まだ日も登らない早朝に、目を覚ます。
別に早く起きてしまったという訳でもなく、冒険者をやるからには色々と準備をしなくてはならないからだ。
というわけで、朝早くからやっている冒険者ご用達の店に色々と買いに行くことにした。
『ここですね。この店だけで揃えばいいですが』 店主が目の前にいたら怒られかねない発言をした後、
そんな店の品ぞろえに不安を覚える小さな店のドアを開け、ドアベルの歓迎を受ける
『いらっしゃい』。初老の男性のそっけない接客ほぼスルーし、端的に欲しい商品を告げる
携帯食料を3日分、ポーションとマナポーションを10本ずつください、
『そんなに持っていけるのかい?』
店主のいらないお節介に率直に答える
『ディメンジョンがあるので大丈夫です。』
『なるほど、学院の卒業生か。優秀なことだ、ポーション1本おまけしとくよ。』
やたら察しのいい店主が、優しい気遣いでオマケしてくれる。
『携帯食料の方がいいですね』。朝食がまだだったので。店主は唐突な要求に苦笑いする。こんなところで食欲を発揮する魔女
『分かった分かった 干し肉も追加しておくよ・・・』
そんな図太いのか天然なのか分からないフィオナに負けた店主は苦笑いしながらポーションと干し肉をおまけした。
『なんか知りませんが、得しましたね。』
そんな店主の微妙な心境を知らないフィオナはさっそくおまけの干し肉を齧りながら、朝食のために宿に戻った
泊った宿は、朝食もやっているらしく、焼けるパンの香りに、期待を膨らませる
買い物したら、お腹が空きましたね。ここの朝食はなんでしょうか。
先ほどの干し肉を既に食べ終え、朝食を頼み、テーブルに運ばれるの待つ。
今日のクエストは、どうゆうのにしましょう・・・
そんなことを考えていると美味しそうな朝食のにおいに思考を中断する。
焼きたての白パンと野菜やベーコンを切って煮たスープが運ばれてきた。
パンを千切って齧ることなく、かぶりつく。暖かく、焼きたてのパンの甘さを感じながら、スープを啜る。
『ここの朝食美味しいですね。もう少し頼みますか。』
店員に、もう1セット注文し、パンとスープを無限ループし、食べ終わったころにまたテーブルに並ぶ。
それをもう1回繰り返したあと、満足げに、溜息を突く。
2杯目の紅茶を飲み、様になるその姿と、積まれた皿の相反する姿に注目が集まっていた。
『さて、ギルドでクエストでも選びますか。』
そんな視線など、気づいていないような素振りで会計を済ませるために席を立とうとしたところで知らない剣士の青年から声がかかる。
『なぁ君ってソロかい?』
『は? なんですか突然 』
急に話しかけてきたに加え、ぶしつけな質問をしてきた青年に塩対応をする。
『あーいや突然すまない、実はパーティーで 魔法使いを探していたんだ、その装備だと君も魔法使いだろう?』
愛杖のアインズ・ブルームは装備していませんが、この三角帽子とローブ姿を見て、そう思わない人はいないでしょう。
『そうですが、私をパーティーに入れてもいいことありませんよ。魔法の制御が苦手なので。』
これは本心であった。卒業試験の時も、誰ともパーティーを組めず、ソロでクリアした苦い思い出と、
魔法のコントロールが苦手で敵味方巻き込んでしてしまうというパーティーでは致命的な欠点を持っているからだ
。
この誘ってきた剣士クラスの青年の装備を見れば、実力はランク3といった所だろう。大怪我で済むとは思えない。
そんな複雑な心境な魔女ことなど知らないこの青年は言葉を続ける。
『うちのパーティーは前衛二人とプリースト1人でやっているんだ。君みたいな人がいれば心強いんだけど、どうかな?』
プリーストの子は君と同じぐらいの女の子だし、仲良くなれるかもしれないよ?
そんな青年の熱意に対応に困っている魔女に更なる追撃が加わる。
『こんな所で何油を売ってるのよ~ 誰よその人』
『ああソロの魔術師の人見つけたからうちでどうかなって思って・・・』
『いいじゃないか ちょうどそうゆう人探してたし』
槍を背負った男が現れる この人がもう一人の前衛の人みたいですね この人も同じくらいの実力でしょうか。
どうだい あんたにとっても悪い話じゃないだろう
そうですね、ではよろしくお願いします。(これはだめなやつですね)
そうして向かったクエストは、ゴブリンの討伐だった。 かなり大きめの巣らしく、遠巻きに観察してもかなりの数がいるのが確認できる。
『では私が1発撃ちますので、前衛のお二人お願いしますね』
プリーストからファルスブーストが前衛に掛けられ、前衛二人が走り出す。
フィオナの口から 火属性中級攻撃魔法の詠唱が始まる。
ثلاثاء نار متقدة عصا الشعلة سبيرز بيرس
愛杖のアインズ・ブルームに魔力が込められていき、巡り、熱を帯び始める。
ゆっくりと、詠唱された炎の槍の名を冠する魔法が放たれる。
イグニス・クリスサギタ
『火 炎 槍』
放たれた炎は槍ではなく塔だった。その太さは十字教の大聖堂の尖塔にも匹敵する。
前衛が開けていた距離を一瞬で熱が埋め尽くす。 熱いなんてものではない
半ば本能のように熱源から逃げ、転げまわる。
唯一幸運だったのは、この1発のイグニス・クリスサギタでゴブリンが全滅したことだろうか。
攻撃されたことを怒って突撃してくるゴブリンは既に巣にはいない。
焼き尽くされる巣には100は下らないゴブリンがいただろうが、圧倒的な熱に蹂躙されていた。
魔力も燃え尽き、焦土と化した元巣には 炭と灰しか残っていないなかった。
別に張り切りすぎたというわけではなく、これが彼女の普通で、通常の威力であり、
どうしようもない私の欠点なのだから。
『ちょっと!! 何てことしてくれるの!』 プリーストの少女が激高する。
『言いましたよね? 魔法のコントロールが苦手って』
『だからって限度があるでしょ! ふざけてるの! 』
『早く回復した方がいいのではないでしょうか?』 魔女の天然がプリーストの少女を更にヒートアップさせる。
『うるさい!あんたみたいな魔女は解雇よ解雇! さっさと出て行って!』
プリーストの少女が治療を始めたころには、フィオナは去っていた。
やっぱり、こうなりましたか。とぼとぼと帰路に就き、三角帽子のディメンジョンから干し肉を取り出し、いつもより小さく齧る。
師匠の元を出てから、いつもこうだった。魔法を打てば罵倒され、口を開けば罵倒される。
時には剣か杖を向けられ、殺意を向けられることも珍しくなかった。 もちろん全て返り討ちにしましたけど。
先生は言った。私の魔法は、大切な人を守るために使うのだと、でもそんな人は学院でも、冒険者稼業でも出会えていない。
やっぱり私には、そんな人は出来ないのでしょうね。だって私は魔女なんですから。