では、本編へどうぞ。
刀哉side
前回のルウィーでの誘拐事件から数日後、俺たちはベールさんからホームパーティに招待され、リーンボックスに来ていた。それと、女神特権で5pb.さんのライブにも招待されていたので、さっきは皆で5pb.さんのライブを聞いていた。相変わらず綺麗な歌声だった…。
そのライブも終わり、今は教会に来ている。ただ、一つだけ想定外なことがあった。
「ライブに招待してくれたのは良いけど…、肝心のベールが来ないなんて、どういうことなの?」
そう。今ノワールが言ったように、本当ならさっきのライブでベールさんと合流していたはずなのだが、なぜかベールさんはライブ会場に来なかった。
パーティの準備に手こずってるのか?
「…何か事情があるのよ」
「自分から招待しておいて、迎えにも来れない事情ってなんなんだよ…」
「それで、刀哉? ベールの部屋は何処?」
「ああ、こっちだ。――だから、ネプテューヌにロムちゃんとラムちゃん。ドアを一個一個調べるのを止めなさい」
「「はーい」」
「えー? こういうの宝探しみたいで楽し――」
「何か遺言は有るか?」
「止めるから殺さないで!?」
「ったく…。おっ、此処だぜ」
ベールさんの部屋の前に着き、ノックをする。いきなり開けるなんて失礼なことはしないぞ?
「ベールさん。いますか?」
しーん……
しかし、返事が返ってこない。あれ? まさか出かけてるなんてことないよな?
「…本当に此処がベールの部屋なのよね?」
「そうだよ。言っておくが間違ってないからな? はあ…。しょうがない。ベールさん、入りますよ?」
俺はドアを開ける。中を見ると、相変わらず色んな物が大量に有り、皆唖然としていた。
「何が……あったです?」
「…荒らされた跡みたい」
「というより、片付いてないだけじゃ…」
「ノワール正解。これがデフォルトだ。多分こっちに…」
「後方の部隊は何をしていますの!?」
……ビンゴだな。以前一緒にゲームをやった部屋から思いっ切り声が聞こえた。俺はその部屋のドアを開ける。
「私が援護しますわ! あなた方は先に行ってくださいまし!」
予想通り、ベールさんはゲームをしていた。……画面の光以外光がない部屋で、ヘッドホンを付けて。
何? まさか、これやってたから遅れたとか言わないよな?
「ああ!? もう! 早い! それは早過ぎますわ!」
「何やってんのよ…、ベール?」
「あ!? ちょっと、そこは…!」
「…どう見てもネトゲね…」
部屋に入ってきた俺たちに全く気付いてない。はあ…。ベールさんには、使いたくなかったが…。仕方ない。
俺は皆にその場で待っているようにジェスチャーし、ベールさんに近づく。そして、大きく息を吸ってー!
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「キャアァァァァ!?」
ベールさんの耳の近くで大声を上げる。いくらヘッドホン越しでも、こんな大声を聞いたらひとたまりもないだろう。ベールさんは驚いてこっちを見る。
「と、刀哉くん!? それに皆さんも!?」
「こんにちは、ベールさん。…それで? 僕たちを招待しておきながら、ライブにも来ないで何をしているんですか?」
「ひっ!?」
多分、この間程ではないにしろ、俺は怖い顔をしているだろう。ベールさんの反応が何よりの証拠だ。
「そ、その、出かける前に一時間だけやろうとログインしたら、攻城戦が始まってしまいまして、抜けられなくなってしまって…!」
「ふーん。一つ言いたいんですが、オンラインじゃないゲームをやれば良かったんじゃないですか?」
「それは、そうなんですが…」
「この後開く予定のホームパーティもこの様子じゃ準備してないんでしょう?どうするんですか?」
「………」
…ダメだこの人。目がゲームの方に向いてる。今何を言っても上の空だろう。
「……わかりました。ホームパーティの方は僕らで準備を始めてますから、早めに終わらせてベールさんも手伝ってくださいね?」
「……え!? あ、はい! わかってますわ!」
「まあ………手伝いに来なかった場合、どうなるかはご想像にお任せしますが」
俺は最後にベールさんにだけ聞こえるように小声で喋る。ベールさんはそれを聞いて、顔を真っ青にする。…どんな想像したんだ?
「それじゃ、僕たちは行きますね」
そう言って、俺たちは部屋を出た。
――――――――――
「さあ、早速準備始めるわよ!」
俺が言い出しておいてなんだが、ノワールが異様に張り切っていた。何処から持ってきたのか、メイド服を着ているし…。
「えー? 面倒くさい! 大体なんで私たちが準備しなきゃいけないの?」
「仕方ないだろ。ベールさんがあの調子じゃ、準備を始めるのが何時間後になるかわかったもんじゃない。今から準備始めないと、パーティ開くのが夜中になっちまうぞ」
「そうよ! せっかくリーンボックスまで来たんだもの! きっちりパーティして帰るわ! まず、ネプギア、アイエフ、コンパの三人は食糧の買い出し!」
「「「は、はい!」」」
「他の人たちは部屋の掃除よ! はい! 今すぐ始めて!」
いつの間にかノワールが仕切ってるし…。
「で、出たー。こういう時に妙に張り切って仕切るやつ!」
「…変なスイッチ入ったわね」
「うるさい!」
ノワールが箒の柄で床を叩く。
「ちゃっちゃと働く!」
結局、ノワールの指示で準備が始まった。
――――――――――
「うわっ!?」
「ん? どうした、ユニ?」
ユニの悲鳴が聞こえたので、俺はそっちに向かう。ユニの足元にはバラバラになったフィギュアが落ちていた。誤って落としちまったのか。
「ど、どうしよう、刀哉さん!?」
「落ち着け。これは元々パーツが外せるタイプのものだから、元に戻せば大丈夫だ」
「わ、わかりました!」
ユニはフィギュアを拾い上げて、組み立て始める。良し、もう大丈――ちょっと待て。
「おい、ユニ。出来た! みたいな顔してるが、全然元通りじゃないからな」
ユニが組み立てたフィギュアは右腕が左腕、右足が右腕、左腕が左足、左足が右足のところについて不気味なことになっていた。どうしてこうなった……。
「え!? 違うんですか!?」
「どう見ても違うわ! はあ…。俺が直しておくから、お前は他のところを掃除してくれ」
「わ、わかりました」
ユニは別のところの掃除を始める。全く、先が――
「うわ! また落とした!?」
……先が思いやられる。
――――――――――
「だー!? 何やってるんだロムちゃんとラムちゃん!?」
「え…?」
「お絵描きだけど?」
「それはわかってる! だけど、それベールさんの本だぞ!?」
別の部屋に行くと、ロムちゃんとラムちゃんがあろうことかベールさんの本に落書きをしていた。掃除すら出来てない。俺は急いで二人の手からクレヨンを取り上げる。
「ああ!? 返してよ!」
「返して…!」
「二人とも。此処は二人の家じゃないんだ。ルウィーの教会では当たり前のようにしていた落書きも此処ではしちゃダメだ。後で皆で遊ぶために、今はちゃんと掃除をしてくれ。良いな?」
「「……わかった」」
二人は渋々という感じだが、落書きを止めて本をしまい始めてくれた。良かった…。にしても、ブランは二人を止めずに棚の前で何見てるんだ?
「おい、ブラン。ちゃんと二人を見ておけよ。あと掃除をしろ。何見てるんだよ?」
「…ん」
ブランは見ていたものを俺に見せる。リーンボックスライブという週刊誌のようだ。
「週刊誌か。いつでも読めるだろ。今は掃除をしろ」
「…ケチ」
俺はブランから週刊誌を取り上げる。はあ…。俺たちだけで本当に準備出来るか不安になってきた…。
――――――――――
「…で、なんでお前はゲームしようとしてるんだ、ネプテューヌ?」
「そうよ! サボりは許さないわよ!」
「え、えーと…。あははは…」
ネプテューヌのところに行くと案の定ゲームをしようとしてたので、現行犯で捕まえた。着いた時に丁度ノワールも来た。
「お前は俺が監視してないと、すぐにサボりそうだな…」
「そうね…。刀哉。悪いんだけど、ネプテューヌと一緒に掃除してくれない?」
「ああ、わかった」
「わ、私は遠慮し――」
「「お前(あんた)の意見は聞いてない」」
「二人とも酷い!?」
「それじゃあ、頼むわね」
「おう。ほら行くぞ、ネプテューヌ」
「嫌あぁぁぁぁぁ!!」
嫌がるネプテューヌを無理やり引きずり、掃除をしに他の部屋に向かった。
――――――――――
「ふう…。大分片付いてきたな」
あれからずっと掃除を続けたお陰で、来た時と比べると大分片付いた。あとは、買い出し組が戻ってきたら料理を作ってデカいテーブルに上げれば準備完了だな。
「あー。もう疲れたよ…」
「まあ、お前にしてはちゃんとやってたな。お疲れ様」
ネプテューヌはあれ以降、俺が監視しているとはいえ、真面目に掃除をしていた。そのせいか、今は疲れてグデー、となっていた。まあ、楽しいことがあると、忘れていつも通りはしゃぐんだろうけど…。
「じゃあ、皆のところに行くか」
「ういー…」
ふらふらと立ち上がるネプテューヌ。……大丈夫か?
――――――――――
日も沈み始め、夕方になった頃。俺たちはようやく準備を終わらせることが出来た。
「皆さん! お待たせしましたわね! 我が家のホームパーティへようこそですわ!」
「…というかベール。ほとんど何もしてない」
「……ほほう。それは本当ですか、ベールさん?」
俺は腕まくりをしながら言う。ベールさんはそんな俺の様子を見て、慌てて弁解し始めた。
「い、いえ! ちゃんと手伝いましたわよ!?」
「何を?」
「……食器を出すのを」
「拳骨三人前入りまーす」
「――いっ!?」
俺はベールさんの頭に宣言通り拳骨を三発入れる(もちろん本気じゃない)。
ベールさんはその場で頭を押さえて、しゃがみ込む。
「ううっ…。酷いですわ、刀哉くん…」
「そう思うんなら次から気をつけてください」
この人はゲームのことになるとダメになるな…。
「ネプギア。さっき立ちくらみしたんだって?」
「うん。もう平気だよ」
ネプテューヌとネプギアの会話が聞こえてくる。それは俺も聞いた。買い出しをしてる最中に急に力が抜けたとか言ってたな。
「ネプギア。少しでも体調が悪いと感じたらすぐに言えよ? パーティとはいえ、無理に出席することはないんだからな」
「わかってます、刀哉さん。でも、本当に大丈夫ですから」
「なら良いけどよ…」
心配だな…。
「さあ、皆さん! 遠慮なく食べて、飲んで、騒ぎましょう! 今日のために、飛びっ切りのゲームも用意しておりますわ!」
「おー! 何、何!?」
早速ネプテューヌが喰いついた。
「説明するより、見せた方が早いですわね。ネプテューヌとノワール。少し後ろに立ってくださいな」
「はいなー!」
「え、何?」
「他の皆さんはこちらに来てください」
ベールさんにそう言われ、俺たちはそれぞれの位置に立つ。すると、ベールさんはコントローラーを取り出した。
「では、華麗に戦ってくださいまし!」
ベールさんはそう言ってコントローラーの真ん中のボタンを押す。すると、部屋の風景が森の中に変わる。おお、凄いな! 鳥の鳴き声や、蝶まで再現してる。
「凄ーい!」
「あ! ねぷねぷが!」
コンパが驚いた声を上げたので、二人の方を見る。すると、
「ねぷっ!? スライヌになってる!」
「こ、これ、私なの!?」
二人は先日戦ったスライヌの姿になっていた。二人ともそれぞれの髪がそのまま反映されてるので、どっちがどっちなのかはわかる。
「二人の動きを特殊なカメラで読み取って、立体投影しているのですわ。中々の技術でしょう?」
やっぱりこっちの世界の技術力は凄いな。元いた世界と比べものにならない。
「じゃあ、この格好でノワールと戦えば良いんだね! やい、ノワスライヌ! ねっぷねぷにしてやんよー!」
「え?何よ、ノワスライヌって――」
「てりゃー!」
「わあ!?」
とか考えてる間にネプテューヌはノワールにタックルを決める。すると、空中にポイントが出た。ポイント式なのか?
「イエーイ! ポイント先取!」
「私を怒らせたわね!? 覚悟しなさい! ネプライヌ! ――うわっ!?」
ノワールはお返しにタックルを繰り出すが避けらてしまい、そのまま逆さまになってしまった。
「やーい! 逆さノワイヌー!」
さっきと呼び方微妙に違うぞ。
「ちなみに、もっと実戦よりのシミュレーションモードも用意してますから、戦闘の訓練にも使えますのよ」
「万能ですね…」
「凄い!」
「面白そう…!」
「私もやりたーい!」
「ええ! ドンドン遊んでくださいな!」
ゲームは好評みたいだな。まあ、俺は腹を満たしてから遊ぶとしよう。
――――――――――
「うりゃー!」
「させないわよ!」
あれから結構時間が経ち、皆ゲームを楽しんでいた。
「皆盛り上がってますねー」
「刀哉くんも、遠慮せずに遊んできて良いんですわよ?」
「いえ。今腹がいっぱいで動くのがキツイんです…」
ちょっとだけにしようと思ったら、ついつい食べ過ぎてしまった…。これなら、食べる前に遊べば良かった。
「そうですか――あら?」
突然ノック音が聞こえてきた。ベールさんはそれに出るためにドアを開けた。
「なんですの? パーティの最中に」
どうやら、相手は使用人のようだ。少し話すとベールさんの表情が険しくなった。そして、話が終わったのか、ドアを閉める。
「どうしたんですか、ベールさん?」
「何かあったの?」
ゲームを終わらせたノワールが、俺と一緒にベールさんに質問する。
「いえ…。ズーネ地区にある廃棄物処理場に、多数のモンスターが出現したという情報が入ったのですわ」
そう言うと、ベールさんは部屋に有るノートパソコンを開いて、何かを検索し始める。
「…ズーネ地区。離れ小島ね? 引き潮の時だけ、陸続きになるという」
「モンスターくらい、何処でも普通に出るでしょ?」
「国が管理している地区ですから、そんなことはありえませんわ。でも…、事実のようですわね」
ベールさんはそう言って、ノートパソコンを閉じて、立ち上がる。今のはモンスターの情報が本当か調べてたのか?
「私、今から行ってきますわ」
「私も行くよ!」
ベールさんがモンスター討伐に行こうとすると、ネプテューヌが付いて行くと言い出す。
「けれど、これは私の国のことですから…」
「こうして私たちがいるのも何かの縁だしさ、手伝わせてよ!」
「またお決まりの、友好条約を結んだ以上は仲間、ってやつ?」
「まあねー!」
「…私も手伝う。誘拐事件の時の恩を返す良い機械だから」
ブランまで行くと言い始めた。
「よーし! じゃあ、三人で――」
「わ、私も行くわよ! あなたたちだけじゃ、どれだけ待たされるかわからないもの…」
仲間外れになると思ったのか、ノワールも行くと言った。
「皆さん…。わかりました。四人で参りましょう」
「あの! 私も行きます!」
「え? ア、アタシも!」
「私も!」
「私も…!」
「…あなたたちはダメ。遊びじゃないの」
「ユニも当然留守番よ。あなたまだ変身も出来ないでしょ?」
「ネプギア! ここはお姉ちゃんに任せといて! たまには良いとこ見せないとね!」
「…うん」
妹たちも行きたいと志願するが、姉たちの意見に一蹴されてしまう。
「………」
俺はそんな中、一人思案していた。何かおかしい。女神が四人揃っていて、更には此処からそう遠くない国の管理してるはずの場所にモンスターが大量発生した。こんなにうまい話があるのか?
「……や……うや…」
嫌な予感がする。絶対に何か――
「刀哉!」
「っ!?」
ネプテューヌに声をかけられ、現実に引き戻される。周りを見てみると、いつの間にか屋外に出ていて、ネプテューヌたち四人は女神化していた。…何? 俺自動で歩いてきたのか? 怖い。
「大丈夫? さっきから反応がなかったけど…」
「あ、ああ。すまん。ちょっと考えごとをしていた」
「しっかりしてちょうだい。私たちがいない以上、此処の皆の安全はあなたに預けるんだから」
「え? 俺ってそんなに責任重大な立場なのか?」
なんでそうなったのか問いただしたい。
「そうよ。この中で唯一の男なんだから、男気見せなさい」
「それは理由のようで理由になってないぞ」
「とにかく、此処は任せたわ。行ってくるわね」
ネプテューヌ以外の三人はその言葉を聞いて飛び上がっている。ネプテューヌも飛ぼうとするが、
「ま、待ってくれ! ネプテューヌ!」
「何?」
俺はその直前で声をかけて止める。
「……ネプテューヌ。何か嫌な予感がするんだ。いくら雑魚ばかりでも、油断だけはするな。…絶対に帰ってこい」
「…刀哉。そういうのをフラグと言うんじゃないの?」
……あ。
「ふふっ、冗談よ。心配いらないわ。さっさと片付けて帰ってくるわ」
「…わかった。すまんな止めて。行ってこい!」
「ええ!」
そして、今度こそネプテューヌは飛んで行く。あっという間に見えなくなった。
…そうだよな。考え過ぎだよな?
俺は未だに完全に消えていない不安を誤魔化すようにそう思いながら、ネプギアたちと教会の中に戻った。
えー、ここで悲報というかなんというか、現実の方が忙しくなりそうなので、これから本格的に不定期更新がスタートすると思います。なるべく書こうとは思いますが、今までより更新ペースが落ちるのは確実ですので、ご了承ください。
さて、シリアスな話がこれからしばらく続くと思いますが、耐えて見てくれると嬉しいです。私も結構書くのが辛いので…。
それでは、この辺りで。さようなら。