俺は目を覚ますと、自分の部屋の布団の上だった。
「目が冷めましたか。」
「ああ、バゼット、投影の方はうまくいきましたか?」
「それなんですが、投影自体は成功ですが間桐桜から聖杯が取り出せたかはいまだ不明です。」
「なら、俺が間桐さんを解析すれば……」
「衞宮士郎、貴方は魔力回路を酷使して倒れたのです、しばらくは休んでいてください。」
「わかりました。」
会話が終わった時、襖が鳴った。
「どうぞ。」
俺は中に入るように言うと、タオルを持ったシエルが入いってきた。
「ああ、士郎君、目が冷めたんですね。」
「ええ、心配をおかけしました。」
「それはいいけど、士郎君、自分でふける?」
「ふくって、何をですか?」
「士郎君、気づいてないの?
顔、血で凄いことになってるよ。」
「え?」
自分の顔に触れると鼻の下辺りが、乾いた血で酷いことになっていた。
俺の顔が熱くなる。
さっきまで真剣な顔で解析すればとか言っていたが、傍から見ると、鼻血で顔を汚しながら真剣な表情をする変な奴にしか見えない。
「アハハハ……その様子だと気づいてなかったんだね。
じっとしててね、拭き取るから。」
シエルがお湯で濡らしてくれていたのだろう、温かいタオルで拭いてくれた。
「良し!これでもう大丈夫。」
「ありがとうございます。」
「士郎君も目覚めた事だし切嗣さんを呼んでくるね。」
そう言い残してシエルはタオルを持って部屋から出ていった。
「衞宮士郎、私は今回の件を魔術協会に報告する義務があります。
貴方の投影魔術を協会に報告すれば、恐らく貴方は封印指定を受けるでしょう。」
「そうですね……」
俺とバゼットは俯いた。
「あの、封印指定ってなんですか?」
俺達のただならぬ雰囲気に疑問を持った桜が、質問した。
「簡単に言えば、衞宮士郎は希少な魔術師なので監禁するってことです。」
「そんな!!私のせいで……」
「いや、間桐さんのせいじゃないですよ。
聖堂教会からも間桐蔵硯との戦闘の際に、
自分の魔術の希少性はバレていました。
魔術協会にもいずれバレていましたよ。」
俺達が話していると襖が空いた。
「士郎、もう大丈夫なのかい?って、
なんだい?このお通夜みたいな雰囲気は?」
「ええ、切嗣さん身体の方は大丈夫です。」
「そうかい、それは良かったよ。
アイリ、この子が、君を投影した子だよ。」
切嗣はそう言いながら、アイリの手を引いて部屋に入ってきた。
「あら、この子がそうなの、
はじめまして、私はアイリスフィールっていうのよろしくね♪」
俺は唖然としながら呟いた。
「え?なんで生きて動いてるの?」
「「「え?」」」
全員の口から声が漏れた。
「えーっと、士郎、君がアイリを動けるように投影したんじゃないの?」
「いやいやいや、切嗣さん、俺の魔術がいくらおかしいからってそんな事できるわけ無いじゃないですか!!」
「いや、現にアイリは動いてるじゃないか」
「もしですよ、俺の魔術で動けるようになっているなら、死んだ人間を魔力があれば生きてる状態で投影出来るってことになるよ!!
そんなの一種の死者蘇生じゃないか!!
それに、魂はどうするんですか!!
俺、魂の解析なんて出来ないよ!!」
俺は混乱しながらも回答した。
「えーっと、士郎、じゃあなんで動いてるの?」
「いや、だからこっちが分からないから聞いてるんじゃないか!!」
「いや、僕に聞かれても君の魔術だろう!!」
俺と切嗣はお互いに混乱した状態で言い合った。
「いや、あのー、二人とも落ち着いてください。」
シエルが二人を宥めようとするが……
「「これが落ち着いていられるか!!」」
「切嗣……」
「なんだい、アイリ、今はいそがグフッ」
アイリが切嗣のボディーに一撃を入れ、
だまらせた。
「落ち着いたかしら?」
俺は崩れ落ちる切嗣を見ながら慌てて黙った。
「えーっと、シロウでいいのよね?」
「はい!!」
「そんなに怯えなくても大丈夫よ。
とりあえず、シロウの魔術で動けるようになった訳ではないのよね。」
「はい、魂の解析、投影なんて事は出来ませんから……」
「では一体なぜアイリさんは動けるのでしょうか。」
「まず、アイリスフィールは死んでいるのですよね?」
「私自身よく覚えてないけど聖杯に塗りつぶされて消えたはずよ。」
「聖杯に塗りつぶされて消えたとは?」
「まず、アインツベルンの聖杯何だけど、
第3回聖杯戦争の時に壊れてしまったのよ。」
「ええ、それは知っています。」
「そこで第4回では聖杯が壊れないように自衛手段として私が生まれたんだけど、
聖杯が完成に近づくたびに生体機能、人格が塗り潰されるのよ。」
「つまり、聖杯の完成と共に生体機能が無くなり死亡したと?」
「そのはずよ。」
「すみません。一ついいですか?
アイリさんはサーヴァントが入るたびに生体機能がなくなっていくんですよね?」
「ええ、そうよ」
「では、今アイリさんにはサーヴァントが入っていますか?」
「いえ、私の中には何も入っていないけど……それがどうしたの?」
「もしかして何ですけど、サーヴァントがいなくなった事でアイリさんを塗りつぶしている物が無くなり、アイリさんがまた出てこれるようになったんじゃないかと。」
「え?」
「いや、待ってください、アイリさんは死んでるんですよ。
塗りつぶす物が無くなったからってアイリさんが消えてるんですからそれは無理なんじゃ……」
「そこなのですが、まず、死亡とはどういった状態の事を指すんですか?」
「?何言ってるんですかシエルさん」
「いいですか、私達はアイリさんの生体機能が無くなったから死んだと決めつけていますが、アイリさん自体が聖杯の機能の一つなら、聖杯が生きてる限りアイリさんも生きているのでは?」
「いや、魂はどうするんですか?」
「物に魂を宿らせることは可能ですから、
聖杯の中で魂も保管されてたのでは?」
「うーん、つまり自分達はアイリさんが死んだと勘違いしてただけで、実際は聖杯の中で生きていて、自分が身体を作ったから表に出てきたと。」
「ええ、それだったら辻褄が合うと思うんですよ。
桜ちゃんの中の聖杯も機能は生きてましたし。」
「なるほど」
「つまり切嗣とシロウが勘違いして慌ててたと、もー二人ともおっちょこちょいなんだからー」
アイリがそう言って笑い、みんなもつられて笑ったのだった。