シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

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第九十九話「海戦の影響3~神聖ミリシアル帝国~」

a.t.s56(皇歴56年)/2/21/9:00 神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス

 バルチスタ沖海戦において実質的な勝利の立役者となった神聖ミリシアル帝国だが上層部は今回の海戦を重くとらえていた。何しろ事前に分かっていたとはいえ魔導艦隊では大型艦を沈めるには至らず、派遣した艦隊も半壊と言う結果となった。そして、切り札として全機投入した空中戦艦パル・キマイラも小型艦はともかく大型艦を沈めるには火力が足りず、シビルを用いる事で倒す事が出来るという結果だったのだから。

 

「シビルを用いる事でしか敵を倒すには至らない、か……」

 

 ミリシアル8世は艦隊の生き残りから聞いた情報とパル・キマイラを率いたメテオスからの報告書を見てそう呟いた。期待していなかった、と言えば嘘になる。少なくとも魔導艦隊の様に一方的に倒されるという事もなく、逆にこちらが一方的に攻撃できると。実際、その高度故に一方的な攻撃を行う事が出来ていた。損傷を与えられなかっただけで。

 

「魔導砲の威力を上げる必要があるか。それとシーランド帝国より教えてもらえた魚雷と言う兵器に関しても深く理解する必要があるな」

 

 バルチスタ沖海戦では魚雷攻撃を躱す艦もいたが大半は理解不足で沈められており、魔導艦隊の被害の半数は魚雷によってであった。グラ・バルカス帝国がこれらの兵器を持っている事からも対策は必須であり、場合によってはこちらも開発する必要があるとミリシアル8世は今後の研究する事を考えていく。

 

「……これらの兵器は遺跡から発掘された事はない。それはつまり彼の国はこういった兵器を持っていないという事になる。……もし彼の国と戦う事になればそこを突く事で海上戦力を駆逐できるか?」

 

 遺跡から発掘されなかったからと言って魚雷を持っていなかったと考えるには早急かもしれないがもしそうであれば大きなアドバンテージになりうると判断する。実際、自分たちが経験しているのだからその力は折り紙つきだ。

 

「さて、今回の海戦は想定外の物が多かったが同時に我々が得られた事も多い」

 

 魚雷の力の再確認に魔導艦隊の性能不足。空中戦艦パル・キマイラがどの程度戦えるのかを理解できたことはとても大きいと言えた。今までのままだったらこれだけの損害を出したとしても世界最強の称号に胡坐をかきまともに取り合わなかった可能性がある。

 しかし、ミリシアル8世が改革を行っていくと宣言したことで上層部だけではなく国民にもその流れが訪れていた。国民は今回のバルチスタ沖海戦の結果を聞き自分たちが信じていた常識は崩れ去ったと理解し、更なる技術向上に積極的になっている。このままでいけば神聖ミリシアル帝国は更なる発展を迎える事が出来るだろう。

 

「そう言えばシーランド帝国に派遣する学生たちの出発を見届けないとな」

 

 現状、古の魔法帝国に対抗できる国家はシーランド帝国しかいない。それが神聖ミリシアル帝国上層部が出した結論だった。自分たちやグラ・バルカス帝国でも古の魔法帝国に且つどころか抗う事さえ難しいと考えていた。何しろ自分たちは彼の国の劣化コピーを用いており、その中でも高性能とは言え元の物よりスペックが落ちる空中戦艦パル・キマイラを全く撃ち落とせないグラ・バルカス帝国では逆立ちしても勝つことは無理だろう。

 その為に神聖ミリシアル帝国は将来有望な若者たちをシーランド帝国に派遣し、そこで様々な事を学ばせようと考えた。これはシーランド帝国も了承しており、一人につき法外な滞在費用、研修費用が掛かる事となったうえに魔導技術の開示を要求されたが自分たちでは劣化コピーしか作れないと開き直ってシーランド帝国に全てを開示した。その思いきりのよさにはふっかけたつもりだった外交官が目を見開き、顎を外さんばかりに口を開けて驚いた。

 そんな神聖ミリシアル帝国が恥も外聞もないと言わんばかりに開示したことでシーランド帝国は若者たちを受け入れる事にした。最初は10代男性5名、女性2名。20代男性3名、女性2名の計12名を派遣する事となった。彼らは各分野における将来を約束された者達であり、神聖ミリシアル帝国の未来を担っていく事になる若者だった。期限は約一年。その間にシーランド帝国が教えても構わない範囲で学んでいく予定であり、その出発日が近づいていた。

 

「彼らがシーランド帝国の技術に触れられるだけでも充分だ。理解力があり、柔軟な知識を持つ彼らならそれだけでもいい刺激となってくれるだろう」

 

 ミリシアル8世は若者たちがシーランド帝国での生活を受けて神聖ミリシアル帝国の発展の手助けになるだろうとほぼ確信しつつ、彼らの今後に期待する事になる。

 そんなミリシアル8世を始め国中の期待を背に12人の若者たちはシーランド帝国へと旅立っていった。彼らの後にも様々な人々が研修に向かい、最終的に200人以上の人々がシーランド帝国に直接触れる事になる。彼らが見て、聞いて、知ったシーランド帝国での生活はその後神聖ミリシアル帝国の技術向上に繋がっていく事になる。

 後にこの決断を下したミリシアル8世は神聖ミリシアル帝国最高の君主としてその名を後世にまで轟かせる事となり、最初に研修に向かった若者たちもそれぞれの分野で活躍し、12人の賢者と呼ばれる事になる。

 





【挿絵表示】

現在の世界地図
青:シーランド帝国直轄領(自治領含む)
灰色と薄灰色:シーランド帝国の副王国
黄:フィルアデス連邦
藍色:シーランド帝国の属国
緑:シーランド帝国の友好国
黄緑:友好国ではないが国交を持つ国(大まかに)
紫:グラ・バルカス帝国の勢力範囲
薄紫:潜在的敵国(グラメウス大陸では魔王のみ)

フィルアデス連邦が拡大している訳については次回説明します(多分)

未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して

  • 原作での登場まで待つ
  • 作者が想像して書いて
  • 別のオリジナル国家とかに変更する
  • 魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了
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