a.t.s56(皇歴56年)/2/17/10:20 エモール王国竜都ドラグスマキラ
エモール王国は列強に分類される程強大な国力を持っているが列強艦隊には参加していなかった。内陸国と言う事で船を持っていなかった事、竜母を他の列強は運用していなかった事から参加する事が不可能だったのだ。その為、神聖ミリシアル帝国の艦隊に乗り込む形で観戦武官を数名送り込んでいた。しかし、バルチスタ沖海戦において神聖ミリシアル帝国の艦隊は甚大な被害を受け、観戦武官は代表だったリモーラを除き全て戦死していた。そんな彼はバルチスタ沖海戦の結果と途中経過を伝えるために本国へと戻ってきていた。
「それでリモーラよ。グラ・バルカス帝国との海戦はどうであったのだ?」
竜王ワグドラーンは待ちきれないと言った様子で結果を急かしてくる。彼は古の魔法帝国との戦いにおいて重要となるシーランド帝国が参加するとだけありどれほどの力を持っているのか興味があったのだ。
しかし、報告しようとしているリモーラの表情は暗い。それは明らかに勝利したとは言えない表情であり、ワグドラーンも思わず心配になってしまう。やがて、リモーラは重い口を開き、ゆっくりと説明を始めた。
「……まず、今回列強艦隊は勝利を掴む事が出来ました。ですが、シーランド帝国は、その……」
「どうした? はっきりと報告せよ」
「……シーランド帝国の被害も多く、そしてまともに戦闘する事が出来なかった様子です」
「? それはどういう事だ? シーランド帝国は弱かったというのか?」
「いいえ、そうではありません。むしろ神聖ミリシアル帝国やムーをはるかに超える戦力を有していたと思われます」
「ではなぜ戦闘が出来なかったのだ?」
要領を得ないリモーラの言葉に次第に苛立ちを感じ始めるワグドラーンだがそれをなるべく表に出さないようにしながらきちんとした報告を待つ。
「……シーランド帝国は今回、その強大な力を封じられたのです」
「どういう事だ?」
「古の魔法帝国が用いていた魔法を無効化するジャミング装置が何らかの理由で起動したようで、シーランド帝国はその影響をまともに受けてしまったのです」
「なっ!? ジャミング装置だと!? あれは文献で登場するだけの伝説の兵器だぞ!? 何故このタイミングで……!」
ジャミング装置は古の魔法帝国が相手の魔法を封じるために使っていた兵器で、その特性上コンピューター系にも大きく作用する。しかし、古の魔法帝国でも最高機密として扱われていたのか遺跡で出土する事はなく、パル・キマイラに設置されていたものを除けば一切見つかっていない。パル・キマイラに備え付けられていなければ伝説の武器として実在すら疑われていたかもしれない。
「この辺は神聖ミリシアル帝国が現状で分かる事と考察を纏めてくれた物があります。……シーランド帝国はこれに似たものへの対策はしていたようですが意味がなかったようです」
「成程。それで満足に戦う事が出来なかったという訳か。……ではどうやって勝利したというのだ? 列強艦隊はシーランド帝国が中核をなしていただろう? 事前の説明では神聖ミリシアル帝国、ムーの艦隊では勝てないと言われていたはずだが……」
「神聖ミリシアル帝国がパル・キマイラを使ったのです。それも5機全てを」
「何と!? 切り札を用いたのか……!」
神聖ミリシアル帝国の本気度にワグドラーンは驚きを露にするがそれだけ今の状態に胡坐をかきたくないという意志を感じさせた。
「そしてジャミング装置についてですが、今のところは僕の星が起動した事による誤作動ではないかと言うのが主要な意見となっているようです」
僕の星は古の魔法帝国がこの地に転移する為に必要なビーコンを搭載した人工衛星である。無論、機能はそれだけではなく、今回の様にジャミング装置を持つ衛星もあり、更には一万年以上が経過した現在も稼働を続けるなど耐久性も高かった。
「これも彼の国の復活が近いせいなのか……。グラ・バルカス帝国に勝利したと言ったが相手にどれだけの損害を与えたのだ?」
「それについてですがグラ・バルカス帝国は300以上の艦隊を向かわせていた様ですが海戦の前にシーランド帝国の航空機により50隻程が沈められています。砲撃戦が激しく、詳細を把握出来ている訳ではありませんが更にそこから半数は沈めたと思います」
「単純な計算で6割の損害か……。それだけの損害を与えられたのなら充分と言えるのか? 私にはわからないがシーランド帝国の実力をきちんと見れなかったのは痛いな。彼らがどこかに侵略する時に観戦武官として同行させるか?」
「その件でしたら直ぐに訪れるかもしれません。シーランド帝国はこのままグラ・バルカス帝国を叩き潰すつもりでいる様です。そもそも今回の列強艦隊はシーランド帝国がムーと神聖ミリシアル帝国を誘って国際的にグラ・バルカス帝国を孤立させるために行った事です。今のシーランド帝国の皇帝はそれだけ国際的信用や信頼を重要視しているという事です」
「そうか。ならば現状孤立気味のグラ・バルカス帝国はじきに沈むな。モーリアウルよ」
「何でしょうか?」
「シーランド帝国に今一度出向き観戦武官の派遣をしたいと申し出よ。彼らの力をきちんと把握したいと噓偽りなく申すように」
「了解しました。直ぐに発ちます」
「うむ。……それとリモーラよ。今更となったがよく生き残り、報告してくれた。今はゆっくり休め」
「はっ! では少し休ませていただきます」
リモーラはいつ死ぬか分からない極限状態にいた精神的疲労から、倒れるように眠り、疲労回復を行った。一方、モーリアウルはその日のうちにエモール王国を発つとシーランド帝国に向かい皇帝と謁見した。モーリアウルは観戦武官を次の侵攻の際に送りたいと伝えるとウィリアムもシーランド帝国の力を理解してもらうためにと了承した。
そして、シーランド帝国は次の行動の為に準備を開始するのだった。
リモーラ
エモール王国の軍事方面のトップだと思ってくれればいいです。用は外交代表のモーリアウルの軍事バージョンです。流石にモーリアウルに観戦武官させるのはどうかと思ったので
未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して
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原作での登場まで待つ
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作者が想像して書いて
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別のオリジナル国家とかに変更する
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魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了