―――??????の誓いより
100年である。
たった100年、されど100年。
どう捉えるかは個人次第ではあるけれど、少なくとも私たちにとって100年は短かった。
"―――不死とは使命の印である
その印あらわれし者は、不死院から太陽の王達の地にいたり、
目覚ましの鐘を鳴らし、不死の使命を知れ―――"
そう、不死人が現れたのだ。
それだけであれば、どれ程よかったのか…
「ベルリーズよ、報告せよ」
「ガゥア」
グウィンドリン様が私の報告…もとい、記憶を読む事を止めました。
一時的な話だけど。
曰く「他にも考えることが多すぎて、なまじ意志のあるお前の記憶を読み取ると情報量でパンクしそう」だそうだ。
おいたわしや…
まだ微妙に聞き取りづらい私の発声式意思疎通(?)の方がましだと言う。
「グゥオゥ」
では各地に放たれた、魔法生物調査隊による第398回目の調査報告をします。
私は各地に放たれた青銅のガーゴイルたちから集めた情報を口にする。
一つ一つ、グウィンドリン様との問答を交わして話を進めながらも、この100年に渡る調査に思いを馳せた。
―――まず、"火の炉"について。
100年前、火の炉の
その全てが火に晒され、溶け出しているために何があったかを現場からは判断しかねる程。
そして"火継ぎ"の儀を行ったグウィン王なのだが。
自らを薪に燃え続けているはずなのに。
いないはずがないのだ。
当時は大騒ぎだったのを今でも思い出す。
…だが、間もなくその所在が明らかになった。
"扉"を見つけたのだ。
―――火の炉は壁によって囲まれた場所。その壁はアノール・ロンドのように高いわけではないが、円形に囲われるように建築されていた。
理由は知らない。きっと意味があったのだと思う。今回の事を思うと特に。
その火の炉へと入るための入り口には立派な大扉があったのだ。
その"扉"が正に"入り口"になった。
囲う壁を境界線とし、
何度も調査をした。私たち魔法生物を含め、多くの者が確かめに足を運んだ。
だがやはりそうとしか形容出来ないのだ。
"扉"以外からは
そこはまだいい。不可解な事象であれど、確かにグウィン王はそこにいたのだから。
問題は彼の配下の騎士…今や"黒騎士"と恐れられている騎士たちのことだ。
かの騎士たちは何ゆえか"火継ぎ"に巻き込まれ、共に焼かれた。
皆それに関しては
調査のために"扉"を開けた所、彼らに襲われたのだ。
その時最も近場にいた魔法生物であるガーゴイルは瞬く間に制圧された。
運が良かったのは、最初に"扉"を開けると言うこともあり、四騎士の一人、アルトリウス殿が同伴していたということだろう。
彼の動揺、戦いながらも呼びかけ続ける様は痛々しかったが、そのおかげで被害は最小限に留まった。
"黒騎士"の動きが精彩を欠いていたのもあっただろう。なんとか私も捨て身で飛び込み、"扉"を閉めることには成功したのだ。
あれ以降、あの"扉"はこの100年で二度しか開けられていない。
どちらも四騎士であるアルトリウス殿、そしてオーンスタイン殿やゴー殿を同伴して万全を期した上で。
結果わかったことが、グウィン王が確かにそこで、その身を燃やし続けているということ。
そして黒騎士殿たちの中身が
彼らはどうして動けているのか、何をしようとしているのか。困惑が私たちを覆った。
それらの調査を買って出たのは
…それだけでも道徳的な問題等、一悶着あったりしたのだが諸々は割愛する。
何だか色々分かったみたいだけど、まず黒騎士殿たちはもはや
その鎧にソウルが"焼き付いた"、特殊な現象だそうだ…気分のいい話ではない。
もはや彼らは、彼らでなくなってしまったのだ。
そしてその技術を、公爵様は一部再現する形で確立させたらしい………色々とアウトである。自嘲してください公爵様。
…次に、さらに不可解なことについて。
"篝火"だ。
最初の発見者は…私。
明らかに不自然な位置に"篝火"があったのだ。
正確には火は消えていたのだけど。
その篝火だが、
波風立たないようにと発見者が私ということはグウィンドリン様によって秘匿されたが、そこに刺さっている"剣"が大問題中の大問題だった。
グウィン王が火継ぎを行うために使用した特別な剣、"螺旋の剣"と瓜二つの見た目だったからだ。
当時まだ"扉"の調査も途中で、グウィン王が中に存在していることが断定できなかったために色々と…本当に色々とてんわやんわ。
このあたりでグウィンドリン様はついに頭を抱えた。
私しか見えないものだから何度も「見間違いではないのか?」と聞かれた。記憶を読んでいたにも関わらず…おいたわしや…
ちなみに、後に公爵様も見えることがわかって余計に面倒なことになってた。
火の炉にあるはずの螺旋の剣の出現…しかも後の調査で複数発見―――我が主たる陰の太陽はついにその怒涛の状況に心労によって倒れ…ることはなかったが少しの間、足元の蛇殿らが地面に打ち萎れていた。べったりと。
けれどもそこから立て直しが早いのは流石でした。
「グォアォ」
ダークリングの現れた不死人にはやはり篝火が見えているようです。
「不死人にしか見えぬ篝火か…」
一応私と公爵様も。
「何か惹かれるものがあるのか…」
「グォウ」
そのようです。今度は
「その不死者は"亡者"手前であっのだろう…焼かれた後は変わらずか」
「グゥ…」
ええ、
篝火については不死人の方が遥かに理解しているだろう。
勿論こちらから報酬を用意することで話を聞いたり、王家が相手ということもあってかそれが使命のように語ってくれる不死人もいる。
だがどう運用してるかはわかっても、その根本の原理を理解している者は皆無だった。
"そういうものだからそうしている"
彼らにはいちいちそれを考える余裕はない。特に、この
それに、知っていたとしても喋らない者もいるだろう。
「…まだ答えを出すには足りんか、とは言え、公爵がいくらか掴んでいるだろうな」
そう言うとグウィンドリン様は小さく息を吐き出す。
足元より顔を覗かせる蛇殿たちは、苛ついたようにそれぞれが
グウィンドリン様は公爵様に対して、以前はもっと柔らかかった。
嫌っているような雰囲気でも、やはり身内としての情かあったのか…だが今は、ただただ公爵様に苛ついているようだ。
私はやはりたまに会っているが、私の前ではさして以前より違いはない。勿論、友でもあったグウィン王が火の炉に旅立った後の落ち込みは目も当てられなかったけれど。
"シース白竜公は火に当てられて狂ったのだ"
そんな気分の悪い噂が、アノールロンドに漂っている。
私にはまだ、確信なんて持てなかった。
不穏な空気が満ちる太陽の都市、"暗月の霊廟"たるこの場は、そんな中でも柔らかい日差しが差し込み、私の青銅の装飾を鈍く反射させている。
眉間を頭冠越しに抑えていたグウィンドリン様は、私に続きを促す。
「では次だ。地殻変動の件はどうなっている」
「グガゥァ」
はい。やはり少しづつ…火の炉の方角へと動いているようです。
「まるでそこが世界の中心とでも言うようだ。あながち、間違ってはいないのであろう」
「グォゥ…」
はい…アノール・ロンドも、やはり
―――グウィン王の"火継ぎ"の儀が終わった数年。
最初は全く、誰も気付けなかった。
いや、気付いたとしても気のせいかと思うようにゆっくりと、だが確実に事態は進んでいたのだ。
"地殻変動"という言葉を使用してはいるが、そう言ってしまうにはあまりに自然に、地響きすらなく火の炉を中心とするように
火の炉は低地に作られていた。
そこに元々近場にあった廃都、"小ロンド"が覆いかぶさり、今やどうなっているかは伺い知れない。
唯一"扉"へと続く道だけは、この"地"の動きによって閉ざされないようにフラムト殿が対策を施した。
火の炉は最早
最後に"扉"を開けた時にも、変わらずその時はもう見えるはずのない
次の火継ぎは出来る。それだけが、唯一の希望だった。
一体何が起こっているのか、その答えは未だに誰も持っていない。
ただ一つわかることは、"火継ぎ"を境に全てが狂いだしたということだけだった。
声こそ上がっていないが、心の中で疑問を浮かべる者もいる。
"王は間違っていたのではないか"、と。
世界の蛇であるフラムト殿は既に英雄が来たる日を待つため、"扉"を前に眠りについた。
火継ぎを推奨した一人である"コルウス"なる人物は姿を現さない。
だから誰もその正統性、真意を語れなかったのだ。
神々の都市離れは増え続け、人々も壁外の城下町へと移りつつある。
世の人々は気が付かないだろう。
だけど確かに、アノール・ロンドは斜陽にあった。
「よろしい。最早我々で打てる手も少ない、だが引き続き調査の目を途絶えさせるな。集う地があまりに
「ゴゥ」
肝に銘じます。
「次だ」
「グァゥ」
はい。不死の試練の現況になりますが―――
―――もう一つ、始まったことがある。
もう気付いているだろう。"不死の試練"だ。
だから私含め、我々は"青銅のガーゴイル"改め、"鐘のガーゴイル"と呼称を変えることになった。
"鐘のガーゴイル"は"試練の鐘楼"を訪れる不死人の相手以外にも役割がある。
言わば実働部隊。
アノールロンドに配置されるのは新しい"真鍮のガーゴイル"のみとなり、その他、
アノール・ロンド内に限れば正に世代交代であり、一種の寂しさを感じる。
と言っても、かなりの数の
そう言うこともあって、"試練の鐘楼"とグウィンドリン様やヨルシカ様の
最早アノール・ロンド内部で
定期メンテナンスを受ける個体を除けば。
…ちなみに"教会の鐘守"はあくまで暗月の剣である私が警
しかしこれでも150年くらいは"教会の鐘守"だったのだ。
被造物なれど。名を惜しむ心もあると言うもの。
果たしてそれを察せられたのか、新しく警邏隊として就く真鍮のガーゴイル部隊に名を引き継がれることになった。
グウィンドリン様、ありがとうございます。
そして精進してくれよ、後輩たちよ。名に恥じぬように。
え?装飾を
ヨルシカ様が「あのピカピカの装飾はちょっと…」と言っていたのでこのままで済んでる節はありますよね。
グウィンドリン様はそれを聞いて地味にショックを受けてた。
さて、当然鐘のガーゴイルたる私は、使命を果たさんと鐘を鳴らしにやってくる不死と戦っている…のを見ている。
私は当初の予定通り監視となり、石像の振りをして一部始終を見させてもらっているのだ。
世代を跨いで言い伝えられている"使命"のおかげで、不死を誉れと思う者も多いようで、見るからに"栄誉ある騎士"と言った出で立ちの不死人なども訪れた。
ある者は従者を引き連れ、ある者は声高に自らの名を名乗り、そしてある者はぼろきれのような衣服を纏って。
そして一切が死んでゆくのだ。
幾人かが鐘のガーゴイルを打倒し"目覚ましの鐘"を鳴らしていったが、未だにアノール・ロンドに辿り着いた者はいない。
………これ大丈夫なんですよね…?
敷居を高く設定しすぎなのでは…でも確かに、グウィン王の跡を継ぐと考えれば妥当な気もして…
わ、わからない…
北の不死院にもデーモンを雇ったって言ってたし…こういうものなのだろう…きっと…多分。
―――私は、やはりどこかこの"
それは指先に刺さった棘のように、命令に従っていればよいはずのこの身を蝕む。
わからない…だって火を継がなければグウィンドリン様も、ヨルシカ様もどうなるかわからない。その
未知は興味の…違う、違う。何を言っているのだ。未知は恐怖だ。公爵様じゃぁあるまいし。
先の見えない展望を、私は見たくないのだろう。
そうやって犠牲になるおびただしい量の不死に目を背ける。失いたくないが故に。だから、これでいいはずなのだ。
フィリアノール様もシラ様も、ミディールも、そのために遥か先に旅立った。
きっと
人を導いてやると、誰が頼んだのでもないのに。
それでも人々は
私は…失いたくない。失うわけにはいかない。それだけはしてはならないのだ。何としてでも。
プリシラ様とも約束したではないか。
あぁだから、だから早く出てきておくれ、英雄よ。
それが残酷だと知って、私は無責任に望む。
人を、かの
「―――ゴグア」
"試練"の状況は以上になります―――ですが一つ気になったことが。教会でのガーゴイルとの戦闘の際、例の白く光る人間を連れた不死人がいたことはお話ししたと思うのですが。
「"霊体"か。火継ぎの影響か…特に火の炉に近いここでは次元のズレを越える術が人の間では生まれていたな」
「ゴァ」
はい。それが…今度は金色の霊体を見まして…
「…金色?」
「ガゥ」
はい。
「今までの白霊とは違う"何か"があったか?」
「グォゥ」
そう言えば…こう、身体をYの字に伸ばしてました。
私は許しを得てからそのポーズを取る。
霊廟に差し込む日差しとその大きな翼も合わさり、無駄に神々しかったとグウィンドリン様は後に語った。
「Yの字」
「グァ」
はい、こうなのです。
「…何故だろうか…頭に
グウィンドリン様は再び眉間を頭冠越しに抑える。
何かやってしまったのだろうか…私は。
「…報告ご苦労。今は気にしなくても良いだろう。引き続き行動を監視、霊体にそれぞれ特徴がないか探せ」
「グァ」
はい。漏らすことなく、ヨルシカ様に記録を付けていただきます。
「では戻れ…ヨルシカには無理をするなとだけは伝えよ」
「ググゥ…」
グウィンドリン様も無理はなさらずに…
「…それは面倒なことがこれ以上起きなければな…」
しかし厄介ごととは重なるもので―――
「グゴゴゥゥ…」
グウィンドリン様…下層の目覚ましの鐘なのですが…
「…」
「グオゥゥ…」
やはりイザリスの魔女の一人、クラーグに乗っ取られたようです…はい…
「…」
「…」
「………………放置しろ」
「ゴゥ?」
はい?
「そうだな、むしろ好都合だ。うむ、不足はなかろう。そうだな、今までは少々手緩い気がしていたのだ」
「グ、グガァ…?」
グ、グウィンドリン様…?
「次だ…何だ、問題なかろう?そうだな、せっかくだから礼として贈り物でも贈ってやろう。公爵が作ったあの結晶トカゲなるものでも放ってやれ、大量にな。綺麗だからな。ついでに"混沌"で凶悪になる個体が生まれるやもしれん。噛みつかれてしまえばいいのに」
「グゴグゥゥウ…」
グウィンドリン様…おいたわしや………
「グオゥ」
ということがあったのですがヨルシカ様。
「…蛇と蜘蛛が交わったら何が産まれるのでしょうか…」
「ゴガァ!?」
ヨルシカ様!?春が来たとかじゃぁないですよ!?
お気に入り数が100を越えました!皆さまありがとうございます!
これからもゆったりとやってきますので、ガーゴイル君と愉快な主たちをよろしくお願いします。
それとベル君はボスエリアでたくさん並んでるガーゴイルの石像になり切ってますので、間違っても探して攻撃しないように。
以下補足です。
■篝火について
最初期の篝火についての独自設定です。作中そこまで掘り下げないのでここに。
篝火って不死人しか見えないけど変な所にあったり、でも作る術も作中で不明で、でも火防女という火を守る人々もいる…火の燃え方も明らかに他の炎と差異がある………
今作では物語の構成上、矛盾は出るでしょうが「グウィンによる大火力の最初の"火継ぎ"によって各地に飛び散った最初の火の欠片」としました。マヌス的な感じで。
あくまで二次創作。考察作品ではないので悪しからず。
ちなみに今作では大まか二種の篝火を設定しています。
先程の最初の火の欠片と、もう一つは人為的に作られたものです。公爵様が頑張ってるのできっと時代が進めば圧倒的に後者の方が多いでしょうね。灰が現れるまでは。
■地殻変動について
ゲームの都合上もあるとは思うのですがどう考えても「それぞれの主要な地点が近過ぎね?」となったので今回のダクソ3設定。もしそうだったら面白いなって思ったのもありますね。
実際ダクソ3の"様々な土地が流れ着く"はあくまで"時間の流れ"だとは思いますけど、今回言葉のままとして使いました。なのでどちらかというと"吹き溜まり"ですね。
■エスト瓶と火防女について
エスト瓶は存在します。
だけど火防女がいないというのが現状です。ゲーム本編からしたら縛りだらけの時代です。まだ各巡礼地も場所が離れてますから。
■前回の炎のデーモンについて
前回よくわからん炎のデーモン的なサムシングが登場してますが、私が一番推す考察は「デーモンは"何か"が混沌の炎によって変質した生き物」です。
つまりあれは一応は無から生物が産まれたのではなく、グウィンのソウルとぶつかり合ったことで、グウィンのソウルが変質して生まれた生物ということでした。
カッコいい言い回しをしたいからって説明してませんでした。すまぬ。
■混沌の魔女クラ―グ
不死人が増え病み村の原型が出来た結果、蜘蛛姫様が行動しました。なので姉貴も動きました。
(イザリスが
■結晶トカゲ
大樹のうつろに大量にいた理由ってもしかして…