ある魔術師がいた──
魔術師は一族の悲願である根源への到達を目指していた。
しかし、彼の評判は良くなく周りは彼を追い詰めた。
「魔術協会などくだらん。聖杯で我が悲願を叶えてくれる」
そう思っていた矢先に聖杯戦争の火種が舞っていることを知った彼は準備にとりかかった。
鮭に縁のある槍使いを召喚した彼は様々な強敵を倒し、聖杯を奪った。
彼は魔術協会に対して宣戦布告をしたのだ。
「この大戦に勝てば願いが……」
しかし、あるサーヴァントが許さなかった。
そのサーヴァントの策略と大戦における両陣営の攻撃を受け倒れた。
そこには中立を守るルーラーのサーヴァントの姿もあった。
そして現在──大聖杯に忍び込むことに成功した彼だが、そのルーラーが携えていた剣を持つホムンクルスと対峙することになった。
「たぁっ!!」
「雷撃魔術など効かんっ!!」
ホムンクルスでもあり一人の人間でもあるジークが黒のライダーの剣を突き刺す。
しかしそれだけで仕留めれないことはジークにとって承知の事実だ。
「ならこっちはどうだ!?」
ジークは聖女が握っていた剣で吸血鬼となった魔術師を斬った。
本来は敵を斬るための剣では無いが、今回は聖印で強化されているため魔性を斬ることが可能となったのだ。
「やめろぉぉ!!」
「効いているっ!!」
空かさず藤丸も炎を纏った白い剣を振るい、突進する。そしてすれ違いざまに炎を纏った剣で一閃する。
さらに赤い剣で魔性の体内の血を半分以上抜き取った。
聖印が混じった火柱が上がる。
「「セイント・カエリスティス!!」」
「ぐわぁぁぉっ!!まだ根源に至るまでは死ねないぃぃっ!!」
そこでジークは胸から青い光を発した。
「なら止めだ!」
ジークの姿は一瞬にして黒い邪龍となった。
「なぁ、アワリティア。あんな感じに俺たちもなれるか?」
その姿に変化する魔術から藤丸は龍化を思い付いた。
「あぁ、今のワシらなら出来ないことも無い。」
「よしっ!」
藤丸は高まった魔力をさらに高めていき、一気に放出した。
すると、火の玉となりその玉を卵のようにして一匹の巨大な赤い龍が現れた。
「ギャオオオオッ!!」
「リツカ……っ!ダーニックを倒すぞっ!」
ジークは驚く様子も無く、ダーニックを挟むように飛ぶ。
赤い龍は言葉は喋れないようだが、人間の言葉を理解出来るようだ。
「我は天の杯を掲げて飛ぶ邪龍なり──万物融解!!」
「キシャアアア!!!」
二匹の龍はそれぞれ青い炎と赤い炎を口内に溜めている。そしてそれを一気に吸血鬼に向けて放射した。
「灼熱竜息・万地融解!!」
「グギャオオオンっ!!」
「ヌゥワアアアっ!!!アァァァァァ!!!」
吸血鬼はダーニックの姿に戻るほどのダメージを負って倒れた。
「よし!」
「……!」
「まだ……私には……願いがあるっ!こうなったら聖杯本体に触れて……っ!」
「カズィクルベイ」
ダーニックは聖杯にかける願いを母親を求める赤ん坊のように這いつくばりながら近づこうとする。
しかし、彼の体には無数の赤い槍が生えていた。
「ラン……サー……っ!」
「ダーニック・ユグドミレニア。悲しい男よ。だからこそ貴様の元サーヴァントであるこのヴラド三世は討ち取ることを決意したのだ。」
ヴラド三世を名乗る黒い君主はダーニックに止めを刺して光となって消えた。
光となって消えたのは他のサーヴァントたちもだった。
「そうか、勝ったのだな。カルデアのマスター。」
「彼らも良い生徒でしたね」
「あぁ、先生。」
「お母さん、じゃあね」
「ふむ、たまにはハッピーエンドも良いですな」
聖杯によって役目が終えたことを告げられた戦士たちは安らかに還った。
「ここは……最初に俺たちがあった……」
「あぁ。ここで俺たちはお別れだ。」
「……そうか。淋しくなるな。……最後に言いたいことがある。」
藤丸はジークに礼を述べた。
「お前のお陰で自分の辿る道を選ぶことに対する躊躇いは消えた。……礼を言う。」
「いいんだ、リツカ。」
「おっと、約束を交わした相手がいるんだろ?早いがここで失礼するぜ?」
そういうと、藤丸は大聖杯のある場所から赤い龍となって飛んでいった。
「行ってしまったか……さてここからどうやって彼女のところへ行こうか?」
ジークは黒い邪龍となって聖杯を運ぼうとする。
「待って!」
不意に女性の声が聞こえた。
邪龍はちらりと声のほうを見た。声の主は金の長い髪に白いワンピースが特徴な女性だ。
「……!」
「……」
女性は邪龍の爪に手を伸ばすと邪龍の爪は人間の手へと変わった。
そして二つの手は互いを離さず体を引き寄せ合う。
すると女性は語った。
「一つ告白したいことがあります──ジーク君。私は──貴方を愛しています。」
こうして邪龍ノ力を持った人間は、夢ノ終着へと辿り着いたのだ。
完