≪Review by 蜈?ココ蠖「≫
探し物のために天界を彷徨う過程で、本当に沢山のセカイ線を閲覧した。
一つのセカイ線の中では、数百万オーダーの数の星で生命が誕生することが多かった。だが、極稀に全く生命の誕生しないセカイ線や、逆にありとあらゆる星で生命が誕生するようなセカイ線もあった。そういった特徴的なセカイ線は、大抵は数々の天使が干渉を幾重にも加えた結果出来たものだった。前者のセカイ線は天使たちの実験用に重宝されるし、後者はドラマ的な見所が沢山あるようで、どちらの周囲にも比較的多くの天使が集まる傾向があった。まぁ、そういったものに私の興味が引かれたことはなかったが。
基本的に私は探し物をすること以外に関心は無かったのだが、そんな私でも思わず見入ってしまうセカイ線もあった。
それは
私は天使としてはかなり長命な方だったと思うが、それでもこの不可侵のセカイ線は両手で数えられるほどしか見たことがない。極稀どころではない。極を100回以上付ける必要があるだろう。
一体何故このように光り輝いているのか? 調査してみたいという気持ちが高まることもあったけれど、私はやはり探し物の方を優先した。直感的に、それも私の探している
無限といっても差し支えない程の数のあるセカイ線を、私は一つ一つ覗いていく。延々と繰り返す。
そうこうしている間にも他の天使たちは各地で干渉を好き勝手行い、私が調べるべきセカイ線はますます増えていく。終わりは寧ろどんどん遠ざかっていく。
閲覧に要する労力は微小なものだが、少しずつ私の魂は摩耗していく。
いつからか、私より老いている天使を見かけることはなくなった。
一体、私は何を探しているのだろう?
少しでも気を緩めれば魂が虚無に支配されそうだった。魂に刻み付けられた“諦めるな”という思念がなければ、私はとっくに消滅していただろう。しかしそれすらも意味をなさなくなる、純粋な物理的限界はすぐそこまで迫っていた。
とある天使に私が出会ったのは、そんな今際の際ともいえる時だった。
その天使は初めからとても不愉快な感じだった。コミュニケーションを取ろうとしてくるでもなく、消滅寸前の私を遠くからじぃっと観察していたのだ。それも薄ら笑いを浮かべながら。
驚くべきことに、どうやらその天使は私よりも遥かに長命らしい。にも関わらず、生まれたての天使のように生命力に溢れていた。まるで、老獪さはそのままに、魂だけが若返っているようだった。
こんな天使にはそれまで出会ったことがなかった。
まるでセカイ崩壊を引き起こした直後のように生命力が漲っていた。しかし、高次元存在の罰から逃れることは出来ないはずだ。ならばコイツは一体何なのだろう?
不可解。不愉快。
だが疲弊しきっていた私には、そいつを追い払おうとすることさえ億劫になっていた。幸い私に対して害意があるわけではないらしい。
ひょっとすると単純な好奇心なのかもしれない。私のように今にも寿命が切れそうな天使は珍しいだろうから。
だから私は無視を決め込んだ。そんな些末事に魂をすり減らしている場合ではないのだ。
彷徨と閲覧を再開してからも、その天使は一定の距離をとりながら、最後まで私に付きまとってきた。