愛ちゃん先生
俺達は依頼のためウルの町で一泊し明朝から捜索するという予定を立てていた。そして依頼とは別に俺とハジメにはとある楽しみがあった
ユエ「............ハジメと優也楽しそう」
シア「いわれてみればそうですね。どうかしたんですか」
俺達はウルの町についてから少し気分が高まっていたなぜなら.........
ハジメ「あぁ、久しぶりに米が食えると思うと楽しみなんだよ。米は俺達の故郷の主食だからな。しかもカレーっていう俺たちの住んでいたとこにある料理に似たものがあると知ったから余計にな」
優也「そうだな。久しぶりの故郷の味って感じで少し気分が上がってるんだ。せっかくだからレシピとかも聞こうかな~」
ユエ「.......ハジメたちの故郷の食べ物。私も楽しみ」
シア「そうですねユエさん!それに優也さんが作れるようになるのも楽しみでね。悔しいですが優也さんの方が料理上手いですから」
優也「シアの料理も十分おいしいと思うぞ?」
このメンツの中で料理ができるのは優也とシアだけである。ハジメやユエも全くできないというわけではないがやはり普段から料理をしていた優也やシアにはかなわないので基本的に旅の食事担当は二人の交代制である。特に優也の料理の腕は飛びぬけており、ハジメの反応もいささか優也の料理の時の方がいい。それを見ているシアはもちろんユエも悔しく最近では優也の料理担当の時は二人して優也に教えてもらっていたりする。
そんなやり取りをしていると目的の店につく
ハジメ「こだな。水妖精の宿は」
そうして俺達は中に入っていく。ここは食事処にも宿にもなっており、米料理が豊富である。まずは俺達は部屋を予約しさっそく食事場に向かった。
優也「それにしても楽しみだなハジメ」
ハジメ「あぁ正直この依頼は受けてよかったかもしれないって思うくらいには楽しみだ」
シア「かなり料理の品数多いみたいなので楽しみですぅ!」
ユエ「ん。楽しみ」
俺達がぞろぞろ入っていくとどうやら数名先客いるのが分かった。まぁ関係ないしはやく食べたいなぁ~と思いながら机の周りのカーテンを閉じて席に座ろうとしていると.........
シャァァァ!!
存外に大きく響いたカーテンの引かれる音に、ギョッとして思わ反応する4人の少年少女。
その相手は突然二人の少年の名を叫んだ。
愛子「南雲君!河崎君!」
ハジメ、優也「「あぁ?(えっ!) ……………………………………………先生?」」
愛子の目の前にはあの日死んだと聞かされた.........いやもしかしたら生存して帰ってくるかもしれないといわれた二人の大切な教え子がいた。二人とも白髪になり容姿も変わっていた。ハジメに至っては雰囲気が全くと言っていいほど変わっている。だが彼女はが間違いなく自分の生徒だとわかったのだ。
愛子「南雲君、河崎君.............生きていたんですね?無事でよかったです..........」
ハジメ「.......あぁ、久しぶりだな先生」
優也「相変わらず元気みたいですね先生」
それからとりあえずは食事をとらせてもらうことにした。さすがに移動で疲れたのでようやくの食事であるのでと説明したら先生も納得して引き下がってくれた。
俺達がカレーを...............ニルシッシルと言われていたものを食べ終えると先生と他の生徒もいるVIP席にあんないされた。人の目もあるから当然の事だろう。
そして先生に今までどうしていたかとか、なんでそんなにも変わってしまったのかとか、どうして戻ってこなかったのかなどを聞かれそれをハジメが適当に答えていた。すると一緒にいた騎士がキレて雰囲気が悪くなり特に詳しい話もせずにその場は終わってしまった。
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時間はたち深夜になった。愛子は普段なら寝ている時間だが衝撃的な出来事のせいで寝ることができずにいた。部屋の革張りのソファーに腰かけ暖炉を眺めながら今日の事に思いはせていると..............
ハジメ「邪魔するぞー先生」
優也「すいません先生お邪魔します」
愛子「な、南雲君?に河崎君!?な、なんでここに、どうやって……」
ハジメ「どうやってと言われると、普通にドアからと答えるしかないな」
愛子「えっ、でも鍵が……」
ハジメ「俺の天職は錬成師だぞ?地球の鍵でもあるまいし、この程度の構造の鍵くらい開けられるさ」
優也「すいません先生。何回かノックしても反応なくてハジメが無理くり開けてしまって」
愛子「そうなんですか?それはすいません。ですがこんな時間に、しかも女性の部屋に訪問とは感心しませんよ。わざわざ鍵まで開けて……一体、どうしたんですか?」
ハジメ「少し詳しく話そうと思ってな」
愛子「話ですか?でも戻るつもりないんですよね?というか河崎君は白崎さん凄く心配してましたよ!」
優也「知ってるよ先生。わかってる香織に辛い思いをさせているのは。だからそっちには一度俺だけよって香織を迎えに行くつもりなんだ。もちろん彼女の意思は尊重するし無理強いはしないつもりだけど.....できればついてきてもらおうと思っている。俺も結構香織に会えないのは寂しいんですよ?」
愛子「そうなんですか..........でもならなぜ戻らないのですか?」
優也「いろいろあるんですよ。そして今はそのことについて先生だけに説明しようと思い来たんです」
ハジメ「今から話す話は、先生が一番冷静に受け止められるだろうと思ったから話す。聞いた後、どうするかは先生の判断に任せるよ」
そうして俺達は旅の中知った世界の真実を話していく。解放者のこと、狂った神のことを。この世界の真実を聞かされ呆然とする愛子。当然だが、どう受け止めていいか分からないようだ。情報を咀嚼し、自らの考えを持つに至るには、まだ時間が掛かりそうである。
ハジメ「まぁ、そういうわけだ。俺達が奈落の底で知った事はな。これを知ってどうするかは先生に任せるよ。戯言と切って捨てるもよし、真実として行動を起こすもよし。好きにしてくれ」
愛子「ふ、二人はもしかして、その狂った神をどうにかしようと……旅を?」
ハジメ「ハッ、まさか。この世界がどうなろうが心底どうでもいい。俺は俺なりに帰還の方法を探るだけだ。旅はそのためのものだよ。教えたのは、その方が俺にとって都合が良さそうだから、それだけだ」
優也「正直自分も概ねハジメと同じです。帰還と大切なものさえ守れればどうでもいいんですよ先生。そのための力を身に着けるための旅でもあると俺は思ってます。」
愛子「アテはあるんですか?」
ハジメ「まぁな。大迷宮が鍵だ。興味があるなら探索したらいい。オルクスの百階を超えれば、めでたく本当の大迷宮だ。もっとも、今日の様子を見る限り、行っても直ぐに死ぬと思うけどな。」
愛子「..........わかりました。二人ともしっかりとした考えがあるのは理解しました。」
優也「先生もう一つだけ。先生は周りの事だけでなく自分たちの内情も今よりも慎重に見たほうがいい」
愛子「?どういうことですか?」
優也「俺とハジメは事故で奈落に落ちたわけじゃない。ある生徒の意図的な行為により落ちたんですよ。まぁ、大方俺とハジメが香織とかかわっていたのが気に食わなかったんでしょう。ハジメはともかく学校じゃあ俺は生徒会の人間だから手を出せないでいたから好機とでも思ったんでしょうね。香織にそれとなく気を付けるように言っておいてください。あとはなるべくはやく会いに行くと。」
そうして俺達は最後に挨拶をして部屋を後にした。
1人になった愛子はシンとする部屋に冷気が吹き込んだように錯覚し、愛子は両腕で自らの体を抱きしめた。大切な生徒が仲間を殺そうとしたかもしれない。それも、死の瀬戸際で背中を狙うという卑劣な手段で。生徒が何より大切な愛子には、受け入れ難い話だ。だが、否定すれば優也の言葉も理由もなく否定することになる。生徒を信じたい心がせめぎ合う。
愛子の悩みは深くなり、普段に増して眠れぬ夜を過ごした。
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明朝、俺達は依頼のために準備を整え北門に向かうとそこにはすでに複数の人影がいた
ハジメ「...............なんとなく想像つくが一応聞こう........何してんの?」
ハジメ達が半眼になって愛子に視線を向ける。一瞬、気圧されたようにビクッとする愛子だったが、毅然とした態度を取るとハジメと正面から向き合った。ばらけて駄弁っていた生徒達、園部優花、菅原妙子、宮崎奈々、玉井淳史、相川昇、仁村明人も愛子の傍に寄ってくる。
愛子「私達も行きます。行方不明者の捜索ですよね?人数は多いほうがいいです」
ハジメ「却下だ。行きたきゃ勝手に行けばいい。が、一緒は断る」
愛子「な、なぜですか?」
ハジメ「単純に足の速さが違う。先生達に合わせてチンタラ進んでなんていられないんだ」
彼女たちの後ろには人数分の馬がいる。だが魔力駆動車の速度に敵うはずがないのだ。そう思いハジメは宝物庫から魔導駆動二輪を取り出し「理解したろ?」と問いかける。それでもあきらめる様子がなくハジメに懇願する先生。そしてこれ以上話していても時間の無駄だと遂にハジメが折れ動向を許可し二輪をしまい魔力駆四輪を出し移動を開始した。
しばらく移動すると北の山脈に到着した。ここからはさすがに四輪では無理になるので一同は下車して魔物の報告のあった六合目から七合目あたりを目指し移動する。移動する前にハジメは新たに作った無人偵察機を4機放った。無人偵察機に先行させ俺達ハイペースで山を進み1時間で目的のあたりについて一休みすることになった。一気に進めてもよかったのだが俺たち以外のメンツが疲労困憊になってしまい休まざる負えなかったのだ。なので俺達はとりあえず近くの川まで移動することにした。もしかしたらウィルたちもそこで休憩をとっていて何らかの痕跡があるかもしれないと考えたのも理由の一つだ。
しばらくするとみんなが休憩している中ハジメは無人機からの情報で上流に盾が落ちていることを見つけるとすぐさま休憩を終えて向かうことになった。その場に到着するとそこには盾だけでなく鞄などいろいろなものが散乱していた。そのまま先に進んでいくと間違いなく何かが争っていたような痕跡をいくつも見つける。血の跡もあり先生たちは表情を歪めていた。俺達は周囲を探っているとするとシアが何か見つけたようでハジメに話しかけていた。
シア「ハジメさん、これ、ペンダントでしょうか?」
ハジメ「ん?ああ……遺留品かもな。確かめよう」
シアからペンダントを受け取り汚れを落とすと、どうやら唯のペンダントではなくロケットのようだと気がつく。留め金を外して中を見ると、女性の写真が入っていた。おそらく、誰かの恋人か妻と言ったところか。大した手がかりではないが、古びた様子はないので最近のもの……冒険者一行の誰かのものかもしれない。なので、一応回収しておくことにした。その後も多く遺留品を見つけ身元の特定になりそうなものだけ回収していく。
しばらく回収作業をしていると野営の準備に入らねばならない時間に差し掛かっていた。だというのに未だ、野生の動物以外で生命反応はない。ウィル達を襲った魔物との遭遇も警戒していたのだが、それ以外の魔物すら感知されなかった。位置的には八合目と九合目の間と言ったところ。山は越えていないとは言え、普通なら、弱い魔物の一匹や二匹出てもおかしくないはずで、ハジメ達は逆に不気味さを感じていた
しばらくすると、再び、無人偵察機が異常のあった場所を探し当てた。東に三百メートル程のところに大規模な破壊の後があったのだ。ハジメは全員を促してその場所に急行した。
そこは大きな川だった。上流に小さい滝が見え、水量が多く流れもそれなりに激しい。本来は真っ直ぐ麓に向かって流れていたのであろうが、現在、その川は途中で大きく抉れており、小さな支流が出来ていた。まるで、横合いからレーザーか何かに抉り飛ばされたようだ。
そのような印象を持ったのは、抉れた部分が直線的であったとのと、周囲の木々や地面が焦げていたからである。更に、何か大きな衝撃を受けたように、何本もの木が半ばからへし折られて、何十メートルも遠くに横倒しになっていた。川辺のぬかるんだ場所には、三十センチ以上ある大きな足跡も残されている。
そして俺達は上流に無人機を飛ばし自分たちは下にいくことにした。すると先程よりも大きな滝を発見し滝の近くで感じられる清涼な風が一日中行っていた探索に疲れた心身を優しく癒してくれる。と、そこでハジメと俺の気配感知に反応が出た。
優也「!これは……ハジメ」
ハジメ「あぁ!おそらく.........」
俺達は目をつぶり集中すると
優也「見つけた!この感じはおそらく人。.....................場所は滝壺の奥だ」
ハジメ「俺もそこに感知した。どうやら一人生きている奴がいる」
その場にいる全員も一様に驚いているようだ。それも当然だろう。生存の可能性はゼロではないとは言え、実際には期待などしていなかった。ウィル達が消息を絶ってから五日は経っているのである。もし生きているのが彼等のうちの一人なら奇跡だ。
ユエの協力を得て滝を真っ二つに割り洞窟へ進んでいく。すると、一番奥に横倒しになっている男を発見した。傍に寄って確認すると、二十歳くらいの青年とわかった。端正で育ちが良さそうな顔立ちだが、今は青ざめて死人のような顔色をしている。だが、大きな怪我はないし、鞄の中には未だ少量の食料も残っているので、単純に眠っているだけのようだ。顔色が悪いのは、彼がここに一人でいることと関係があるのだろう。
それからいろいろありながらも青年を起こすとウィル・クデタ本人とわかり以来の都合上ついていると思うハジメ。それからウィルを連れ立って滝を出るとそこには俺達を熱烈に歓迎するものがいた。
「グゥルルルル」
低い唸り声を上げ、漆黒の鱗で全身を覆い、翼をはためかせながら空中より金の眼で睥睨する……それはまさしく竜だった。
次回は黒竜退治?です。そしてそのままウルの町の殲滅戦前まで進めたいと思っています。今週中にはミュウの回まではいきたいなぁ~と思っています。またこの作品を読んでくださる人にはとても感謝しています。本当にありがとうございます。