竜鐘のガーゴイル   作:凍り灯

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「いつかまた暗闇に、小さな火たちが現れるのだろうか」
「私たちが望んだ世界なんだ…だけど―――、私はその中で見届ける義務がある」
「またその時までお別れだ―――」

――――――たちの会話、????の言葉より







怪物たちの宴

"青銅のガーゴイルと戦う上で最も厄介なことは何か"

 

"自在に飛べること"

"長大な斧槍(ふそう)のリーチ"

"尻尾の斧による隙をカバーする攻撃"

"火を噴くことによる範囲攻撃"

 

聞けば聞く程厄介に聞こえるが、実は銀騎士殿が二人いれば悠々対処できるというのが現実である。

所々に見られる青銅の()()部分はともかく、石の身体は意外にもそこまで硬くはないからというのが一つだ。

 

我々はソウルを注ぎ込むことで創り出された"魔法生物"というものだが、一応は"生物"である以上動く上で全身が石のように硬いままでは動きようもない。

被造物と言っても、多くを生物から模倣するように設計されているのだから同じような"柔軟"さがなければいけないのだ。

 

なので教会の上で"石像"として動きを止めている間は石の硬さを持ってはいるが、いざ動く時になれば身体は軟化する。

それにより鳥のように羽ばたくこともできれば、竜のように尾による攻撃も可能となり、人のように武器をも扱えるのだ。

代わりに見た目よりは硬さを失ってはいるので(だとしても結構硬い)銀騎士殿の剣ならば十分刃が通る。

 

とはいえ、それでもまだ厄介な存在に聞こえる…が、パワーバランスは銀騎士殿二人分、もしくは手練れや王の近衛の俗称デーモン討伐隊の騎士殿らであれば一人で十分対処されてしまう程度。

アノール・ロンドの騎士殿の練度が高水準ということもある。

が、生物の良いとこ取りを実現したような我々がこうなってしまっている理由は既にわかっている。

主な原因は二つ。

 

一つは"重さ"だ。

 

内包するソウル量に対して身体の重さが吊り合っていないのだ。

本来ソウルが多ければ筋力が増えるわけでもないが、魔法生物たる我々は自然の摂理から外れている存在なので、これがあながち間違いでもない。

例えるならば使い慣れた鎧より重い鎧を身に着けて動く感じだろうか。いや、着たことないからわかんないけど。

つまり重量過多。

 

軟化しようともその重量まで変化するわけではない。

初動が遅くなってしまったり、攻撃後の隙も大きくなったりする。

しかしこれは強みでもある。

その質量をもってしても羽ばたき飛ぶことができ、長いリーチの斧槍から繰り出される重い一撃は脅威だ。

()()の存在であればどうしようもないだろう。

 

…やはり厄介な存在に聞こえる。

 

ではもう一つの方といこう。

この"重さ"による強みを十全に活かせない原因でもある。

 

………"頭"である。

 

考える"頭"がないのだ…

つまり馬鹿。()無し、石頭。(物理)

 

そりゃそうだ、我々は被造物。

 

決まったプログラム(手順)でしか()()動けないのだ。

そこにはどうしても"パターン"が生まれてしまい、()()()()の存在であれば長く重い一撃もその直線的でわかりやすい攻撃故に見切られる。

後は観察されて後出しじゃんけんからの最期はグーである。

 

飛べてもその後の行動も決まっており、臨機応変に"宙"という空間を活かした変則的な攻撃があまりできない。

斧槍の攻撃も力任せに振り回し制圧する仕様なので"長柄武器の完成形"と言われる多彩な攻撃方法もしない。(もっともこれはそこまで要求する場面を想定していないからなのだが)

尾も主に懐に入り込まれた時の対策と姿勢制御として機能しているが、"先端に斧がついた尾がある利点"を活かしきれていない。

火吹きは…いや、これは私も訓練で使うわけにもいかないので修練が足りていないのだ。特に何もないです。

 

取り合えず()()()()とやり合うには臨機応変に行動するための考える頭が必要だということだ。

 

公爵様が作る被造物であれば思考が可能らしいのだが私はグウィンドリン様製。

これは劣っているというわけではない。

グウィンドリン様はこうおっしゃった。

 

「思考力を最低限にし、その上で私自身のソウルも分け与えることで制御や管理を容易にして扱いやすくしているのだ…よいか、決して真似できないわけではないのだぞ?ちゃんと返事をしないか」

 

…劣っていないのだ、決して。

 

そもそも我々はあくまで都市内の警備や先程の弱点を補うために()()で戦うことを前提とされているので実際は"頭"がなくても全く問題がない。

 

じゃぁ何でこんな事言いだしたの?反抗期?と言われそうだがそういうわけではなく…先程のはあくまで()()()青銅のガーゴイルのことでしかない。

 

逆に言えば、考えて動けるならば性能を十分に引き出せるスペックがこの身体にはあるかもしれないということだ。

 

 

ではそういう私は?というと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アノール・ロンドの訓練場。

本城から見て裏手に位置する5m程の高さの低い白亜の城壁が三方を囲む空間。

正方形上の形をしており、広さは幅が30m程度といったところだろうか。

 

こうした場は多く存在しており、ここはその中でももっとも城の外周に近い位置にあるようだ。

ただ何もない空間があるわけではなく、市街地戦などでの障害物も想定されていたのか城壁と比べると不愛想な灰色の石の壁が規則的に並べられている。

壁はせいぜい2m程度の高さなので神族の騎士では身を隠すにも少し屈まなければいけない高さだろう。

 

しかし今この壁の合間を縫って走る存在には十分な遮蔽物として機能していた。

 

訓練場の荒れた剥き出しの土を蹴り素早く壁と壁の陰へと滑り込むその存在は灰色の毛並みを持つ狼。

四騎士の一人、"銀狼のアルトリウス"の戦友であるシフだ。

 

彼の立派な牙のある口元にはシフにとっての"牙"である()()が咥えられている。

所謂ロングソードと呼ばれる刀剣だが、通常のものより幅広の刃を持ち、また長い。

少なくともその刃長だけで120㎝はあるだろう。

鍔競(つばせ)り合いや、突きによる手(口)の滑りを想定していないのか鍔は短く切り落とされており、代わりに牙で咥えやすいようにか凹凸が目立つ柄の造りになっている。

 

一見、頭部付近に重く長い鉄の塊があるために取り回しが悪そうに見える。

だがシフはそれを自身の身体の一部のように自然な身体の動きができるまでに修練を積んでいた。

 

しかし現状、この瞬間はその研ぎ澄まされた牙にも焦りが見えた。

 

壁の陰から飛び出した瞬間、木製の棒がシフに向けて突き出される。

 

―――さっきまで飛んでいたのにっ!いつのまに…!―――

 

辛うじて地面に飛び込むように身を低くして直進することで僅か頭上を通り過ぎさせることに成功した。

すぐ耳元で空気を突き貫く音を聞き冷や汗をかくも、構わずそのまま壁へと直進。

瞬時に2mある壁を登りながら突きを放った存在を視野に入れようと首を動かす。

 

…が、その瞬間、考える間もなく反射的に壁の上に掛けた前足で思いっきり宙へ飛んだ。

その跳躍は壁の上から飛んだとはいえ10mにも届きそうな程の大跳躍。

 

しかしそれだというのに今度は腹の下を風を薙ぐ音が通過する。

心臓が思わず飛び跳ねる。

 

―――ぎりぎりっ!着地後そのまま駆け抜けて…―――

 

宙を舞いながら次の行動を組み立て、落下しつつも視線を相手へちらりと向けるも地上に見えない。

気が付けば自身に向けて大上段の構えで訓練用の木製の棒を振りかぶるベルリオーズが上から迫っていた。

 

なんでもうそんなところまで、と思った頃には既に向こうはこちらを射程内に入れていた。

 

地面までの距離はまだある。

 

迎撃は…この体制では不可能。

 

―――間に合わっ!?―――

 

そのまま勢いよく振り下ろされたかと思われた棒に優しく押され、着地と同時にべたぁと四肢を広げた状態で押さえ込まれた。

 

「グァウ」

はい。一本。

 

「ワフゥ…」

参りました…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クゥゥン…」最後の流れは一体何したんですかベルさん…

「グゴゥ」必勝パターンというやつかな。

 

流れとしてはこうだ。

壁の合間を縫いながら隙を伺い攻撃を仕掛けるシフを基本的に宙を飛びながら対処する。

それにより頭をとりながら上空から仕留めるつもりなのだと誤認させる。

低い壁が並ぶ場所のため、地上に降りたところで素早く自身より小さなシフに翻弄されるのは目に見えてるからだ…という考えがさらにこの認識を強固にさせただろう。

 

しかし壁を有効利用できるのは私も同じ、シフもまた、私が地上に降りれば壁によって僅かな時間私を見失うのだ。

 

私の身体は大きな翼や尾のせいで誤認されがちだが、よくとる前傾姿勢の時は3mにも届かない高さだ。

翼を畳んで身を低くすれば2m以下に収めることは可能なのだ。

私が壁の陰に隠れられるという考えがないシフは上空ばかり警戒するために、シフの視線が途切れた合間に素早く地上に降りた私を一瞬見失った。

私はと言うと片膝を立てながら頭から飛び込む様に姿勢を低くして棒を構えていた。

 

「ワオン?」それでもこちらとの距離はそれなりにあったと思うんですけど?

「グワゥ」勿論、理由がある。

 

この後、前に踏み出すと同時に尾を自身の背中に叩き込むように振り上げたのだ。

前傾姿勢のため尾は前方への体重移動を大きく助け、結果として普段以上の大きな踏み込みによって文字通りシフの意表を突いたのだ。

 

しかしシフはこれを紙一重で回避し、前方に立つ壁へと一心に向かう。

この時既に所謂対シフ用の"必勝パターン"の一つに持ち込んでいた。

 

壁に向かうからにはそれを利用して瞬時に壁を蹴り反転、私を迎撃する可能性が高いだろうと思っていたため、振り上げた尾を思いっきり地面へと打ち付けると同時に地面を蹴る。

尾を打ち付けた時の衝撃の反動を使い素早く飛び上がり、片手で棒の端を持ってシフが登った壁すれすれを通る軌道で頭上へ掲げる様に振り上げた。

 

シフの予想を超えた速度でもって追撃を行うことができたが、結果としてシフはこれをも回避した。

 

「ワゥゥン…」直感であの状態(壁を登る最中)から最も距離を取れる方法を選択したのに、掠めた時は本当に肝が冷えましたよ…

 

普通に跳躍しただけではこの時点で当たっていただろうに、凄まじい勘だ。

 

しかし彼が回避のために繰り出した大跳躍に追いつく程のリーチを実現した。

訓練用の木製の棒の、2mもない長さでこれなのだから本来の得物ならばさらに伸びただろう。

 

後はそのままの勢いを維持したまま彼の後ろを飛び越した後、振り上げた棒を両手に持ち直して振り下ろして着地前に撃破判定をとったのだ。

 

「グルルゥ…」しかし動きの緩急が恐ろしいですね…比較的型に沿った動き…かと思ったら急に大きく踏み込んできますし。

「ゴグァゥ」尾の先の斧が重いおかげで重心移動に使えるからな。といっても油断すると自身も振り回されるから難しいんだけど…

 

今回は特に訓練用の斧槍だったために余計にそれが顕著だった。

軽すぎてバランスをとるのが難しくなるのだ。

 

武器を失った際、または違う武器を使わざるを得ない時のために普段より軽くて短い得物を試せたのは良かったと思う。

シフの安全のためでもあるしね。

 

ちなみにシフは刃引きした剣は使っていない。

私は"ペル"のようなものだからね。

 

※ペルは剣術練習用の"柱"のこと。

 

「ワオン…」まだまだ修行不足ですね………それであの…ずっと気になっていたんですが…あれは?

「ゴゥゥ…」あー…

 

シフが目線で指したものは訓練場の奥、破損から使わなくなった鎧を被せて人体を模した訓練用のペル…があったと思われる残骸。

 

(ペル)はへし折れ、そこから遠くに転げ落ちている鎧は胸のあたりを正面からバリスタでも受けたかのように大きくひしゃげ、胸から背中まで通すようにぽっかりと大穴が空いている。

 

そこから視線を上げれば柱の真っ直ぐ後ろの壁に一本の大槍が刺さっていた。

いや、あれは矢なのだ。

半ばまで大槍と見違えるような矢が刺さっている壁は矢受け用にと私が用意したもの。

もう少し威力があれば城壁まで届いていたかもしれないと冷や汗をかいたものだ。

 

「…ワオゥ」…槍投げでもしたんですか?

「グォァゥ…」いや…実は前々からゴー殿からたまに弓を教えて貰っていたんだが…この前(わたし)用にと大弓を頂いて…

 

事の発端は"小ロンドの惨劇"にある。

あの時、銀騎士殿も幾名かが命を落としている。

そうならないために私の様な被造物が前へ出るべきだと思っていたのだが、後方での支援を命じられ、言いようのない罪悪感があったのだ。

 

それを見抜いたゴー殿がわざわざ用意してくれたのだ。

弓があるからといって実際にその時使っていいかと言われるとそんなことはないのだが、ゴー殿なりの激励だというのは理解している。頭が上がらない。

 

飾り気のない、素朴な体格にあった大弓。

ただ、私の外見に合わせたのか青銅の装飾が少しだけ施されていた。

 

ゴー殿の大弓程ではないが、彼の部隊の運用する"竜狩りの大弓"より二回りは大きい。

威力は推して知るべし…というか見たとおりである。

 

「ワフン…」それでテンション上がって射ってみれば…

「グゥン」この通り

思ったより威力があったのだ。

 

後日、グウィンドリン様への報告で部隊に採用を検討してもらえるかと期待するも、私以外だとこれ以上やれることを増やすにはメモリ容量が足りないと言われてしまったのだが、これは置いておこう。

 

「ワゥゥン…」それで…その…今度はあっちはなんですが…

「ゴゥ」あぁ、そっちは私が呼んだ。

 

シフの視線の先、訓練場のまた違う一角の城壁の上にはやつらがいた。

 

大ガラスのじぃやとレッサーデーモンのフォードである。

つまりいつもの面子だ。

 

彼らには今回、シフが異形相手に一対多を行う場合の訓練を手伝ってもらうつもりだ。

小ロンドの件から対()()の対策を皆考案し始めているが、これもその一つである。

あくまで異形相手は予想の範疇でしかないのだが、最悪を想定されて私も以前より訓練に多く呼ばれるようになった。

翼や尾があることは十分異形と言えるもの。

 

この面子が集まったからなのかぞろぞろと銀騎士殿たちが見学しにやってきた。

ヨルシカ様の教会以外で集まるとたまにこうなるのだ。

 

「シフ撫でたい」

「あぁ、いいよなぁ」

「今度は何するんだ?」

「訓練場なんだから訓練だろう?」

「何言ってるかわからんがなんか癒されるよな」

「わかりみが深淵」

 

シフ()じぃや(カラス)はともかく、()フォード(デーモン)に癒されるとか正気ですか。

この人外集会はアニマル(モンスター)セラピーと言われたこともあるから、そういうことなのだろうけれど。

いつものことなので気にしても仕方がないから先へ進めよう。

 

私とシフはじぃやとフォードがいる城壁前まで歩みを進める。

 

「ワン」先輩方、お疲れ様です。

「グォゥ」じぃやとフォードもわざわざ申し訳ないです。

 

フォードは既に私と同じ訓練用の木製の棒を持って城壁に座っていた。

 

「ギィィ」おう。さっさと始めようぜ?揉んでやればいいんだよな?

「カァ」人の作法も形式も、我々には関係ないのだからな。遠慮なくやるとしよう。

「…ゴウゥ」…そうですね。では以前話した手筈通りに。

「クゥン…」もしかしてその様子だと、フォードさんとベルさん相手の1対2の訓練ですか…?

「ゴグゥ…グァゥ!」察しがいいな…と、言いたいところだが違う。1対3()だ………フォード!じぃや!シフにジェットストリームアタックを仕掛けますよ!

 

シフの前で突如、彼らは翼を広げて飛び上がった。

 

「ワォ」え

「ガァー」あの程度(ベルとのタイマン)では実力を測るには不十分か。いいだろう、私が相手になる。

「ワゥ」ちょ

「ギギィィ」騙して悪いが3人なんでな…死んでもらおう。

「ワ…」待っ

「グオゥン」侮るな、優秀な戦士と聞く。潰すぞ

「キャウン!?」じょ、冗談じゃ…潰すって、ベルさんあなたそんなキャラじゃないでしょう!?

 

言わなければいけない気がしたんだ。うん。

それに敵が手加減してくれるわけないからね。

 

臨戦態勢を整えた1羽と2体が空を飛ぶ中、シフは慌てて距離を大きく取り剣を構えた。

今度はちゃんと訓練用の木剣に咥え直している。

 

やべーこいつら全員飛べるんだったと顔を青ざめたシフは、人の作法も形式も関係ないと言ったくせに綺麗な縦列編隊で飛び込んでくる異形共を迎え撃たんと覚悟を決めた。

 

先頭に私、フォード、じぃやの順番で飛び込むも、一番後ろのじぃや(大ガラス)の翼が大きすぎて隠れ切れていない。

しかしその分プレッシャーだけは凄まじいと思う。

 

シフに狙いを定めるように地面すれすれを飛びながら鳴き声をあげて突貫する。

障害物の壁の合間を縫うように2()()はその速度を上げた。

 

「アタックパターンデルタだ」

「話題のコズミック・オペラの戦術だよな」

「まさか実際の戦いで見ることになるとは…」

「飛べるやつらで戦術を理解できる存在なんて限られてるものな」

 

銀騎士殿たちが(ざわ)めき始める…パクリはまずいと思って違う名前(ジェットストリームアタック)を付けたが駄目か!

あぁ、いや。彼らには何言ってるか(叫んだ技名)わからないんだった。

 

アタックパターンデルタとは、社会現象を起こしたとさえ言われる例のコズミック・オペラで使われた架空の戦術だ。

三体の劇場用に装飾されたガーゴイル(※グウィンドリン様提供)が一列に並び、先頭が攻撃を後ろにいかないように守りつつ敵の懐へ潜り込むという形で使われていた。

 

当然、空想上のものでしかないので、実際にどれ程有効かはわからない。

選んだ理由は悪乗りです。

 

…なんてことを迂闊にも思い出していれば、いつの間にかシフが目の前にいた…!?

このプレッシャーの前にシフは、なんと前に飛び込むという選択肢を選んだのだ!

思い切りがいい!

 

すぐさま木棒を袈裟斬りするように斜め右上より振り下ろすも、軌道を呼んでいたかのように私から見て左へと極僅かにステップ。

流れるように私の頭上へと跳躍し木剣を当てようとする。

 

…だが、その軌道だと後ろに続くフォードからの奇襲が直撃コースだ。

フォードは事前の段取りから、私の背後から飛び上がってシフの頭を抑える動きをするようにと決めていたのだ。

 

しかしここで一つ予想外のことが起こる。

 

「ワゥゥン!」失礼します!

 

シフは私に攻撃することなく、私の後頭部に足を掛けた。

そしてそのまま頭を踏み台に勢いよく前へと加速した!

 

「グゴゲェ!?」!?…俺を踏み台にしたぁ!?

 

思わず使ったこともない一人称が出てしまった。

しかしまずい!タイミングをずらされた!

 

シフはさっき私がやったことを早くも、しかもこの土壇場で実践へと投入したのだ。

シフが私の陰にいるフォードが見えないように、フォードもまたシフが見えていない。

 

それを逆手にとって()()()()()()()()()()()()()()()()のだ!

つまり、私はさっきの訓練で言う()役にされたということ。

 

尾の攻撃は…刃引きされていないのでさすがに危ない。

恐らくフォードは急激に加速したシフに対応できないだろう。

申し訳ないです、フォード。

 

「ギ?」あ?

「ワォ!」御免!

「ギデブゥゥ!?」あいたぁぁぁぁぁ!?

 

フォードは私の陰から飛び出した瞬間、何もする暇もなく木剣によってラリアットのように胴体を強打されて吹っ飛んでいった。

 

―――フォードは自身が勢いよく飛ばされる間、スローモーションのような感覚の中でシフの動きを理解する。

 

なんと豪胆な、なんと柔軟な…

 

「ギィ…」これが若さか…

 

―――しかしベルリオーズの戦術はこれで終わりではなかった。

 

「グォ!」じぃや!

 

さらにフォードを飛び越えての奇襲!

全員が飛べるからこその、頭を取り続けられる戦法だ。

 

特に猛禽類は頭上から爪による狩りを行う。

カラスがそれに当てはまるかはわからないが、恐らくあながち間違いでもないはず。

それを考慮しての配置だ。

 

シフはフォードへの攻撃で身体は前へと伸びきっている。

つまりその上にいるじぃやから見れば背中を晒している状態。

 

()った!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…?

 

 

 

 

………じぃや?

 

 

 

 

 

吹っ飛んだフォードを心配しつつも、シフが何事もなく着地し、油断なくこちらに相対する。

互いに位置関係が逆転した状態だ。

そして姿の見えない伏兵ことじぃやを探しているようだが…うん、私も探している。

 

あれ?

 

そこでシフの後ろ…私たちが通ってきた壁群の方が騒がしいことに気が付いた。

何事だろうか。

 

 

 

 

 

「カァカカカァ」ふっ、はははは 挟まっちまった!

 

とんだアクシデント(AC違い)だった。

私たちがシフに接近する途中、障害物の壁と壁の合間を縫って来たが、単純な話。彼には狭すぎたのだ。私でもぎりぎりだったもの。

結果は御覧の通りである。

 

回りでは城壁の上から降りてきた銀騎士殿たちが、どうしたもんかとうんうん悩んでいる。

 

「グゥゴ?」ちょっと…大丈夫なんですか?抜けられますか?じぃや。

「ガァー」うぅむ。自分の能力を過信しすぎたかもしれん。

 

反省してないで抜け出す方法考えましょうよ。

 

…どうしようか、これ。

 

 

 

 

 

この訓練は私たちの思惑と(シフ以外の)キャラクターが総崩れしたというだけの結果を残して終了することとなる。

 

ちなみに、結局片側の壁を壊すしか方法はないだろうとその場で結論が出され、私の大弓で撃ち抜き、壁を脆くした所を皆でハンマーで叩き壊して救出された。

 

じぃやは、真横の壁が大矢によって貫通する音と衝撃と風圧を感じて「中に入って以来、数世紀ぶりに命の危機を感じた」と語った。

…中?

 

あー…そういえばグゥインドリン様にこれも見られるんですよねぇ…

グウィンドリン様、あのコズミック・オペラの隠れファンなので気を悪くされなければいいのですけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~次の定時報告~

 

ベル「…」

グウィンドリン「…」

ベル「…」

グウィンドリン「…」ッス…

ベル「?」

グウィンドリン「I am your father」

ベル「nooooooooo!!!!」

 

トントン…

 

グウィンドリン「?…!?」

ベル「グゴォ!?」公爵様!?何故ここに!?

シース「I am your grand father」

グウィンドリン「nooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!!!」

シース「そこまで嫌がらんでも…」

 

 

 

 

 

と、いうことがあったかどうかは、誰にもわからない。

 

 

 






バーが赤く…なった…?
もう一度、よく考えろ!
この世で「(平均評価8.00)」を持つにふさわしい(小説)(どれ)か!?
ブチャラティ、「矢」を支配するに(赤いバーという重荷)は、貧弱な者()ではつとまらないッ!!

何でもないです。本当にありがとうございます。頑張ります。
これですぐ下がったら笑ってください。



主人公がかなり強く見えるかもしれませんが、これでも今作の設定上ではデーモン討伐隊の銀騎士(黒騎士)よりも少し弱いくらいです。灰になる前はそれぐらいかなぁって。
つまり、残りカスとは言えそれでマラソンする不死の英雄はやばいんです。

蛇足ですが大弓を地上で使う時は尾をアンカー代わりにしたりします。
そして出番もあまりないです。


■補足
・「I am your father」
これだけでも知ってる人はいるはず。
・「I am your grand father」
そんな台詞はありません。

※人外たちのセリフ表記を前々回より変えました。
 括弧ばかりでちょっとどうかと思ったので。
 見辛さに関して意見あればよろしくお願いします。
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