一応主人公は強化されたんですが…。細かいことは後書きで書きます。
とりあえず、本編へどうぞ。
刀哉side
俺はかつてない恐怖に襲われていた。
目は身体の紅に負けないくらい、血のように紅くなっていた。頭と頬からは後ろの方に角が伸びている。肩からは突起のようなものが出ており、背中からは翼も生えている。
典型的な姿をしているそのドラゴンはあり得ない程の威圧感を放っている。ただその場にいるだけのはずなのに。
「何これ!? エンシェントドラゴンの新種!?」
隣でネプテューヌが何か言っている。このドラゴンを知っているような反応だが、それとは違う驚愕の色が見えた。
「■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ !!!!」
だが、いつまでも待ってくれる訳がなく、ドラゴンはその巨大な爪を俺に振り下ろしてきた。俺は動こうとしたが、恐怖で身体がうまく動かない。そのまま俺は切り裂かれる。
「刀哉!」
――直前に女神化したネプテューヌが俺を抱えて助けてくれた。俺がいた場所はドラゴンの爪によって、砕け散っていた。
「わ、悪い。助かった」
「気にしないで。それより、全力で逃げるから、口閉じて」
俺は口を閉じて頷く。それを確認したネプテューヌは先程出したフルスピードで飛ぶ。
だが、ドラゴンは逃がすまいと口から巨大な火球を吐く。ネプテューヌはなんとか避ける。
「くっ!?なんて熱量なの!?近くを横切っただけなのに!」
いくらギリギリだったとはいえ、一瞬肌が燃えると錯覚する程の熱が俺たちを襲ってきた。もし当たっていたら、容赦なく消し飛んでいただろう。
俺は後ろに目を向ける。すると、ドラゴンはその翼で飛ぼうとしていた。
「………!!」
「刀哉、何!?」
俺はドラゴンを指差し、必死に伝える。なんとか後ろを向き、状況を理解してくれたようだ。
「マズイわね…! 距離を離せないままさっきの火球を何発も出されたら…!」
ネプテューヌの言う通り、先程の火球は近くを通るだけでもこちらの体力を確実に奪っていく。それを何発も撃ち込まれたら、いずれは当たってしまう。
…そうだ! ネプギアがアイエフから借りたあれが有った! え~と、確か武器の形を想像して…。すると俺の手には銃が出現した。おお! うまくいった! これがコールってやつか!
「刀哉!? 何する気!?」
何って迎撃だけど。風圧で喋るのがキツイので、心の中で返事をする。そして、ドラゴンに銃口を向ける。くらいやがれ!
俺は三発がむしゃらに撃つ。技量なんて無い酷い撃ち方だが、これで少しでも怯んでくれれば――
「■ ■ ■ ■ ■ !!!!」
全然怯んでねぇー!? いや、効かないのはある程度予想してたさ! でも怯みもしないってどういうことだ!?
ドラゴンはお返しと言わんばかりに火球を三発放ってくる。
「くっ!」
ネプテューヌは三発とも避けるが、俺を気遣っているのか大分大きな動きで避けていた。これじゃ、余計に体力の減りが早くなる。何とかしないとマズイ!
ちっ! やっぱり効いてない! 俺はこいつの弱点はどこなのか考え始めた。流石にあのご立派な角ということはないだろう。なら、どの生物も大体共通してる弱点部位を狙ってやる!
俺はドラゴンのとある部位に狙いを定める。(センスが無いので大雑把だが)
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! ――バスッ!
「■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ !!?!?」
良し! 当たった! 撃っていた最後の一発が狙っていた部位―目玉を撃ち抜いた。いくら強くても、ここは痛いよな! ドラゴンは左目を押さえ、飛行も中止している。今がチャンスだ!
「ありがとう、刀哉! 一気に行くわ!」
ネプテューヌも理解してくれたようで、そのままドラゴンとの距離を引き離す。そして、あっという間にドラゴンは見えなくなった。
――――――――――
「…流石に此処まで来れば、大丈夫かしら」
「ああ。まだ油断は出来ないがな」
結構な距離をフルスピードで飛んで来たせいか、流石にネプテューヌも疲れてるようだ。…仕方ない。質問のついでに少し休憩するか。
「なあ、ネプテューヌ。ちょっと聞きたいことが有るんだ」
「何? 変身したままでも良いかしら?」
「ああ、別に構わない」
むしろそっちの方が話が脱線しづらくて助かる。
「さっきのドラゴン。あれは何だったんだ?何か知ってるような反応してたが…」
「正確には、あれと似たドラゴンを知ってるのよ」
「似たドラゴン?」
あんな化け物じみた強さのドラゴンが他にもいるとか笑えないぞ。俺の考えがわかったのか、ネプテューヌは苦笑いしながら答える。
「一応言っておくけど、似ているのは見た目がということよ。あんなに強いのが何体もいたら大変だわ」
「そ、そうだよな。良かった」
「でも、どちらにせよ危険なことに変わりはないわ。私が知っているあのドラゴンの名前はエンシェントドラゴン。この世界では危険種という部類に当たるわ」
「危険種ってどれくらい危険なんだ?」
「余程の腕前がある人以外はすぐに逃げ出せというレベルよ」
「何それ怖い」
「それでも私たち女神にとってはそこまで苦戦するような敵ではないのだけど、さっきのエンシェントドラゴンは普通の奴より一回り身体が大きかったし、あんな血みたいに全身真っ赤ではないわ」
「次戦うことになったら勝てそうか?」
「他にも女神がいて、今みたいな状況でなければ勝てるとは思うけど…」
俺のような大した戦力にならない奴がいないで、女神があと何人かいれば勝てるかもしれない。つまり、現状はどう足掻いても勝てないから逃げの一択しかないということか。
「出来れば二度と遭遇したくないが…」
「そうもいかないわ。あんなに強いモンスターを放置して、他のところに逃げられたらそれこそ大惨事になってしまうわ。できることならここで倒しておかないと」
ネプテューヌの意見ももっともだ。あんなのをいつまでも放置していたら何をするかわからない。倒すに越したことはないだろう。
「まあ、次に会ったらなるべく倒すようにして、無理なら今回は逃げるってことにしようぜ。これで俺たちが殺されるのは御免だ」
「ええ、そうね。いーすんとも約束したものね。無事に帰るって」
「ああ」
お互いに自然と微笑み合う。だが、俺はしばらくネプテューヌの微笑みを見て顔を赤くする。
「? どうしたの刀哉?」
「い、いや! なんでもない! もうそろそろ行こう――」
ガコンッ! パガッ!
「「えっ?」」
俺が立ち上がる時に手を置いたところのブロックが抜けた。それと同時に俺たちの下にあった床が左右に開いた。…もうこの先はわかるよな?
「もう落ちるのは嫌だあああぁぁぁぁぁ!!」
俺たちは重力に従って落下を始めた。でも、ネプテューヌはユニットを展開してすぐに飛んだ。
「刀哉! 早くこっちへ!」
ドゴーンッ!
「「!?」」
ネプテューヌが俺を助けようとした時、突如上から爆音が聞こえ俺たちは上を見た。すると上からは崩れ落ちた瓦礫が落ちてきていた。やべぇ! このままじゃ潰れる!
「刀哉!」
「ちょっ!? ネプテューヌ!?」
ネプテューヌは俺を自分の胸に抱きしめる。大きくて柔らかい感触が顔に当たって俺は軽いパニックになる。だが、
ドガッ!
「ぐっ!」
「ネプテューヌ!?」
ネプテューヌの頭に上から落ちてきた瓦礫が直撃する。しかも、意識が完全に飛んだのか、女神化が解けていた。
「おいおい、冗談だろ?」
俺には飛ぶ方法も上の瓦礫をどうにかする術もない。俺はネプテューヌを抱きしめ、死を覚悟して目を瞑る。だが、俺は急に意識を失った。
――――――――――
――ようやく見つけた――
「…はっ!?」
俺は突然頭の中に響いてきた声に驚き目を覚ます。そして、周りを見ると
「なんだ、此処…?」
そこには紅い空間が広がっていた。こういうのは普通白い空間じゃないか? って何をのん気に考えてるんだ! それよりも、
「誰だ!?」
先程聞こえた声の主を確認するために、声を出す。
――俺を使うのに相応しい人材――
「おい! こっちの質問に答えてくれよ!」
――長かった。本当に長かった――
ダメだ。全然こっちの話を聞いていない。クソッ、どうにかして此処から出ないと…!
――心配しなくても大丈夫だ。長居はさせないし、ちゃんと元の世界にも戻すよ――
「あれ? 声聞こえてたのか?」
――当たり前だ。念のために言っておくけど、此処の空間そのものが僕のようなものだ。それなのにあんな大声を出されたら、嫌でも聞こえるぞ――
「……すいませんでした」
俺は頭を下げる。向こうからしてみれば耳元で大声を出されたのと一緒だ。たまったもんじゃないだろう。
――いや、構わない。いきなりこんなところに連れてこられたんだ。パニックになるのは仕方のないことだよ――
「ああ、どうも」
――それはそうと、今回呼んだのは自己紹介のためだよ。早く帰りてぇんなら、さっさと終わらせようぜ。あと、敬語じゃなくて良いよ――
「わかった。本来ならそちらから名乗ってほしいが、一刻も早く帰りたいからな。俺は紅崎刀哉だ。よろしく」
――ああ、よろしく。俺の名はグラン。いずれまた会うことになるから詳しいことはまた今度だね――
その声が聞こえた瞬間、俺の目の前が白く光る。
――じゃあね、刀哉。頑張って生きてくれよ――
そして、俺は再び意識を失った。
――――――――――
「…んっ?」
俺が目を覚ますと、そこは広場のようなところだった。周りを見ると先程の瓦礫が散らばっていた。
それにしても、さっきのは一体?
しかし、瓦礫をしばらく見てると俺はあることを思い出す。
「そうだ! 確か急に落ちて…! ネプテューヌは!? おい、ネプテューヌ!」
俺は大声でネプテューヌを呼ぶ。すると、
「アイタタタ…」
「ネプテューヌ!」
少し離れたところの瓦礫が動き、その下からネプテューヌが出てきた。俺は慌ててネプテューヌの傍に行く。
「大丈夫か!?」
「…あ、刀哉。うん、なんとか――いっ!?」
ネプテューヌは話している途中で頭を押さえる。やっぱりさっきの瓦礫で怪我をしたのか。
「ちょっと見せてみろ」
「えっ!? だ、大丈夫だy――」
「いいから見せろ」
「……わかった」
ネプテューヌの後ろに回り、頭を見る。血は出てないが少し傷ができていた。俺をかばったせいで…。
「待ってろ。ネプギアとイストワールさんからもらった治療道具が有るから、手当てするぞ」
「い、良いよ。大した怪我じゃ――」
「俺のせいでこうなったんだ。治療くらいさせろ。それに、自分じゃ治せないだろ?」
「……うん。ありがとう」
しばらくして、簡単にだが治療は終わった。
「帰ったら念のためコンパさんに診てもらうぞ」
「うん、わかった。それにしても、此処は何処なんだろう?」
「さあな。落ちてきたのは確かだが…ん?」
パッと見ただけだと瓦礫以外には何もなかったが、ふと目を向けた方の遠くに何かあるのが見えた。瓦礫のせいでほとんど隠れてるが、瓦礫ではない何かがそこにあった。
「なあ。あれはなんだと思う?」
「ねぷ?」
俺が指を差すとネプテューヌもそちらに目を向ける。
「こっからじゃ遠くてわからないよ。行ってみよう!」
「あっ、おい!」
言うのと同時に走り出すネプテューヌ。俺も慌てて追いかける。
近づいて改めてそれを見ると、それは地面に突き刺さっている一本の大剣だった。全体的に深紅の色で染まっているその大剣を見てると、先程のドラゴンを思い出してしまう。
「おお! これはきっとアレだよ! 選ばれし者しか抜けない特別な武器だよ!」
「いや、確かにそういう雰囲気だけども…」
これもまた罠なんじゃないのか?そんなことを考えていると、
「よっ! こい…! しょっ!」
ネプテューヌが大剣を引き抜こうとする。って何してんだよ!?
「だから少しは考えろって! これも罠かもしれないだろうが!」
「んーっ! ふーんっ!」
「いつまで引っ張ってるんだよ…。抜くんならさっさと抜いてくれ」
もう止めるのは諦めて罠にすぐ対応できるように身構えている。だが、ネプテューヌは突然力を抜く。
「ん? どうした? 抜かないのか?」
「…抜かないんじゃないよ。抜けないんだよ!」
「………はあ?」
俺はネプテューヌの発言に唖然としていた。女神はシェアのおかげで普通の人間よりも身体能力が高い。その女神が地面に刺さった大剣を抜けないなんて信じられない。
「その顔は信じてないね…! それじゃ刀哉がやってよ!」
「…わかった」
嘘はついてないみたいだ。ネプテューヌもこういう風に必死にしてる時はあまり嘘をつかない。
俺は腕捲りをして集中する。女神であるネプテューヌが抜けないのなら、普通の人間の俺には到底抜けないだろう。だが全力でやらなきゃネプテューヌは納得しないだろうしな。
俺は大剣の柄を掴み、ありったけの力を込めて引き抜く!
「うおお――」
スポッ
「――おおぉぉぉぉぉぉ!?」
大剣はあっさり抜けた。刺さっていたとは思えない程にあっさりと。
だが、抜いた勢いが止まらず俺は後ろに倒れ、
ガンッ!
「――ッ!!」
床に後頭部を強打した。尋常じゃない痛みが頭全体に響く。悲鳴すらちゃんと出せない。
「と、刀哉。大丈夫?」
「いや…っ! 大分ダメだ…!」
ネプテューヌも俺の様子を見て、今回ばかりは笑ってない。心配そうにこちらを見ている。
というかマジで痛い。傷が出来なかったのが不思議なくらいだ。
「っあ~。ようやく痛みが引いてきたぜ」
「本当? 良かったね! 二人とも頭怪我してたら、いーすんが怒ってたと思うよ」
言われてみればそうだ。良くもったぞ、俺の身体!
「にしても、この剣」
俺は引き抜いた大剣を振るう。ブォン!と大きめの風切り音がなる。これだけ聞いてると重量感はかなり有るんだが、
「なんつーか、見た目よりずっと軽いな」
そう。この大剣、見た目は普通の剣の倍以上の幅はある刀身なのに、重さをほとんど感じない。修学旅行で買った木刀の方が重く感じる。
「えっ? そうなの? それじゃ、私にも持たせて!」
「わかった、わかった。乱暴に扱うなよ?」
俺はネプテューヌに大剣を手渡す。
「ねぷっ!?」
「いきなりかよっ!?」
渡してから一秒も経たない内にネプテューヌは大剣の刀身を床にぶつけた。ふらついてから落とすよりは良いが早すぎるだろ…。
「と、刀哉!? 本当にこの剣が軽いって言ってる!?」
「え? ああ、そうだけど」
「これ、持ち上がんないよ…! 落とさないように支えるので精一杯だよ…!」
「……マジで?」
ネプテューヌは普段の姿でも十分俺より力が強い。そのネプテューヌが持てない物を俺が持てる訳がない。だが、俺はあの大剣を軽々と持てた。俺だけは軽く感じるのか?
「と、刀哉…! そろそろ限界…!」
「ああ、ちょっと待て!」
俺は慌ててネプテューヌの持っていた大剣を持つ。うーん、やっぱり軽いな。
「ふう。あと少し遅かったら腕がお亡くなりになってたよ」
ネプテューヌが腕を振るいながら言う。…そんなに重いのか?
「………」
俺は自分の身体を一度見てみる。落ち着いてから気がついたが、先程まで有った疲れが感じられない。力の方は…。
「……おらっ!」
ドゴンッ!!
近くに有った瓦礫に拳を叩き込んでみる。すると、完全にという訳ではないが半分くらいが砕けた。…若干痛いが、手も傷ついていない。
普通の人間にはできないようなことを平然とやってのけてしまった。
「おお! 刀哉そんなに力有ったっけ?」
「いや…。多分だが、こいつを持った時に俺の中の何かが変わっちまったんだろう」
俺は改めて大剣に目を向ける。見ているとその深すぎる紅色に飲まれてしまいそうになる。その時、
ドゴォン!
「「!?」」
上から何かが落ちてきた。だが、落ちてくる時に一瞬見えてしまった紅色でいやでも落ちてきたものが何かわかってしまう。ネプテューヌも俺と同じ考えに至ったのか、すぐに女神化をする。
「…刀哉」
「ああ、あいつだよな…」
土煙がようやく晴れる。そして落ちてきたものの姿が見える。
「■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ !!!!」
予想通り(当たってない方がよかったのだが)、落ちてきたのは先程の紅いエンシェントドラゴンだった。
「それで、ネプテューヌ。俺は早速この剣と強化された身体能力を試すつもりだが…。逃げるか?」
「いいえ。私と今の刀哉ならこいつもきっと倒せるわ!」
「嬉しいこと言ってくれるな」
お互いを見て微笑み合う。そうさ! 今の俺たちならできる!
「■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ !!!!!」
「っと。いい加減にやっこさんも待ちくたびれてるみたいだ。それじゃ、行くぜ!」
「ええ!」
俺たちは同時にドラゴンに突っ込む。大切な初陣だ。絶対に倒す!
はい、一応強化された主人公でした…。いや、違うんです。本当は戦闘シーンも書こうとしたんですが、思った以上に長くなってしまい、これ以上書いたら見辛くなるのではと思いこのようになっただけです。
ケッシテ、オモイツイタモノヲソノママカイタラコウナッタワケデハナイデスヨ?
はい、すいません。見苦しい言い訳でしたね。それに今までと変わんない書き方ですしね。私には計画を立てるなんて無理でした…。
次回こそは主人公が暴れます。人外になったその力を存分に出してもらいましょう!
あ、それと途中出てきたグランは本当に当分先に再登場の予定です。また、予定変更の場合も有るので頭の片隅に置く程度にしてくれれば良いです。
それでは、さようなら。