それでは、本編へどうぞ。
刀哉side
俺たちはあの後、教会まで帰ってきた。ちなみに、俺が勝手に抜け出した病院には途中でよって謝罪した。幸い、俺の担当医は優しい人で怪我も治っているということで、退院を許可された。
「それじゃあ、刀哉。あの姿はなんだったのか説明して」
そして、今は皆にあの時の姿と力――というよりは、グランのことについて説明することになった。イストワールさんも聞くために、アイエフの端末でホログラム映像を出している。
「わかってるよ、ノワール。ただ、このことについては直接話してもらった方が納得出来ると思うから、少し待ってくれ」
俺はそう言って目を閉じる。……聞こえるか? グラン。
――ああ、聞こえてるよ。言われなくても自分で喋るさ。ただ、俺にはそのための身体がないから、君の身体を少し借りるよ。ちなみに、お前の意識もちゃんと残るから安心して――
わかった。それじゃあ、頼む。
――了解!――
すると、少し身体に違和感が起きる。すぐに違和感は消えたが、
「――初めましてだな。女神とその仲間たち――」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
俺の口が勝手に動く。グランが俺の身体で喋ってるんだろう。……凄ぇ変な感じがするが。
俺の声ではない声が出されたことに全員が驚いた。…いや、四女神は違う感じで驚いてるみたいだな。
「もしかして、あの時の…?」
「――そうだったね。君たち四人とは刀哉が死にかけた時に少しだけ話したな――」
「おい待て、グラン。それは初耳だぞ」
思わず俺も声を出す。普通の人から見ると、一人が勝手に喋ってるみたいな光景でかなり痛い人に見られるだろうな…。
「――ほら、お前がババアに刺されて倒れた時有ったろ?あの時は流石にヤバかったから僕が刀哉の身体を一時的に操ってたんだ。じゃなきゃ、お前は今頃死んでただろうね――」
「……マジか」
確かによくよく考えると、あの後どうやって病院に行ったとか全く覚えてないな。話ではアイエフとコンパが連れて行ってくれたらしいが、それすら覚えてないから、その時まで俺の身体を操ってたってことか。
「まあ、今はどうでも良いから、早く説明してやってくれ」
「――わかった、わかった。それじゃ、皆さんにも昔話をしよう――」
「「「「「「「「?」」」」」」」」
「…なんで昔話?」
ブランが皆を代表して質問してくる。まあ、そう思うのは当然だな。
「こいつの存在を語る上で、なくてはならない話なんだ。面倒だと思うが、我慢して聞いてくれ」
「――そういうことだ。という訳で、昔話の始まり始まり~――」
…なんとも軽い感じで始まったが、まあ良いか。
「――その昔、このゲイムギョウ界は今と変わらず何人かの女神によって国が治められていた。ただ、それに従わず、女神たちに対して反抗している民族がいたのさ――」
「女神に反抗? その時の女神は恐怖政治でもしてたの?」
「――そんなことはないさ。シェアの奪い合いは有ったけど、余程のことがない限り力で支配なんてしない奴ばかりだった。その民族の方がバカだったのさ。そいつらは、ただ単に人の下につくのが嫌なだけで反抗していたんだ――」
「その民族の名前ってなんて言うの?」
「――さあ、なんだったかな? 忘れちまったよ――」
「忘れたってあんた…」
「――自分を封印した奴らのことなんて知らん――」
「え、封印されてたの? なんで?」
「――それについては後で話すから待って。話を戻すけど、普通の民族が女神たちと戦ったところで、結果は見えてる。だが、その民族は特殊な武器を作ることに長けていたのさ――」
「特殊な武器とは…どのようなものなのですか?」
「――例えば、切った相手の力を赤子と同じレベルにしてしまう剣。相手が視界に入っていれば、放った矢が絶対に当たる弓。蛇のように動き、自由自在に伸びる鞭。他にも色々特殊な能力を持つ武器を作ることが出来たのさ――」
「「「「「「「「………」」」」」」」」
皆、話についていけずに呆けている。まあ、俺も初めて聞いた時はチートだと思ったからな。無理もない。
「――ただ、それだけの能力を持つ武器が普通に使える訳がない。その武器ごとに、それ相応の対価を払わなければ使えなかったんだよね。ほとんどの武器は使用者やその周りの人たちの命を対価としてたんだ――」
「そんな武器、危なくて使わなかったんじゃないの?」
「――まあ、そういう対価が有る武器に関しては自分たちで使うことはほとんどなかったよ。そういう武器は他のところから人を攫ってきて催眠の効果が有る武器で操って、使わせてたな――」
「酷い…」
「なんて奴らなの!」
「――でも、そんな武器を使っても女神たちには勝てなかったんだ。だが、民族たちはとうとう女神と同等以上の力を持つ武器を作り出したのさ――」
「まさか、それって…」
「――そう。それが僕だ――」
皆が目を見開いて驚いている。それに構わず、グランは話を続ける。
「――まあ、僕は命の対価なんて求めなかったけど、使える奴が全くいなかった。ネプテューヌさんは体験してるはずだが?――」
「ああ! 凄い重いもんね! あんなの普通の人が使えっこないよ。軽いとか言ってた刀哉の頭がおかしくなったと思っちゃったもん」
「…後で拳骨な。ネプテューヌ」
「げっ、そうだ!? 刀哉の意識もちゃんと有るんだった!」
失言をしたネプテューヌは頭を抱えていた。今更後悔しても遅いがな…!
「――コントは後にしてくれ…。それで、今までの武器の方がまだ使えたけど、万が一他の誰かに使われないように、って前から作っていた遺跡の最奥に封印したのさ――」
『その遺跡が、プラネテューヌに出現したあの遺跡なんですか?』
「――その通り。ちなみに、民族はその後更に強い武器を作ったんだけど、その武器の暴走で滅びた。女神たちはこのような技術が後の世界に残されてはマズいと考えて民族の村や武器、建造物を全て壊して、存在そのものを歴史から消し去りましたとさ。めでたし、めでたし――」
何がめでたいのか説明していただきたい。というか、ほとんど昔話じゃなくなってたろ。俺の時はちゃんと昔話だったのに…。
<でも、あの遺跡はほぼ無傷でしたよ?>
「――ああ、あの遺跡は俺を封印した後に、土を操る武器を使って地中に埋めたんだ。だから、女神たちも気づかなかったのさ――」
「でも、それならどうやって地表に出てきたの?」
「――僕はとても長い間封印されてたけど、その間も力を蓄えつつ、使用者に相応しい人材を探していたんだ。俺を使うためには感情が強くないといけない。だから、ずっと探していたんだけど、そのような人材は全くみつからなかったんだよね。注目していた人としては、ネプテューヌがいたがな――」
「ねぷ、私?」
「――うん。君は感情のレベルが高かったから、君をマークしていればいつか良い人材が見つかると思ったからね。そして刀哉が落ちてきたあの日。君が退屈だと呟いた時に、異世界で同じことを言った刀哉の感情を感じ取ることが出来たんだ――」
「「「「「「「「ええ!?」」」」」」」」
まあ、驚くよな…。
「――主人公補正か何か知らないけど、お陰で助かったぜ。そして、今まで蓄えていた力を使って刀哉をこの世界に招いて、遺跡を地上に上げたのさ。……あ、言い忘れてたことが有った――」
ん? 言い忘れてたこと? そんなことあったか?
「――ネプテューヌ。それに刀哉。遺跡での紅いドラゴンの件は悪かった。あれは僕のせいなんだ――」
「「え!?」」
「――あのドラゴンはエンシェントドラゴンって言うんだよな?あれがおかしかったのは、僕がドラゴンに力を与える代わりにほとんどの感情を奪って、狂気に堕としたせいだ。万が一、俺の勘が間違ってるなんてこともなくはなかったから、刀哉が本当に力使えるか試したかったんだ――」
「お前…。そのせいでネプテューヌが死にかけたんだぞ?」
「と、刀哉。私は生きてるんだから良いよ。グランも悪気が有った訳じゃないんだし…」
「ネプテューヌがそう言うんなら、それで良いけど…。もしかして、ドラゴンが怒った時に力が上がった気がしたのもお前の力のせいか?」
「――そうだ。まあ、ほんの一部だけどね。とにかく、刀哉のあの姿は僕の力を引き出した姿だということさ。刀哉、今なってくれるかい?――」
「ん? 別に良いけど…」
またあの言葉を言うのか?正直恥ずかしい…。
――大丈夫だ。あれは最初の一回だけで良い。今はなりたい時に自由になれるはずだよ――
…わかった。俺は目を閉じて集中する。
ある疑問が生まれた。……どうやって変身するんだ?
――ああ、言い忘れてたな。一旦力を抜いて、身体の底から力を絞り出す感じかな――
ふむふむ。一旦力を抜いて…身体の底から力を絞り出す…!
「「「「「「「「うわっ!?」」」」」」」」
すると、あの時のように紅いオーラと炎が出て、俺の身体を包む。
「おお、なれた」
身体を見て確認してみるが、ちゃんとクリムゾンハートの姿になれていた。
「ベール。悪いけど、鏡持ってきてくれるか? 自分でちゃんと見たことないからよ」
「え? わ、わかりましたわ」
ベールは少し遠くの立ち鏡を持ってきてもらう。俺はそれで自分の格好を改めて見る。
「…本当に刀哉なんだよね?」
「何言ってんだ、ネプテューヌ。これで二回も見て――誰これ?」
鏡で自分の顔を見たはずだが、そこには見覚えのないイケメンが映っていた。
…え? これって俺なのか? 手を顔に伸ばすと、イケメンの顔にも俺のと同じ手が触れた。やっぱりこれ俺なのか!? これが変身補正というやつか!? ありがとうございます!!
「刀哉お兄ちゃん…。かっこよくなった」
「かっこいいです! 刀哉さん!」
「サンキュー。ロム、コンパ」
いやー、こんな得をするとは思ってなかったな。
「それより、本当に強いんでしょうね?」
「だよねー。見た目がかっこいいだけで、中身は弱かったりして!」
「…喧嘩売ってるのか?」
アイエフはともかく、ネプテューヌは確実にバカにしてるだろ!
「でしたら、これで実力を試してみませんか?」
ベールがそう言って、あのゲーム機を取り出した。確かにあのシミュレーションを使えば、実力を試すには丁度良いな。
「わかった。それじゃ、早速始めようぜ。皆は少し離れておけ」
皆に離れるように言い、ベールにゲーム機を起動してもらい、周りが草原になった。
「敵の設定はどうしますの?」
「一番強いのってなんだ?」
「エンシェントドラゴンですわね」
あのトカゲか…。一体だけじゃ物足りないな。
「それじゃあ、そいつを五体で頼む」
「ご、五体ですか?」
「あ、もしかしてそんなに出せないのか?」
「いえ、そんなことはないのですが…」
……さては倒せないと思ってるな?
「大丈夫だ。自分で言ったんだから、ちゃんと倒すさ。それに、自分でもこの姿での力をちゃんと把握出来てないから丁度良い。だから頼む」
「…わかりましたわ」
ベールがコントローラーを操作する。すると、
「「「「「グオオォォォォォ!!」」」」」
五体のエンシェントドラゴンが俺の前に出現した。全部活きが良いな。
「それじゃ、良い練習台になってくれよ!」
俺は大剣――グランをコールする。見てみると、既に紅い刀身になっていた。どうやら、変身すると自動的になるみたいだな。
早速俺は一体目に突っ込む。ドラゴンは爪を振り下ろして反撃してくる。その上から切り伏せてやるぜ!
俺は刀身に紅いオーラを纏わせ、横に薙ぎ払う。
「
すると、紅い一筋の閃光が走り、俺を切り裂こうとしていたドラゴンの爪ごと胴体を真っ二つにする。ドラゴンはそのまま消えた。
良し! うまくいったな!
「「グガアアァァァァ!!」」
今度は二体が両サイドから挟み撃ちにしてくる。
うーん。片手と大剣で受け止めるか?
――刀哉。その状態なら二つに分けて双剣にも出来るよ。頭の中で、別れろ、って念じれば良い――
あ、そうなのか。俺は早速、別れろ、と念じてみる。
すると、大剣が真ん中で割れ、双剣になった。元々刀身が太かったお陰で、全く違和感がない。
双剣を左右に構え、ドラゴンたちの爪を受け止める。そのまま刀身に紅いオーラを纏わせ、
「
そのまま跳び上がるのと同時に双剣の刀身に沿って、紅いオーラの刃が出て、二体の身体を切り裂く。これで残りは二体だ。
「「ゴガアアァァァァ!!」」
すると、残った二体がこっちに飛んできた。片方が先行し、もう片方がその少し後ろを飛んでいる。
…考えたな。先に飛んできた方を受け止めたら、その隙に残りの一体が俺に攻撃するって訳か。
なら、一体目をもう一体にぶつければ良いな。とりあえず、剣を元に戻したいんだが…。
――普通に刀身を合わせたら元に戻るぞ――
なんともわかりやすいな…。俺は双剣の刀身を合わせ、元の大剣に戻す。そして、さっきまでよりも多くのオーラを大剣に纏わせて構える。
「
そして、最初に飛んできたドラゴンを切りつけ、そのまま力任せに後ろのドラゴンに向けて吹き飛ばす。
「爆ぜな!」
すると、ドラゴンにつけた切り傷が紅く光り、大爆発を起こす。それに巻き込まれた二体目もろともドラゴンは消滅した。
予想以上に呆気なかったが、充分力は試せたから良いか。
「ほら、終わったぞ――って、おい皆?」
皆の方に顔を向けると、ほぼ全員が呆けていた。
何? 俺変なことやった?
「凄い! 刀哉お兄ちゃん!」
「強い…!」
「おっと! ありがとな、ロム、ラム」
ロムとラムは俺に向かって跳びついてきたので、受け止めた。この二人は良い子や。
「凄い力ですね…。本当に私たちと同等以上の力です」
ネプギアが驚きながらも、俺の力についての感想を述べる。
「まあ、俺も少し驚いてる。二人とも。変身解くから降ろすぞ」
俺はロムとラムの二人を降ろす。
えーと? 変身する時と逆に力を抜けば良いのか?
――おお、正解だ――
頭の中でグランが感心したようにそう言ってる最中に変身が解ける。うん。いつも通りに戻ったな。
「で? これで見かけ倒しじゃないってわかってくれたか?」
「…そうね。納得せざるを得ないわ」
「エンシェントドラゴン五体をあっさり倒したもの。実力は本物ね」
「頼りになりますわね」
うしっ。三人の女神からは認めてもらえた。あとは…。
「お前はどうなんだ、ネプテューヌ?」
「…まあ、これで刀哉も役に立てるってことだね! 今度から遠慮なくクエストに行って!」
「さり気なく更に仕事を押し付けようとしてんじゃねぇ! 言っとくが、その時はお前も強制連行だからな!」
「えー!? めんど――」
「いいから働け駄女神! 今から帰って、早速クエストに行くぞ!」
「ええ!? 今から!?」
「当たり前だ! 今回の件でシェアが減ってるかもしれないし、それ以前の問題でプラネテューヌのシェアは他の国と比べて減ってるんだ! 今からやらなきゃ到底回復せんわ! わかったら帰るぞ!」
「いやー!?」
「待ってですー!」
「ちょっと! 置いてかないでよ!」
「そ、それじゃあ、さようなら!」
抵抗するネプテューヌを無理やり引きずり、慌てて追いかけてきたコンパとアイエフとネプギアの全員で俺たちはプラネテューヌへと飛んで帰った。…ちなみに、ネプテューヌはコンパを、ネプギアはアイエフを抱えて飛んだ。断じて俺は抱えてないからな!
刀哉の技の解説です。
閃紅:剣にオーラを纏わせて切りつけると同時に刃として飛ばす。切れ味とリーチも中々のものなので、使い勝手が良い。威力は下がるが、変身前も一応使える。
紅牙・双山:双剣状態の時にオーラを纏わせ、ジャンプするのと同時に切り上げ、紅いオーラの刃出す。しばらくその場に残るので、障害物にも出来る。
紅牙・爆閃:大量のオーラを剣に纏わせ、斬撃とともに相手に叩き付け爆発を起こす。変身前も使えるが、威力が下がる上に暴発の可能性大。
はい、中二病ですね。私にネーミングセンスなんてなかったんや…。それはともかく、しばらくオリジナルを続けようと思ってますが、まだネタが思いついてないので、時間がかかります。期待せずに待っててください。
それでは、さようなら。