長いお昼寝から目を覚まし、窓の外は既に夜の帳をおろしていた、 古いベットからぎしりとした音が鳴り、体を起こす。
『少々・・・寝すぎてしまいましたね』
寝ぼけた目を擦りながらつぶやき、綺麗な蒼色の髪が少々荒れているのに気づく。帽
子にかかった空間魔法の中から愛用の櫛を取り出し、備え付けの鏡台で寝ぐせを整える。
まだ寝起きだがいつもと変わらないボーっとした顔で髪を整えていると、胃袋のアラームがエマージェンシーを鳴らし始める
『これは・・・早く何か食べないとまずいですね』 空腹に危機感を覚えながら、手早くいつものショートヘアに修正する。
ここの食堂では、何が食べられるんでしょうね。 そんなことを思いながらメニューを捲りながら注文頼む
『これと・・・これをひとつ あとこれも美味しそうなので 飲み物はこれを あ、これも美味しそうなのでこれもください。』
そんな追加に追加を重ねたいつも通りの食事がぞろぞろと運ばれた後、ざわざわとした食堂で一際響く少女の声が響いた。
『どうして!なんで別れようなんて言うの!』
どうやら若いカップルが口喧嘩をしているようだった。運ばれてきた料理をもぐもぐと頬張りながらそんな光景を眺める。
エリシオン魔法学院に在籍していた時も、時々見かけていた珍しいとも思わない光景を眺めながら、淡々と食事を進める。
少女は涙を浮かべながらよく響く声で、関係を続けようと懇願している。
『この料理美味しいですね もう一つ注文しましょうか』 と興味はなさそうにさらに追加のオーダーを頼むフィオナだが、彼女の耳はそちらに向いていた。
泣きながら捲し立てる少女と沈黙し、相手の言葉を一心に受ける若い男性は活気ある食堂とは対照的な、重い空気を放っている
そんな光景を遠巻きに観察しながら、追加注文した料理を口に運び続け、ゴクゴクと飲み物を嚥下する。
長い沈黙を保っていた男性が 重ぐるしく口を開いた。 どうやら既に別の女性と関係を持っていたようだった。
『あー、そうゆう展開ですか』、食事の手は止めないが、前にも見たことがある修羅場に意識だけを向けていく。
男性の口から、弁解の言葉が出ているが、逆効果なようだ。
少ながらず負い目を感じているであろう男性が、なるべく穏便に済ませようとする
少女も中々引き下がらない、段々見飽きてきたのか 興味を失ったように、最後の料理を食べ終わる。
『これ前に見た気がしますね・・・』 そんな一度読んだ本ををまた読んだような感想を述べながら デザートのフルーツを齧る
他人の恋愛劇を遠くからよく見ていたフィオナにとって、こういった光景を眺めるという行為に、今更特別な感情は無かった。
デザートも食べ終わったので、会計を済ませるために、席を立つ。
まだ口喧嘩は続いているが、既に興味は無くなったようで見向きをせずに、会計を済ませる。
、会計を済ませたあと、特にやることもないので、自室のベットに寝転がり、先ほどの光景を思い返す。
恋愛・・・私には全く関係のないことでしたね・・・
多くの人が幼少期に体験するという初恋、というものも心当たりがありませんし、男性が身近にいる、学院時代も何もありませんでしたし。
学院時代に見た様々な恋幕を思い浮かべるが、どれも自分の心を動かすことはなかった。
『魔女は恋なんてしないという格言がありますが、やはり事実なのでしょう』。
あんな思いをしなければいけないなんて、恋なんてしないほうがいいのでしょう。
色々と学院で見てきましたが、卒業しても、理解できませんでしたし。
『はぁ・・・シャワーでも浴びますか・・・』
もやもやとした、思考に飲まれそうになった所でシャワーを浴びることにする。
そのまま着ていたいつものローブを脱ぎ、部屋に備え付けのシャワーを浴びる。
『こんなことを考えても、私には関係ないはずなのに・・・』
少し冷たいシャワーを浴びながら、先ほどの、暗い考えを洗い流そうとする。
『私には関係ありません、明日から冒険者としてやっていくんですから』
そんな決意を胸に、明日からの新しい生活のために気合を入れる。
『・・・もしかしたら、仲間だって作れるかもしれませんから。』
でも仲間は欲しい、そんな藁をもつかむような気持ちで明日に備えるのだった。