あるゲイクイーンの話 withスプラトゥーン2   作:カトラス@リトルジャックP

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豪雨に惑うゲイクイーンと、止めに行く俺

 

姿見鏡に映る両立的美。

 

中立的な美、両性的な姿、退廃的なエロス。

 

可愛さ、格好の良さ、美しさ。

 

 

理想では、

”ガールよりかっこ良く、ボーイよりかわいく、どちらよりも美しい”

私はそれを求めている。

 

 

水タバコを吸いながらスピナーを磨く、窓から見えるのは大雨…私とて豪雨のカフェテラスに居座る趣味はない。

 

朝食はどうしたものか、冷蔵庫を開けてみたが朝食に似付かわしいモノもなく、十時半はまだイカの社会は寝てる時間だ。

 

 

こんな日はこの手に限る、

 

【私の部屋に二人分の朝食を届けてくれる者、先着三名には今日一日私を好きにする権利を与える】

 

そうグループメッセージに貼っ付けておいた。

 

おそらくはあと二時間もすれば誰か来るだろう。

 

―ある豪雨の日の娼年

 

――

 

そして夕方の事、呼んだ男達は疲れて飽きてきて眠り。

 

私は彼らの買ってきたジャンクフードの残りを食べていた、これだけあれば今日一日分の食事にはなるだろう。

 

 

しかし雨が止む気配はない、外に出なくて良いのが幸いだ。

 

しかし私は何故かベランダに降りてみた、全裸故に剥き出しの肌が雨に濡れる…豪雨と言えどこの程度ならなんとか浸透圧で溶ける事はない。

 

…寒くて痛い、なのにそれが心地良くて気が休まるのだ…こうしているとふと故郷に居た頃を思い出す…

 

…満ち足りない、満ち足りない、満ち足りない、と藻掻いていた頃の記憶が…

 

…全裸のままレインコートを纏って歩く、都会だからこんな天気でも動いてるヤツは居るが激しい天候と色の濃いレインコートのお陰で違和感は持たれない…それに、

 

『ふふん、ふふっふ~♪らりら~♪ヒャッハハ♪』

 

豪雨の中で笑って踊り歌いながら覚束ない足取りで歩いている姿ならば、服を着ていないと分かったところで気の違えた若者としか思うまい。

 

 

 

そうして一人、裏通りをふらふらと歩く…

 

何故彼はこの様な在り方をしているのか、語るには少し過去を遡る事になるだろう。

 

 

彼が淫売になったのは幼き頃だった。

 

在る日の男達による陵辱だった、犯されるまま暴力に飲み込まれた。

 

だが何故、それを受け入れ続けたのか…それはおそらくそこに居場所を感じたからだ。

 

いつしか自分から男を誘う様になった…いや違う、おそらくは初めから男を誘う為に中性的な美を目指したのだ…女以上に魅力的な性対象を目指したのだ。

 

 

彼は餓えていた、愛が欲しいと願っていた。

 

…両親は愛していたはずなのだが?

周りにだって少ないが友人は居たはずだが?

教師や周りの大人だって自分の事を思っていたはずだが?

 

なのだ、そうなのだ、

”だが足りないのだ、いくらあっても満ち足りないのだ”。

 

 

 

愛が欲しい、愛して欲しい、自分を見て欲しい、

承認が欲しい、了承が欲しい、愛情が欲しい、

可愛いと言って欲しい、美しいと言って欲しい、愛していると言って欲しい、

存在を許して欲しい、有り様を許して欲しい、愚かさを許して欲しい、

信じて欲しい、愛して欲しい、見つめて欲しい、

もっと欲しい、もっと欲しい、満ち足りない、満ち足りない、

欲しい、欲しい、ほしい、ほしい…

 

 

 

彼は今尚気付かない、彼は”自分自身に愛して貰いたかったのだ、自分自身を赦してやりたかった”のだ…

 

幼き日に、男にも女にもなれず、男にも女にも厭われた自分自身を許したかったのだ。

 

『私は私のまま、こう在って良い』と、誰に言われるでもなく己自身がそう掲げたかったのだ。

 

 

―――

 

そんな訳で彼が当てもなくふらついて二時間、

 

『見つけたぞ、やっぱおんなじルート回ってたな』

 

『らりー…んぅ?』

 

バシッ!!トンッ!

 

「いきなり顔に裏拳入れたぞこいつ!!」「ワプスタさん容赦ないっすよ!!」

 

身体が冷えていたのだろうか…顔面に入った裏拳で朦朧とする頭では呼吸が上手く出来ない。

 

おそらく本命は二撃目のボディブローか…酸素が入ってこない…

 

そんな思考を最後に意識が途切れた…

 

……

 

 

 

==ワプスタサイド==

 

まず一言で言おう。

「こんな日に出歩くのはバカだ」。

つまりは不幸な事に俺の相棒はバカなのだ、別に今日に始まった事じゃない。

 

レトロテレビゲームをやってたら急にヤツの愛人の中では気の知れたのから連絡があって、

 

曰く「服もスピナーもあるのに本人が居ない」、

 

そんでヤツの部屋に行って確認したが他の服も揃ってるしタバコも揃ってたので”発作的な自傷行為”を仮定して好んで彷徨く場所を探したらビンゴだ。

 

 

とりあえず部屋に連れ戻してシャワーぶっかけてから暖房の入った部屋で寝かしている。

 

とんだ日だ…

 

 

『…おはよう』

 

起きたのか、まあそろそろか。

 

『おうおはよう、タバコ用意してあるぞ』

 

そう言って吸口をヤツに手渡した、普段からこいつを見てるし調べればやり方は分かるもんだ。

 

『…ふぅ…フレーバーを詰めすぎだ、詰まってる』

 

『そうか、悪かったな』

 

ヤツはそこでやっと起き上がった。

 

『調子はどうだ?』

 

そう聞かれてヤツは自分の手元を見つめて調子を確かめる様に深く息を着いてから答えた。

 

『…特に問題ない』

 

『そうか、なら良かったッ!』

 

ガンッ!

 

俺は思いっきり顔面を殴り付けた、ヤツも特に抵抗なく殴り倒された。

特に珍しくもない事だ。

 

 

『…全く無駄な心配させやがって…あいつらにも謝っとけよ』

 

『…彼らはどうしたんだい?』

 

倒れたままヤツは聞いてくる、表情は伺えないが無機質な声だった。

 

『事が済んだからか帰っちまったよ』

 

『まあ、エッチするだけの付き合いなんだから面倒はごめんだろうさ…』

 

そう言ってヤツは悲しげに笑う。

 

『そうか?袖触れ合うも他生の縁って言葉もあるぞ』

 

『それもそうだな…』

 

ヤツは相変わらず悲しそうだ、昔からそうだ。

 

事ある毎にこうして自傷しては俺がとっ捕まえに行く、故郷に居た頃からの流れだ…

 

俺自身慣れている。

 

 

==カトラスサイド==

 

…また我を失って自傷的奇行に走ったらしい、

こんな事はたまにある…特に決められたルーチンワークにイレギュラーが出始めると良く起こる。

 

今日は豪雨を見て居たら急に気持ちが不安定になったのだろうか…

 

それを例によってこの男が探した訳だ…

 

…そうだ、私はこの男を救いにしている…

 

この男は

”対等”

だ。

 

差別も決めつけも見下しも敬服も無く、

当然男と女も無い、”私そのもの”を見てくれる、こんな男はそうは居ない…

 

 

……実は私はもう知っている、【私は、私自身に愛して欲しいのだと知っている、だから今日まで足掻いてきたとも知っている】…

 

知っているけれど…自分を好きになるのはとっても難しいのだ、だから未だにこうやって情婦暮らしをしてる、”自分の本心を気付かない振りして目の前の快楽に身を任せる生き方に甘んじている”。

 

 

…生きるって難しいな

 

『俺もそう思うよ、だからお前さんだってそうだろうな』

 

おや、口から溢れていたらしい。

 

しかしこの男らしいコメントだ。

 

 

『…そこに冷えたハラペーニョバーガーがある、良かったら一緒に食べない?』

 

ヤツはそう言うと気を持ち直した様に明るく返した。

 

『おう、温めて来るよ…まだ寝てろ』

 

そう言って電子レンジを目指したヤツを尻目にとりあえずクレイトップから葉の一部を捨てて吸いやすくした、とりあえずこれで吸えたものになる。

 

…やはり今日は迷惑を掛けたな、皆にも謝罪しておかねば…

 

 

==ワプスタサイド==

 

本当に…生きるってのは難しいもんだ。

 

けれど俺は今の暮らしも悪くないと思ってる。

 

あいつと故郷を飛び出したのも実際”俺自身の居場所がねえから”だったしな。

 

 

チンッ!

 

『出来たぞ、冷蔵庫に飲みもんあるか?』

 

 

『ああ、コーラとストレートティーがあったはずだ』

 

そう聞こえたので俺は聞きもせずにコーラを二本取って部屋に戻った。

 

 

俺は座って瓶コーラの蓋をテーブルで飛ばした、二本共だ。

 

『まあ飲めよ、明日は晴れるはずだ』

 

ヤツはコーラを受け取りながら返した、

 

『もしまだ降ってたらどうするのさ?』

 

だから、

 

『そしたら俺の家に来い、二人でゲームでもしてようぜ』

 

俺は乾杯を促して言ってやった。

 

ヤツは少しだけ悩んだ後に、

 

『そうか、それも良いね』

 

と言って乾杯した。

 

 

==カトラスサイド==

 

本当に、こういうところが好きなんだよ。

 

なあ、親友。

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで夜は更けて、明日が来るのに先んじて二人でヤツの部屋に行ってダラダラとゲームをした。

 

いつか夜は明けて、ヤツの部屋から見た空は綺麗なスカイブルーだった。

 

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