魔女が運命と出会うまでの話   作:ボロス

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配給と侵攻

ほんの気まぐれで、パンドラ大陸のヴァージニアに傭兵としてやってきた私は、遠路はるばる来たことに後悔し始めた。

 

理由はとても簡単です、ご飯が美味しくないんです。

 

ご飯が、おいしく、ないんです、そう、ご飯が美味しくないんです。 今まで食にだけは絶対に妥協してこなかった私にとって、あまりに大きな問題でした。

 

まだ、パンドラ大陸に来てから数日ですが、もう帰りたいですね、帰る家はありませんが。

 

今日も食べられるのは、傭兵に配給された、明らかに兵士より質の低い料理、量も味も足りない、こんなものを食べ続けていたら、気が狂ってしまう。

 

1週間おきに物資が届いているはずなのに、なんでこんなのを食べなきゃいけないのでしょうか。

 

これを食べる以外の選択肢は今のヴァージニアには存在しません、ここに駐留する十字軍はまだここ以外の領地を取れておらず、近くにある国は竜の王様が統治する、城塞都市のダイダロスという屈強な国、落とすには生半可には行かないでしょう。

 

オークやサイクロプスといった巨体を武器に戦う屈強な兵士達相手に2千の兵でどれだけ戦えるか、戦争になるのでしょうかね。

 

十字軍なんて、大層な名前ですが、使徒でも出張ってこない限りこの状況は、どうにもならないでしょうね。

 

そんなことを考えながら、配膳される今日の朝食に注目する。

 

保存だけを考えた棒状の携帯食料ではないだけまだましな、パサパサとした黒パンと本当に野菜の切れ端と気持ちだけ浮かぶ肉の切れ端の入った味のしないお湯のようなスープを、配給の列から受け取ったあと、共同の机で、黒パンを齧る。硬く、モソモソとした食感に眉をひそめる。

 

あまり味のしないスープにパンを漬けるが、ふやけるだけで美味しくない事実は変わらない。

 

『こんなのが店で出てきたらその店燃やしてますね』

 

不満もそこそこに、食べ終えた食器を返したあと、やることもないので、自分のテントに引きこもる。

 

『はぁ・・・知らない土地なら、知らない美味しいものが食べられると思ったのですが・・・』

 

正直、ここにいてもいいことはない、どうにもならない ご飯も美味しくない、そんなちょっとした絶望感に、普段の摂取カロリーに全く満たない胃袋も不満を述べ始める。

 

『お腹も空きましたし、もう辞めてしまいましょうか・・・』そう思った時、軍から招集が懸かる。

 

『ついに撤退でもするのでしょうか?』 

 

まだ数日しか経っていないのに、周りに聞こえたら小言を言われかねないことを呟いたあと、わらわらと集まったほかの傭兵や兵士達に加わり、話を聞く。

 

『明日、ダイダロスに侵攻する』

 

本当に攻める気なのか・・・と呆れた顔をしたのは自分だけのようで、周りの傭兵や兵は声を上げている

 

明らかに楽勝ムードな空気に、どこぞの爵位を持った偉い騎士の指揮官が声を上げる。

 

『聖戦の時は来た! 今こそ!このパンドラの地に神の御旗を立てるのだ! 魔族を殺せ!』

 

『魔族を殺せ!』 『魔族を殺せ!』 『魔族を殺せ!』

 

士気は最高潮、誰もが、二千の兵が勝利を確信していた、 一部のお腹の空いた魔女を除いて。

 

『お腹が空きましたね・・・こうゆう日は豪華になったりしないでしょうか』

 

次の日十字軍は、ダイダロスに侵攻した。 士気も最高潮、 魔女のお腹は7分目

 

前日の昼は変わらないメニューでがっかりしましたが、夜は食べ放題だったのでお腹いっぱい食べました。 

 

朝もそこそこ食べられたので、なんとかなるでしょう。

 

『さて・・・どれだけ生き残れますかね・・・』

 

二千の人間を迎え撃つは、魔族と呼ばれる1万の異種族達、明らかな戦力差だが、金に目のくらんだ十字軍も引く気はない様子。 特に策なども聞いてはいない。

 

流石にナメすぎた状況だが、十字教の差別意識はこんなところで悪さをしたようで、 適当に突撃すれば勝てると思っているのだろう。

 

私自身は十字教は信仰していないので、横にいる傭兵の人も、目の前の大きなサイクロプスも、

 

扱いの差はありません、前に私に剣を向けてきた人を自衛のために殺した事もありますし、サイクロプスが持つ鉄板のような大剣を向けられれば、

 

彼も燃やすでしょう。私は私が生きるために、誰だって殺します。 『こうゆうのを平等っていうのでしょうか?』。

 

『勝てるわけがないので、自衛に徹しますかね』 そんなことを考えていたが、どうやら本当にこの戦力差で戦争をするらしい。

 

開戦の笛が鳴る、この場唯一平等な価値観を持つ魔女は杖と短杖を両手に持ち、詠唱を開始した。

 

この戦争で最初に殺したのが、十字軍の兵士だったか、ダイダロスの兵士だったかは分からない。

 

ただいつものように、燃え盛る炎で平等に、燃やした。 こんな状況だから、いつもより他人の命は気にしない。

 

勇敢な十字軍の兵士たちは、大きな得物に潰される物もいれば、胴や首と泣き別れしたものも数えきれないほどいた。

                                

突撃してくるダイダロスの兵士の強力な武技も唯一使える移動系武技で回避し、カスタム・ファイアーボールで迎撃する。

 

敵が近くに居なければアインズ。ブルームで味方ごと焼き払う。 

 

気が付けば、十字軍の兵士の半数が殉職したころでも、魔女には傷ひとつついていなかった。

 

敗走し、ヴァージニアに戻った後も、ダイダロス軍にヴァージニアを包囲されていても、フィオナは恐怖を感じていなかった。

 

十字軍を巻き込んだことを咎める隊の偉い兵士が詰め寄ってきたが、何やらごちゃごちゃ怒っているが、今更この状況で言われても流石に困る

 

『今更私を咎めた所で、この状況は変わらないと思いますけど?』

 

そこそこの地位の人でしたが、ちょっと火を付ければどこかに行ってしまいました、更に居心地が悪くなった気がしますね。

 

指揮官だった偉い騎士は殉職し、偉い聖職者は国へ帰ってしまいました。

 

外に出ることが出来なかった期間はどうしようもないほど退屈でした。ご飯も前よりひどくなりましたし。

 

特にあの携帯食料はひどいですね、もう一生食べたくありません。

 

十字軍が再結成されて、1万五千の兵がまたヴァージニアに来るらしいですが、もうここに残る理由はありません。

 

今度はパンドラ大陸でも旅してみましょうか。 そろそろ甘いものが食べたい気分ですし、 お腹いっぱい食べたいですね。

 

そうして魔女はまた気ままに旅に出る、美味しいものを求めて。 美味しいものより大事な人と出会うともしれずに。

 

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