あるゲイクイーンの話 withスプラトゥーン2   作:カトラス@リトルジャックP

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水タバコを吸うゲイクイーンと、友達なだけの俺

ここはイカした若者が集まる最も熱い街、ハイカラスクエア

 

そんな街のあるカフェテラスに一匹のアヤしい若いインクリングが居た、ボーイなのかガールなのかパッと見では分からない風体だった。

 

 

その彼は気怠げに水タバコを吸っていた、居ない訳ではないが喫煙者を嫌う者も多い時勢に日中の路上で吸う者は珍しく彼の見た目のアヤしさからも目を引いた。

 

 

『おっす、よう』

 

そんな彼のテーブルに彼とは対照的な厳つく健康的なボーイが座る、彼は片手を挙げて対応を示したのみで吸い続ける。

 

『調子どうだ?』

 

アヤしい若者が口を開く、低い声だった…ボーイなのだろうか。

 

『いいぜ!お前は?カトラス』

 

強面な方がそう返す、”カトラス”、それが彼の名なのだろうか?

 

『そうだな、順調だよ』

 

そう言いながら彼はこちらを、と言うよりは筆者と目線を合わせてきた。

 

健康そうなボーイもこちらを睨みつけてきたので身の危険を感じた筆者はその場を去る事にした、インクリングの生体捜査も楽ではない。

 

 

―タコゾネスの調査員の報告レポートより

 

――

 

俺は故郷じゃとんでもない跳ねっ返りだった。

 

誰彼問わず、大人だろうが先輩だろうが関係ねえ、先公もスクールカーストもくだらない、”気に入らねえヤツはぶん殴る”。

 

相手が誰だろうと構わず”気に入らねえヤツはぶん殴る”、それが俺の世界のルールだった。

 

 

そんな俺は当たり前に孤立し、当たり前に親を困らせ、当たり前に友達も少なかった。

 

そんな俺にも友人と呼べる様なヤツが一人居た、そいつは俺とは違うが俺と同じく孤立した口だった。

 

こいつは変わり者で、性別の境が曖昧なイカの中でも特異な、男性体のまま女性的な服装や口調を好むヤツだった。

 

故にいじめられて、理解されずだった、俺は気に入らねえからぶん殴っただけだ。

 

意図せずそいつは俺の数少ない友人になった、ヤツの事だって何度も殴ったのにそいつはそれでも俺と対等な関係であろうとした。

 

 

 

そして、俺達も歳を取り、完全なヒト形態になれる様になった。

 

その少し前からヤツが男相手に身体を許す様になったのも知っていた、タバコも始めた様だった、心配はしてたが俺は友達であってお袋じゃねえから他人の”生き方”に口を出す気はねえ。

 

 

そんな中でヤツがいよいよ故郷に居れなくなった、曰く「地元権力者のガキと痴情の縺れで揉めて親にも見捨てられた」らしい。

 

ヤツはどこか都会に逃げると言ってきた、なんだかんだ腐れ縁だったからな…俺はヤツに二人でハイカラスクエアに行く話を誘ってみたんだ。

 

 

――

 

==ワプスタサイド==

 

そんなこんなで俺達がハイカラスクエアに訪れて半月が過ぎた。

 

もう二人共すっかり都会っ子なランク50だ。

 

そんな訳でこうして水タバコを吸ってるのが俺の相棒の【カトラス】だ、本名じゃないがあいつは過去を捨てたがってるしな。

 

そもそも都会のイカした若者じゃ本名を言わずに思うままに名乗るのが文化だ、俺も【ワプスタ】と名乗ってる、当然本名じゃない。

 

 

俺達はたまに協力するし生活ではいろいろ世話し合ってるがバトルではその場に合わせて敵となり味方となり拘り無く楽しく過ごしている。

 

そんな訳で別に友達以上でも以下でもない、こいつがボーイなのが伝わりにくい所為で誤解されるが別に付き合ってもない。

 

 

==カトラスサイド==

 

穏やかだ、昼の陽光を浴びながら水タバコを吸う時間に勝る至福はない。

 

『そんなにいいのか?』

 

おっと口に出ていたらしい、私の親友がそう聞いてきた。

 

『お前も吸うか?私のお気に入りのチャイラテフレーバーだぞ』

 

『いや、俺はいい』

 

『そうか、だろうな』

 

そうして話は終わった、私達は友人だ。だから多くを語り間を埋める必要はない、共に時間を共有しているだけで穏やかに居られる仲だからね。

 

 

陶酔の中で私は思う、【スピナーを撃ちたい、あの振動と戦闘の高揚を味わいたい】と。

 

『なあワプスタ、今からナワバリに行こうと思うんだけどどうする?』

 

『おう、いいぜ…じゃあ先行ってるからな』

 

そう言ってヤツは去っていった、私が水タバコを家に持ち帰り使用後の処理をするのに時間が少し要るのをヤツは知ってるからね、得難い事だ。

 

 

==ワプスタサイド==

 

あれから三試合のナワバリバトルを行っている、俺はスプラシューターコラボを使う、自分で言うのも何だがかなりの使い手だ、俺は自分に自信があるね!そうでなきゃ現実に打ちのめされるさ。

 

 

そしたら相棒が混じってきた、まだ少し酔っている様だがこいつのスピナーも確かなもんだ。

 

 

バトルが始まった、ヤツは今回味方に居た、場所はホッケふ頭だ。

 

俺はまず前に突撃、ヤツは上のルートに向かって上からスペシャルを貯めてマルチミサイルを使ってから下に降りてくるのが定番の動きだ。

 

 

==カトラスサイド==

 

『ヒャッハハ、良いねぇ』

 

ドドドドドッ!、とスピナーが道を開く、この音と振動がとても心地良い。

 

『貯まった!マルチミッソッ♪』

 

三体ロック!発射!!

 

そして下に着地して通路へ射撃しながら突っ込む、もちろん中程で戻る。

 

中央からマニューバーが突っ込んできた!通路に下がり必要なら隠れられる位置から掃射、スライドで退いていくところにクイックボムを投げてもう一回掃射してトドメ。

 

ヒャッハハ、この感覚最高だよ!

 

 

==ワプスタサイド==

 

左ルートを完全に通した!後ろにもデュアルスイーパー使いが付いて来てる。

 

攻めて攻めて勝つ!

 

中央ルートからスピナーの広範囲塗り支援が来た、ヤツだな!

 

 

そうして攻め続けてそのバトルを勝利した。

 

バトルを繰り返してしばらくしてスケジュール更新が行われた。

 

 

それでヤツとハイカラスクエアで合流しようとしたのだが。

 

「へい彼女、俺達と遊ばない?」「なあなあ良いだろ?」

 

ヤツがナンパされてやがる、アホな奴らだ。

 

『うーん、どうしようかな?いきなり三人ではねぇ』

 

しかも乗り気だからなぁあいつ、しゃあねえ。

 

「声低くてかっこいいっすね彼女~」

 

『ようカトラス!』

 

俺は駆け寄って声を掛けていく。

 

「ん?彼氏?」「あんだよ男居んのかよ」

 

『…お前らそいつ男だぜ』

 

「…へ?」「えぇ?」

 

「「……ええぇッ!!!」」

 

『まあ、それは覆り様がない事実だからね。それでも良いなら四人で…』

 

「いやその!」「辞めときます!!」

 

二人のナンパボーイはさっさと逃げていった、二人共ランク15そこらだったな…丁度都会に毒されてきた田舎モンだ。

 

『行っちゃったな、しかし君が咎めるとは珍しいね』

 

ナンパされた本人は気にも掛けず壁に寄りかかってアヤしく笑うのみだ。

 

『いや、お前の在り方を咎める気はねえよ。けどお前が男だって知ったぐらいで逃げ出す様な輩がお前さんを御す事は出来ねえだろうからな』

 

『ふぅん、もし”それでも良い、一夜を共にしたい”と言ってるヤツだったら?』

 

『好きにしろよ、お前の人生だ』

 

つっけなくそう言うとヤツはとても嬉しそうに笑う、相変わらず変なヤツだ。

 

 

==カトラスサイド==

 

 

男を拐かすのは私の最も好きな遊びだ、私の人生はそれで出来ていると言っても良い。

 

女になりたい訳でもない、ただこの中性的で中立的な姿が最も美しいのだと私は考えている。

 

アヤしく微笑んで見せれば男は寄ってくる、楽しいモノだ。

 

 

今日は親友に邪魔されたけど、ヤツは私がどんな存在か理解してる、”した上で今の有り様を受け入れてくれる”…本当に得難いヤツだ。

 

こいつとは対等にありたいモノだ、こいつの”色”になるのも考えたが…

 

初めから私に魅了されるでも嫌悪するでもなく、自分の矜持の為だけに時に私を、時に私を傷付ける者を、殴り続けた彼だけは…”対等に友でありたい”と願う。

 

 

『…まあ詫びでもないがなんか飯奢るぜ、行こうぜ』

 

そう言って手を差し伸べてくる彼に私はいつもみたいに微笑んだ。

 

『ええ、素敵なデートだね』

 

二人はそうして夕焼けのハイカラスクエアに消えていった。

 

Fin

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