「嘘ついてないでしょうね!」
朝、鈴がうちのクラスの女子達と何やら話している、どうやらトーナメントで勝てば一夏と付き合えるという噂話の件についてだ。
「何のお話をしていますの?」
「あ、オルコットさん、実は今回のトーナメント戦で優勝したら織斑君と付き合えるらしいの!」
そこに教室にやってきたセシリアが加わる、その話を聞いたセシリアは疑問を覚える。
「それ、一夏さんは承知してますの?」
「それが、どうも本人はよくわかってないみたい」
「どうなんですのそれ…」
それを聞いてセシリアはなかば呆れる、確かに優勝したら一夏と付き合えるという噂自体はありそうではあるが、本人が認めていないのであればそれは誰かが流した噂でしかない。
そのまま自身の席に戻ろうとしたら、鈴がある一言を放った。
「そう言えば、セシリアって光希と付き合ってないらしいから、優勝した人は一夏か光希のどっちかに告白できるのでいいんじゃないの?」
「ちょ、鈴さん!?」
「え!?そうなの!?オルコットさんって神峰君と付き合ってるわけじゃないの!?」
「え?ええそうですわよ!」
その肯定にクラスの一部女子が湧き上がる。
「じゃあ私もトーナメント戦頑張ろ!」
「私も私も!」
「私だって!」
「え!?え!?どういうことですの!?」
「知らないの?神峰君って結構人気あるのよ?」
それを言われてセシリアは固まってしまう、彼が人気がある?女子に?なぜ?
「ど、どうしてですの?」
「彼って、見た目とか雰囲気は近づきがたいけど、話したら気のいい人だってわかるし、それに分からない部分とか何度聞いても丁寧に教えてくれるから結構教わってる人多いのよ」
「私もこの前勉強聞いたんだ~」
「私!ISの事教えて貰った!」
一人が言うと我も我もとクラスの半数以上の女子が彼に教えて貰ったことがあるようだ、自分は教えてもらっていないのに…
なぜだろうか、彼に教えてもらったという女子生徒たちが非常に恨めしかった、彼女たちが嫌いなのではない、むしろ良い級友だとも思っているのに、彼女たちが羨ましかった。
「じゃあ、神峰君とも付き合える権利もここに含まれるって事で!」
「わ、私だって負けませんわよ!」
朝からバッチバチの火蓋が女子生徒間で起こっていた。
「おはよー光希って、何教室の前で止まってんだよ」
「おはよう一夏、いや何、俺の時代が来たなと思ってな」
「絶対に勝って見せる…」
別の所でも色々とあった。
放課後、昼過ぎではあるが、本日の学校はトーナメントが近いという事もあり終了である。
ほとんどの生徒が模擬戦をするためにアリーナか、ISの訓練に時間を割くのが最近の流行だ。
俺も荷物を片付け、一夏の特訓に付き合うためシャルルと一夏と共にアリーナへと談笑しながら向かう。
「光希、今日は僕から先でいい?」
「え?いいけど、どうしたんだよシャルル、やる気だな」
「ちょっとね、負けられない理由ができた」
そういうとシャルルは目を光らせていた、何が理由かは分からないがやる気を出すこと自体はいい事だ。
「それなら一夏は俺とシャルルの戦闘良く見とけよ、なぜそっちが勝ったのか、その理由をちゃんと聞くからな」
「お、おう!頑張って当てる!」
当てずっぽうのためにやるんじゃないんだがな、まぁいいか。
そんなくだらない事喋っていると、俺達の隣を気になる事話しながら女子生徒達が走って行く。
「第三アリーナで代表候補生3人が模擬戦やってるって!」
「「「え!?」」」
その言葉に俺達三人の声が揃った。
急いで第三アリーナへ向かうと、セシリアと鈴のタッグでドイツ代表のラウラ・ボーデヴィッヒと戦っていた。
ボーデヴィッヒは鈴の龍砲をいとも簡単に止める、シャルルや箒の話を聞くにAICと言われるシールド兵装のようなものらしい。
鈴が龍砲を乱射しながら空中を飛び回るが全てAICにより止められ、ボーデヴィッヒのISから飛び出したワイヤーブレードに捕まってしまう。
そこにセシリアがブルーティアーズで攻撃を仕掛ける、しかもあいつよく見るとブルーティアーズを動かしながら自身もスターライトで攻撃を仕掛けているのだ!
「私は、こんな所で負けられませんの!」
「ちぃ!ちょこまかと!!」
ボーデヴィッヒはAICを使用し、近くに来たブルーティアーズを止めるが、止めた瞬間を狙ってセシリアが的確に狙撃を当てていく。
この状態が続けばシールド残量が先に尽きるのはボーデヴィッヒだ。
そう思っていた。
「んな!?卑怯ですわよ!」
「戦場に!卑怯などない!」
何とボーデヴィッヒは捕まえた鈴を盾にしながらセシリアに突撃したのだ、この状態ではスターライトによる狙撃は無理、下手にブルーティアーズで打てば流れ弾が鈴に当たってしまうかもしれない。
その板挟みあってしまったセシリアはそのままボーデヴィッヒのレールカノンの直撃を貰い、そのまま地面に叩きつけられてしまう。
「きゃあ!」
「これも、持っていけ!」
打ち落としたセシリアに向かって鈴を投擲、そのまま追撃のレールカノンを放つ。
鈴もセシリアも地面に叩きつけられ、お互いボロボロの状態だ。そこにボーデヴィッヒは急速に突っこんでいく、止めを刺す気だ。
「くそ!やられっぱなしで!」
「甘いな」
鈴が何とか体勢を直し、突っこんでくるボーデヴィッヒに龍砲を放つが、それすらもボーデヴィッヒはレールカノンで相殺しながら更に近づき、もはや目と鼻の先にいる状態。
誰もがこの試合の勝敗を決したと思った、だがセシリアは諦めていなかった。
「まだですわ!」
「何!?」
相殺した一瞬の隙をついた、セシリアの弾道型ブルーティアーズ、そして後ろで待機していた射撃型ブルーティアーズによる四方からのオールレンジ攻撃、その攻撃は確実にボーデヴィッヒを捉えた。
「うわああああ!!」
爆炎と煙がアリーナに立ち込める、二人は至近距離では危ないと判断したのか、一度距離を取って爆炎の方を注視する。
「何とかなりましたわ…」
「アンタ、無茶するわね」
「苦情は後で、今のでやられる相手ではありませんわ」
攻撃がヒットしたにも拘わらず、セシリアは警戒を緩めない、今だブルーティアーズは稼働を続けており、ボーデヴィッヒが視認され次第発射可能な体制を維持している。
その時だ、煙の中から大量のワイヤーブレードが伸び、近くにあったブルーティアーズが2機が破壊される
「そんな!?」
「今のは効いたぞ、イギリスの代表候補生」
驚愕する鈴だったが、セシリアは彼女の状態をみて、絶望していた、ダメージは入っている。ボーデヴィッヒのISにも彼女の体にも汚れや傷は付いており、確実に先ほどの攻撃がヒットしていた事を物語っている。
問題は、先ほどの攻撃で彼女の慢心を解いてしまった事だ。
「ここからは、本気で行くぞ!!」
「速い!?」
「鈴さん回避!」
展開されたワイヤーブレードに対してセシリアも鈴も回避を試みるが、先ほどとは比べ物にならないキレと速度により、二人とも即座に捕縛されてしまう。
「ぶ、ブルーティアーズ!」
「遅い」
セシリアは残った感覚で残りのブルーティアーズを操作して脱出を図るが、それすらもボーデヴィッヒのAICに止められ破壊される。
二人を捕縛したボーデヴィッヒは、サンドバッグ状態同然の二人を殴り、蹴り、抵抗の暇すら許さず攻撃続ける。
特にセシリアに関しては鈴よりも念入りに痛めつけている、既にセシリアのISブルーティアーズは殆ど半壊状態に陥っている。
「お前たちは餌だが、別段殺してしまっても問題はあるまい。」
「酷い!あれじゃシールドエネルギーが持たないよ!」
「もしダメージが蓄積し、ISが強制解除されれば二人の命に関わるぞ!」
「それは本当か!?」
箒の発言に驚く、今の状態ではセシリアと鈴の命が危ない。しかしボーデヴィッヒは攻撃の手を緩めるどころか更に加速させていく。
「やめろ!ラウラ!」
一夏はボーデヴィッヒを止めようとアリーナのシールドを叩くが、ボーデヴィッヒはそれを見て笑っただけで攻撃の手を辞めない。
くっそ!あんな奴にセシリアを殺されてたまるか!今からピットに行くには時間がかかる、なら後で怒られるが。
「一夏どけ!」
「え!?」
俺は即座にフラッグを装着し、アリーナのシールドに対してサーベルを叩きつける、しかし所詮は第二世代用のサーベル、アリーナのシールドは傷一つつかない。
「糞!火力が足りない!GNサーベルなら…そうだ!」
束さんからの貰ったGNドライブがある、あれの出力で何とかなるかもしれない!ぶっつけ本番だがやるしかない!
そう考え、急いで拡張領域を起動し、GNドライブをセットする。その瞬間、俺の意識は何かに飲まれた…
光希が拡張領域を起動している間に、一夏が白式を展開し、雪片でアリーナのシールドを切り裂き突入する
「その手を離せえええええええええええ!!」
「ふん!」
ラウラは咄嗟に二人を手放し、一夏からの攻撃に対してAICを起動して防御する。
「感情的な上に直線的その程度で!」
「ならば私がお相手しよう」
「何!?」
一夏のさらに後ろからもう一機のISが飛んでくる。とんでもないスピードでラウラの後ろを取り、攻撃を加える。
「ぐうぅ!この程度!」
「遅い!」
「な!?」
その機体は確実にラウラの側面や後ろを突き、ラウラにAICを発動させるタイミングすら与えない、ハイパーセンサーで捉えられない速度なのではない、ただ近距離での切り返し速度が異常に速いのだ。
それ故にAICを起動しきる前にAICの範囲外に敵のISが逃げている、ラウラの視界に映っているのは赤い残像だけ、その間にも赤い機体はラウラを攻撃に連続攻撃を仕掛け続ける。
「糞!私がこんな処で!」
防戦必死、このままではなすすべなくボーデヴィッヒのシールドエネルギーはそこを尽きてしまう、そう思われた。
「そこまでだ!」
「何と!?」
「ッ!教官!」
「やれやれこれだからガキの相手は疲れるんだ」
永遠に続くかに見えたその斬撃の嵐、それを止めたのは他でもない織斑千冬であった、IS用の剣を生身でもちラウラを攻撃していたISの攻撃を止める。
そうしたことにより、そのISの全貌が漸く判明する。
赤と黒を基調としたカラーリング、鎧武者のようなフルフェイス型の装甲形状、後頭部からはエネルギーケーブルがまるで鉢巻のように風にたなびいている。
両腕にはラウラにダメージを与えていたであろう大型のサーベルと小型のサーベルが一本ずつ握られている。
「私の道を阻むか!ガンダム!」
「織斑先生だ、たくっ、ある程度大人に見えてもまだまだガキだな貴様も」
織斑千冬に対して鎧武者のISは二刀の剣をもって攻撃を仕掛ける、しかし千冬はそれを軽くいなし、捌き切ってしまう、それをただ呆然と見るしかない一夏とボーデヴィッヒ。
ボーデヴィッヒは援護しようとした、しかし自身の兵装では教官である織斑千冬への被害が出てしまうという可能性。
そして自身ではあの鎧武者のISに歯が立たないことを先ほど思い知らされた。
一夏は参戦しようとした、しかし彼らの戦いを見て自分ではあの場に立てないと痛感した。
自分があの中に入っても何も出来ずにやられるだけだと。
両者本来ならば思想や理念は相容れないが、同じ事を等しく思ったのは間違いではない。
「何という性能だ!君の性能に心奪われそうだ!」
「生憎、ガキの相手をする気はない!」
決着はそんがいあっけなくついた、鎧武者のISのサーベルが織斑千冬の剣により弾き飛ばされたのだ、そこでこの騒動でのIS全てが一時停止をする。
それを見て織斑千冬も剣を降ろし、周りを見渡す。
「さて、漸く説明が出来るな、模擬戦をするのは結構だがアリーナのシールドまで壊されてはたまらんのでな、この決着はトーナメントまで取っておけ、いいな」
「教官がそうおっしゃるなら」
「敗者は勝者に従おう、承知した」
「はい」
「では、今後貴様ら専用機持ち達は私闘の一切をトーナメントまで禁止とする、解散!」
こうしてこの騒動は幕を閉じたかに見えた、しかし、もう一つ驚きがあったのだ、ISを解除した3名、一夏、ボーデヴィッヒ、そして
「お前、光希だよな?」
「光希?違うな、私はただの敗者でしかない、では失礼」
そういうのは光希と同じ体格、同じ声をしているが、謎の赤い仮面を被った少年だった。その少年は気を失っているセシリアを抱き抱えると、そのままアリーナを後にしてしまった。
残ったのはそれを呆然と見るのは、以前の彼を知っているメンバーだった。
ラウラファンの方々ごめんなさい。
後シャルもそう言えば社長令嬢でしたね、あの子喋り方が普通だから忘れてました。
謎の仮面をつけた敗者さん、一体 何峰光希君なんだ?