今日は9月最後なので掲載することにしました。
青年はその身に赤い邪龍と人類を守る抑止の力を宿しながら闘った。
長い闘いの末に人理を焼却しようと目論む者たちの計画を食い止めた──。
しかし、新たに自ら人類史を上書きしようとする者たちが現れた───
現在彼が全滅させようと試みている「クリプター」だ。
クリプターは青年が人理焼却の首謀者との闘いにおける基地=カルデアを壊滅させ、職員たちも殺した。
蛇のように変貌した眼に憎しみを込めながら青年はカルデアの最期を見送った。
それから彼はクリプターが造り出した7つのロストベルトのうち4つを破壊したのだ。
「それは順調なのか?」
「……いや、五つ目はクリプターのリーダーが管理している。中々油断出来ない。それに……」
「それに?」
黒いスーツを着たホムンクルス=ジークが聞くと藤丸は自分を嘲笑するように答えた。
「俺は───世界を取り戻すためとはいえ、人間を殺した味を覚えてしまった獣だよ。」
「なっ」
青年は第4のロストベルトに赴いた時、カルデアの仇敵であるコヤンスカヤ、クリプターであるペペロンチーノこと妙蓮寺、そのサーヴァントであるアシュヴァッターマンそして異星の神の使いとしての本性を露にしたリンボ・道満の本体を倒した。
「サーヴァント殺しは慣れたよ………だが。俺は人間であるマスターを殺したことでこの手は……仲間を殺した奴らと同じように汚れてしまった。」
続けて藤丸は言った
「俺の仲間を殺したような奴と!相手のこちらに対する心情を聞いても……!この刃のように冷たい手を振り下ろしたんだ……っ!!」
ジークは藤丸の肩を軽く叩いた。
「俺には貴方の抱えているものが何かもよくは分からない。だが、仲間や大切な人を失った苦しみを知っている。だからこそ、一つ忠告させて貰おう。」
「………?」
「一度決めた覚悟を捨てて、自分の仲間やサーヴァントを傷付けるようなマスターにはなるなよ?」
「…………」
藤丸はジークの忠告を利いて狂気の熱が冷めた。
「………ありがとう。」
「大丈夫だ。次の夜を乗り越えよう」
ホムンクルスと一人のマスターは握手を交わした
作戦は至って単純だが難解で、一人で3騎の敵サーヴァントを抑えるというものだった。
しかし、少ない戦力ではそうするほか無かった。
「結構無茶言うぜ、先生。だが、そーじゃねぇとな」
「よし!マスターと俺、ライダーとアーチャーの二手に別れよう!」
作戦が実行される前に藤丸は二騎のサーヴァントに呼び掛けた。
「……アキレウスにケイローン。その……昨日は悪かったな」
「なんだ?まだ気にしてやがったのか?気にするなって!」
アキレウスの言葉を尻目に小さなチームは二つに分かれた。
「さて……おや?」
「先生、どうやら。」
「えぇ…分かっています」
アキレウスとケイローンの師弟コンビのところには4体しか敵がいなかった。
「幸い、あちらのほうが多くても──あのマスターなら」
「先生がそーいうなら、信じるしかねぇな!」
二人は4体の敵の群れを掻き乱すように動いた。
「……!リツカ!」
「あぁ、分かってる。やけに多くの気配を感じる……五…いや6体か」
藤丸たちの前には計六体の敵が現れていた。
「行くぞ!ジーク!アークさん!テーマを実行する!」
「あぁ!令呪を以て我が肉体に命ずる!」
藤丸は腰に小型ドラゴンメカ=メイガスドラゴンを装着すると青と銀の鎧を着こんだ。
ジークの姿はそこに無く灰色に輝く鎧を着こみ胸に青い光を発する紋様が浮かび上がった騎士が藤丸の隣にいた。
「………ジークの魔力が変わった?」
「あぁ、言っておくの忘れてた。俺は黒のセイバー・ジークフリートの姿になれるんだ」
「!?」
「時間が無いから行くぞ!!」
灰色の騎士は青い光線を剣から出し、敵を分散させた。
さらに蒼銀の騎士が赤い剣から斬撃を出して敵を撹乱させた。
しかし、一体の敵は蒼銀の武者の首を取ろうと黒い霧を出しながら虎のように飛び掛かる
「!そう来ると思ってたぜ!」
飛び掛かって来た黒い子虎の爪を白い剣で叩き落とした。
さらに、電撃を放つことで虎を痺れさせた。
声にならない叫びを挙げながら小さな虎は自身の持ち場へ退避しようとするが、カルデアのマスターはそれを逃がさず赤い剣から発生させた鎌鼬でその首を断った。
「リツカ!こっちも手伝ってくれ!」
灰色の騎士・ジークフリートは土色の巨人と闘っていた。
「そいつ、そんなに硬いのか?」
藤丸は試しに巨人に突撃しようとしたが、巨人の体が緑色に輝いた。
まるで人間の生命の始まりであるアダムの誕生を祝うかのように。
「Ahhhhhhh───!!」
「咆哮!?ジークは俺の後ろへ!」
「くっっ!!」
ジークフリートに変身しているジークは藤丸の後ろに回った。
それを確認した藤丸は赤い外套を鎧の上に羽織った。
「七天覆う識天『ローアイアス』──!!」
花弁を模した光の盾がさらに強い光に包まれた──
「先生!」
「いえ──焦らないでください」
紫色の羽織を着た魔術師は二つの死体があるかを確認するために巨人から降りた。
しかし、その瞬間。魔術師の後ろにいる巨人が崩れ落ち、さらに魔術師の目の前から勢いよく飛び込んだ灰色の騎士が剣を振るったのだ。
その光景を最後に魔術師の身体は消え去った。
巨人から飛び出したもう一人の騎士は巨人の心臓である炉心を貫きながら天に舞った。
「雷龍の牙──!!」
さらに、月を背景に奇抜な格好をした作家を蒼銀の騎士は剣から飛び出した白い鎖で縛った。
「パイシゥー・バインド・『錦蛇』!!」
力強い縛りでサーヴァントの心臓=霊基を絞め潰した。
「他の3体に逃げられたか……チェッ」
「だが敵の戦力は削げた。ありがとう」
「……元に戻った??」
「あぁ、あの力は時間制限付きでね。今なら何度でも使えるのだが」
「なるほど」
夜の闘いが終わったあと、二人のドラゴンの力を扱う者たちは手を組む決意を改にした。