では使い物にならないので今のうちにいい感じで沈める事にしました。

未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して

  • 原作での登場まで待つ
  • 作者が想像して書いて
  • 別のオリジナル国家とかに変更する
  • 魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了
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