紅洲宴歳館・泰山の激辛麻婆豆腐、それは見るだけで人に恐怖を与え、食した者に地獄を味合わせる激物である。
どれ程危険かと言うと、英雄王ギルガメッシュですら食べれば唇が腫れ腹痛を起こし、二度と味わいたくないと思わせるほどだ。
そんな危険物が今、目の前に置かれている。
「アイリ?こ、これはなんだい?」
親父が麻婆から発せられる禍々しいオーラに恐怖しながら母さんに質問する。
「麻婆豆腐って言う料理らしいわ。
切嗣も見たことないの?」
「そ、そうなんだ。
アイリはこれを食べるのかい?」
決して料理名を聞きたいわけでは無いが、母さんの無垢な反応に言葉を飲み込み質問する。
「え?
私はこれを食べるわよ?」
母さんはそう言いながら指すのは色とりどりのドーナツだった。
「なら、これは誰が食べるんだい?」
親父はそう言いながら、テーブルに置かれた激物を指差す。
「え?
切嗣か士郎じゃないの?
何でもいいって言ったからこれを選んでみたのだけど。」
母さんの発言に俺達は数分前の自分を殴りたくなってしまった。
数秒頭を抱えた後もう一度、激物をみる。
[やあ、俺、外道麻婆、お前を地獄に落としに来た。]と言わんばかりに毒々しさを放つ。
激物から目を逸らし親父を見ると親父と目が合う。
「士郎、僕は子供舌だから辛いものは苦手なんだ良かったら食べてくれ。」
「ははは、何を言うんだ親父、俺なんか肉体的にも子供なんだから俺の方が辛いのは無理だよ。」
お互いに睨み合う。
親父の目からは[まだ死にたくない]と言う強い意志を感じる。
「ふー、仕方がないね士郎。
ジャンケンでどっちが食べるか決めないかい?」
「そうだな、最初はグーでいいか?」
「そうだね。
勝っても負けても文句無しの一回勝負。
アイリ掛け声をお願いしてもいいかい?」
「?俺達で掛け声じゃ駄目なのか?」
「イカサマは無しでいきたいからね。」
「それもそうか。
母さん頼む。」
「はーい、それじゃあ、最初はグー」
母さんの掛け声に俺達は大きく手を振りかぶる。
「ジャンケン」
「Time alter―double accel」ボソ。
手を下ろそうとする時に親父がボソリ呟く。
「ポン」
出した手は親父がグー、俺がチョキだった。
「はー、はー、残念だったね士郎。」
親父は息を切らしながら言う。
「ちょっと待てーーー!!
今、使っただろ!!」
「?使ったけどそれがどうかしたのかい?」
何が悪いと言わんばかりの態度で答える親父。
「いや、イカサマだろ!?」
「何を言うんだい?士郎。
ジャンケンのルールは後出しをしてはいけない。
グー、チョキ、パー以外を出してはいけないと言う簡単なものだろう。
いつ僕が破ったんだい?」
「ぐっ、いやでも常識的に考えてそれはないだろ!!」
「士郎、常識と言うものは人によって変わるものだよ。
相手の提案を鵜呑みにした士郎が悪いよ。
それに先に言っただろう?
文句無しの一回勝負だって。」
切嗣はそう決め顔で言った。
「お、大人気ねえ。
そんなんだからイリヤにもズルいって言われるんだよ。」
「ふふっ、さぁ士郎、早く食べないと冷めるよ。」
親父はそう言いながら麻婆豆腐セットの隣に置かれている普通の炒飯セットを取る。
「じゃあこれはシロウのね〜」
母さんはそう言いながら俺の前に激物を移動させた。
「士郎、鞘に魔力を流しといたほうがいいよ」
親父が真剣な表情で俺に忠告する。
「逃げ場はないのか?
くそっ、敗走も無く勝利も無いとはこの事か。
・・・アーメン」
全ての魔力をアヴァロンにまわし麻婆豆腐を口にする。
目の前が真っ暗になったかと思えば俺は見覚えの無い草原の丘に立っていた。
「何だここ?
もしかしてここが死後の世界か?」
そう一人でつぶやきながら周りを見渡す。
夜なのか空は暗く、満月が見えるが、月以外の星は見えない。
「雲1つ無いのに星が見えないな・・・
?あっちの方が明るいな何だろう?」
丘の頂きに光が見えたので、俺はそちらに向かうことにした。
「綺麗だ・・・」
頂きには金色に輝くリンゴが成っている木が一本生えていた。
ふと、このリンゴを食べたいと思い取ろうかと考えるが、子供の身長では取れない位置に実はなっているので、どうしたものかと考た。
考えた結果、投影で取ろうと思い剣をイメージした瞬間、何処からともなくイメージした剣が飛んできてリンゴを一つ切り落とした。
「おっとっと。」
金色に輝くリンゴをキャッチし、あまりの美しさにまじまじと眺めていると声が聞こえた。
「士郎!!士郎!!」
「衞宮士郎!!」
「士郎さん」
はっと目を覚ましたら3人が俺を囲んでいた。
「あれ?
俺は何を?」
「士郎、覚えてないのかい?」
「覚えてないって何を?」
「士郎、君は麻婆豆腐を一口食べたかと思うと、目を大きく開き一心不乱に麻婆豆腐セットをかきこんで倒れたんだよ。」
親父はそう言いながら空になった皿を指差す。
「あれを全部完食できたのか!?」
「いや、本当に焦ったよ。
完食した時の周りの歓声と君が倒れた時の悲鳴は凄かったよ。」
親父はそう言いながら周りを見る。
つられて周りを見ると、麻婆豆腐を作った店の店長だろうか?
その人が嬉しそうに俺の手を掴む。
「凄かったです。
この麻婆豆腐を完食できた人は修行時代に別の店で働いていた時に来た神父を除けば初めてですよ。
これよかったら貰ってください。」
なるほど、この人は泰山で修行していた人だからここにこんな物があったのか。
「あはは、これは?」
俺は苦笑しながら受け取った物を見る。
激辛麻婆豆腐無料券。
死ぬ程いらない。
いや実際に臨死体験をしたのにこれを渡してくるなんてこの人は正気か?
いや正気ならこんな物は作らないかと、一人で納得した後ポケットにしまった。
「あ、ありがとうございます。
親父、もう皆、食い終わったか?」
「ああ、士郎が倒れてるうちに皆も食べ終わってるよ。」
「なら次に行こう。
ごちそうさまでした。」
俺達は店長に一礼してその場を後にするのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回切嗣がしたイカサマの補足ですが、
ケンイチの達人ジャンケンかハンターハンターのジャンケン必勝法と同じで、タイムアルターで相手の振り下ろす手を見て自分の手を変えています。