「ミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイミナトコワイ」
今は何時だ。時間の感覚がわからない。
「友希那ー、ご飯食べよー。て、正宗どうしたの?」
「ちょっと昨日のことをオハナシしただけよ」
今井さんが教室にやってくる。それがまた俺の体を震えさせる。
「うん、だいたい何があったかわかったよ」
「まったく、この程度で音を上げて少したるんでるんじゃないかしら」
「まあまあ私達のせいでもあるんだから。そのぐらいで許してあげなよ」
「リサがそう言うなら、いいのだけど」
「やっぱり今井さんは天使だったか」
「あ、あとこれ正宗に」
「これは、弁当?」
「昨日のお詫びとして何だけど受け取ってくれる?」
差し出されたお弁当箱は湊と同じ柄のものだった。
「まったくどれほど俺が怖い思いをしたのか「正宗」ありがとうございます今井様。この正宗ありがたき幸せ」
「あ、あはは~。喜んでくれてあたしも嬉しいよ」
「それじゃあ食べましょうか」
結局この日は三人で一緒に昼ごはんを食べた。あと、今井さんのお弁当はお世辞抜きでおいしかった。
さて来週はテスト期間だ。正直テストは好きだ。いや、テストそのものは好きではないがテスト前の授業ってほとんど自習じゃん。だからたくさん寝ることができるテスト期間は最高ってこと。この授業も自習だから寝る。
そう決めたところで机に突っ伏すと椅子の下からとてつもない衝撃が来た。あのやろう蹴りやがったな。だがこの程度もうなれたんだよ。すると次は背中に鋭い痛みが走った。次はシャーペンか。しかもやつのシャーペンは0,3ミリだからちょっと痛い。いつもならここで反応するが今日の俺はもう止まらんぞ。すると、
「フー」
「ふぁん」
いきなり耳に息を吹きかけられた。
「やっと反応したわね。それにしても気色悪い声ね」
「湊、いきなり何すんだ!」
「あなたがかまってくれないのが悪いんじゃない」
なにが、かまってだ。こいつ最近本当にかまちょになってきてないか。最初の頃のクール感はどこに行ったんだ。
「俺は眠いだから寝る。お前はテストがやばいだから勉強する。オーケー?」
「別にあなたがそれでいいならそれでいいけれど」
湊は納得したのか席に戻り顔を埋める。
「よしじゃあ寝るから、邪魔すんなよ」
「一つ言い忘れたけれど私が補習になるとバンドに支障が出るの」
「じゃあ、なおさら勉強しなきゃな」
「そしてメンバーに補習になった原因は正宗って伝えるわ」
昨日の例の事件が思い浮かんできた。
「…………何が言いたい」
「リサは優しいからすぐ許してくれたけど、紗夜はそう簡単にいかないと思うわよ」
「だれだその紗夜ってやつは」
「ギターの子よ」
「その子じゃ、なぜだめなんだ」
「一応昨日のことはメンバーに伝えたけれど紗夜だけはあなたのことをまだ疑っているからね。紗夜は怖いわよ」
「…………俺はどうなる」
「そうね…………もぎ取られるんじゃないかしら」
「いや、何が?」
「ナニて、私の口から言わせようとするなんてやっぱりセクハラね。このことも報告するわ」
湊が怖いと言うからにはそれほどヤバいやつだ。
「よし、湊どこがわからないんだ。俺で良ければ教えてやるぞ」
「あら別に、イヤイヤやる必要はないのよ」
「いやはや何を言っておりますか。わたくしが湊様に教えたいと思ったのです」
「そう。そこまで言うならお願いしようかしら」
全くこいつは俺か今井さんが面倒を見てやらないと路上で息絶えるんじゃないのか。
「で、どの教科がわからないんだ?」
「全部よ」
…………ん?俺の聞き間違えか。今全部って言わなかったか。
「…………は?もう一回言ってくれ」
「だから、全部の教科よ」
いや、ちょっとまて、いくらなんでもアホすぎないか。今日含めてあと3日しかないんだぞ。
「はぁー。お前のアホさはよくわかった。しょうがない、放課後もやるぞ」
「あら、いいのかしら」
「しょうがないだろ。俺だってお前に補習になってほしいわけじゃないからな」
「…………ありがとう」
「どこでやるかだが、図書館でいいか?」
「いえ、私の家にしましょう。今日は、親がいないからちょうどいいわ」
こいつは男を家に呼ぶ意味をわかっているのか。俺以外に言ったら大変なことになるぞ。顔だけは無駄にいいんだから勘違いする奴が出てくる。
「なにを言っている、貴様は」
「だから、勉強だけじゃなくて夕ご飯の面倒も見てって言ってるの」
「それこそ、今井さんに頼めばいいだろ」
「リサにこれ以上迷惑はかけられないわ」
「俺ならいいのかよ」
「このままじゃ飢え死にしてしまうわ」
「はぁ、わかったよ」
「ふふ、放課後が楽しみね」
「たっく」
「行くわよ正宗」
「はいはい、わかってるから落ち着けって」
まずは、スーパーに寄ってから帰る。
「やっぱりこの時間は混んでるな」
「そうね」
今は夕方の時間なので主婦の皆様方が戦争状態だ。
「なにが食べたい」
「そうね、洋風なものがいいわね」
洋物か。それなら。
「じゃあ、グラタンでいいか」
「そうね、最近食べてなかったしいいと思うわ」
「よしじゃあ、湊は鶏肉持ってきてくれ」
「わかったわ」
そう言ってお肉コーナーまで走っていった。
「さて、マカロニはどこだ。お、あった。」
「正宗持ってきたわよ」
湊が肉を抱えて帰ってきた。
「おお、ありがとう」
これ、豚肉じゃね。やっぱりポンコツだったか。
「湊、豚肉じゃなくて鶏肉なんだけど」
「これじゃないの?」
うん。一緒にいかなかった俺が悪いな。
「わかった。俺も付き添わなかったのが悪いよな。一緒に行こう」
「最初から2人で行けばいいのよ」
「これだこれが、鶏肉だ」
「そう、これね」
「よし行くか」
会計は俺が出して湊の家に向かった。
ここが湊の家か。でかい。
「なにやってるの?早く入りなさいよ」
「すまんすまん。おじゃましまーす」
「ここよ」
湊の部屋に入る。バンドのポスターとか机やベッドぐらいしかないな。
「猫の置物のひとつもないのか」
「まったく、あなたは何を期待してたのかしら」
「いや、なんでもない。よしじゃあ、やるか」
「ええ」
「最初は数学からだな」
勉強は暗記教科は後回しにするのが俺のやり方だ。
「まずは、自分でできるところまでやってみ」
「わかったわ」
俺も自分のやつやるか。カリカリとシャーペンをノートに走らせる。
「正宗、ここなんだけど」
いや、早くね。まだ一分も経ってないんだけど。
「たっく、どれだ」
「これよ」
湊が指を指した問題は問2だ。
「湊、問1も間違ってるぞ」
「え、うそ」
「…………よし、わかった。イチから全部教えてやる」
「…………ありがと」
これは長い放課後になりそうだ。
「よし、まずはここまでにするか」
「疲れたわ」
気づいたら2時間たっていた。
「飯にするか」
「ほんと?」
「ああ、頑張ったご褒美だ。気合い入れて作ってやる」
「私も手伝うわ」
「い、いや大丈夫だぞ。休んでろって」
こいつにキッチンに立たせるとろくなことにならないとわかっている。
「キッチンの使い方わかるの」
「…………わかったよ。でも、包丁だけは握るなよ」
こいつに包丁を握らせると何しでかすかわかったもんじゃないからな。
「…………わかってるわよ」
「できたぞ」
「おいしそう」
「感想は食べてからにしてくれ」
「「いただきます」」
うん、いい感じじゃないか。我ながらいいできだ。
「どうだ、湊」
「おいしいわ」
「そうかそうか。よかった」
湊といえど自分の料理を褒められることは素直に嬉しいからな。
「これ食べ終わったら俺は、帰るからな」
もう時間も遅いからそろそろ帰らないと親も心配する。
「もうちょっとゆっくりしていきなさいよ」
とは言ってもこのまま帰るとこいつが赤点を取るのは確定だからもう少し残ってやるか。
「じゃあ、あと一時間やってから帰るか」
「言わなければよかったわ」
「「ごちそうさま」」
「先、お風呂入ってくるから、ビデオでも見ていて」
そう言って、湊は脱衣所に逃げる。
「おい、逃げるな」
「あら、これ以上近づくとセクハラよ」
「はあ、はよ行ってこい」
全くあいつは、なんなんだ。そう言ってテレビ下のDVDたちを漁る。すると何やら気になるものがでてきた。
「なんだこれ」
それは、パッケージには何も書かれていない白いDVDだった。
「これにするか」
DVDプレイヤーにいれて再生のボタンを押す。すると、映し出されたのは衝撃的な映像だった。
「友希那~こっち向いてー」
「ママーこれなに?」
「これはね、友希那との思い出を撮っているんだよ」
「ふーんそうなんだ~」
「じゃあ、友希那自己紹介してみて」
「これにー?」
「うん、よーいスタート」
「みなとゆきな、ななさいです。好きなものは、パパのバンドと、ねこちゃんです。嫌いなものは、苦いものが嫌いです」
「友希那は好きな人とかはいないのかなぁー」
「好きな人?それならリサがせかいでいちばん大好き!!」
「やっぱり、リサちゃんかーそうだよね」
「もういい?」
「うん、ありがとう。友希那、リサちゃんのところ行っておいで」
「うん。リサーあそぼー」
そこで、映像は終わった。やばいこんなもの見てたなんてバレたら確実に殺される。
「それにしても湊のやつ小さい頃はあんなに可愛かったんだな」
「正宗、あなたなにやってるの?」
「えっ」
デジャブを感じるゾイ。
「見たわね」
「私は何も見ておりません」
「本当に?」
「はい、本当です」
「じゃあ、なにが小さい頃のほうが可愛かったのかしら?」
「そ、それは、リサさんです」
「ふーんそう」
そのときDVDプレイヤーがまた動き出した。
「あっ」
そしてさっきの映像が流れる。
「な、な、な」
湊は顔を赤く染め上げていく。
「じゃ、じゃあそろそろ帰るわ」
逃げるようにリビングから飛び出すと肩をがっしりと掴まれる。
「待ちなさい」
「えっ」
その時頭に強い衝撃が走った。そこからのことは覚えていない。そして気がついたら朝だった。