Angel or Lilith~天使な僕と魔性なキミの旅~   作:伊駒辰葉

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すみません!><
旅はまだ先です!><

この話は途中を改稿することに決めました。


会議にて

 次の日の昼、トゥーラはゼクーと共に王宮に向かった。ゼクーの塔は多くの塔の中で一番、王宮の近くに位置している。ゆっくりと支度して二人が王宮にたどり着いた頃、他の塔の魔道士たちも王宮に続々と入り始めていた。

 

 国内の塔は全部で三十二。その全ての塔の代表が集まったのは王宮内の大会議室だった。縦長の部屋の中央に用意された長い机に代表者たちがつく。煌びやかな装飾の施された室内の様子や集まってくる人々を見て、トゥーラは緊張に身を強張らせた。特に発言は求められないだろう、とゼクーから聞いてはいるがやはり落ち着かない。

 

 各自の椅子の前に置かれているのは数枚の紙がまとめられた薄い冊子だ。席についたトゥーラは何気なく冊子を取り上げてめくってみた。紙は上質なのだが、急ごしらえのためか書き綴られている文字は少し歪んでいる。

 

「あれ? 何だ、今日も来てたのか。相変わらず美人だねえ」

 

 聞き覚えのある声に驚いてトゥーラは慌てて顔を上げた。いつの間に近づいてきていたのか、トゥーラの隣の椅子をエタンダールが引く。トゥーラは顔を強張らせて全身を緊張させた。何故こんなところにいるのかと問いかけようとして慌てて口を噤む。エタンダールはこれでも一応は力のある魔道士なのだ。

 

 トゥーラは鋭い目でエタンダールを見やってから席を立とうとした。が、そこで思い止まる。今日の席はきっちりと決められている。トゥーラの前には塔の名の書かれた札が置いてあるのだ。トゥーラは戸惑いの目で右隣に腰掛けているゼクーを伺った。だがゼクーは、落ち着きなさい、と渋い顔で言うだけだった。

 

 議長の国王付き書記官が席に着くと場は急に鎮まった。机の端についている書記官の隣がエタンダール、続いてトゥーラ、その次にゼクーと並んでいる。向かい合って並んでいるのは別の塔の代表たちだ。隣に座るエタンダールはともかく、どの魔道士もかなりの高齢であることが見て取れる。トゥーラはその場の厳粛な雰囲気に圧倒された。

 

 唐突にエタンダールが椅子を斜めに傾けて机に行儀悪く足を乗せる。トゥーラはぎょっとしてエタンダールを横目に見た。

 

先見(さきみ)(うら)で出ただけだろ。んな、実際にいるかどうか判んねえもんのために、話し合いなんざ必要ねえだろ」

 

 うんざりしたという顔で言ったエタンダールがそこで何故かトゥーラを見る。あんたもそう思うだろ、と同意を求められてトゥーラは慌てて首を横に振った。

 

「エタンダール殿。今はまだ説明の途中で」

 

 書記官の男性が当惑した面持ちで言う。へえへえ、とやる気のない返事をしてエタンダールが頭をかく。そんな二人をトゥーラは驚きの目で見比べた。

 

 エタンダールは三十歳に届くかどうかという容姿をしている。だがそれは本来の年齢ではないのだとトゥーラはゼクーから聞いていた。だがどう見てもエタンダールはこの場で浮いて見える。

 

「たるいなあ……」

 

 話し合いの続く中、エタンダールがぼそりと呟く。トゥーラはめいっぱい顔をしかめてエタンダールを睨みつけた。傍に座る書記官はエタンダールを無視することに決めているのか、知らん顔をしている。

 

「もっと真面目に取り組んだらいかがですか。これは重要任務でしょう」

 

 トゥーラは厳しい顔をして出来るだけ潜めた声で言った。椅子の後ろの脚だけで器用にバランスを取りながらエタンダールはぼそぼそと告げた。

 

「結局なに言ったって討伐するって話になんだよなあ。頭の硬いヤツばっかだな」

 

 どうやら周囲に気遣うつもりは一応はあるらしい。ごく小さなエタンダールのぼやきはトゥーラ以外には聞こえなかったようだ。トゥーラは眉を寄せて冊子をめくった。天使と呼ばれるモノを巡る戦いによる被害が記されている部分をエタンダールに示す。

 

「当然でしょう。そんなモノを放置して万が一、また戦いが起こったら誰が責任を取るというのです? 前回、天使が現れた時に起こった戦いによる被害はあなたもご存知のはず」

 

 トゥーラの差し出した冊子をちらりと見てからエタンダールがため息を吐く。相変わらずやる気のなさそうなその態度にトゥーラは目を吊り上げた。

 

 話し合いは順調に進み、天使の討伐隊が組織されることになった。各塔から一名以上の代表者を出すことで話は落ち着いた。今回は天使の所在やその性質がはっきりしないため、調査を行うというのが建前だ。だがその裏側には天使の抹殺という極秘の任務がある。話し合いの当然の成り行きにトゥーラは一人、納得して頷いた。

 

「あのさあ。オレ、ふけていい?」

 

 頭をかきつつ大きな欠伸をしたエタンダールがのんびりと挙手して言う。任務につく弟子の選出方法についての話し合いに入ろうとしていたその場はざわめきに包まれた。

 

「オレ、自分の弟子を出す気ねえしよ。下らねえ戦いはてめえらでやれや」

 

 低い声で言ってエタンダールが傾けていた椅子を戻す。足を机から下ろしたエタンダールは当り前の顔で席を立とうとした。

 

「ま、待ってください、エタンダール殿! それでは他の塔に示しが」

「うるせえなあ」

 

 慌てた声を上げた書記官を嫌そうに見ながらエタンダールが顔をしかめる。そこでトゥーラは我慢ならなくなって口を開いた。

 

「自信がないんですね? ご自分の弟子が任務に失敗することを恐れているとか」

 

 厭味を飛ばしたトゥーラをエタンダールが不機嫌な面持ちで見る。ざわめいていた室内はぴたりと静まり返った。

 

「先ほど書記官の方が仰っていたではありませんか。この会議で決定されたことは王宮の決議です。まさか国王に逆らうとでも?」

 

 一度、堰を切ったトゥーラの言葉は止まらなかった。それでなくても隣で行儀の悪い真似をされ続けていて相当に腹が立っていたこともある。すらすらと言ったトゥーラをしばし呆気に取られたように見てからエタンダールは意味ありげな笑いを浮かべた。

 

「ほーん。なかなか度胸のあるお嬢ちゃんだな。おい、ゼクー。この嬢ちゃんと組ませるならうちの弟子を一人だけ貸してやるぜ」

 

 笑い混じりに言ったエタンダールが首を伸ばしてトゥーラの隣のゼクーを伺う。そこでトゥーラははっと我に返った。いつの間にか室内は静まり返っており、集まっている魔道士や弟子だけではなく書記官までこちらに注目している。そのことに気付いたトゥーラは真っ青になった。

 

「……エタンダール殿は戦いには参加しない主義では?」

 

 苦りきった顔でゼクーが答える。トゥーラははらはらしながら両隣に腰掛けている二人を交互に見た。エタンダールはにやにやと嫌な笑い方をしているし、ゼクーは渋い顔をしている。そしてそんな二人に挟まれたトゥーラをその場にいる皆が注目しているのだ。

 

 言うんじゃなかった。そう後悔しつつもトゥーラは更に言葉を継いだ。

 

「構わないじゃありませんか。決議に逆らって国賊として裁かれるより、よほど建設的です。わたしは一向に構いません」

 

 きっぱりと言い切ってトゥーラはつん、とそっぽを向いた。いい度胸だ、と笑うエタンダールにトゥーラは言い返した。

 

「くれぐれも無能な者を寄越さないでくださいね。わたしも足を引っ張られるのはごめんですから」

 

 その場に集まっていた魔道士たちが蒼白になっていることにトゥーラは全く気付かなかった。一人、焦ったように書記官が手を振って何とかトゥーラを止めようと試みている。だが怒っていたトゥーラには書記官の姿すら見えていなかった。

 

「よし、決まりだ! じゃ、オレはとっとと戻って弟子連れてくらあ。じじい、この嬢ちゃん以外のヤツ選んだら承知しねえぞ」

 

 豪快に笑ってエタンダールが立ち上がる。トゥーラはお待ちしてます、と挑戦的に言ってエタンダールを睨みつけた。うはは、と楽しそうに笑ったエタンダールが何を考えているのか、大会議室の窓に向かう。出口はそっちでは、という消極的な書記官の声を無視してエタンダールは窓枠に足をかけた。

 

「ちょっと!」

 

 トゥーラは真っ青になって立ち上がった。大会議室に集まった面々が唖然と見守る中、エタンダールはひらりと窓の外に身を躍らせた。悲鳴を上げたトゥーラを余所にエタンダールが笑いながらどこかに向かって飛んでいく。ここは確か建物の三階、と呟いてトゥーラはその場にへたり込んだ。




エタンダールの行動がめちゃくちゃな件w
まあ、トゥーラから見るとめちゃくちゃでしかないんですよね~。

あ、そうそう。

ヒロインの名前はトゥーリじゃないよ★
トゥーラだよ!w
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