旭丘分校に転校してから1ヶ月、俺はクラスにも田舎にもすっかり溶け込んでいた。今日も、いつも通り朝から放課後まで平凡な自習時間を過ごし、家に帰ろうとする矢先、突然宮内先生に頼み事をされた。
先生「龍悟くーん、これちょっと焼却炉まで持っていってくれる?」
先生の傍には、大量のゴミが入った袋があった。この量はさすがに誰かに頼みたくなるな。
龍悟「別にいいですけど、俺まだ焼却炉に行ったことないですよ。」
先生「あー、そういえばそうだったね。じゃあ誰かに頼んで案内してもらって。先生忙しいから。」
その割に授業中寝てばかりいるじゃねーかよ・・・。
ほんとこの人は。
龍悟「はあ、わかりました。」
先生「ついでにウサギに餌あげてきて。」
この学校うさぎ飼ってたのかよ。まあいっか。
そんなわけで俺は、初のゴミ出しと餌やりに向かうのだった。ちなみに、れんげと蛍が案内してくれることに。
龍悟「なあ、こういうのって普通交代制の当番とかきめるんじゃね?」
蛍「それは私も思うんですが。」
れんげ「ねえねえいつもあんな感じだし、なっつん当番面倒臭がる気がするのん。」
龍悟「あー、それは容易に想像できるな。」
それ以前に担任があんな適当じゃ決まるものも決められねえな。
とりあえず焼却炉に着いたので、早速ゴミを燃やす。
さて、次はウサギ小屋だな。近くの倉庫からウサギの餌を持ち出し、ウサギ小屋に向かう。
龍悟「ウサギは何羽位いるんだ?」
蛍「5、6羽ですね。」
結構飼ってるもんだな。
数分後、ウサギ小屋に着くが、小屋の外にウサギがいるのが見える。
龍悟「おい、まさか。」
小屋を覗くと、中にウサギが1羽もおらず、中から外に抜け穴が掘られていた。
蛍「ウサギが逃げてる!」
れんげ「捕まえるのん!」
龍悟「しょうがねえな。」
3人でウサギを追いかけ、捕まえる羽目に。しかしやつらはすばしっこく、なかなか捕まらない。
そこで、
れんげ「餌で誘き寄せるのん。」
ベタな作戦だが、他に思い付かないのでれんげに任せよう。
あらかじめ抜け穴をふさいでおき、道端数ヶ所から小屋にかけて餌を並べ、小屋の中で待ち伏せすることに。
蛍「あっ、来ましたよ。」
あちこちからウサギがやって来た。案外うまくいきそうだ。
次々にウサギが小屋に戻るが、一番最後に来たウサギだけは、れんげの作戦に気づいたのか、なかなか入ってこない。
しばらくするとそいつは、小屋の扉に向かっていった。その瞬間、
ガシャンッ!
なんとそいつは勢いよく扉を押して閉めた。開けようとしたが、開かない。閉まる衝撃で金具がかかってしまったみたいだ。
れんげ「ウサギに餌をいっぱい食わせるつもりが一杯食わされたのん。」
蛍・龍悟「うまい!」
一同「・・・・・。」
蛍「って、そんなこと言ってる場合じゃないよ、どうしようー!!」
まさかの事態に気が動転する蛍。こりゃさすがにまずいな、最悪ウサギ小屋で野宿だ。
龍悟「おーい、先生ー、小鞠ー、夏海ー!」
大声で叫ぶが、誰も来ないみたいだ。
れんげ「二人ともごめんなのん。」
蛍「いいよ、れんちゃん。」
二人とも表情が暗いので、俺は強硬手段に出る。
龍悟「しょうがない、扉蹴ってぶっ壊すか。」
蛍「先輩、無茶しない方が。」
龍悟「後で事情話せばいいって。」
そう言って俺は、力の限り扉を蹴り続けた。しばらくして、金具が壊れて扉が開けられるようになり、俺達は無事に脱出できた。幸い蝶番は壊れなかったので、扉の前に大きな石を置いておいた。
れんげ「龍ごんなら脱獄できるのん。」
龍悟「どこで覚えたんだよその言葉。」
その後、先生に事情を話したところ、後日小屋の中に抜け穴防止の木の板を敷き詰めることに。ちなみに扉を蹴り壊したことを話しても、先生は顔色ひとつ変えず許してくれた。