面倒ごとの予感
俺達が面倒ごとに巻き込まれなんやかんやしているとドット秘書長と呼ばれた男がやってきて事情を説明することになった。
ドット「話はわかりました。証人も大勢いる事ですし嘘はないのでしょうね。やり過ぎな気もしますが……まぁ、死んでいませんし許容範囲としましょう。取り敢えず、彼らが目を覚まし一応の話を聞くまでは、フューレンに滞在はしてもらうとして、身元証明と連絡先を伺っておきたいのですが……それまで拒否されたりはしないでしょうね?」
ハジメ「あぁ、構わない。連絡先はそこの彼女が進める宿に泊まるつもりだから彼女に聞いてくれ。だがこちらは巻き込まれたうえに待たされるんだ。多少は何かあってもいいと思うがどうなんだ?」
ハジメに視線を向けられたリシーは、ビクッとした後、やっぱり私が案内するんですねと諦めの表情で肩を落としていた。ホントごめんね?俺も悪いから申し訳なく思っていると、
ドット「ふむ、いいでしょう……彼らが目を覚ます間の補填については少し考えさせてください。そして、あなた達の冒険者ランクは〝青〟ですか。向こうで伸びている彼は〝黒〟なんですがね……そちらの女性の方々のステータスプレートはどうしました?」
ハジメ「いや、ユエもシアも……こっちの彼女達もステータスプレートは紛失してな、再発行はまだしていない。ほら、高いだろ?」
優也「えぇ旅の途中で少々厄介な魔物に絡まれてその時」
俺達はさらりと嘘をつく。無駄かもしれないがユエ達のステータスの詳細を知られるのはまずいと考えたからだ。
ドット「しかし、身元は明確にしてもらわないと。記録をとっておき、君達が頻繁にギルド内で問題を起こすようなら、加害者・被害者のどちらかに関係なくブラックリストに載せることになりますからね。よければギルドで立て替えますが?」
この口ぶりだとどうしても身分証明のためにステータスプレートが必要なようだ。発行されたばかりの者では技能欄の隠ぺいは不可能だろうからどうしてもユエ達の異常性の詳細を知られてしまう。そうなれば面倒ごとは避けられない。どうするべきかと俺とハジメは考える。
ユエ「……ハジメ、手紙」
ハジメ「?あぁ~成程な」
その手があったか!キャサリンさんが渡してくれた手紙でどうにかなればいいが..............
ハジメ「身分証明の代わりになるかわからないが、知り合いのギルド職員に、困ったらギルドのお偉いさんに渡せと言われてたものがある」
ドット「?知り合いのギルド職員ですか?……拝見します」
代わりにと渡された手紙を開いて内容を流し読みする内にドットはギョッとした表情を浮かべた。そして、ハジメ達の顔と手紙の間で視線を何度も彷徨わせながら手紙の内容をくり返し読み込む。目を皿のようにして手紙を読む姿から、どうも手紙の内容かなにかを見極めているようだ。やがて、ドットは手紙を折りたたむと丁寧に便箋に入れ直し、ハジメ達に視線を戻した。
ドット「この手紙が本当なら確かな身分証明になりますが……この手紙が差出人本人のものか私一人では少々判断が付きかねます。支部長に確認を取りますから少し別室で待っていてもらえますか?そうお時間は取らせません。十分、十五分くらいで済みます」
ハジメ「あぁ構わないここで待たせてもらう」
リシー「あの~私はどうすれば..................」
どこか期待したように発言するリシーさん。恐らくこの場から離れられるのではと考えているのだろうだが.....
ハジメ「待っててくれ……逃げるなよ?プロだろ?」
リシー「……はぃ」
迷惑かけてほんとごめんなさい!
そして彼女は逃げることができずカフェの奥の方に向かっていった。その背中にはいやでも仕事を受けなくてはいけない社会人の哀愁を漂わせていた。
俺達が応接室に案内されてから、きっかり十分後、遂に、扉がノックされた。ハジメの返事から一拍置いて扉が開かれる。そこから現れたのは、金髪をオールバックにした鋭い目付きの三十代後半くらいの男性と先ほどのドットだった。
イルワ「初めまして、冒険者ギルド、フューレン支部支部長イルワ・チャングだ。ハジメ君、優也君、ユエ君、シア君……でいいかな?」
ハジメ「あぁそうだが........名前は手紙に?」
イルワ「その通りだ。先生からの手紙に書いてあったよ。随分と目をかけられている……というより注目されているようだね。将来有望、ただしトラブル体質なので、出来れば目をかけてやって欲しいという旨の内容だったよ」
ハジメ「トラブル体質……ね。確かにブルックじゃあトラブル続きだったな。まぁ、それはいい。肝心の身分証明の方はどうなんだ?それで問題ないのか?」
イルワ「ああ、先生が問題のある人物ではないと書いているからね。あの人の人を見る目は確かだ。わざわざ手紙を持たせるほどだし、この手紙を以て君達の身分証明とさせてもらうよ」
それならよかったと安心する俺達。だが、ここでもう一つ疑問が出てくる。キャサリンさんとはいったい何者なのかと。さっきこの人先生って言ってたよな?
シア「あの~、キャサリンさんって何者なのでしょう?」
イルワ「ん?本人から聞いてないのかい?彼女は、王都のギルド本部でギルドマスターの秘書長をしていたんだよ。その後、ギルド運営に関する教育係になってね。今、各町に派遣されている支部長の五、六割は先生の教え子なんだ。私もその一人で、彼女には頭が上がらなくてね。その美しさと人柄の良さから、当時は僕らのマドンナ的存在、あるいは憧れのお姉さんのような存在だった。その後、結婚してブルックの町のギルド支部に転勤したんだよ。子供を育てるにも田舎の方がいいって言ってね。彼女の結婚発表は青天の霹靂でね。荒れたよ。ギルドどころか、王都が」
シア「はぁ~そんなにすごい人だったんですね~」
ユエ「……キャサリンすごい」
ハジメ「只者じゃないとは思っていたが……思いっきり中枢の人間だったとはな。ていうか、そんなにモテたのに……今は……いや、止めておこう」
ハジメお前かなり失礼なこと考えているだろう?
優也「あの人柄なら納得って感じです。それで肝心の身分証明はどうなんですか?」
イルワ「あぁそれに関しては問題ない。だが君たちの腕を見込んで一つ依頼を受けて欲しい」
ハジメ「断.....「待てハジメ」......って優也どうした?受ける必要は........」
優也「聞いたほうがいいと思うぞ間違いなく。恐らく断れば今回の件でブラックリストに載ることになる。それは面倒だ。なら依頼を受けておいたほうがいい。」
ハジメ「..................ハァ~、わかった話しを聞こう。あんたいい性格してるよ」
イルワ「君も大概だと思うけどね。さて、今回の依頼内容だが、そこに書いてある通り、行方不明者の捜索だ。北の山脈地帯の調査依頼を受けた冒険者一行が予定を過ぎても戻ってこなかったため、冒険者の一人の実家が捜索願を出した、というものだ」
イルワの話を要約すると、つまりこういうことだ。
最近、北の山脈地帯で魔物の群れを見たという目撃例が何件か寄せられ、ギルドに調査依頼がなされた。北の山脈地帯は、一つ山を超えるとほとんど未開の地域となっており、大迷宮の魔物程ではないがそれなりに強力な魔物が出没するので高ランクの冒険者がこれを引き受けた。ただ、この冒険者パーティーに本来のメンバー以外の人物がいささか強引に同行を申し込み、紆余曲折あって最終的に臨時パーティーを組むことになった。
この飛び入りが、クデタ伯爵家の三男ウィル・クデタという人物らしい。クデタ伯爵は、家出同然に冒険者になると飛び出していった息子の動向を密かに追っていたそうなのだが、今回の調査依頼に出た後、息子に付けていた連絡員も消息が不明となり、これはただ事ではないと慌てて捜索願を出したそうだ。
イルワ「伯爵は、家の力で独自の捜索隊も出しているようだけど手数は多い方がいいと、ギルドにも捜索願を出した。つい、昨日のことだ。最初に調査依頼を引き受けたパーティーはかなりの手練でね、彼等に対処できない何かがあったとすれば、並みの冒険者じゃあ二次災害だ。相応以上の実力者に引き受けてもらわないといけない。だが、生憎とこの依頼を任せられる冒険者は出払っていてね。そこへ、君達がタイミングよく来たものだから、こうして依頼しているというわけだ」
優也「話は分かった。これを受ければ今回の件は不問、そしてこれが依頼という形式から考えて報酬は出るんですよね?」
イルワ「勿論だ報酬は弾ませてもらう。依頼書の金額はもちろんだが、私からも色をつけよう。ギルドランクの昇格もする。君達の実力なら一気に黒にしてもいい。なんなら今後、ギルド関連で揉め事が起きたときは私が直接、君達の後ろ盾になるというのはどうかな?フューレンのギルド支部長の後ろ盾だ、ギルド内でも相当の影響力はあると自負しているよ?君達は揉め事とは仲が良さそうだからね。悪くない報酬ではないかな?」
ハジメ「まて、あまりにも大盤振る舞いだがいいのか?」
ハジメの言葉に、イルワが初めて表情を崩す。後悔を多分に含んだ表情だ。
イルワ「彼に……ウィルにあの依頼を薦めたのは私なんだ。調査依頼を引き受けたパーティーにも私が話を通した。異変の調査といっても、確かな実力のあるパーティーが一緒なら問題ないと思った。実害もまだ出ていなかったしね。ウィルは、貴族は肌に合わないと、昔から冒険者に憧れていてね……だが、その資質はなかった。だから、強力な冒険者の傍で、そこそこ危険な場所へ行って、悟って欲しかった。冒険者は無理だと。昔から私には懐いてくれていて……だからこそ、今回の依頼で諦めさせたかったのに……」
成程............イルワさんは相当ウィルという少年を心配しているようだ。これほどの報酬を提示したのもその証拠だろう。
ハジメ「受けるにあたって二つ条件を提示したい」
イルワ「条件?」
ハジメ「ああ、そんなに難しいことじゃない。ユエとシアにステータスプレートを作って欲しい。そして、そこに表記された内容について他言無用を確約すること、更に、ギルド関連に関わらず、アンタの持つコネクションの全てを使って、俺達の要望に応え便宜を図ること。この二つだな」
イルワ「それはあまりに……」
ハジメ「出来ないなら、この話はなしだ。もう行かせてもらう」
イルワ「..............何を要求するつもりかな?」
ハジメ「そんなに気負わないでくれ。無茶な要求はしないぞ? ただ俺達は少々特異な存在なんで、教会あたりに目をつけられると……いや、これから先、ほぼ確実に目をつけられると思うが、その時、伝手があった方が便利だなっとそう思っただけだ。面倒事が起きた時に味方になってくれればいい。ほら、指名手配とかされても施設の利用を拒まないとか……」
イルワ「指名手配されるのが確実なのかい?ふむ、個人的にも君達の秘密が気になって来たな。今回の件からあまり力を隠すことを気にしていないとこを見て最初から事を構えるのは覚悟の上ということか……そうなれば確かにどの町でも動きにくい……故に便宜をと……」
流石、大都市のギルド支部長。頭の回転は早い。イルワは、しばらく考え込んだあと、意を決したようにハジメに視線を合わせた。
イルワ「犯罪に加担するような倫理にもとる行為・要望には絶対に応えられない。君達が要望を伝える度に詳細を聞かせてもらい、私自身が判断する。だが、できる限り君達の味方になることは約束しよう……これ以上は譲歩できない。どうかな」
ハジメ「まぁ、そんなところだろうな……それでいい。あと報酬は依頼が達成されてからでいい。お坊ちゃん自身か遺品あたりでも持って帰ればいいだろう?」
そう言った条件のもと俺達は依頼を受けることにした。イルワ自身とても俺達の秘密に興味があるようだ。恐らくあの頭の回転の速さからある程度目星を付けつつ会いそうだと思いながら俺達はその場をあとにした。
次回は先生との再会です。ここまでくればあとはティオと出会い、ウルでの殲滅戦、ミュウとの出会い、そして書きたい香織との再会!まで行けます。とにかく頑張って進めたいと思います。香織と再会したらもう少しオリジナル要素増やしたり番外編入れてみたりとかいろいろ試してみたいです。