竜鐘のガーゴイル   作:凍り灯

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闇は砕かれ、欠片は散った。
それは既に遠い過去の物語。

深淵を歩いた英雄は、狼と石の魔物を従えて人の化物を狩ったという。

そんなおとぎ話が、この絵本には描かれてあった。





『心臓を持たない巨人』 - 下 -

 

 

「ここに」

「ゴガ」

 

騎士アルトリウスの身体を横たえる。

霊廟(れいびょう)の中央、その篝火の横へ。

 

キアラン殿はこの篝火が見えていない。見えているのは誤射の不死…フロイド殿と私だけだ。

私には深淵に濡れそぼった暗い銀色の鎧が、見えない炎に照らされて僅かにオレンジ色を帯びて見えている。あぁ、彼も少しは温かく感じてくれているだろうか?そうであることを願う。

 

キアラン殿は横たわったアルトリウス殿の身体の傍で祈る。立ち上がり振り向いた彼女は、やはりどこか疲れた様な雰囲気をまとわせていた。

 

「すまない、世話をかけるな」

「…恨んでいないのか?」

 

フロイド殿のその言葉に、キアラン殿が答える。

 

「いいのさ。覚悟は出来ていた…出来ていたはずだった…あぁ……‥だがもう、終わってしまったんだ。であれば誇りだけは守らねばならない」

「誓って。彼の誇りを取り戻すために全力を尽くそう」

「すまない…まずは市街へ戻る。それと後はゴーのことか…」

「ゴー?四騎士の"鷹の目"がここに?」

「そうだ。だが、市街のあの様子では恐らくゴーも…」

「ゴグァ!」

 

そこで私はゴー殿を見つけたことを知らせる。翻訳はエリザベス殿。

すいませんとても助かります。何分、意思疎通が永遠の課題ゆえ…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴー…!無事で何よりだ」

「貴公こそだ。牢まで降りたのだろう?だがその様子だと踏み込み過ぎなかったようだな………キアラン、アルトリウスのことは―――」

「いいんだゴー。今は、それを悲しむ時ではない」

 

フロイド殿が市街に隠された鍵を見つけ出し、こうして再びゴー殿とキアラン殿は再開した。

 

「しかし、ゴー…おまえ、もしや…」

 

喜びもつかの間、キアラン殿が何かを口ごもり―――それをゴー殿が手の平で制した。

…?なんだろうか?

 

「いや、そうだな。それは後でいい」

 

しかしすぐさまキアラン殿もゴー殿もすぐに目の前の問題へと意識を切り替える。

ゴー殿は覗き穴の潰された兜をフロイド殿へと向けた。

 

「貴公がアルトリウスを開放してくれた御人かな」

「…殺すしかなかった…それを責めてくれても構わない」

「私にそれは出来ない。ああするしかなかったことはキアラン同様、よく理解している。だから、古い友の誇りを守ってくれたこと、例を言わねばなるまい―――貴公に感謝する」

 

地面に垂直に立てた赤柄のハルバードを片手で支えるフロイド殿は慎重に答えるも、ゴー殿は感謝の意を表した。

表情は見えないが、なんとなく納得しきれてない所を見ると真面目な人間らしい。

 

「それよりも、だ」

 

フロイド殿は咳ばらいを一つ。

 

「私はどちらにせよエリザベスとの"約束"がある、だから進むことに問題はない。アノール・ロンドからの支援を得られるのはありがたいが…」

 

彼の視線は私たちへと向けられる。

言葉を区切ったが、その先に続く言葉は私も分かった。"闇に耐えられるのか?"、と言うことだろう。

 

「アルトリウスの言葉が正しいのであれば()()()()()()なのだろう?…」

 

そうだ。

人間でなければ、不死人でなければ深淵に抗えないことは明白…キアラン殿はどうするつもりなのだろう?

現状私は最低限の役目を果たしてはいるが、予断を許されないこの状況、どう動くべきか…

 

「貴公、安心してくれ。こちらにも手はあるのだ」

 

そうゆったりと言い切ったゴー殿の首は横にいる私へと向けられた。

キアラン殿もこちらを見ている。

それに釣られてフロイド殿もこちらを見た。

 

 

…ん??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一度敵として戦ったというのに…こんな場所で手を取り合うことになるとはな…」

 

私はその言葉の意味を、"試練の鐘楼(不死教会)"で戦った鐘のガーゴイルのことだと思い気にしていなかった。()()()()()を知るのはまだ先の事。

 

緩やかに傾いた市街を下り、徘徊(はいかい)する頭部が肥大化した異形の息の根を止めていく。

フロイド殿の手腕は見事なもので、赤柄のハルバードを手足のように扱い異形を(ほふ)っている。時には魔術師を弓で撃ち抜き、時にはショートソードで狭い通路に対応していた。

 

「なぁ、ベルリオーズだったか?一つ無粋な質問をいいだろうか」

「グォア?」

 

そんな時だ。

フロイド殿は私に何か聞きたいことがあるらしい。

 

「どうして鷹の目は兜の覗き穴を潰しているんだ?」

 

あぁ、うぅん、気になるよね。しかも本人に聞いていいかどうか迷ってしまうのもわかる。

 

この答えは言ってはいけないわけではなく、それどころかゴー殿自身が気にしていないことを知っているため、私は身振り手振りでそれを伝えることにした。

 

両手を頭へ。

兜を取る仕草。

目元に手でバツ印を作る。

 

「兜を取る、目が、見えない…?もしやああなる前から見えてなかった?」

 

フロイド殿の言葉に私は頷く。

そう、ゴー殿はそもそも病で目が見えていなくなってしまっていた。少なくとも私はそう聞いている。

でなければ兜の覗き穴をそのままにするようなことを、こんな時代に誰もさせないだろう。

多分部下のロスヴァイセ殿が黙っていないだろうし…いや、実際にあの時の怒りようはすごかったけど。

 

下手人もそれを知っているからこそ、(あざけ)りを込めて潰し、ゴー殿はそれを受け入れた。竜のいない世界に自身の価値を感じ得なかったから。

フロイド殿はそれを聞いて(うな)る。

 

「いかな騎士であろうとも身内から裏切られることもあるのは神の国でも同じことか…」

 

実感のこもったような言葉に、彼もまた不死人となったせいでかなりの苦労をしたのだろうと察する。

 

その言葉に続きはない。ウーラシールの市街の元住民、頭部が肥大した異形の人型が襲いかかろうとしていたからだ。

数は三、まだフロイド殿の間合いには距離はある。

 

私は人よりも大きな一歩で踏み出し、青銅のハルバードを水平に二度薙ぎ払ってその三体を始末した。

 

「相変わらず勇ましい一撃だ、同系統の武器を使う物としても見習わなければ」

 

いや、これはこの体重と体躯(たいく)と武器のリーチを使った力技なので見習わない方がいいと思うけど…

多彩な攻撃ができることが売りのポールウェポンなんですからね?本当は。あぁでも、異形だらけの今の時代だとこれが正しいのかなぁ。

 

市街である以上、私はフロイド殿と一緒に陸路で動くのには限度がある。

なので基本的には彼の頭上、建物の屋上や空中を飛んで周囲を警戒し、主に大弓で撃ち抜く方針に変わっていくのは自然なことだった。

 

建物に入ってしまえば私は結構どうしようもないのでその時は彼が死なないことを信じて待つ。アルトリウス殿に勝ったのだ、その実力を疑いはしなかった。

 

異形の肥大した頭部を大矢で爆散させ、厄介な闇の魔術を行使する魔術師のささくれだった頭部を爆散させ、フロイド殿がその威力にドン引きしつつも「頼りになる」と賞賛してくれたことを嬉しく思いながらも進めば、キアラン殿が教えてくれた地下牢へと続くらしい昇降機への通路へと辿り着く。

 

その前に出てきた巨大な槍とフレイルに足を生やしたような異形もいたけど大矢二本で串刺しにした後、フロイド殿がとどめを刺した。銀騎士殿が扱うよりもやや大きいサイズの大弓での一撃を一発耐えられたことに私は驚き、気を引き締める。

 

串刺しにされた異形を尻目にフロイド殿が言う。

 

「ここから先は別ルートで行く必要があるか」

「ゴァッ」

 

私は(うなず)く。

とてもではないが私の体躯では通れそうもない通路だ。無理やりいけなくもないが、ずっとこの通路が続くと何もできないし邪魔だ。

 

「ベルリオーズは穴から地下牢まで降りられるか探してみてくれ。私は開けた場所を探して目印を置いておこう。取り決め通り、お前がしばらく来なければ私はそのまま進む…深淵は神の国の存在の身を特に(むしば)むらしいから無理はするな」

 

深淵にやられ、敵になれば厄介だ。

フロイド殿が言うまでもなく、それだけは避けねばならない。もどかしいことに、その予兆があれば待つしかないのだ、ゴー殿とキアラン殿のように。

 

「よし、行こう。生きて会おう」

「グォオゥ」

 

私に"生きて"というのも変ですが、フロイド殿もお気をつけて。

(きびす)を返した私の耳に、フロイド殿が「うぉぅ!?」と驚く声が聞こえてくる…大丈夫ですよね??

…そうだと思いたい。でなければ、皆この闇に呑まれてしまうのだ。

 

深淵に浸食されたことで、酸に溶かされたようにいくつも開いた大穴の底を見下ろす。

 

ここを降りたら、もう無事に帰れる保証はない。いや、おそらく帰れる可能性の方が低い。

私にはそんな恐怖はない…はずなのに、はずだったのに。この暗い暗い闇が、恐ろしい。何故なのだ、こんなものはあるべきではない、

私たちはシステムだ、或いは剣だ、或いは盾だ。

神々の、人々の安泰(あんたい)のため"物"であり、だからこそ揺ぎ無い石の"人形"であるべきなのだ。何度もした自問自答は呪いのように脳裏にこびりついている。

何より、"暗月の剣"たる私は神の敵を狩らねばならない。

…だと言うのに、あぁ、グウィンドリン様やヨルシカ様に言えるわけがない…押し寄せる恐怖の中に、どこか懐かしい暖かさを感じているなどと。

 

―――フロイド殿は、この闇に何を感じているのだろうか?―――

 

その感情を、己の使命と守るべき主たちの優しい思い出で封じ込める。

私は石の翼を広げて底の見えない暗がりへと飛び込んだ。神の敵の首を、断頭台に捧げるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暗いな」

 

先が見えないというよりは先が()()()()()()

あるはずなのにないように見えてしまうという不安が生まれてしまう。

下るための昇降機を自分の所まで上げたら一緒に異形まで登ってきて驚いてしまった、なんて無様も今は恥じる余裕はない。

 

一歩踏み出せばそこには何もなく、真っ逆さまに落ちてしまう。そう思ってしまうような不安だ。

地面はぼんやりと青白く見えるが確かにある…何度か踏んで確かめるが間違いはない。そうでもしなければ今にも呑まれてしまいそうだったのだ。

 

「行かなくては…」

 

赤柄のハルバードを肩に担ぎ、先ほど拾った木製の小盾を左手で構えた。咄嗟(とっさ)の使い捨てとしては役に立つだろうか。

地下牢の通路の両脇、内側から飛び出したかのように…いや、実際そうだったのだろう。ひしゃげた鉄格子の内側に異業が潜んでいないか警戒しながら進む。

 

「む」

 

篝火だ。

これを見れば少しだけ不安な気持ちも落ち付ける。

 

 

『…アルトリウスを火の近くに置いたままで大丈夫か?』

『篝火…?あぁそうか、そこにあるのだな、貴公』

『…?』

『見えぬのだ。あれは不死人にしかな…そこのベルリオーズという例外もいるがな』

 

 

ロードランには基本的に不死人しかいない。だから気付かなかったが、あれは本来不死人しか見えず、使えないものだと初めて知った。

そんな馬鹿な。そう思うと同時に納得もする。

篝火は思えば突拍子もない場所にあったりするのだ。建物の床に刺さっていることなんてざらだ。まるで風景画に後から違う画材で描き足したかのように不自然さ。

 

…篝火で休むのも良いがベルリオーズのおかげで消耗は少ない。

時間もないので先に進むことを優先し、私はその横を通り過ぎることにした。

 

そうすれば大きな闇が待っていた。

 

「これは…」

 

地下牢は最早跡形も無く、大きな洞窟(どうくつ)がそこにはあった。

いや、洞窟の天井まで―――今は暗がりが上へと続いてるのみだが―――伸びていたであろう長い柱がある。であればこれは元々こうだったのだろうか?それは今はどうでもいい。ベルリオーズのために目印を置かねば。

そう思って先へと目を向けた時、暗闇に浮かぶように"七色石"の光が(わず)かに見えるた。

 

「…!そうか、アルトリウスか」

 

先客がいた。となると(しるべ)を置いたのはアルトリウスだろう。あれを辿れば、この地獄を生み出した元凶へ辿り着ける…かもしれない。

 

「ふむ…」

 

革の腰袋(こしぶくろ)からじゃらりと小さな石を取り出す。それは七色石、アルトリウスが残したものと同じ石だ。

ベルリオーズも篝火が見えているというのならばここらに置いておいた方がいいだろう。もし私が死んでもここで合流できるということは理解出来るはずだ。

分かりやすいように幾つも石を残しておく。

ついでになんとなく石を規則的に並べたくなる。円だと分かりやすいか?置いただけの石の綺麗な円が崩れずに形を保っているということは最近来た誰かが置いた、という証拠にもなるはずだ。

 

…そこで私は少しばかり考え、円とは別の形を石で形作っていく。

 

「うむ、太陽は偉大なり、だ」

 

「Y」の字に並べた石を満足げに見て頷いた私は、下へ下へと下る坂道へと足を踏み出した。

 

 

―――後にベルはこれを見て「太陽賛美…太陽の長子…うっ頭が…」と頭を押さえることになるがそれはまぁどうでもいい話だ。

 

 

 

 

 

ゆらりゆらりと近づいてくる黒い影。ゆったりと近づいてくるそれを、ただ見ているはずもない。

私はハルバードを振り回し、それを露散させていく。

手応えは驚く程に小さいが、消すことが出来ているのだから問題はない。

 

―――まるで「人間性」のようだ―――

 

稀に人の遺体に見られる、黒い"何か"。

不死人は時にそれを奪い合う…何故か?()()()()()()()()だ。それが何かは分からなくとも、亡者となるのを防ぐことが出来る、それだけで不死人にとっては殺してでも欲しい物なのだろう。

 

―――哀れなことだ―――

 

死によって亡者となるのならば、死によって人間性を喪失しているということになる。

失った者を求めて、または失うことを恐れての不死同士の殺し合いになんの意味があるのか。それを私が言った所で、最早何の説得力もないのかもしれないが。

 

一体人間性とは何なのだろうか?

そんな疑問も、戦っていればすぐさま忘れてしまう。

 

と、そこで私は踏み出した足に地面の感触が無かったことに一瞬遅れて気が付く。

地面はある、あったのだが、それは幻のようにするりと消えてしまったのだ。

 

「なっ…!?」

 

…そして数メートルの落下を難なく着地した。

それは不思議なことで、本来これだけの重量を背負っている以上、無事で済むはずがなかったのだが、どういうわけか階段を一段降りるかのようにストッ、と着地出来たのだ。

 

急ぎ周囲を警戒するも、まだ困惑と動揺は抑えきれていない。しかしそれを抑え付ける暇すら与えられず、落ちた通路の先、そこには霧をまとった白い猫がいた。

 

「…何なのだ一体」

 

見上げれば先程まで自分がいた場所から人間性のような何かがその白い点のような目を(のぞ)かせている。

…降りてはこないようだ。

 

よく見ると白猫は猫と言うには大きく、口が裂けており中々に凶悪な造形をしていた。が、敵意は見られない。

…しかし白い霧をまとっている。

「白い霧あるところに(ろく)なことは起こらない」と確信し始めている私は(ベルリオーズの誤射のせい)出来れば関わりたくないのだが、白猫はくるりと(きびす)を返すと背を向けて歩き出す。

 

のしり、と猫とは思えない大きな体格と風格の白猫はしばらく歩けばこちらを振り返り、じっと待っていた。

 

誘導しているのか?

ついて行くか…?

罠かもしれない。

だが、それでも―――

 

「鬼が出るか蛇が出るか」

 

私はそう呟き、白猫の後を追う。

 

死は恐ろしい。

不死人となった今でも、いや今だからこそ恐れるべきものと思っている。

 

それでも()()を逃せば見つけられたはずの何か(未知)と、そのチャンスと二度と出会えないかもしれない。

それは()()()()じゃないか。

 

―――あぁ全く、こんな時に何て考えをするのか私は。だがそれが、後の自分のためになった時は多いのだ―――

 

(さが)は変えられない。

だがそれが、決して悪い事だけじゃないことも良く知っていた。

 

「…その壁か?」

 

やがて猫は洞窟の壁際へと辿り着き、その壁を前に霧のように消えてしまった。私の言葉に小さく頷いて。

 

私はその壁を触る。

そうすると目の前の壁の一部は姿を徐々に薄くしていき、消えてしまう。

見えない壁だ。これは意図的に誰かが"何か"を隠したということ。白猫はそれを見つけて欲しかったのか。

 

「…罠ではない、か…?」

 

わざわざ隠されたものを見つけさせる理由などそうあるまい。

…断定出来ないのが困ったところなのだが、可能性は低いだろう。意を決してその先へと歩みを進めた。

 

 

―――そこにいたのは狼だった。

 

血濡れの剣を(くわ)えた、灰色の狼が光り輝く結界の中で倒れていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く世話のかかる狼だよ。猫の気まぐれに感謝するんだね、シフ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワオォォォォォォン…!」

 

 

結界の周囲にたむろしていた人間性のような何かを消し払えば光の結界は役目を終えたと言うかのようにその輝きを失った。

残されたのは大剣を咥えた狼と深淵に濡れた大盾のみ。

先程、結界と同じ光を発していた所を見るに、この盾こそが結界の(かなめ)だったのかもしれない。

 

 

狼はその直後に目を開け、立ち上がり、遠吠えを上げたのだ。

 

 

深淵のせいなのかその遠吠えは反響することなく、けれども確かに私の耳には悲し気な、弔いの響きを持っていたように感じる。

 

剣を見ればわかる。

 

この狼は、アルトリウスの忘れ形見なのだ。キアランの言っていた"シフ"とは彼の事だろう。間違いなく、ここに来てよかったと感じる。アルトリウスを殺したことを、気にしてないわけではないのだから。

 

シフは私を見上げた。

いや、違う、もっと上を見ている…あぁそうか、彼が来たのか。

 

「グォゥッ!」

「ワォゥッ…!」

 

それはとても奇妙なものに見える。

 

翼を羽ばたかせて降り立った鐘のガーゴイル…もといベルリオーズが全身で喜びを表しながら狼を見る。

狼のシフは駈け寄り、嬉しそうな感情を乗せてひと吠え。

 

「ワフ…」

「ゴグァ」

「ワオン!?」

「ゴガ!」

「ワオン…」

「グォウ」

「ワオッ!」

「グガゥゥゥ…」

「バウバウ!」

「グァゥ!」

「ワオウ!!」

「………」

 

いや何言ってるか全然わからんな。

 

私を置いてきぼりにしたまま会話…?をしている彼らはそうやってしばらく意思疎通を続け、それが終われば私の横へと回り込み、ベルリオーズは石の指で進行方向をべしりと指差した。

 

「ゴガ」

「ワフ」

 

お供が増えましたぜ、行きましょうや。

そういうことらしい。

 

オスカーや白霊と協力したことはあったが、流石にガーゴイルと狼という組み合わせは経験したことは無い。きっとこれからも中々あるまい。

彼らはアノール・ロンドの戦士、絵物語のような構図だが、私にとっては頼もしい限りだった。

 

私たち一人と一匹と一体はアルトリウスの残した七色石を追う。

シフにも、ベルリオーズにも深淵による悪影響はまだ見られないが、急がなくてはいけない。それが時間の問題の可能性がある以上、無駄な時間はどこにもない。私はここで死んでいる余裕などないのだ。

チャンスは一度、後はない。そう思い込み、底へ底へと降りていく。

 

深淵の底、倒れた柱を伝って降りた先にそれはあった。

 

()だ。

 

霧の壁があった。

それを見てシフは困惑の表情を浮かべ、ベルリオーズは呼吸を整えるようにハルバードを握り直している。

 

「シフ…でいいな?」

 

シフは頷く。

 

「ベルリオーズとシフは移動中も何事か話していたが…この先にいる元凶のことについてか」

 

ベルリオーズは頷く。

私はその内容を知ることは出来ない。一度ゴーの元に戻ればいいのだろうが、戻るまでの道は長い、それに一度戻ってしまえばシフの疲労や深淵の浸食のことを考えればはもう彼が挑むことは難しくなる。

 

―――それが一番いいのかもしれない。

生き延びることは、未来に繋ぐことだ。

 

しかし私は選択肢を与えなかった。

全員が精鋭であれば数の利はあまりに大きい。非情だが、私は戦い打ち勝つことを優先する。

…言わずとも、その気でしかないという気迫をシフから感じるわけだが。

 

"やつの首でもって英雄の雪辱を晴らす"、そう言っている様にも見える。

 

「私は内容を言語で共有できない、身振りだけだ。戦闘中ならばさらに困難だろう…今、何か伝えられることはあるか?」

 

ベルリオーズは身振りで説明をする。

 

「得物…杖?魔術師ということか?腕…左腕か。左腕が何だ?…左腕の攻撃が主か。何?伸びる?」

 

大雑把な内容を理解した私は装備の状態を見直し、霧へと歩みを進める。

何度もハルバードの赤い柄を握り直し、深呼吸をする。後はもう、ただ戦うだけ。緊張しないわけがない。死ねるからといって、何度も死ぬのは御免被(ごめんこうむ)る。肝に銘じろ、チャンスは一度、一度で十分。やらなければアルトリウスの忘れ形見を失う。やるしかないのだ。

 

伸ばした左手で触れ、次に足を踏み出し、全身に軽い抵抗感を感じながらいつも通り私はこの霧を通り抜けた。

 

 

 

 

 

そして私は自分を過去へと引きずり込んだ黒い腕の正体を知った。

 

 

 

 

 

 

黒い腕に捕まれ、落とされる。

 

抵抗。動かすことのできる左腕をで左腰のショートソードを掴み、真上に手を突き上げる動作で抜き放ちながら黒い腕を切る。

怯んだところをさらにショートソードを逆手持ちのまま杭を打ち付けるように黒い手に突き刺した。たまらず手を放された私は青白い地面を目の端で捉えた瞬間、ハルバードとショートソードを一度手放し、身体を丸め、転がりながら着地した。

遅れてショートソードとハルバードが地面に突き刺さり、次いで両隣にベルリオーズとシフが着地する。素早く武器を回収した私は暗がりを(にら)みつけながらショートソードを(さや)に納めた。

 

ゆったりと、深淵の奥から現れた異形の存在を確認した瞬間、私たちは迷わず動き出した。

"深淵の主"との戦いが始まる。

 

 

 

 

 

今回の戦いの要は間違いなくシフだ。

 

深淵の主の動きを知っている唯一の存在。

それに合わせる必要があるというのは、語らずとも理解している。

 

正面に私が居座り、シフが周りを駆け回る。ベルリオーズは深淵の主の手であっても届きそうで届かない低空を飛び、大弓を構えた。囲んだままそれぞれが武器を繰り出す。

 

しかし深淵の主は私のハルバードの振り下ろし、シフの背後からの大剣での薙ぎ払い、ベルリオーズの頭上からの大矢をその幾つもある赤い目で見切っていた。

 

両手を地面につけた直後、四肢の力でもって大きく跳躍。ベルリオーズに腕が届く距離まで飛び上がった。

 

大矢は地面をえぐり、ハルバードは足先を切ったのみ、大剣は当たる対象をなくしたせいかシフの身体を振り回して体勢を崩してしまう。

 

しかしベルリオーズに深淵の主が伸ばした左腕は当たらない。

咄嗟に彼は大弓の反動を殺さないことで背面へと宙返りしつつも後退、その回転の勢いのまま尻尾の先についている斧を遠心力を利用して振り上げる、が、これは左腕を僅かに掠るだけに留まる。

 

空中を一回転したベルリオーズは正面に向き直った瞬間すかさず弓に矢を(つが)え、落ちていく深淵の主に狙いを定めた…それは、深淵の主が右手に持つ大杖を構えたのと同時だった。

 

―――まずいっ!!

 

()()をベルリオーズに当ててはいけない。

そう直感した私は振り下ろしたハルバードを、刃を地面に刺したまま手放し、右手でショートソードを引き抜いて一瞬の躊躇(ちゅうちょ)なく渾身の力でもって投げ飛ばす。

 

それは有効打にならなかったが、深淵の主の杖の向きをほんの少しずらした。

 

矢が放たれ、禍々(まがまが)しい大杖から闇魔法が溢れだす。

大矢は胴体へと突き刺さり、闇は辛うじてベルリオーズの脇を通り過ぎたが、その際に大弓の弦が断ち切られてしまった。

 

ベルリオーズがすぐさま大弓を放り投げ、背中のハルバードへと手を伸ばす。

それよりも先に深淵の主が着地する場所へと私とシフが回り込んだ。

 

シフは正面、役割は攪乱(かくらん)。狼の身体の構造上、落下する深淵の主に咥えた大剣を走らせるのは無理がある。深淵の主の意識の分散と誘導をするために最も攻撃が当たりやすい危険な場所へと位置取った。

 

しかしこれに対して深淵の主は迷わず私を狙う。

私がやつの着地と同時にハルバードを突き刺したからだろう。

 

シフを無視し着地後反転、その肥大化した左腕で周囲を薙ぎ払いながら振り向いたのだ。

 

深淵の主が着地した瞬間、その背中へとハルバードの穂先を深々と突き刺していた私は体の振り向きに合わせて持っていかれそうになるハルバードを硬く握りしめ、力に逆らわずに合わせる。

途中で手を放してしまうものの、振り向きざまの薙ぎ払いは当たらず、私は深淵の主が振り向いた方向へと引きずられるように地面を滑り、その後転がって勢いを殺した。

 

深淵の主が苛ついたように(うな)り声をあげる。

 

私はこの瞬間は無手、腰に(くく)りつけた小盾とショートボウのみしか武器はなく、ベルリオーズは大弓を失った。

 

「ヴァオンッッ!!!」

 

ゴー手製の大矢は胴体に深く突き刺さっている。私のハルバードは既に深淵の主の背中から抜け、地面を滑ってシフの近くにあったが、シフがそのハルバードを私の方へと蹴り飛ばし、直後に疾走。頭上から巨大なハルバードによって急襲を狙うベルリオーズに意識を向けないために大きくひと吠えして側面から接近した。

 

深淵の主はそれに反射的に振り向いてしまう。

 

ベルリオーズへ意識が向いていないのは確かだ。見失っている。

それでもどこから来るか分からないベルリオーズを警戒していたためか、その場から瞬時に飛び退いてハルバードの攻撃を躱してしまった。

 

結果、私たちは意図せず深淵の主の正面へと集まる。

 

 

そしてやつは杖を構えていた。

闇魔法が来る。

 

 

「グゴァッ!」

「ワオッ…!」

 

短い彼らのやりとり。

ベルリオーズに待ったをかけられ、私とベルリオーズはシフの背後へと回る形になった。

 

そして闇魔法が壁となって押し寄せる。

 

「…!!」

 

私は身構えるも、薄い光が周囲を包み込んだ瞬間に全てがあらぬ方向へと弾かれるではないか。

シフの首に巻き付けられていたのは"銀のペンダント"。それが何かはわからないが、闇魔法を弾くことが出来るアノール・ロンドの切り札なのだと理解する。

 

これにより深淵の主は今まで無視していたシフに初めて殺意を向けた。

 

「■■■■■■■■■■■■ッ!!!」

 

狂ったような叫び声と共に飛びかかり、振り下ろされた左腕。強烈な一撃をそれぞれが別方向に走り回避、敢えてシフは深淵の主の左側に回ることで左腕で確実に攻撃をさせるように誘い、それは成功。

 

深淵の主はシフを殴り飛ばそうと左腕を伸ばすも、素早い跳躍で射程圏外へ。だが深追いすることなく、すぐさま大杖は闇を帯び、私たちがいる背後を魔法で薙ぎ払った。

 

「グゥァッ!」

「っ!!」

 

ベルリオーズは飛ぶことで躱し、私は飛ぶことはできないが、魔法の隙間を間一髪でくぐり抜けることに成功した。魔法の狙いが粗いせいでどうにかなったが、しかしシフによってある程度近くまで移動させられていたハルバードを確保しようとした歩みは止まってしまう。

 

それを目(ざと)く確認した深淵の主は、攻撃方法のない私を今のうちに潰すために再度大杖を振り上げる。シフが足に一太刀入れたが、それを無視しての攻撃。

 

 

―――そして力を溜めて放たれた闇の飛沫(しぶき)が目の前を埋め尽くす。

 

 

「…ッッッッッッづぁッ!」

 

必死で後ろへと無様に転がればギリギリのところで当たらずに済む。

それで済んだのは私が落としたハルバード諸共狙われたからだ。刃は無事であったものの、赤い柄はバラバラになり、斧として扱うにも難しい状態となったのを見てしまう。

 

投げ飛ばしたショートソードは深淵の主を挟んで反対側。

 

視線を戻せばベルリオーズが地面へ降りて大立ち回りを始めていた。私に時間を与えるためだ。ベルリオーズが自身よりも一回り大きな巨体に正面から挑む。

大杖が鈍い風音とともに空を切り、ハルバードが鋭く風を切ってその肥大化した左腕を切り裂いた。

 

硬い。

 

返す刀で振られた大杖がベルリオーズの胴体へ直撃し、石の破片をばら()きながら吹き飛ばされる。

その身体を飛び越えたシフが大剣を深淵の主へと振り下ろした。

 

完璧に隙を突いた大剣の一撃は比較的柔らかい頭部を抉るも、それで止まる深淵の主ではない。左手が地面を()うようにシフの身体を掴む。

狼の悲鳴が短く響く。

アルトリウスの大剣が、その口から零れ落ちた。

 

私は深淵の主目掛けて走りながらショートボウを乱射。狙いはつけていないものの、その内一本は数多の赤い目玉の一つを偶然撃ち抜き、それに悲鳴を上げた深淵の主はシフを地面に叩きつけるように放り投げ、こちらへと暗闇に赤く光る星々を向けてきた。

 

シフはまだ動けまい。

ベルリオーズは生死不明。

私の手元には小さな弓と小さな盾のみしかない。

()()()前へ。

距離はまだある。

深淵の主とはおよそ10メートル、ほんの数歩でしかない距離。

ショートソードはさらにその先。

 

突き進む私の視界の中、深淵の大杖はこの戦いで最も大きな闇をまとった。

 

 

前へ。

 

 

踏み込みと同時に右手で、矢ではなく小盾を掴んで投げ飛ばす。

まだひどく遠い。

 

 

前へ。

 

 

闇魔法を放つ前に肥大化した左腕が動く。

まだ遠い。

 

 

前へ。

 

 

小盾が左腕に薙ぎ払われ、盾が粉々に破裂。ほぼ同時に闇魔法ではなく、その闇をまとったままの大杖が振り降ろされてきた。

魔法はブラフか!?

それを察知して右へ飛び退く。少し、遠のく。

 

 

前へ。

 

 

振り落とされた杖で砕かれた地面の破片が鎧の隙間を縫い、脇腹へ突き刺さる。

衝撃と、鎧を叩く破片が生み出した爆音と痛みを奥歯を噛み砕いて耐え、やつの横を通り過ぎるために足を前へ。耳鳴りが支配する世界の中、真っ直ぐ走れているかどうかすら、わからない。

その瞬間、足元の地面が暗く輝いた。

 

闇魔法だ。

ブラフではなかった!

元々叩きつけたと同時に魔法を地面に伝わらせ、広範囲を攻撃する気だったのか!

だが、あと少し…!

 

 

前へ。

 

 

届かない。

後少しだというのにッ!ほんの少しだというのに!!!

 

地面は暗い輝きを増し、それはどこまでも真っ暗な底の見えない穴のように黒く(よど)んだ。

 

間もなく、私はこれに呑まれて死ぬのだろうか―――そう諦めかけた時、私の目の前に"何か"が放り投げられる。

 

直後、地面からまるで滝がそのまま逆流したかのような闇の奔流(ほんりゅう)が私の足元から立ち昇った。

呑み込まれる直前、私はシフの隣で身体に大きな(ひび)を走らせ、這いずりながらもこちらに向かって何かを投げ終えた体勢をしているベルリオーズを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深淵の主はその昇る滝の行く末を見届けるように顔を真っ暗な天井へと向け絶叫する。

(おぞ)ましく、獣のような、それでも確かに人間の雄たけび。

 

奔流は天井にぶつかり、砕き、水が拡がるように暗く輝いた闇の魔法を広げながら岩肌を伝い、やがてその輝きを弱めていく。

 

深淵の主はすぐさま振り向く。

確実にベルリオーズとシフに止めを刺すため。

 

 

 

 

 

–––そして愚かにも足元を見なかった深淵の主の背中を()()渾身の一撃で刺し貫いた。

 

 

「ッッ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!?????」

 

 

歓喜の雄たけびを悲鳴に変えさせた私は、さらに強く()()を両手でねじ込む。最初にハルバードで刺した傷、そこ目掛けてひたすらに。

その足元には、砕け、役目を終えた銀のペンダント。あの時ベルリオーズが投げてよこしたものだ。

 

暴れる深淵の主に対して、罅だらけのベルリオーズが刺さったままだった大矢目掛けて飛びかかり、傷口を抉るために力をこめ、シフが私のショートソードで比較的に柔らかい首を下から突き刺した。

 

さらに激しく暴れる深淵の主。

確実に、この剣は命に届いている…!

 

満身創痍(まんしんそうい)の私はそれでもなんとか"アルトリウスの大剣"を持ってかれないように引き抜き、肩に担いだ。

銀のペンダントはあまりの魔法の威力に防ぎきれず砕けていた、それは私があの奔流の一部を受けてしまったということだ。きっとひどいあり様だろう。

 

鎧はどこも(ひしゃ)げ、血と闇でどす黒く染まっている。ヘルムはバイザーが吹き飛んだのか前が良く見える。だが良く見えるはずの視界は受けた魔法のせいで最早(かす)んで霧がかかったようだった。

 

深淵の主は組み付くベルリオーズを大杖で今度こそ砕こうとするも、シフがショートソードを放して指先を食い千切ることでそれを阻止する。そのまま暴れる深淵の主にベルリオーズもシフも必死にしがみ続けている。

 

 

…私は、暴れる深淵の主へと歩きだす。ふらついた歩みも一瞬のこと、歩幅はやがて大きくなり、その途中で荒れた地面をさらにぶち抜くつもりで大きく足踏みする。朧気(おぼろげ)でしかなかった痛みは強烈に全身を走り回り、意識を覚醒させた。

 

そして血反吐を吐き飛ばした後に私は姿勢を低くし、顔を突き出すように前へ前へと獣のように走り出すのだ。

 

 

 

 

 

―――ベルリオーズとシフをやっとの思いで引き剥がした"深淵の主マヌス"が、ゾワリと背筋を伝う悪寒に従って振り向いた時には全てがもう、遅かった。

 

マヌスは、視界を占める闇を縦に割った"鈍い銀色"が、自身の顔面に突き入れられていく感覚を受け入れるしかなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深淵の主が絶叫を上げ、もがき苦しむ。

溢れた闇が蒸気のように吹き上がり、それが終わるころには身体は(もろ)い石のように崩れて粉塵を舞い上げさせた―――後に残ったのは息を荒くして倒れた一人と一匹、そしてこれ以上砕けないようにと慎重にうつ伏せに寝そべった一体………そして(さら)われたウーラシールの姫君。

 

「…っァゥ、ハァっ…ハァ、フゥッ………ァ生きてるかッ…?」

「グォゥ………」

「クゥゥン………」

「スー、スー」

 

ぺしゃり…と罅の入った親指を立てたベルリオーズ。

シフは四肢を少しだけばたつかせ、ウーラシールの宵闇(よいやみ)は静かに寝息を立てていた。

 

 

終わったのだ。勝ったんだ。

 

 

体感時間の引き延ばされた戦いは恐ろしく長く感じられ、それが実際は数分も経っていないことを知っている。だというのに信じられないほどに疲れ切り、死が目前に迫っている。

 

私は掴んでいる感覚すら感じないままにエスト瓶を取り出し、顔に浴びせるように飲み干した。

そうしてなんとか動けるようになったタイミングで、身体に鞭を打って立ち上がる。

 

ここから宵闇と共に脱出する方法を模索するために、そして何より、アノール・ロンドの戦友と喜びを分かち合うために。

 

 

 

入り口を塞ぐ白い霧はそれを見届け満足したのか、白く明るい色を半透明に透かしながら輝きを失い…やがて見えなくなった。

 

 

 

 

 







いつも言ってしまっているのですが、長らくお待たせしました。
別の小説に浮気したり、仕事を止める止めないであーだこーだしてたと言い訳をしてみます。惨めなのでやめましょうか。

間が空いたので色々書いたものを見返してみたんですけど、なんか偶に変なテンションなってますよね作者…一体どんな精神状態で書いてるんでしょう…常識ないんでしょうね…
次回はウーラシール編のエピローグ…いつになるやら。

※ベルとフロイドが出ると「斧槍」と「ハルバード」でややこしいので今回はどちらも「ハルバード」で統一してます。
※誤字が結構あったので修正しました。


以下補足です。

■フロイド
マヌスを撃破。
短い戦闘は作者の好みのせい。武器交換はロマン。
足先に切り傷、ハルバードで背中を刺し、目を一つ矢で射抜き、大剣で背中の傷を抉り、最後に顔面を刺し貫いた。

※マヌスの赤く光る点は「肥大した頭部」曰くただのコブっぽいんですが、
→住民はマヌス由来の深淵に当てられたためにマヌスに似る
→無理やり模したので意味のない形だけの目、つまりコブができた
→つまりつまりマヌスの赤いあれは全部本物の目!
という解釈でやっております。

■ベルリオーズ
今までの人生で一番の大勝負。格差を即席の連携で(くつがえ)す。
誰が欠けても勝てなかった戦い。実際にマヌスとのタイマンでの勝率はゼロ。なんとか0.1ぐらいはあるかもしれない。
霧の外からの狙撃?そんなこと白い霧が許す訳ないだろ!作者は一度やった経験あり。
矢を胴体に一発、尾斧で腕に掠り傷、ハルバードで腕に切り傷…ベルくん戦績悪くない?実際に一番警戒されていた。身体大きいからね。

■シフ
雪辱を果たす。慣れない大剣も気合でカバーした。それまではシフ用のロングソードが獲物。
最後はショートソードに持ち替えた(咥え変えた?)ので的確に急所を狙えた。マヌスとのタイマンでの勝率は実はベルよりも高いがこれは相性の問題。ベルさんは的が大きすぎるのです。
足に切り傷、頭部を大剣で抉り、首を刺し貫いてる上に一番危険な囮薬を進んで務めている。誰か褒めてやってくれ。

■鷹の目ゴー
今作では兜がああなる前に目が見えなくなっていた設定に。
病気ではなく本当は"別の要因"で見えなくなった。
今回ウーラシールに先駆けとして入ったのは自身が最も先がないと知っていたから。
ベルリオーズに手製の大矢を与えて送り出した。

■王の刃キアラン
もう疲れてしまった。
ゴーの無事に喜んだが、同時にゴーの"何か"に気がついた。

■深淵の主マヌス
欲しかったものは手に入らない。
それでも一時の婚約とは言え、彼は幸せだったろうか。

■宵闇
その薬指には若草を思わせるような淡くも深くも見える緑色の指輪がはめられている。
小さな宝石は青く、美しい。
深淵の主がウーラシールの姫君に送った指輪。
決してそれは深淵を歩くための"契約"ではなかったのだ。

■白い猫
猫は気まぐれで、美しいものが好きで、グルメで、退屈が嫌い。





グウィン王の四騎士の一人
「鷹の目」ゴーの兜
騎士叙勲により授かった名誉の品
彼をただの巨人に貶めんとする者により
名高い「鷹の目」に用意されたはずの覗きは
樹脂により、すべて隙間なく潰されている
―――DS1 ゴーの兜


かつて騎士アルトリウスが
深淵の魔物と契約した証の指輪
アルトリウスと同じように
装備者は深淵を歩けるようになる
―――DS1 アルトリウスの契約





■おまけ:ベルとシフの会話

「グォゥッ!」無事だったか!
「ワォゥッ…!」ベルさん…!まさか来てもらえるとは…!

「ワフ…」すいません…アルトリウスが死んだのは自分が未熟だったせいです…何も出来ず、ただ足を引っ張るだけで…
「ゴグァ」シフ。今はそれを悔やむときじゃない、私たちはその敵討ちを取りに行くつもりなんだ。
「ワオン!?」な!?それは無茶です…!あんな化物に勝てるわけが!
「ゴガ!」大丈夫!そのための助っ人がいる。不死人のフロイド殿だ。不死であれば闇に足をとられることもない。
「ワオン…」ですがベルさん…だからと言って…?…ん?…この匂いは剣の血の匂いと同じ…もしや、彼はその…アルトリウスを止めてくれた…?
「グォウ」そうだシフ。彼はアルトリウスのためにも深淵の主を討ち取ると言ってくれた。
「ワオッ!」なんとっ!であれば憎きあの化物にこの剣を突き立てられるかもしれないとっ…!
「グガゥゥゥ…」シフ…決して無理はしないで欲しいのが本心だ。けれど今は戦力が欲しい。アノール・ロンドの騎士ではこの闇に耐えられないんだ…私たちがやるしかないんだ。
「バウバウ!」やります!やらせてください…!この無念を…この悲しみを…受け入れるしかないとしても、落とし前をつけなくてはいけないんです!もう逃げません!今、そう決めました!
「グァゥ!」ありがとうシフ…共に参ろうぞ!
「ワオウ!!」応!!
「………(何言ってるんだろう)」


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