皆さんも帰省をする際には渋滞に気をつけて下さい。
「一夏、俺だ入っていいか?」
「いいぞ、いらっしゃい光希」
林間学校まで後二日というところ、そんな日の放課後に俺は一夏の部屋を訪れていた。事前に今日の放課後部屋に行くとは伝えていたので、そのまま部屋に通される、
「取り敢えず座って待っててくれ、お茶でいいか?」
「ありがとう、頂くよ」
そういうと一夏はお茶の準備をしに行く、俺はその間に席に座り一夏の部屋を見渡す、そう言えば一夏の箒と一緒のはずだが、箒の姿が見えない。
「一夏、箒はどこだ?」
「箒?箒なら今日は鈴の所に行くって言ってた」
鈴の所?そう言えばセシリアとシャルも今日は鈴の所に行くといっていたし、一夏対策会議でもしてるのか?
まあ俺の相談内容的に、箒はいない方が都合がいいので助かる。
そんな事を考えながら待っていると俺の前にお茶が置かれる。
「はい、こんなのしかないけど」
「ありがとう…上手いな、一夏って結構家事出来るよな」
「そんな事ねーよ、他に誰もいなかったから俺がやってただけだしな」
素直に褒めたのだが一夏自身はそうは思っていないようだ、でも実際料理もできて、掃除や洗濯もできるなら男子目線で家事ができる方だと誇ってもいいだろうに。
そこからは世間話に花が咲いた、最近一夏は特訓を続けたおかげか近接での立ち回りで遠距離型に触れるようになったとか、ISの教科書に載っていた内容がようやく理解できてきたという、本当に漸くだなと最初は思ったが、ずぶの素人がこの短時間で一からISの動きや基礎知識を積み込んでいく事を考えたら一夏の速度は異常だといってもいいかもしれないな…
そんな風に話して、ある程度場が温まってきたところで、本題を切りだす。
「一夏、今からいう話はお前にしか言えないし、お前にしかできない相談なんだ」
「何だよ、急に改まって」
一夏はきょとんとした顔でこちらを見てくる。
「これは恋愛百戦錬磨のお前にしか言えないことだ、力を貸してくれ」
「ちょっと待て!恋愛百戦錬磨って何だよ!俺、今までの恋愛経験なんて一度もないぞ!?」
そう言われると光希はまるで鳩が豆鉄砲をくらったような顔になって一夏を見る。
「は?お前何ってるの?あれだけ好意全開の人がいっぱいいるのに恋愛経験ないの?」
「ないよ!というか俺そんなにモテた事もないし、好意全開っていうのも光希の見間違いだろ」
「お前は何を言ってるんだ…」
多分光希だけではなく、織斑一夏という人間を見てきたほとんどの人が同じ感想を漏らすだろう、光希もこれほど彼が鈍感だと思っていなかったため、彼を狙っている人たちはなんて気の毒なんだと勝手に同情している。
が、今回は一夏の為の相談会ではない、自身の悩みに協力してもらうために一夏に頼んでいるのだ。
「まあ、その話はまた今度だ、それよりも俺の話なんだが」
「今度ちゃんと説明してくれよ…で、何だよ話って、さっきのを聞く限り恋愛絡みなんだろうけど」
そう改めて言われて光希は顔を赤くする。それを見た一夏は呆れてため息を吐く
「お前がそういう風に言ってきたんだろ」
「いや、悪いな、改めて言われると気恥ずかしくて」
ハハッと乾いた笑いをこぼす光希、しかしその後直ぐに深刻な顔に戻る、そして少しづつ話し出す。
「その、な、俺に気があるっぽい女の子が二人いるんだよ…」
「まじか!?それって誰なんだ?」
「いや、それまでは言えない、でだ、ここからが問題で、その…」
「その子達と上手くいく方法だろ?まずどんな子なのかを聞かないと…」
「いや、違うんだ…」
光希は深刻そうにしながら一夏を真っ直ぐ見つめる。
「その子たちを諦めさせる方法って無いかな?」
「…は?」
それは一夏が想像していたものとは全く別の内容だった。
「告白を受けるとかじゃなくて、諦めさせる?何でそんな事を」
「理由は色々あるんだが、一言で言ってしまえば釣り合わないんだよ」
「どういう事だ?」
余りにも不可解な理由に頭を傾ける一夏、それに対して光希はまた顔を下げてしまう。
「いや、その、俺ってただの一般家庭で育ってきてるからさ、この学校って結構いい所の出の人多いだろ?相手方もそういう人なんだよ」
「でも、相手が光希の事を気にしてるんだったら問題ないんじゃないか?光希の考えすぎな気もするけど」
「それがそうでもないんだ、その相手二人とも、家の方で結構ゴタゴタしてるのよ、だから俺なんかよりちゃんとした奴を選んだ方がいいって思うんだよな」
「それって、ただの予想だろ?本当にそうなるって決まったわけでもないんだしさ」
光希の考えることに対して、一夏はそれを淡々と処理していく、その様子に光希は軽く呆然とする。
「一夏って結構考えてなさそうで考えてるんだな」
「何だよそれ、俺だって考えてるって、兎に角お前とその二人との関係は難しく考えなくてもいいんじゃないか?」
「だけどさ…」
「お前の気のせいって事もあるだろ?もしかしたら光希の勘違いでその二人はお前の事を何とも思ってないって可能性もあるんだし」
「…それもそうだな、ありがとう一夏、少し気が楽になったよ」
「おうよ、じゃあ次に俺の話なんだけど…」
「はいはい、お前はまず…」
こうして二人は夜が更けるまで各々の話をしていった。
「第二回!一夏と付き合うにはどうしたらいいのか会議!」
「「いえーい!」」
「「い、いえ~い?」」
またしても鈴の部屋にて行われているこの会議、鈴、箒、ラウラは乗り気だが、シャルとセシリアはそうではない。
「鈴さん、私今回お茶会をすると聞いたのですけれど…」
「僕も、今後の戦術の話し合いって聞いたんだけど…」
「どっちも間違ってないわ!お菓子とか食べながら一夏に対する戦術を話し合うんだから!」
そう強気に発言するのは鈴だ、それに対してセシリアは呆れ、シャルは困ったように苦笑いを返す。二人とも一夏に好意があるわけではない、なのでこの話し合いに参加する意味はなかったりするのだが。
「勿論、あんた達にも関係ある話よ?なんて言ったて最近光希も人気になってきてるんだから」
「「え!?」」
鈴の唐突な言葉に固まるセシリアとシャル、二人とも目を見開き本当かと箒を見る、同じクラスメートである彼女なら何か知っていると思ったのだろう。
「そうだな、最近光希の事を紹介してくれと他の友人にも言われたよ」
「私も、嫁に話を聞いている奴を見たことがあるぞ」
「ラ、ラウラさんまで…」
「そんなぁ…」
箒だけでなく、まさかラウラからも援護が飛んでくると思っていなかったため二人は弱弱しい声が漏れてしまう。
「ま、そういう事だからあんた達もうかうかしてると取られちゃうわよ」
「べ、別に私は…」
「が、頑張らないと!」
「「あれ?」」
鈴が焚きつけると両者全く違う反応をし、お互いに?を浮かべて見合っている。それを見て鈴や箒達も注目する。
片や別に気にしていないといい、もう一人は気合を入れ直している。お互い全く予想していなかった反応のためか疑問符が飛び交い合って固まっている。
そして先に動いたのはシャルだった。
「セシリアって、光希の事どう思ってる?」
「こ、光希さんの事ですの?それは勿論良い友人だと…」
「異性として、どう思ってる?」
「ッ!」
そう言われてセシリアは詰まってしまう、彼の事を男性として、異性として、彼は良い友達だ、自分が困っている時に助けに来てくれる、いい人だ。
「僕は光希のこと好きだよ、勿論異性として」
「シャルロット!?」
「セシリアが別に光希の事を何とも思ってないなら、僕は光希に僕の想いを伝える、そしたらこれからセシリアは光希と一緒にいれる時間が少なくなるけど、いいよね?友達何でしょ?」
予想はしていた、けれど彼女の口から直接言われるとは思っていなかった、彼女がこう言う場でハッキリとそう告げる様なタイプだと思っていなかったから。
「ねぇセシリア、セシリアはどうなの?光希の事、好き?」
「わ、私は…」
更なる追求がシャルロットからくる、何か言わないといけない、けれど何も出てこない、声上げるどころか息すらまとも出来ていないような錯覚に陥る。
「はい、ストップ、シャルロットも言い過ぎよ、セシリア泣きそうじゃない」
しかし、すんでの所で鈴による仲裁が入り、緊張により固まった空気が弾ける。
それによりセシリアは何とか現実に帰ってくる、少し緊張が解けたことにより拙いながら肩で息をする。
「アハハ、ごめんねセシリア意地悪して」
先程までとは違い、人懐っこい笑みを浮かべながらそう謝罪してくるシャルロット、それを見て先程までのは彼女のいたずらだったと考え、セシリアも安堵する。
「でも、さっきまで言ってた事は本当、僕は光希の事が好き、誰にも譲るつもりなんてないよ」
「…そう、ですのね」
しかしそれは甘い考えだった、シャルロットはセシリアの顔を見ながらそう宣言する、そこには迷いなど微塵もない、それを本心から言っているのだとセシリアは理解できた。
「じゃあ、僕はそろそろ部屋に戻るよ、楽しかったよありがとう」
「ええ、また明日ね」
そう言って席を立つシャルロットをセシリアは見ているしかなかった。
そしてシャルロットが出ていくのを見ると鈴や箒がセシリアを見る。
「ど、どうしたんですの皆さん?急にこちらを見て…」
急に視線が集まった事で少し動揺して声が裏返ってしまう、しかしそんなセシリアなど知らないとばかりに鈴は立ち上がり、セシリアに詰め寄る。
「アンタ、本当にいいの?」
「な、何がですの?」
「光希の事、アンタの気持ち、シャルロットの事、全部よ全部!このまま負けっぱなしでいいの!?」
「光希さんの事は関係な」
「関係あるでしょ!いい加減に自分の気持ちくらいわかってるんでしょ!」
そう言われて図星だったのか、顔を赤らめながら思わず目を逸らすセシリア、そこから先の言葉はもう出てこない。
(そんな事、言われなくたって…)
「アンタ、あたしに言ってたじゃない、負けたくないなら、悔しいなら強くなれって、それってISの事だけじゃないでしょ?アンタはこのままシャルロットに負けたままでいいの!?」
「それは…」
「じゃあ何がダメなのよ!何が足りないの!シャルロット・デュノアにあってアンタに、セシリア・オルコットに無い物って何なのよ!」
そこまで言って鈴は言いたい事を言ったのかセシリアから離れ、近くの椅子にドカリと座る。
それに対して、セシリアは弱弱しく言葉を繋げようとする。
「わ、私は…」
「弱いとでもいうのか?」
しかしその言葉を遮ったのは以外にもラウラだった、ラウラはそのままセシリアを見つめながら続ける。
「私は貴様自身を強者だと思っていた、私が最初に戦った時それを感じていた、しかし今の貴様はどうだ、自身の欲しいものに手すら伸ばそうとしていない、ただの臆病者の弱者だ」
「な!」
「おい、ラウラ!」
余りにもな言葉にセシリアは怒りの目をラウラに、箒も少し苛立った声を上げる、しかしラウラは素知らぬ顔で話を続ける。
「だが事実だろう?今のお前は自分を晒す事を恐れ、戦う前から尻尾を撒いて逃げいているただの臆病者だ、そんな奴を強いと思っていた私も、どうやら感覚が鈍っていたようだな」
「ラウラ!お前!」
今度こそ、怒りを露にした箒が立ち上がりラウラに詰め寄ろうとする、しかしそれはセシリアによって止められる。
「いいんです、箒さん」
「セシリア、でもこいつは」
「今のラウラさんが言った事は事実ですわ、私は、彼に拒絶される事を恐れている、だからこうして逃げようとしているんですもの」
「ほう、ならどうするのだ?これからも逃げるか?」
挑発気味にラウラはセシリアに疑問を投げかける。
「私は…私はもう逃げませんわ、彼からも、自分からも」
今度こそ、真っ直ぐとした目でセシリアはそう宣言する。それに対してラウラも鈴も満足げな顔をする。
「そうか、それでこそ、私が認めた強者だ」
「ありがとうございますわ、ラウラさん鈴さん、私失礼しますわ」
「礼には及ばん、今度嫁とのデート計画にでも協力してくれ」
「私の相談にも乗りなさいよ、セシリア!」
「ええ、喜んで」
そう言って足早に部屋を出ようとするセシリアを、今度は箒が声をかける、
「セシリア、少し待て」
「な、何ですの箒さん」
「私はお前とそれほど親しくない、お前の事をこの二人より知っているつもりもない、けれどお前と共に訓練して分かった事はある」
「それは何ですの?」
「お前は、光希とは別だと思ってな、シャルロットは光希と同じような性質だが、お前ならあの破天荒極まりない奴を任せれると思ってる、だから、その、勝てよセシリア」
「…ふふ、ありがとうございますわ!」
そう言って、今度こそセシリアは部屋を出ていく、目指すはシャルロットの所であった。
「アンタ達、セシリアに甘過ぎよ、もう少し言ってやらないと」
「私が認めた相手だぞ、それよりお前こそ何だあれは」
「私だって、セシリアの事を認めてるんだぞ」
でもシャルロットだって…だがな…、第二回一夏対策会議は、シャルロットとセシリアどちらが上手くいくか予想大会へと早変わりした。
「シャルロット!良かった間に合いましたわ…」
「セシリア!?どうしたの?そんなに急いで?」
シャルロットと光希の部屋まで後数メートルという所、セシリアは息も絶え絶えになりながら何とか間に合いシャルロットを止めることに成功する。
そして、今度は目を逸らさず。
「話がありますの、一緒に来て下さらない?」
自分からも逃げることをせずに向かい合った。
「何?話って」
「先ほどの話ですわ」
寮から程なく離れた小さな橋の近く、ここならば誰にも聞かれないと、私はシャルロットを案内した。
「さっきまでの話?それって光希の事?」
「そうですわ」
やっぱり、と彼女は納得する、シャルロット、とても魅力的な女の子。その見た目もISにの操縦も料理の腕だって、私は勝っている所は一つもない、でも
「それで?セシリアは決まったの?」
「ええ、私は…」
私だって、もう
「私も、彼の事が好きですわ、貴方にだって負けませんのよ!」
逃げるのは止めにしたのだから。
「そっか、そりゃそうだよね、うん」
「な、何ですのその反応は」
彼女は笑いをこらえながら何度も納得したような顔を浮かべる、思っていたものとは違う反応に少しずつではあるが顔が赤くなっていくのを感じていく。
「ごめんね、何だか安心してさ」
「安心ですの?」
全く予想していなかったその回答に少しびっくりする、安心とはどういう意味なのだろうか。
「だって、このまま言ったらセシリアが泣いちゃって学園を辞めちゃうんじゃないかなって思ってて」
「な、何ですのその考えは!そんな事しませんわ!」
「ええ~?本当かな~?」
そんな風に彼女は楽しそうに笑いながら言ってくる、私はが学園を止める程ショックを受ける何て、そんな事…あったかもしれませんが!今はありませんわ!
一通り楽しんだのか、シャルロットが話を切り出してくる。
「でも、僕はセシリアの事ライバルだとも思ってるけど、大切な友達だとも思ってるんだ」
「私もですわ、シャルロットの事を大切な友人だと思っていますもの」
「良かった、僕だけじゃなかったんだ、ならさこう言うのはどう?」
「今度の臨海学校で、二人とも告白する、タイミングは自分のタイミングで行う事っていうのは」
「それ、明後日ですわよ、そんな急に…」
「そうしないと、何処かの馬の骨に取られるかも…」
「いいですわ!今度の臨海学校で決着をつけますわよ!」
そういうとまたシャルロットは楽しそうに笑う、それにつられて私も笑ってしまう。
「じゃあ、決定!負けないからねセシリア、恨みっこなし!」
「ええ、私だって負けるつもりはありませんわ!」
そう言って、互いに互いを鼓舞し合う、決着は臨海学校、それが始まるのはもうすぐだ。
「そう言えば、どちらも選ばれなかった場合はどうしますの?」
「…そんな事はないよ、光希ならね」
最後にそんな事を言ったシャルロットの顔は、酷く悲しそうだった。
漸くここまで来た…
次回から臨海学校です。(多分)