旭丘分校での学校生活は6月に入り、少し暑く感じる時期となる。 21時現在、 俺は暇潰しに自分の部屋でテレビを見ていた。 そんな時、
龍悟母「龍悟ー、越谷さんから電話よー。」
龍悟「うぁーい。」
すぐに階段をかけ下りる。そういやクラスメイトからの電話はこれが初めてだな。
この時間だと、用件は連絡網あたりだろう。
龍悟「はい、もしもし。」
夏海「龍ごん、こんばんはー。明日はみんな先生と出かけるよー。」
龍悟「あれ、先生言ってたっけか。」
夏海「うん。でも龍ごんにも伝わってなかったかー。さっきほたるんもれんちょんもおんなじだったよ。」
あの先生夏海だけに伝えたのかよ。普通皆いるときに伝えるだろ。寝てばかりいるから忘れんだろうけどさ。
龍悟「それで、先生何て言ってた?」
夏海「いつも通り登校することだけ伝えといてだってさー。」
詳細不明かよ。
夏海「でもそれって遠足ってことだよね。遊園地とかかな? 明日たのしみー。」
全く宛にならない気がするんだが。まあ夏海や他の皆のわくわく感を削がないためにも、詮索するのはやめとこう。
龍悟「まあわかった。とりあえずありがとな、わざわざ夜遅くに。」
夏海「いいよいいよー、そんじゃまた明日。」
受話器を置くと同時に俺は部屋に戻り、明日の準備を始めることに。そうだ、明日朝早起きして、みんなでつまめるおかずでも作ろう。こっちに来てからしばらく料理してなかったし。
翌朝学校に着くと、先生が校門前に車を用意していた。
夏海「遠足、遠足♪」
小鞠「みんなにおにぎり作ってきたよ。」
蛍「楽しみですね(先輩のおにぎり、早く食べたい!」。
れんげ「わくわくなのん。」
これから過酷な作業が待っていることを、このときの俺達には知る由もなかった。
皆車に乗って出発して数十分後、
先生「さあみんな、着いたよー。」
車から降りると、そこにはだだっ広い田んぼがあった。
先生「ではこれからー、みんなで田植えを始めたいと思いまーす。」
え? 予想外の出来事にみんなきょとんとした。まあみんな遠足のつもりで来たのだから無理もない。
先生「いやいや、これはなんと言うか~一種の自然体験学習みたいなもんで、みんなに田んぼをやる人達の苦労を知ってもらいたくって。」
体のいい言い訳を並べる先生。それならそうと早く言えよ。田植えつったって、少なくとも俺と蛍は間違いなく素人なんだぞ。絶対腰悪くするって。
れんげに田植えについて聞こうとしたが、
れんげ「ほんと、笑わせてくれる。」とまあこの状態なのでやめた。すげえかわいそうになってきた。
先生、あんた妹から信用されなくなるぞ。仲違いしないのはもはや奇跡だな。
先生「そこの小屋に作業着あるから、みんな着替えてねー。」
俺達は渋々、作業着がある小屋に入った。
先生「では作業開始ー。」
とりあえずそれぞれ苗を植え始める位置を決め、次々に植えていく。腰を曲げた体勢を長々と維持するからそりゃもうきつい。しかも、植える前の田んぼはぬかるんでいるから、当然歩きにくくなる。最悪どつぼにはまって抜けなくなる。クラスで一番でかい俺がその可能性大だが。
しばらくすると、早速事故が発生した。
小鞠「はまったー!抜けないよー!」
夏海「姉ちゃん大丈夫かー!?」
小鞠がぬかるみに悪戦苦闘している。夏海が小鞠をおぶって脱出を試みたのが裏目になり、二人とも深く沈みそうになる。夏海はあわてて走り出したが、頭から転んでしまい、二人とも顔面を突っ込んだ。その被害は、近くにいたれんげにも及び、れんげは尻もちをついた。
蛍「先輩!れんちゃんも大丈夫ですかー!?」
龍悟「とりあえず助けに行くか。」
蛍や卓と協力し、何とかみんなを田んぼから救出する。
夏海「もう田植えなんてしない・・・・。」
小鞠「・・・・。」
二人とも目の光が消えている。だめだこりゃ。すると、
ガガガガガガ
何やら音がする方を見てみると、
先生「あー、やっぱ機械は便利だねー。楽チン楽チン♪」
呑気にコンバインを操縦していた。これじゃあ俺達何のためにここに来たんだか 。泥を投げ付けてやりたくなるほどうんざりした。
昼食の時間が来て、俺達は着替える。そんな中、汚れがひどい夏海と小鞠に、持ってきたウエットティッシュを使わせてあげた。
夏海「龍ごん、マジ助かった。」
小鞠「ありがと。」
龍悟「もうそれ全部使ってくれていいぜ。」
さて、昼食だ。シートを敷き、みんなで座る。
一同「いただきまーす。」
小鞠「みんな、おにぎり食べていいよ。」
龍悟「ゴチになるぜ!」
蛍「ありがとうございます!」
みんなでおにぎりを食べる。
蛍「(先輩のおにぎり美味しい!ああ幸せ!)」
何やら蛍は満面の笑みを浮かべている。
龍悟「実は俺もみんなにおかずを作って来たんだ、どうぞつまんでくれ。」
そう言って三つのタッパーの蓋をあける。中身はそれぞれ唐揚げ、ポテトサラダ、エビシュウマイだ。
夏海「龍ごん料理できんの!?すげー!」
小鞠「おにぎり作ってきてよかったー!」
蛍「うわあ、美味しそうですね!」
れんげ「一杯食べるのん!」
先生「龍悟くんやるねー。」
みんな満足そうに食べてくれた。我ながらうまくできてた。作ったかいがあったぜ。これで腰の痛みがなければ最高なんだが。
その夜は、いつもより長めに風呂につかっていた。
もう田植えは勘弁してもらいたい。
作業中色々あって最後はみんなで楽しい昼食でした。