ぶっ飛んだ新人ども+αで行くクリスタルクロニクル 作:大罪司教
この村、実は相当変である。
半島の最南端にしてi最果ての場所にあるというクリスタルの在り場所。
それがこのティパの村。他の集落と違うのは 、4つの種族が揃って生活しているところだ。
クラヴァット、セルキー、リルティ、ユーク。
それぞれが暮らしているのだが。
ーーーーーウヴォォアァアアアアアアアアッ!!
「おーおー、まぁた鍛冶屋んトコのボウズが朝っぱらから滅多切りにされとるわ」
「またなんかやらかしたか。毎度懲りねぇのかねぇアイツは。まぁあそこの母親も大概だけどよぉ」
「まったくだ。ーーーー農家のトコの
鶏よりも先に鍛冶屋の息子が
今日は村の若者にとっての特別な日。クリスタルキャラバンが事情により一度帰ってくるというのだ。その為村長の家で一度話し合いが行われ、3人の村の若者が呼び出されている。
その一人こそが…………。
「起きてキアラン、ねぇキアラン!」
「ん…………エリンか。おはよう」
「おはようキアラン。おばさんが朝食出来たって」
「先にくってりゃいいのに、オレはまだ眠い……」
「ダメだよ。今日は大切な日でしょう?」
「大切な……? あぁそうだった、な」
静かな寝室に二人のクラヴァットの男女。
長い髪を先端で束ね、羽根をあしらったバンダナを被るようにお洒落をしている彼女は『エリン』。そして今まさに起きようとしているやや目付きの悪い、クラヴァットにしてはかなりガタイのいいむぞうさヘアーの彼の名は『キアラン』。
二人は幼馴染みで、今回キャラバンの件で村長に呼び出されている。
「じゃあ下で待ってるからね」
「あいよー」
エリンとは長い付き合いで、家の裁縫屋のこともあるのに、こうして朝には必ずキアランの家へ赴いては朝食の手伝いなどしているのだ。
キアランは服を整えると姉と両親、そしてエリンのいるリビングまで眠そうに降りていく。
「あらあらぁ、おねぼうさんがやぁっと起きたわぁ」
「姉さん、おはよう」
「はぁい。おはよぉ~」
キアランの姉、シャーレイ。
3年前はキャラバンの一員として外の世界を歩き回っていたそうだが、今ではもうそれは叶わない。
ダンジョン攻略の途中で彼女の右足、膝から下を失ってしまったのだ。
義足と杖をつきながら自分に出来る仕事を日々こなしているのだが、キアランには当時の記憶がよみがえるようでいつも重く映る。
傷付いて帰ってきたキャラバンと、満身創痍の姿の当時の姉の姿を。
今日に限って酷く鮮明に脳裏に宿る。キャラバンのことで話し合いが行われるという日にだ。
「キアラン、今日は村長の家に行くんでしょう。じゃあさっさと食べちないな」
母親にさとされ、キアランは腰かけるとスプーンに手を伸ばしスープに口をつける。穏やかな朝食の時間が流れようとしたときだった。
「ハァイ隠れマッスルブラザー、エリン、そしておはようおじさんおばさんシャーレイさん。ちょいとかくまってくれ。ついでにそのハムをくれると最高だ」
突然家に入り込んできた鉄の仮面を被ったリルティ。
彼もまたキアランの幼馴染みにして鍛冶屋の息子の『テット=ストローク』だ。
因みに本人はテットとは呼ばれたがらず、ストロークという名で呼んで欲しがっている。
このふざけた口調で話すリルティの登場に慣れているかのような対応で、微笑みながらハムを渡す両親。
「誰が隠れマッスルだ。オレの筋肉は隠れてなんかいない。いや、そんなことはどうでもいい。またかストローク。これで何度目だ!父さんも母さんも一々渡さなくていいんだよ!」
「あら、いいじゃない。賑やかでとっても楽しいわ」
「そうだな。あぁストローク、ついでに魚もどうかな?」
「燻製は大歓迎。ウチのオカンも見習って欲しいもんだ」
「父さんもいいって。……で、ストローク。今度はなにやらかした?」
テットの家庭に限った話ではないが、この村の住人は色々と奇人変人の類が多い。
特に彼の家はかなり特殊で最早戦場と化している。
「なにやらかしただと!?ふざけんな!いっつも俺ちゃんが諸悪の根源だと思うな!」
(自分が諸悪の根源っていうのは認めてたんだ……)
「じゃあなにやらかしたんだ」
「よく聞いてくれたブラザー。実はな…………オフクロのゲテモノサラダ、あまりの不味さに窓から捨てちまった」
「よし、死んで来い。」
「待て待て待てタンマッ! タンマァッ!」
キアランがストロークを摘まみだそうとすると、外から怒鳴り声が聞こえてきた。
「こらテット! キアランのとこにいるってことはわかってんだ!今日という今日は許さないよ!」
「うるせぇオフクロ! メシマズでも越えちゃならねぇ一線越えたサラダに一体どんだけ愛着持ってんだ! その愛着をちったぁ息子に向けろ! あとテットって呼ぶな」
「黙れドラ息子! 出てこい! ぶっ殺してやる!!」
ストロークの母親は包丁とハンマーを持って鬼のような形相を浮かべている。
窓から様子を見たキアランは溜め息交じりに外へ出て仲裁をした。割と日常でもある。
「おやキアラン。いつもいつもすまないねぇウチのバカ息子が。安心しな。すぐにそっ首叩き落としてやるから」
「いやいいって。あんなんでもオレのダチだ。あとぶっ殺すのはもうやめてくれ」
「なんでさ」
「……いずれオレが引導を渡してやるからさ」
「なるほど」
「オォイ! てめっ…キアラン! その台詞忘れんなよ!」
「まぁまぁ……」
キアランなりの場の納め方に腹を立ててキーキー喚くストロークをなだめるエリン。
賑やかな朝の光景を見ながらキアランの両親はほほえましく朝食をとっていた。
なぜかストロークも加わった朝食の時間も賑やかなものとなり、キアランのストレスはマッハに加速していく。
とは言ってもこうして3人集まったのは丁度いい。このメンバーこそ、村長によって選出された若者なのだから。
「ごちそうさまおばさん。洗い物手伝います」
「あらいいのよエリン。今日は村長の家に行くんでしょう?」
「え、でもまだ時間がありますし……」
「ここは大丈夫よ。2人についてあげて、ね?」
父親はすでに仕事へ向かった。農家の仕事は早い。今日でも大分遅めくらいだ。エリンは言われるまま早速取っ組み合いを始めている2人をなだめて村長宅へと向かうことに。
「気を付けてねぇ。私も行ってあげたいけど、お仕事があるからぁ」
「ありがとうございますシャーレイさん。行ってきます」
行き掛けもまた穏やかではなかった。
錬金術師のユークの家ではぶつぶつと呪詛のようなものが外まで聞こえ、商人の家のクラヴァットの小さな子供2人がやれ金利やら物価やらの言葉を使い大人顔負けの内容で無邪気に話し合い、漁師のセルキーの旦那は浮気がばれて水車に縛り付けられて水攻めを受けていた。
「相変わらずこの村は朝からやかましいな」
「ふふふ、それだけ皆頑張ってるってことだよ」
「俺ちゃんも頑張ってるけど朝っぱらから背中ザクザク切られちまった。昨日だけで4回もやられたってのに…あーもう」
「前から思ってたけど、これまで散々殺されかけてお前よく生きてるよな」
「錬金術師の家と親交があるみたいでなウチ。よく色んな素材や薬品をもらったりするんだ。ーーーーなぁ、俺ちゃんもしかして知らない間に改造手術受けてる?」
「そ、それはいくらなんでもないんじゃないかな」
「だといいけどなぁ。そういやこの前、ほら、錬金術師の息子のファルコンっているだろ?アイツの部屋に潜り込んでサ、不思議な液体っていうの?珍しくうまそうな匂いしたから飲んでみたんだ」
「盗みじゃねぇか何やってんだお前。で、どうかしたのか?」
「夢をみた。俺は台に寝かされてて、俺を覗き込むようにファルコンのいがいがヘルムがこっちをみてた。あと周りにも何人かユークが」
「あぁもういい。言うなやめろ」
ためいき混じりにキアランは話を無理矢理切った。
ストロークと話しているとこっちまで頭がおかしくなりそうだ。現にストロークはイカれてしまっている。ここ最近はかなり輪をかけて不明瞭な発言も目立つようになった。家庭環境もあるのだろうが、元々の性格もかなり酷かった為、こうして彼と対等に話せる他人はキアランやエリンくらいだろう(エリンは若干苦手そうだが)
「さぁ、そろそろ村長のところにつくぞ。…………前みたいなことするなよストローク」
「俺ちゃん何かしたっけ?」
「上座に座った堂々とな」
「常識にとらわれるなブラザー。そんな人生つまらんぜ?」
「狂うのは勝手だが節度は持てバカ」
「ま、まぁまぁ2人共。さぁ入ろう。村長さんも待ってるし」
3人は中へと入った。
キアラン:クラヴァット♂・むぞうさ
エリン:クラヴァット♀・ろんぐ
ストローク:リルティ♂・てつかめん