猫好きの湊さん   作:バーサク戦士

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ロリ那

「知らない天井だ」

 

 人生で一度は言ってみたい言葉ベスト10に入る言葉をつぶやいたあとにあたりを見渡す。

 

「たしか、昨日は。そうだ湊に晩飯を作ってから」

 

 あれ、何してたんだっけ?

 

「ジー」

 

 視線を感じる。これは湊のやつだな。最近のやつの構って光線のせいで視線だけでわかるようになっていた。

 

「おい、湊どこにいる」

 

 シーン。声をかけるが気配がなくなる。トタトタと足音が二階に向かっていくのが聞こえる。

 

「かくれんぼか。いいだろう。俺に勝負を挑んだことを後悔させてやる」

 

 寝ていたソファーから、体を起こす。…………気のせいか後頭部がやけに痛い。さすってみるとタンコブができていた。昨日何かにぶつかったっけ?

 

 そんなことを寝ぼけた頭で考える。

 

「さて、どこだ」

 

 リビングにはいる気配がないな。て、ことは自分の部屋か。階段を上り湊の部屋の扉を開ける。すると、明らかに布団が盛り上がっていた。

 

 …………ポンコツだとは思っていたがここまでとは。

 

「たっく、わかりやすいんだよ!!」

 

 勢いよく布団をめくる。するとそこにいたのは湊?だった。

 

「お兄ちゃん誰?」

 

 誰だこの幼女は。…………控えめに言って可愛い。いや俺は決してロリコンではない。それだけは弁明しておく。

 

「えっと、友希那の妹さん?」

 

「友希那は私だよ!」

 

「…………ちょっとまってくれ」

 

 目の前に要るのが湊だと。状況が理解できない。確かに湊の面影はあるが。

 

「お兄ちゃんは?」

 

 幼女に名前を聞かれる。それにしてもコミュ力が高い。子供はやはり怖いもの知らずなのか。…………この幼女が仮に湊だったとしたらなぜ今のようなポンコツになってしまったんだ。

 

「えっと、俺の名前は新宮寺正宗っていうんだけど聞き覚えとかないかな?」

 

「…………新宮寺正宗」

 

 湊?は考えるような仕草をする。

 

「なんとなくだけど、うざい人って感じがする」

 

 う、うざい人。幼女に向かって面と言われると心に来るものがある。

 

「そ、そうか」

 

 すると、その時玄関から声がする。

 

「友希那ー。土曜日だからっていつまでも寝てたらだめだよ~」

 

 この声は今井さん。まずいこの状態の湊を見られたらどうなるかわからない。この二人を接触させてはならない。

 

「この、声はリサね。おーいリサ私はもう起きているよ」

 

「あ、おいちょっと待て」

 

 止めようとしたが遅かった。幼女の行動力をなめていた。

 

「キャー!!」

 

「今井さん!…………くっそ」

 

 急いで湊を追いかけていくと、そこには腰を抜かしている今井さんの姿があった。

 

「あれ、リサ少し見なくなった間に大きくなった?」

 

「ゆ、ゆ、友希那なの?」

 

 俺と一緒で意味がわからないと言った表情をしている。

 

「そうだよー。わたしが友希那だよ。変なこと聞くのね、リサは」

 

「今井さん!」

 

「正宗どうしてここにいるの?」

 

「いやそんなことよりも、湊はどうしちまったんだよ!」

 

「私に言われても、わからないよ」

 

 これは困ったぞ。確か湊の両親は今日の夜帰って来るとか昨日言ってた気がする。このままじゃまずいぞ。

 

「リサも正宗もいったいどうしたの。そんな焦った顔して……………そんなことよりもわたしお腹が減ったよー」

 

 キューとお腹を空かせる音が聞こえてきた。

 

「ああ、そういえばまだ食べてなかったな」

 

「今作って上げるね」

 

 とりあえず腰を抜かしている今井さんの手を取りキッチンに立つ。

 

「今井さんはサラダでも作ってくれ。俺の方はメイン作るから」

 

「りょうかい~。てか正宗って料理できたんだね」

 

「まあ、人並みにな」

 

 今井さんやっぱり手際がいいな。一緒にキッチンを使ってても余裕がある。…………昨日湊と一緒に立った時は戦争かと錯覚するほど酷かったからな。

 

 冷蔵庫にあるものを軽く使い小さなお子様ランチを作ってやる。

 

「はーい。友希那できたよー」

 

「わー、おいしそうー!!」

 

「ほら、正宗も座って座って」

 

「おう」

 

「手を合わせてください」

 

「何だそれは湊」

 

「むぅ、正宗いただきますはこうやってするのよ」

 

「ほらほら。正宗もやって」

 

「わかったよ」

 

「それでは、手を合わせてください。いただきます」

 

「「いただきます」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでこれから、どうするよ」

 

 湊のやつは今井さんの膝の中でTVアニメをみておとなしくしている。

 

「そうだね~。このままじゃあ、まずいよね」

 

 口ではこうは言っているが頬は完璧に緩んでいる。…………そして俺が居なったら危ないことをしそうな顔だ。

 

「まずなんでこうなったんだ」

 

 そもそもどうすればもとに戻るんだ。

 

「あ、正宗ごめん。そろそろあたしバイトの時間だから行かないと」

 

 申し訳なさそうに腕時計を確認してから今井さんは言った。

 

「え、ちょっと今井さんそれは困るって」

 

「ほんとごめん。今日は休みで人が足りないから休めないの…………夕方には戻って来るからそれまで友希那のことよろしくね」

 

 休みに人が足りないのは家の手伝いをしているからよくわかる。

 

「わかったよ…………湊のことは俺が見とくから」

 

「ありがと…………案外優しいね正宗」

 

「いいから早く行けよ」

 

 ギューっとロリ那に抱きついてクンクンと匂いを堪能してから行ってしまった。

 

「正宗、リサはどこに行ったの?」

 

 こてんと可愛く首を傾げて聞いてくる。

 

「お仕事に行ったんだよ」

 

「リサいつの間にお仕事なんてしていたの?」

 

「それは、わからないな」

 

 そもそも今井さんはなんのバイトをしているのだろうか。あの性格と見た目だからなんでもできそうな気はするが。

 

「ふーん。あ、そうだ。正宗おでかけしようよ」

 

 また面倒なことを言い始めた。こいつの突拍子のない発言はこの頃からあったらしい。

 

「だめだ、今日は家でおとなしくしていなさい」

 

「やだやだ、友希那おでかけしたいの」

 

 ジタバタと暴れだす。まったく、幼女化してるからいつもよりわがままなのかこいつは。

 

「わかった、わかった。どこに行きたいんだ?」

 

 このままでは泣き出してしまいそうな気配を感じたからしょうがなく首を縦に振ってやる。

 

「ショッピングモール!!」

 

 元気に答えた。

 

「はぁ、わかったよ。迷子になっても知らないからな」

 

「大丈夫だよ。迷子になるわけなんかないじゃん」

 

 もうどうにでもなれ。このときの俺はそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロリ那を連れて来るのは思ったよりも大変だった。見るもの全てに興味を示して一々立ち止まる。子供の相手とはこんなにも疲れるのか。全国のお母さんはとんでもないことが再確認できた。

 

「わーすごい!!」

 

「………あまり遠くに行くなよ」

 

 すでに体力も気力もなくなっている俺とは違い湊は今日一番のテンションだった。

 

「ほら、正宗も行こ!」

 

「こら、引っ張るな」

 

 中は冷房がきいてて涼しかった。

 

「あー生き返る」

 

「もー。正宗っておじさん臭い」

 

「おじさんで悪かったな。でどこに行きたいんだ」

 

「ペットショップ!」

 

「じゃあ、行くか」

 

 さすが土曜日なだけあってペットショップはそれなりに混んでいた。

 

「どの動物がみたいんだ?」

 

「ねこさん」

 

「はいはい、わかったよ」

 

 うすうすそんな気はしていた。あ、そうだ今この状態なら、

 

「おい、湊」

 

「何、正宗?」

 

「猫は好きか?」

 

 この質問は禁断の質問だったが今ならもしかして。

 

「うん、大好きだよ!!」

 

 いい笑顔でそう答えた。やばい、ニヤニヤが止まらない。

 

「そうかそうか、猫可愛いもんな」

 

「そうだよねー。ねこさん可愛いもんね。正宗も好き?」

 

「ああ、大好きだよ」

 

「そっかー。なら、わたしと猫友達だね」

 

「猫友達?」

 

「猫が好きな友達のこと」

 

「はは、いいなそれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ、行くぞ」

 

「えーもうちょっとだけお願い」

 

 ペットショップに来てから湊のやつはずっと猫のショーケースの前に張り付いていた。よくもまあそんなに飽きずに見ていられるな。

 

「何回目だこのやり取り。ほら混んできたから他の人に迷惑だろ」

 

「…………わかった」

 

 名残惜しそうにガラスのショーケースを見つめていた。

 

「また今度連れてきてやるから行くぞ」

 

「…………うん」

 

 明らかに落ち込んでいる。なんかこっちが悪いみたいじゃないか。何か買ってやるか。そう思った時少し向こうの通路でお菓子の詰め合わせがあった。

 

「ほら、あそこのお菓子の詰め合わせやってもいいから元気出せ」

 

「いいの!!」

 

 急にハイテンションに戻った。…………まあ落ち込んでいるよりはこっちの方がいいからな。

 

「おう、好きなだけ詰めろ」

 

「ありがとう、正宗!!」

 

 元気にお礼を言って湊は周りの子供達に紛れて走っていった。

 

「たっく、単純な奴め」

 

「正宗はやくはやく」

 

 店員さんに詰めるパックをもらいトングをブンブンとこちらに向けて勢いよく振ってくる。

 

「そんなに急がなくてもお菓子は逃げないぞ」

 

「それが命取りになるんだよ」

 

「大げさだな」

 

「正宗は何が好き?」

 

「そうだな………グミとかは好きだぞ」

 

「じゃあ特別に入れてあげる」

 

「おお、ありがとな」

 

「感謝してよね」

 

「はいはい、ありがとうな」

 

 ロリ那の頭をポンポンと撫でてやる。まったくこんな時からこんな感じだったのか。まあ、今の湊よりは可愛げがあるがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベンチに座ってさっき買ったお菓子を食べている。口の周りに食べカスをハンカチで拭ってやる。…………こうしてみると周りにいる子供より頭ひとつ飛び抜けて可愛い。子役のオーディション受けたら受かるんじゃないか。

 

「それで次はどこに行く?」

 

「ゲームコーナーがいい!!」

 

「じゃあ、行くか」

 

「うん!」

 

 ゲームコーナーは人で一杯だった。それにしても休日だからって混みすぎだろ。

 

「何がやりたいんだ」

 

「これ!」

 

 湊が指を指したのは猫のぬいぐるみだった。

 

「やりたいのか?」

 

「これがいい!」

 

「ほら」

 

 百円玉を渡してやる。狙いを定めてアームに猫を引っ掛ける。そのまま落とし口の一歩手前でアームから落ちてしまった。

 

「あっ」

 

「まあ、一回でゲットできるわけないよな」

 

「もっかいやらせて」

 

「だめだ」

 

「なんでお願い!!」

 

 この調子でこいつにやらせていたら金が足りなくなる。

 

「俺がやる見てろ」

 

「正宗取れるの?」

 

「あったりめえよ。大人をなめるなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、商品ゲットおめでとうございます」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 結局あれから2000円も入れたのに取れずにいると、見かねた店員さんが簡単な場所に移してもらって取れた。

 

「ほら、大事にしろよ」

 

「ありがとう、正宗!!」

 

 大事そうに抱きかかえている。案外大きなぬいぐるみだから少し今の湊には大きいな。もとに戻ればちょうどいいかもな。

 

 それにしてもそんなに喜んでもらうとこっちもがんばったかいがあったな。

 

「そろそろ帰るか」

 

「うん」

 

 ゲームコーナーを出ると湊が服の袖を掴んでくる。

 

「どうした?」

 

「トイレ」

 

「はぁ、ここで待ってるから行って来い」

 

 ぬいぐるみを預かって、トテトテとトイレの方まで走っていった。

 

「…………結局戻らなかったな」

 

 ほんとどうすればいいんだ。まぁ、まだ時間はあるし今井さんと考えばいいか。いざとなったら今井さんの家に泊めさせればいいしな。

 

「…………にしても遅いな」

 

 女性のトイレは長いと言うがそれは大人に限った話だ。

 

「ちょっと見てくるか」

 

 トイレ前まで行くがいつまでたっても出てこない。それが心配になってそわそわしてくる。女子トイレの前で猫のぬいぐるみを持ちながら落ち着きがない男子高校生。明らかに不審者だ。

 

「すいません。このぐらいの女の子中にいませんでしたか」

 

「いえ、見なかったですけど」

 

「すいません。ありがとうございます」

 

 くっそどこ行きやがった。顔だけは、いや今は性格も前よりはいいから誘拐される可能性もある。そんなことを考え出すとますます不安に見舞われる。

 

 その時店内放送が流れた。

 

「迷子のお知らせです。湊友希那ちゃんが保護者様を探しています。保護者様は一階サービスカウンターに起こしください」

 

 たっく、何やってるんだあいつは。急ぎ足で向かった。

 

「すみません。迷子の子の保護者ですけど」

 

「あ、はい。おまちしておりました」

 

「まざむね~」

 

 俺の顔を見つけた瞬間に勢いよく飛び込んでくる。その小さな体をギュっと抱きしめる。

 

「まったく心配かけさせやがって」

 

「ごめんなざいー」

 

「まったく、無事で良かった」

 

 そう言って優しく頭を撫でる。

 

「ほら、もう泣くな。可愛い顔が台無しだぞ」

 

「…………うん」

 

「ほら、帰るぞ」

 

 今度は迷子にならないようにしっかりと手をつなぐ。小さな手でギュッと握り返してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきの件で反省したのか湊はやけに静かになった。

 

「正宗おんぶ」

 

 そしてさらに甘えん坊になった。

 

「たっく、急に赤ちゃんみたいになって…………ほら、乗れ」

 

「ん」

 

 軽いな。元から軽そうだったのにロリ那だとさらに軽い。

 

「…………正宗さっきはごめんなさい」

 

「もういいよ、反省したんだろ」

 

「うん」

 

「ならいい。今度からは気をつけるんだぞ」

 

「…………うん」

 

 すっかり夕日が顔を出して辺りを赤く照らす。子供たちは公園から帰り、学生は学校から家に向かう時間だ。

 

「正宗は今日楽しかった?」

 

「まあ、楽しかったよ」

 

「なら良かった」

 

 長い沈黙があたりを支配する。

 

「…………正宗」

 

「なんだ」

 

「大好き」

 

 チュッと頬にキスをされる。

 

 その瞬間背中が急に重くなった。

 

「ん、ここはどこかしら」

 

「やっと、お目覚めか」

 

「正宗あなた、何やってるの!?」

 

「降りるか?」

 

「…………このままでいいわ」

 

「そうかい」

 

 結局湊を背負って家まで帰った。

 

 この時間が続けばいいなと無意識に思っていた。

 

 

 

 

 

 

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