天才漫画家のヒーローアカデミア   作:津々屋

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間に合いませんでした。すみません。
日常パートが特に苦手な上に8割以上を寝落ち寸前で書いていたので色々と拙いです。


第5話 親睦を深めよう

個性把握テストを終え、露伴達は教室に戻ってきていた。

相澤の言う通り、教室にはカリキュラムなどの書類が各席に一束ずつ、封筒と共に置かれている。

時間割であったり移動教室についてや各授業で必要な教材などが書かれた生徒向けの書類や、保護者へ向けた学費などに関する書類などがまとめられているらしい。

保護者へ向けた書類といえど、露伴は自分で確認する必要があるので、それにも軽く目を通しておく。両親は相変わらず海外出張だし、実質一人暮らしのようなもの。故に、全て自分でする必要があった。

保護者用の書類も重要なものが入っていないか、不備や黒板に書いてある枚数との相違がないかを確認し、露伴は書類を鞄へとしまった。

 

さて、これからどうするか。

授業が終わったのだから当然帰宅するべきではあるのだが、漫画のネタを掴む(記憶を読む)という目的は未だ果たされていない。

教室で無差別に本にするのは当然悪手だ。

いくらスタンド使い以外にヘブンズ・ドアーが見えないといっても、僅かだが例外はいる。そもそもヒーローを目指す人間の中にスタンド使いがいないとは限らない。

実行するのなら、人目のない場所やセキュリティの薄い場所についての把握ができてからだ。

そうでないと警戒されて、今後は本にするのが難しくなる。

今朝方校内を探索したようにスケッチするフリをして監視カメラなどの位置を把握するのも手だが、ここはクラスメイトと親睦を深める方が良いだろうと判断する。

本にする方法がどういうものにせよクラスメイトを誘導するという手順は必ず必要だ。セキュリティシステムに怯えながらネタを探るより、仲良くなって少人数で会話できるような状況が作れればそれに越したことはない。仲良くなれるのかは別として。

 

「やあ、上鳴電気……だっけ?確かさっき、ぼくの漫画のファンだと言っていたね」

 

目をつけたのは、今朝自己紹介中に話しかけてきた金髪の少年――――個性把握テスト中に上鳴と呼ばれていた彼だった。

話しかけても不自然でない話題があり、教室内やテスト中の待機時間の振る舞いから人との付き合い方が上手そうだと判断した。

少々アホっぽいのが玉に瑕だが、だからこそ読者に好かれる面もある……とまで考えて、露伴はやや猫を被って話しかけた。

 

「え?お、おう……。つか、あんたマジで岸辺露伴なんだな」

「だから今朝もそう言っただろ」

 

一瞬声をかけられた事に面をくらったものの、上鳴はかろうじて返事を返した。

露伴がテスト中の点呼などでクラスメイトの名前を覚えたように、上鳴も本当に岸辺露伴かどうかを聞いていたので、岸辺露伴という名が本名である事は知っていた。だからこそ出てきた感想だった。

本当の『岸辺露伴』であると知ってどう対応しようか迷いながらも、特に気負った様子はない。

中々どうして肝の据わったやつじゃあないか。少し見直しながら、露伴は続ける。

 

「まっ、そんな事はどうでもいいんだ。ぼくが君に声をかけたのは、読者からぼくの漫画がどう見えてるか知りたかったからなんだ。なにせ初連載だからな……自分や編集者以外からの感想も聞いておきたい」

「えーと、つまり俺から見た『ピンクダークの少年』について話せって事か?」

「君にはそれ以外の言葉に聞こえるのかい」

 

こいつ無意味に愛想悪いな……!と上鳴は思った。

やや猫を被ったと言っても、本当にややだった。前世と言ってもいいのか、かつての記憶も合わせるととうに40は越えるわけだから、ついつい年下に接するような態度になるのは仕方ないと言えば仕方ないのかも知れないが、それにしたって愛想の悪い男である。

というよりもまず、年齢に関わらずそういう態度を取るべきではないのだが。

上鳴は引き攣った笑みでようやく何だかわからない言葉を返す。

 

「感想なあ……。直接伝えるってなると変な感じだけどよ。手に汗握るっつーか、読んでてマジで()り込んじまう漫画って感じだった!最初はちょっと気持ち悪ィなって思ったけど、読んでるとそこまで気にならなくなってきたし……てか、ファンレターぐらいもう届いてんじゃねーの?わざわざ俺に聞かなくてもよ」

「もちろん届いているさ。ただ直接会ったのは初めてだからな。生の声、というのを聞いておきたかったんだ」

 

すらすらと息をするように嘘を吐く露伴に、上鳴はすっかり騙されていた。

誰が言ったか、嘘を吐く時は本音を混ぜるといいと言う。なるほど確かに嘘だけではない。今世では初になる連載であるし、今世では初めて自分のファンに感想を聞いた。

自分や編集者以外の視点を得たいというのも間違ってはいない。

ただそれだけではない、というのが正しいだけで。

 

「フーン……。じゃあ俺も聞きてえんだけど、最近まで無個性だったって言ってたのマジ?」

「マジだよ。ぼくは元無個性だ」

 

いかにも好奇心!というような表情で聞いた上鳴にそう答える。それで特に不利になるわけでもないし、利用する対価として少しくらいなら教えてやってもいいだろうと考えたからだった。

それを聞いた上鳴は、元無個性であれか……と先程のテストでの露伴の順位を思い出す。確か4位を勝ち取っていた。

印象に残っているのは隣を走る女子を横目に、吹き飛ぶような体勢で記録を出した露伴の姿。一体どういう個性ならああなるのかは不明だが、使い慣れていない筈の個性を、恐らく応用した使い方で4位をとったのだ――と上鳴は考えて、何となく悔しさが込み上げた。

実際には15年のブランクがあるものの十数年連れ添ってきた能力だ。使い方も応用もある程度心得ているのは当然で、そもそも個性とは違う能力であるし、その悔しさは見当違いではあるのだが。

 

「しかし個性の発現が遅かったヤツが2人もヒーロー科に受かってるなんてすげー偶然だよな。まあ緑谷だっけ?もう1人の方は個性使う度に怪我してるけど」

 

上鳴は露伴と同じく元無個性であるモサモサ頭の少年の事を思い出す。今は負傷した指を治療するために保健室に行っているのだったか、この教室の中にはいない。とはいえ荷物は置いてあるから、また戻ってくるだろうが。

 

「彼の個性はパワー型っぽかったよなァ。自滅する可能性がある程のパワーが出せる個性ってのも妙な話だが」

「そうか?それなら個性が発現するのが遅かったのも納得できるけどな。体が耐えれるようになるまで発現しなかったとか」

 

一歩間違えるまでもなく自傷する羽目になる個性が身体機能の1つだというのは、中々不思議な話だ。

個性のあるこの世界でもそうかは知らないが、人間の脳は普通自己の力で怪我をしないようにブレーキをかける。上鳴の言うように、それが原因で個性の発現が遅かったのかも知れないが、それにしたってあの超パワーの前では彼の体は貧弱といっても差し支えない。

まるで急造品のようである。

 

「そういや、岸辺の個性もやっぱり何かそういうデメリットあんの?」

「……いや出久くんのような、という意味のデメリットならないな。ぼくのは単純に遅かっただけじゃあないか?」

「へー、珍しい事もあるもんだな」

 

そういえば何故今スタンドが出たかについては考えなかったなと気付いて、やや遅れ気味に返答する。上鳴は思い当たる節を探しているのだろうと不審には思わなかった。

今――――つまり、15歳のこのタイミング。弓矢に刺された覚えもなく、スタンド能力を手に入れた年齢を考えると早すぎる。

得体の知れない気味の悪さを感じたが、今はどうしようもない。悪寒は頭の片隅に追いやって、露伴は上鳴との会話を続ける。

 

「デメリットで思い出したんだが、個性には許容上限(キャパシティ)ってものがあるんだろ。個性を発現したばかりでどんなものか分からないんだが、結局どんな感じなんだ?」

「んー、人によって違うからなァ。俺は使い過ぎると頭がショートしてアホになるけど…………」

 

手に電気を走らせながら上鳴は言う。

人間の手から電気が出ている光景は、露伴のかつての記憶からすれば中々違和感のあるものだったが、こういった違和感は個性社会で15年も生きていれば嫌でも慣れる。

露伴が帯電している手に触れようとすると、上鳴は慌てた様子で手を引っ込めた。

 

「何してんの!?」

「次の読み切りで主人公が感電するシーンがあってね。少し感電してみようかと思ったんだが……」

「エッ怖…………」

 

少し感電ってなんだよ。上鳴はそう思ったが口には出さず、代わりに1つ大きな溜息を吐いた。

あわよくば感電してみようと思っていた露伴は少しばかり不満げであるが、そもそも人で感電しようとするなという話である。

漫画家って皆こう(・・)なんだろうかと呆れながら、上鳴は引き攣った笑みを浮かべた。

 

「さて、そろそろ帰るか。じゃあまたな上鳴電気」

「おうまたな…………ってフルネームかよ!」

 

別れの挨拶をすれば返事が返ってくる程度には親しくなれたらしかった。

感電こそ体験できなかったが、別にどうしてもしたかったわけじゃない。死なない程度に調整した電圧で感電してみたりとかは、前に一度やった事がある。

これから打ち合わせがなければ帰りに本にできそうだったんだが……と詮無きことを考えながら、打ち合わせ先の喫茶店へと向かう。

 

「あ、岸辺露伴くん!」

「ム、麗日お茶子……と、後ろにいるのは出久くんか!奇遇だね」

「俺もいるぞ、岸辺くん」

 

故意だかうっかりだかはともかく、気付かれなかった飯田がツッコミを入れる。

「ああ、気付かなかった」と答える露伴は全く悪びれていなさそうだ。

 

「駅までなら一緒に行かない?」

「ああ……これから打ち合わせがあるからなァ。駅までは無理だが、途中までならいいぜ」

「打ち合わせ?そういえば今朝、漫画家だと言っていたな……」

 

今朝の事を思い出しているのか、顎に手を当てて飯田が言う。

飯田はあまり漫画の類を読まないのか、岸辺露伴という名前にピンとは来ないらしかった。

とはいえ連載を始めたのは最近なので、上鳴のように流行っているものにアンテナを立てていない彼らが知らないのも無理はないか。

元々この世界ではヒーローという生きる特撮がいるせいで、機械などの技術面に比べあまり漫画の類は発展していないような印象があった。

上鳴が露伴を知っていたのも、SNSのトレンドに上がった漫画が気になって、読んでみたらものの見事にハマってしまったというだけだった。

 

「そういや気になったんだけど、岸辺くんってなんで雄英に来たの?」

 

漫画家が副業ってわけでもなさそうだし、と補足しつつ、麗日が露伴に尋ねる。数は少ないが漫画家になりたい人のための学校だってあるわけだし、わざわざ難易度の高い雄英のヒーロー科に来る必要はなかっただろうにと不思議に思っていたのだ。

 

「なんでって、そんなの漫画のために決まってるだろ」

「え?」

 

予想外の返答だったのか、麗日はキョトンとした顔で露伴を見上げた。何故だかは伝わっていないらしいと察して、より詳細な理由を口にする。

 

「雄英のヒーロー科ってやつは、取材するにも一苦労なんだが、知ってるかい?」

「ああ、いずれヒーローになる少年少女が通っているのもあって当然(ヴィラン)が潜り込もうとする。それを防ぐためにその辺の精査はしっかりしていると聞いたぞ」

 

飯田が露伴の一言に付け加えると、その通りと頷いて、露伴は二の句を次いだ。きっかけはともかく、こういう思い切った行動に踏み切った理由は大体それが理由だった。

 

「そういうわけで漫画のネタを手に入れるためにはぼく自身が受験して通うのが1番手っ取り早かったんだ。授業内容だとか、生徒達の様子だとかは長期間見ないとウソっぽさが出るからな……」

「そうなんだ……」

 

そんな理由で受験した事もそうだが、それで難なく合格している事も驚きである。緑谷は複雑な気持ちながらに相槌を打った。

真剣に受験し不合格となった受験生からすれば憎悪の対象となるような理由ではあるが、実力不足が悪いのだと振る舞う露伴の姿は、いっそ清々しささえ感じる。

実際実力不足なのが悪いので、飯田も特に何か言うわけではなかったが、ここに普通科の生徒などがいれば噴火間違いなしだっただろう。

彼らの中には入りたくても実技試験の仕組みとの相性の悪さで入れなかった生徒だっている。真剣にヒーローを目指しているわけではない露伴のこの発言は、聞かれた場合大顰蹙を買う。

 

「それじゃあここでお別れだ。またね、出久くん。あと麗日と飯田」

「あ、うん!またね岸辺くん」

「ばいば〜い!」

「今おまけ扱いされなかったか…………?」

 

手を振って同級生達と別れると、露伴は既に差し迫った待ち合わせ時間を守るために足早で目的地へと向かうのだった。




橋本陽馬が自分の腕が本になってるの認識していましたが、あれを普通の人間と呼んでいいものか不明なので、見える人間がたまにいるって事にしておきました。

これからは卒業制作に専念しなくてはならないので、更新が一週間に一度できれば良い方ってくらいのペースになります。
基本的に金曜の20時更新を目指します。

そういえばお気に入り1000件突破しました。ありがとうございます。

追記
ちょっと誤字修正の手順をミスったかも知れません。同じ所に対する報告だったら問題ないとは思いますが、直っていなかったら申し訳ありません。
-緑谷の個性に対する露伴と上鳴の会話を大幅に訂正しました。
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