セシリア達はあれから回避に専念しながら何とか隙を探していた、だがエネルギー切れの心配のない福音は今だに回転しながらライフルを回している。
箒は被弾しており、近くの島に吹き飛ばされた、ラウラは地上からレールカノンによる攻撃を仕掛けるが着弾する前にライフルにかき消される、鈴とシャルも回避を続けながら龍砲やアサルトライフルを使用して攻撃を仕掛けても全て大型ライフルの攻撃に消えてダメージにならない。
そしてセシリアも、ブルーティアーズを展開して隙間からダメージを狙って攻撃を仕掛ける、その攻撃事態は福音に命中している、しているのだが。
「ダメージにならない…!」
機体に損傷を与えてもシールドエネルギーさえあればまた立て直せるのがISだその為、ブルーティアーズで削れる少しのダメージでは回復速度に追いついていないのだ。
時間だけが過ぎていく、メンバーの集中も限界が近づいている、相手のエネルギーは切れず、こちらはひたすら消耗していくのだ、全員の顔にも焦りが見えてくる。
「このままじゃ、でもどうすれば…」
セシリアは頭を回転させ何とか対策を考えようとする、このまま遠距離で回避に徹する、確かにそれが一番安全であり最善だろう、だがこのままではいずれ全滅を余儀なくされてしまう、ならば。
セシリアは考えを行動に移すため、攻撃の隙をつきながら鈴とシャルの近くへと移動する、福音もそれを察知して薙ぎ払いをセシリアへと集中させるが、一時的に攻撃が緩くなった瞬間にラウラやシャル達が攻撃を加えて意識を逸らす。
そして、セシリアはそのまま通信が届く距離まで移動してシャルと鈴へと通信を流す。
その作戦を聞いて鈴は思わず声を上げる。
「無茶苦茶よ!そんな作戦!」
「無茶は承知ですわ、でもやらなければこのまま全員共倒れです」
「…わかったよセシリア、サポートするから任せていい?」
「シャルロット!?」
「ありがとうございますわシャル、援護をお願いします」
「ああ、もうわかったわよ!その代わり絶対に失敗するんじゃないわよ!」
鈴のその叫びを合図にセシリアは福音へと突撃を敢行する、その手にはスターライトは無く、代わりにサーベルが握られていた。
「これで落としますわ!」
「…!」
当然福音も近づけさせないために回していたライフルをセシリアへと向ける、だが、攻撃がセシリアへと集中した事により、ある程度自由になった鈴とシャルが横から射撃を加える。
「ほら!こっち向きなさい!」
「セシリアへは攻撃させないよ!」
横からの攻撃により、福音は胸のコアを光り輝かせ未来を見る、そして下した決断は、鈴とシャルの排除だった。
先ほどまでラウラのいた地点を最大火力で薙ぎ払い、ラウラからの攻撃を一時的に停止させる、そして二本のバスターライフルを鈴とシャルへと向け発射する。
「しまった!きゃあああ!」
「シールドが持たない…!うわあああ!」
二本の大型ライフルの攻撃に鈴は龍砲で減衰を狙うが撃った先から弾丸は破壊され、回避も間に合わずそのまま直撃を貰い、落ちていく、シャルもシールドによる防御を図るがそれすら貫通しシャルもまた空中から放り出される。
鈴とシャルを撃破した福音は今度はセシリアへ向き直すと、目の前にセシリアがいた。
「取りましたわ!」
「!!」
だが、福音の肩からガトリング砲が展開される、それは天使にも搭載されていたマシンキャノンであった。
だがセシリアはそれを見てニヤリと笑う。
「それも織り込み済みですわ!」
「!?」
突如として福音の視界からセシリアが消えたのだ、慌てて福音はゼロシステムを使用した索敵を開始する。
その反応は福音の真上から感知された、慌てて福音が自身の真上にバスターライフルを構えるがもう遅かった。
「これで!どうですの!」
「…!」
セシリアは勢い良く加速し、福音へと切りかかる、それは過去に光希がセシリアとの対決で見せたグラハムスペシャル、あれと同じ戦い方であった。
その斬撃は確実に福音を捉え、その大型のライフルを一つ破壊する、だがセシリアはまだ終わらなかった。
「もう一つ!いただきますわよ!」
加速の勢いのまま福音を通り抜けると、そのまま反転しスターライトを構え発砲、その正確無比な射撃は確かにもう一つのバスターライフルを捉える事に成功した、だがその攻撃は福音を中心に展開された緑色のフィールドによって防がれてしまう。
「なっ!?」
「
そして、そのフィールドを展開させたまま空いた片方の腕に七色の先程海を凍らせたライフルを構える、放たれるのはドリルの様に回転しながら放出された先程までのものとは違った細い銀色のビーム、セシリアはそれを見てシールドティアーズを二枚重ね防御の構えで防ごうとする。
放たれた銀色のビームを見事セシリアはシールドティアーズで迎え撃つのだが、その挙動にセシリアは驚いた。
「何ですの!?この攻撃は!?」
銀色のビームはガリガリとシールドティアーズを削りながら貫通してきているのだ、二枚重ねたシールドティアーズは中心部分に穴が開き爆散そのままセシリアへと向かっていく、それを見てセシリアは慌てて回避行動をとるがもう間に合わない、その弾丸は絶対防御すら貫通しセシリアの横腹を通り過ぎていく。
「かはっ!?」
セシリアのISが警告を発し続ける、肉体に損害を受け、けっして少なくない出血を起こしているのだ、今のままではISのエネルギーが切れる前にセシリアの命が危ない。
それでもセシリアは引こうとしない、痛みに耐えながらブルーティアーズを展開する、その目はまだ諦めていなかった。
「まだ…負けていませんわ…!」
「…」
セシリアはダメージを受けた部分を手で庇いながら、攻撃を行われる前にブルーティアーズでの射撃を行うが全て福音の展開するGNフィールドに阻まれてしまう。
そして福音はゆっくりとセシリアへバスターライフルを向けチャージを開始する。
(ここまでですわね、ごめんなさい光希さん…!)
セシリアは自らの敗北を悟り、そう心の中で光希に謝罪する、その時だった。
「TRANS-AM!」
空から音速を超えたスピードで何かが通り過ぎる、それは誰の目にも捉えることが出来ず、気づいた時には福音へと張り付いた一夏がそこにいたのだ。
「零落白夜!」
「…!?」
一夏は零落白夜を起動しGNフィールドを展開した福音へと切りかかる、最初はフィールドによって阻まれていたその攻撃は徐々にフィールドを切断しながら進んでいき、最終的にはフィールドは破壊された事により解除され、福音がセシリアへと向けていたバスターライフルを切り落とした。
バスターライフルが爆散する未来を見た福音は慌てて後方へと飛びのく、だがそれを超スピードで追いかける赤い機体がいた。
「よくやった一夏!これで!」
光希は福音の後方へと回ると即座に人型形態へと変形し左腕にあるライフルを構える、その距離は福音の背部にあるGNドライブと目と鼻の先で発射する。
「この距離ならば外さん!ドレイクハウリング!」
「!!」
放ったビームは福音のGNドライブを確かに破壊する、GNドライブを破壊された福音はその衝撃のまま前方へ大きく吹き飛ぶ、それを確認した光希はTRANS-AMを切ると、即座にセシリアへと向かい機体を支える。
「大丈夫か!セシリア!」
「光希さん、ですの?目を覚ましたのですね…良かった…!」
「俺はもう大丈夫だ、それよりもお前その傷!」
光希が無事だった事に安堵するセシリア、反対に肉体に傷を負っているセシリアをみて慌てる光希、急いで光希は一夏に通信を飛ばす。
「一夏!セシリアが負傷してる!福音の対処を任せていいか?」
「わかった!箒も来たからこっちは大丈夫だ!」
そう言われて戦場を見ると福音を一夏と箒が抑えていた、福音もメインの武装がなくなったせいか先ほどからマシンキャノンでの攻撃しかしていない。
それを確認して光希は近くの岩場までセシリアの肩を支えながら移動する。
足を地面につけた瞬間、セシリアのISは強制解除されてしまい重力に引かれて倒れてしまう、光希は慌ててISを解除してセシリアを支える。
「おい!?セシリア!」
「お、大きい声を出さないでくれます?命に関わる物ではないですわ…っ!」
「馬鹿言え!今もずっと血が出てるだろ!糞!何か傷を塞ぐものは…」
急いで自身のフィットスーツを脱ぎ地面に引く、そこでセシリアを横に寝かせる。
セシリアの傷は決して小さくは無かった、今もそこからは血が出ており、急いで止血をしなければならないのだが、そんなものは今手元にはなく、着ているものはIS用のフィットスーツだ、止血用の布にするには薄すぎる。
慌てて何かないか探す光希を見て、見かねたセシリアは口を開く。
「私の事は心配なさらないで…今は福音を」
「絶対に嫌だからな!次そんな事言ったら本気で怒るぞ!」
セシリアの言葉を途中で遮り、傷を自身の手で抑える、だがそんな事をしても傷から出る血は止まらない、それを見て光希は叫ぶ。
「止まれ!止まれよ!誰か…!」
「光希さん……な、何ですのそれ!?」
「何だよセシリア!ってこれ!?」
その悲痛な叫びに反応したのか、光希の待機形態にあったブレイヴから銀色の何かが溢れ出す、そのあふれ出てきた銀色の液体の様なものは、セシリアの傷があった部分へと集合すると即座に固まり、その傷を見事に塞いでしまった。
(ELSが傷を!?けどこれなら!)
「セシリア、痛みとかあるか?」
「い、いえ特にはないですわ、それにしてもこれは…?」
「俺にもよくわからない、けど害がある物じゃないのは確かだ、これならお前だけでも撤退できるよな」
そう言い、光希は自身のISであるブレイヴを展開する、福音の方を見ると既に6枚あった羽は主翼の二枚を残して落とされており、シャル達も戦場に復帰していた。
「俺は行ってくる、セシリアはそこでおとなしくってお前!」
光希はGNドライブを起動しようとすれば隣にはセシリアがISを起動して立っていた、たまらず光希は声を荒げてそう言う。
「私も行きますわよ、貴方だけに任せていられませんわ」
「でも、お前は傷が!」
「私だって、これ以上好きな人が傷つくのを見ているだけなんて、助けられるだけなんて嫌ですの!」
そう、セシリアは言い切る、その意思は固く、光希も諦めたように息を吐く。
「…わかった、その代わり無理だと思ったらすぐに逃げろよ、俺だってお前が傷つくとこなんて見たくないんだ」
「ええ、お約束しますわ」
光希のその言葉にセシリアは笑顔で答える、それは彼がいつも見ていた彼女の笑顔だった。
その姿を見て光希も福音へと向き直しGNドライブを起動させる。
「良し、なら行くぞ!セシリア!これが最後だ!」
「ええ、行きますわよ光希さん!」
二つの青い機体が空へと舞う、空に舞う天使を落とすために。
次回、最終回