あるゲイクイーンの話 withスプラトゥーン2 作:カトラス@リトルジャックP
ここはイカした若者が集まる最も熱い街、ハイカラスクエア
五日前に遭遇した”カトラス”と言うインクリングの観察をする事にした、理由はこのカフェのチャイが美味しいからまた来店したら翌日も翌々日も居たからだ。
ここ三日の観察の成果として、【検体:カトラス】は毎朝十時半~十二時の間にここに朝食を食べに来る事が判明した…インクリングにしては早起きが出来て時間を守る方だと言う事か。
彼はここでは肉や野菜の類は食べず、毎日豆と穀類しか入ってない様な料理を食べている…これはコシャリと言うらしい、なかなか興味深い。
それを食べ切ると、水タバコを吸いながら最低でも一時間はここに居座る…二日連続で開店の五時半から居る私にだけは言われたくないだろうが…
時間を気にしている風でもないが一時から二時の間にはここから移動する、今日はこの店を出た後にどこに向かうのか観察しようと思う…危険もあるが試す価値はある。
観察記録、【検体:カトラス】は13:42に移動を開始、追跡を開始。
観察記録、【検体:カトラス】の自宅と思しき場所に到着、平凡な若者が住む安い集合住宅だ…
四階の400号室、一番階段とエレベーターが近い部屋だ、
…その時私は迂闊だった、部屋の扉が開いていたので興味本位で覗いたら口を押さえつけた上でデリンジャーを胸に押し当てられたのだ。
そのまま部屋に引きずり込まれて目的を聞かれた、仕方がないので自分がタコゾネスの諜報員であると告げた。
彼は多くのインクリングの例に漏れず、イカとタコの戦争に関心がないらしく解放してくれた。
そうだ、自分は腕っ節が弱いから諜報員などやっているのだ…
…観察記録、【検体:カトラス】は今日も10:43に”カフェ睡蓮”に来店、私の事如きで習慣が変わる事はない様子だ。
観察記録、【検体:カトラス】は私のテーブルに座った、それ以外は変わりない、水タバコを吸い、コシャリを食べ、サトウキビジュースを飲みながら水タバコを吸い続ける。
【検体:カトラス】との他愛ない話は興味深い事も多い、大概のイカ達にある単細胞で楽天的なイメージとはかけ離れたイカである、その分”非常に享楽的で自己破壊的な欲求を受ける”。
彼は曰く”ビッチ”らしい、一人の諜報員として訓練されたタコゾネスとして見て居るに、彼は”破滅願望を抱えたまま代償行為として性交渉やバトルを求めている様に思う”、精神医療を受ける事を勧めたいがそう言い放った後にどんな反応が返ってくるかが怖いので辞めておく。
それに楽天的なイカの社会ならばこの程度の破綻者は受け止めるだろう、彼はこうして誰にも害を与えずに快楽を貪り己を保持している、また彼と寝床で遊んだイカもおそらく彼の考えなど理解出来まい…自分の欲求を満たした事に満足して去るだろう。
…諜報員をして十六匹目の観察検体だが…イカを見るのも慣れた思っていたが……やはり、タコは真面目すぎるのだろう…こんなに一匹のイカの事を考えた事はない。
…これ以上は危険かもしれないが彼から得られるモノは少なくないと思われる、このレポートを本部に出し今後の方針を問い合わせる予定だ。
ともかく、こんなに寝苦しい夜はない…もう寝るべき時間を四時間も過ぎたのにまだレポートの内容を悩んでいる…
―タコゾネスの
――
『ボイスアーカイブ!ボイスアーカイブ!日時
なんて事だ、この第二次オオデンチナマズ奪取作戦で緊迫した情勢であんなモノを本部に提出したらそりゃこうなる!なんで気付かなかった!!眠れなかったからか!?
とりあえずタコの文明圏には居られない、しかし他種族の文明圏に逃れても諜報部の拠点に行けば捕まえてくれと言う様な話。
…どうしょうもなく追い詰められた私が思いついた場所は一つしか無かった。
09時27分、彼はまだ寝ているはずだ。
ドンドンッ!
『開けて!開けてよ!!』
ドンドンッ!!
『開けてよ!助けてぇ!!!』
バンッ!!
いきなり扉が思い切り開いた、前回の来訪と違い油断してなかったのでそれは避けれた。
『…君か』
そこには開いた後に引いて半分閉じた扉を盾にN-ZAP85を構えた彼が居た、しかし私を見た瞬間に銃口を下げてくれた。
『どうした?酷く慌てているね』
彼はそう言いながら部屋に招き入れてくれた、玄関口で話す事でもない、一先ず付いて行く。
部屋にはインクリングのボーイが三人も寝ていたが彼が全員追い出して今に至る、酷くイカ臭い部屋だがまあ良い。
―
『…つまり、私に同情的な資料を上司に提出したら危険因子として排除された、と』
『命からがら逃げてきたけど…市民権もクレジットも停止されてる、咄嗟に財布を持ってきたけどイカの金は7,000Gぐらいしか持っていない』
『それじゃあほとぼりが冷めるまでは街に居た方が良いね、聞いた話だとハイカラシティの方だとここよりはタコを見る事は少ないらしいよ』
そう言うと彼は押し入れを開けた、服や布団はあまり無く、代わりに大量のブキが入っていた。
『一番愛用してるスプラスピナーと愛するバレデコ以外ならどれでも良いから一つ持っていくと良い、それでナワバリバトルに参加して身銭を稼いで居れば当分生きていけるし多分タコは最近廃れてるシティには行かないだろう』
感謝で言葉が出なかった、悩んだ末にジェットスイーパーを貰う事にした。
『…でも、あの資料を見たとしたらここにもタコが来ると思う、貴方はどうするのだ?』
彼は大して悩みもせず、
『…招いて君が居ない事を示して帰ってもらう、帰らない様ならベランダから家を捨てて逃げて外からポリスに通報するよ』
言い放つ、迷いがない、私の身の上からは何とも言い難く頭を下げるばかりだった。
『…最後に一つ聞いても良いだろうか?』
私は彼から借りた服で変装をして、見送りに一階まで降りてくれた彼に聞いた。
『何故、出会ったばかりの私を助ける?』
改めて考えれば当たり前だ、まだ出会って一週間程で対話したのはたった二時間余りだ。
『さてねぇ…君が私の話を真剣に聞いてくれたからだろうか?君は私の話を否定も肯定もせずに聞いてくれた、正直イカには聞き上手は少ないんだよ』
そんな理由なのか…ッ!!
バンッ!
突如突き飛ばされた私の立っていた場所にタコゾネス部隊のチャージャーが射出された、すると彼は迷わずバレルスピナーデコで射撃、周りにばら撒き突っ込んで来るタコゾネスを牽制した。
『走れ!ここで目撃者は全員倒す!ハイカラシティまで逃げられたら君の勝ちだ!!』
その声に立ち上がった私は走った無我夢中で走った。
途中でブキを構えた彼の友人ワプスタ氏と数名の腕っ節が強そうな使い手とすれ違った、おそらくは私を逃がす為だ…
==カトラスサイド==
シールドを投げながらマンションの入口で掃射、敵は数は多いが技量は大した事ない。
何より今朝はタバコをまだキメてないから変な興奮がない冷静な戦いが出来る!狙いも良く定まる!
上からは何人かのセフレがチャージャーやスロッシャーで援護している、おそらく階段には遠距離戦出来ないセフレがもうひしめき合ってるだろう。
とりあえずは一階のセフレ達とマンションの玄関に隠れながら射撃とボムで牽制を続けよう。
援護に呼びつけてあるワプスタと特に手練のセフレ達が後ろから強襲をかける事になる、もし襲撃がなければ乱パでもすれば良いと思って呼びまくって正解だった。
==ワプスタサイド==
あのバカめ!いつもいつも事情持ちとばかり関係を持ちやがって!!
あの時は男の借金取り!あの時は男に四股掛けられてマジギレしたガール共!あの時は男を田舎に連れ戻しに来た実家の連中!今度はタコだとふざけるな!!!
そんな事を喚きながらも俺はスプラシューターコラボを構えてヤツの愛人共と一緒に全力疾走している、これだけの騒ぎになればポリスも来るだろう。
また警察の世話にならなきゃいかんのか俺は!!またッ!!
とか嘆いてたら着いた、敵は目視で九体、これだけの味方と俺様が居れば片付く!!
俺達はボム持ちは投げ、先導していたホクサイ使いとそれに追従するローラーが突っ込み、それに射撃組が続く。
俺はイカダッシュからの正確な射撃で一人仕留めた、直後に二体目に銃口を向けたがそいつはチャージャーに射抜かれた。
「敵は三十匹だ!!もう半分は仕留めたぞ増援ッ!!」
五階のチャージャーがスピーカーで叫ぶ、玄関口からは大量のイカが出て来ていた。
『一人も逃がすなぁあ!!駅には絶対に行かせるなぁあああッ!!』
相棒がそう叫んでいた、ここに居るのは皆ヤツのセフレだ、忠実に殲滅戦に突入した…結果的に掃討戦であり飽和攻撃となった。
==カトラスサイド==
あれから四時間後、私達はタコゾネスをおそらくは全滅させた、
漏れはあるかも知れないが四時間掛けたのだからあの子は逃げただろう。
そして今。
『みんなッ!今日は本当にありがとう!今回の協力者の一部はポリスの厄介になってしまったけども”タコゾネスの攻撃への防衛戦闘であり市民権の行使”って事で事情聴取で済んで良かった!!』
「イェーイ!!」「ラッちゃーん!!!」「バンザーイィ!!」「kawaii!!!」「お嬢ぉおおッ!!」
「うおおおおおおっ!!」「ハッピぃー!!」「ラッちゃん!結婚してくれぇー!!」「やっぱラッちゃんが最高のアイドルだぜぇえええええ!!」
そう、あれから全員聴取を受けて今はあの戦闘開始から十八時間経っている。
みんな疲れているがご褒美がないとダメだろう、カラオケボックスの団体パーティ席をさっき取って今に至る。
ここで文字通りの乱痴気騒ぎをする訳だ、歌ってヤッてキメて塗ってのやりたい放題だ。
…一応一人だけ別口の親友にメッセを打っておくか…まだ歌で済んでる内にさ♪
==ワプスタサイド==
ああ…怒れずに済んだがまた警察沙汰だ…お袋に怒られる…
あいつは乱交パーティに行っちまったし、すっかり夜だし、やってらんねぇ…美味い飯でも食うかな…
~♪
メッセージだ、
【今回は本当にありがとう、助かったよ相棒
毎度毎度面倒事の度に出張ってもらって悪いね】
…ふん。
【気にすんなよ、今回は悪い事じゃねえからな】
送信っと。
~♪
【それで今日は私を殴らなかったのか…君の矜持に殉ずる在り方は実に良いね、尊敬するよ】
そうかよ、
【生きにくいぞ、真似しようなんか考えるなよ】
送信。
~♪
【だろうね、君の服のポケットに4,000G入れといたから美味しいモノでも食べてきなよ】
…こんな事ばかり上手くなりやがって…
本当に入ってたし、ステーキでも食いに行くかな。
―――
あれから私はハイカラシティで下宿を見つけて生活している。
彼は実に情報に長けていた様だ、シティではタコを全く見ない。
今でも彼とはメッセージを交換し合っている。
もうハイカラシティに来て二日、不自由は無い。
バトルも強い人やヤバい人が皆ハイカラスクエアに行ったらしく何とかやれてる。
そして今日も食料を買って下宿に帰ってきた。
……?
紙媒体の手紙が来てる、広告かな?
【諜報員ダリア氏へ
一昨日の君への粛清部隊は壊滅し、一部の者は任務に殉じ、大半の者はイカの政府に捕らえられた。
酷い被害だと言える、一方でこれは上層部の一部にある過激派の独断であり、糾弾されるべきは重要なこの戦局に過料な戦力を不必要な作戦に割いた参謀部の過激派であると私は思っている。
間も無くこの戦争も終わる、勝てるかは私の立場では何とも言えないが、私の個人的な感想としてはタコ側の劣勢を感じざるを得ない。
君の件についても私は問題のない内容だと思っている、私が若かった頃はイカとタコは共に生きていたのだ…
君の現在の罪状とそれに伴う市民権の停止については戦勝か敗戦の処理で有耶無耶にする事を約束しよう、上司としてこんな連絡しか出来ない私を許してほしい。
諜報部長官】
ッ!!!な…帰れるのか…私はいつかは故郷に帰れるのか!!
これは嬉しい知らせだ!
…そうだ、彼にメッセージを送ろう。
【長官が私の罪状を来たる混乱の際に有耶無耶にすると言ってくれた!!
私の命を救ってくれて本当にありがとう!!】
ふふふ、一時はどうなるかと思ったが生きてみるものだ。
~♪
返信来た!
【そうか、それはめでたいね
それはそれとして私は今チ○ポを咥えてて忙しいのだ、また今度にして貰えるか?】
……ふふふ、ははっ。
『これだからイカってヤツは、ふふっ』
私は笑いながら考えていた、土地の取り合い、エネルギーの奪い合い、性格の不一致、理由はたくさんあったんだろう…けれど。
何で戦争なんかしてるんだ?
イカもタコも協力して生きていく道は、本当に無かったのだろうか?
生まれた頃からタコ達がイカを憎んでいたのしか知らない若い私には、ひたすらそれが疑問だった。
…私が知らない歴史を知ろうかな、イカの図書館とか資料館もこのシティにあるだろう。
さて、料理をして食事を摂って寝よう、明日は朝から勉強をするぞ!