プリンセスコネクト改   作:咲良餅

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 騎士くんの魂は入れ替わりました。ばいばい。


1.転生

 オレは夢を見ていた。

 

 内容はあまり覚えいない。

 

 戦っていた気がするが、所詮“気がする”だけだ。

 まったく定かではない。

 

 

 ??

 なんだ、誰かいるのか?

 

 

「おはよう」

 

 

 女性の声? 若いな。

 

 

「ごめんごめん、起こしちゃったわね。

 まだ寝ててもいいわよ、あたしも作業に集中したいし……。

 あんたの相手、してる余裕ないから」

 

 

 あんた?

 ぁあ、ダメだこりゃ、頭が重すぎる。《キアリク》でも掛ければ治るかね。

 ……お? きありく??? 

 あー、だぁもぉ、重すぎる。

 

 

「ん? 『あんた誰?』って顔してるわね。

 こっちはあんたのことをよく知っているのに……。

 初対面みたいな反応されると、やっぱりちょっと凹んじゃうわ」

 

 

 こいつとは、初対面じゃないのか、ね。

 さっぱりだ。

 

 

「あたしは……まぁ、アメスとでも名乗っておくわ。

 最近は、もっぱらそう呼ばれているから。

 無理に覚えなくてもいいわよ、どうせすぐに忘れるだろうし」

 

 

 どうせすぐに忘れる?

 要領得ないが、んなら自己紹介するな。

 

 

「うん。

 これも、夢みたいなもんだから」

 

 

 神かなにかを気取っているのか、こいつ……。

 一体何者だ。

 

 

「あたしは見てのとおりボロボロにぶっ壊れててさ。

 自己修復が終わるまで動けない。

 現実に、関われないのよね」

 

 

 見ての通りと言われてもな、靄で見えん。

 

 

「だから。

 あたしの代理として、

 あんたには『ガイド役』を派遣しといたから」

 

 

 おい、聞いてるか?

 ……そもそもこれ喋れてるのか?

 

 

「あんたの人生。つまり現実における水先案内人ね。

 詳しい話は、そっちに聞いて」

 

 

 派遣って……なんか不安だな。

 契約更新タイプのバイトちゃんだろ?

 

 

「おっと。

 ごめん、今回はこの辺でお別れしなきゃいけないみたい。

 もっと、いっぱいお喋りがしたかったけど」

 

 

 うん、喋ってるのお前だけな?

 

 

「現実は過酷よね。

 でもいつまでも夢は見てられないから」

 

 

 さっき、ここは夢みたいなもんって言ってなかったか?

 

 

「夢みないなもんよ」

 

 

 聞こえてんのかよ。

 

 

「なんて、あんたなら上げ足取ってくるんでしょうね」

 

 

 ……この女、強かだな。

 

 

「じゃあ、またね。

 あんたの人生が、現実が、幸福であるように祈ってるわ」

 

 

 

 

 

 

        ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 エロフだ、エロフがいる。

 間違えた。

 エルフがいる。

 

 上体を起こした青年は、気怠さを纏った思考でありつつも、そう思った。

 自らの装いを確認すると、それなりに丈夫なつくりをしたコートに、簡素な直剣を持っていた。手配した記憶は、もちろんない。

 

 

「はじっめ、ちょろちょろ……♪ な~か、ぱっぱ……♪

 あかっご泣いても、蓋とるな~……」

        

 

 彼らは草原にいた。

 緩やかな草原の丘の上だ。見晴らしがよく、そばに清流たる池があり、空気も澄んでいる。

 

(転生のショックで記憶整理が追い付いていないが、大きな支障が出るほどじゃなさそうだ。

 ん? “転生”??

 あぁ、そうか。そうだった。

 ドラゴンクエストの世界に転生して、魔王と戦って、魂砕けちまったんだった。

 まぁ相打ちになったわけで、及第点だろうよ。

 消えかけの魂でレティスに転生させて貰えて有難かった。

 神鳥の魂は転生の代償としてオレに融合されたが、こいつは本望だったのかね......。

 こいつの分まで今世は謳歌しないといかんな。

 人と龍神族と神鳥のサラブレットか。いいね)

 

 彼は転生者。

 1度の転生を経て、この世界に転生してきた者である。

 神話の傑物に愛されたが故なのか、その魂は極楽浄土へ行くことなく、成し遂げた偉業を対価に新たなる生を受けていた。

 

 

「はじっめ、ちょろちょろ……♪ な~か、ぱっぱ……♪

 あかっご泣いても、蓋とるな~……」

 

 

 

 飯盒で飯を炊いている銀髪のエルフはまだ歌っていた。

 とにかく、こいつから情報を得なければと、青年は彼女に話しかけた。

 

 

「あー、そこのエルフ。

 何者だ?」

 

 

 背後からの問いかけにそれなりに驚いたようで、エルフは肩を跳ねさせて振り向く。

 振り返るその顔にはまだ幼さが見え、体つきも今だ子供っぽさが垣間見えた。

 歳にして14~17といったところだろうか。ただエルフなので正確なものは何一つ分からずじまいである。

 

 

 

「お目覚めになられたのですね、主さま」

「『主さま』?」

「わたくしは、

 偉大なるアメスさまによって派遣されたガイド役……、名前は、コッコロと申します」

「アメス? あ。あー」

 

 

 鈴のような綺麗な声をしている彼女が使った単語で、青年はいくらか記憶を思い出した。

 

(思い出した。

 確か転生先の世界の管理者の様な位置にいるやるだ。つまりこの世界の神もどきだ。

 レティスが言ってたわ。あーはいはいはい。

 思い出してきたぞ。

 こっちの世界の管理者がサポートをつけるって言ってたと、レティスのやつ言ってた言ってた。

 このエルフがそうなのか。

 アメスにしても、記憶が抜けちまってるが、もしかすると転生段階で会ってるかもしれないなオレ)

 

 前世での仲間との冒険、乗り越えた試練の数々を嚙みしめたいところだが、今は情報収集がさきであると、青年は聞き耳を再開する。

 

 

「どうぞ、以後お見知りおきを。

 主さまをお守りし、おはようからおやすみまで……、

 揺り篭から棺桶まで、誠心誠意お世話するのが、わたくしの役目でございます。

 何なりとご用命を、主さま」

 

「オレは、エイt――いやオクトだ。

 ただのオクト。よろしく頼む」

 

 

 転生してるしな、前の名前じゃない方がいいだろう。

 

 

「おや、ハッキリとされておりますね。

 アメス様からは、主さまは記憶や意識が混濁されていることだろうと伺っていたのですが」

「あいにくただの人間じゃないんでね。

 結構丈夫なんさ。主が丈夫なのは、従者としては良い事だろう?」

「はい、うれしい限りです。

 ご尊名、アメスさまから伺っていたもので間違いないようです。

 わたくしのお仕えする主さまですね」

「なに? アメスがオレの名を?」

 

 

 どういう事だ? 予知か?

 今考えたんんだがな……。

 

 

「数字の8を意味する名であると伺っておりました。

 たしか『オクト』は古代文明の言葉でそれに該当するものであると存じております」

「あぁ。なるほど、レティスだな。

 オレの性格を知ってやがるな」

「レティス? ですか?」

「知らなくていい。

 それより、ほら」

 

 

 飯盒のご飯が炊けていた。

 失礼いたします、と料理に戻ったコッコロは笹の葉の様なものの上に米を取り分け、握りにするとオクトの前に差し出す。

 と、何故かオクトの様子を窺うように表情が曇っていた。

 おにぎりを受け取りながら、オクトは眉を顰める。

 

「どうした」

「よもや人違いなのでは、などと疑って申し訳ありません。

 ご不快でしたら、何なりと罰をお与えください」

「気にするな。よくわからんしな。

 少し記憶は安定したが、この世界の情報はほぼ無いんだ。

 気にするなら、従者としてよろしく頼むぜ、といったところだな」

「はい。

 アメスさまからの託宣によると、主さまは『ほとんどの記憶を失っている』ようなので……

 わけが分からない状態でしょうけど、わたくしがお導きしますので、

 ご安心を」

 

 

 オクトは思い出した。

 そういえば転生して記憶がないのではなく、記憶を失っている設定になるだろうと、レティスに言われていた事を。

 

 

「あぁ、頼むわ」

 

 

 

 軽食を済ませ、残った米をお握りにしてコッコロが仕舞うと、2人はコッコロが拠点としてる最寄りの町へと向かう事になった。

 

 

「はァ……? 空から降ってきたのか」

 

 

 オクトは空から降ってきて、あの草原に落ちたらしい。

 コッコロはアメスからの託宣で指定の場所たる先の丘にいただけであり、風を切る頭上の音に反応して上を向いた時には既に遅かったようだ。

 彼女は飛行型の魔物かと警戒し、槍を構えていたため、手放して受け止めるにはタスクが高すぎた。

 

 

「はい。

 しかし若草が地面である事と、おそらく主さまの打ちどころがわるくなったのが幸いしたようでして、目に見えるお怪我などされておりませんでした。

 覚えておれないところを鑑みるに、恐らく落下中から意識がなかったものと思われます。

 念のため、あたくしのほうで癒しの魔法は掛けさせて頂きましたが、心地よい寝息をされておりました、よ……?

 主さま?」

 

 

 オクトは、足を止めて街道の茂みを凝視していた。

 その茂みは、後方50メートル程か。街道から少し離れたところにあった。

 

 

「コッコロ、武芸の覚えはあるか。

 それは、飾りじゃないんだろ?」

 

 

 それ、と言われて背中の槍を手に取るコッコロ。

 オクトの雰囲気からか。荷を下ろし、街道の隅に置いた。

 

 

「はい、まだまだではありますが腕に覚えがございます」

「よし、なら――」

 

 

 ――《ヒャド》

 

 

「主さま?!」

 

 

 コッコロは主の眼前で生成された人の頭ほどの氷塊が、繁みに向かって放たれたことに驚愕していた。

 彼女は彼が何をできるのかを、アメスから聞いていないのだ。

 次の瞬間、繁みからぐもった鳴き声が聞こえる。

 それが魔物のものであると判断した為、腰を落として槍を構えた。

 

 

 5体の狼型の魔物、ウェアウルフが繁みから飛び出した。

 涎を垂らしながら、ひどく興奮してオクト達に駆け寄ってくる。

 

 

「お下がりください!」

 

 

 オクトの前に飛び出たコッコロは、注意を飛ばした。

 

 

「あぁ、見せてくれコッコロ、お前の腕を」

「はい!」

 

 

 

 異世界、アストルム。

 初の戦闘である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ぺこちゃんは、次回以降です。
まだ書いてないので、わかりません。

一定以上人気あったり、要望が一定通以上頂ける様でしたら続き書きます。
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