猫好きの湊さん   作:バーサク戦士

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誤解 友希那視点

「ん」

 

 窓から朝日が差し込んでくる。そろそろ夏休みに入る時期。あと何日学校に行けば夏休みなのかしら。この休みのうちに練習期間もたくさん取れることだし、早く休みにならないかしら。でも夏休みになると、正宗と一ヶ月も会えないのよね。………そう考えると、長期間の夏休みがいいのか悪いのかわからなくなる。

 

 まだ眠たい体をベッドから起こしそのまま制服に着替える。その足でリビングまで降りていく。テーブルの上においてある朝食を食べる。いつもならリサがそろそろ迎えに来る時間だ。いつもの時間を過ぎても来ないということは今日は用事があるのだろう。そのまま玄関に向かい、靴を履き学校に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室に向かう途中の廊下でリサを見つけた。

 

「おはようリサ。こんな廊下の真ん中で何をやってるの?」

 

 こちらに気がつくと駆け足で近づいてくる。

 

「おはよー、友希那。今日は遅かったね」

 

「別にいつも通りよ」

 

「あっ、そういえば風のうわさで聞いたんだけど」

 

「何かしら?」

 

「放課後、正宗デートするらしいんだよ」

 

 その言葉を聞いた瞬間頭の中が真っ白になった。正宗が?どこで、誰と出かけるって言うの。

 

「ふ、ふーん。そうなのね。べつに正宗が誰とデートしようと勝手だけど」

 

 嘘だ。自分でも明らかに気持ちが動揺していることがわかる。

 

「でね。その相手が紗夜らしいんだよ」

 

 そう、紗夜なのね。たしかに紗夜は頼もしいし、頭も良くて、身長も高い。だけど、私のバンドメンバーを許可も取らずにたぶらかしているのかしら。そう思うとだんだん腹がたってきた。

 

「そ、それは、何かの間違いよね」

 

「いや、それがホントらしいんだよね。さっき正宗に聞いたらはぐらかされたけれどやけにテンション高かったし」

 

 リサがそこまで言うならそうなのかしら。

 

「正宗ったら、何をしているのかしら。こないだのオハナシじゃ足りなかったみたいね。今度はオシオキしなくちゃだめね」

 

「ま、まぁ、友希那まだ証拠があるわけじゃないんだから」

 

「それは、そうだけど」

 

「だから、放課後正宗のことを尾行しようよ。それで怪しい動きをしたらオシオキってことで」

 

「……それもそうね。私は正宗のことを信じているから大丈夫だと思うのだけど」

 

「うん。それじゃあ放課後、教室で待ち合わせね」

 

「わかったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして放課後。私は今校門の桜の木に隠れている。リサによると、今日の放課後正宗と紗夜がデートに行くらしい。ホントかどうか怪しんだのだけど今日の正宗の様子を観察してみると、そんな気がしなくもない。だってやけにウキウキしていた気がする。

 

「まったく、私の気も知らないで」

 

 その時、昇降口から正宗が出てきた。きたわね。やけにそわそわしている気がする。

 

「あの、すみません。新宮寺さんですか?」

 

 紗夜。まさか本当にくるなんて、一体どうゆうことなのかしら。

 

「は、はい。自分が新宮寺です」

 

「そうですか、あなたが」

 

「あのー」

 

「ああ、すみません。自己紹介が遅れました。私の名前は氷川紗夜といいます」

 

「はい。それでは行きましょうか」

 

「ええ」

 

「どこに行くか決まっているんですか」

 

「そうですね、ショッピングモールとかどうでしょう?」

 

「ええ構いませんよ。では、行きましょうか」

 

 私がショッピングモールを提案したときは、すぐ反対したくせに、何なのよ。しかも、ちゃっかり隣に並んで歩いている。

 

「行くわよ!リサ」

 

「あ、まってよ友希那」

 

 絶対に説明してもらうんだから。2人を追うようについていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは………」

 

 二人が入って行ったのは、ショッピングモール内の文房具屋さんだった。

 

「2人は何をやっているのかしら?」

 

「見たところ普通の買い物って感じだよね」

 

 普通の買い物。本当にそうなのかしら。そもそもあの、紗夜が正宗を誘うなんて考えにくいし。

 

「見た感じはどう?友希那」

 

「そうね、まだ何も起きていないと思うのだけれど」

 

「そもそも、友希那は正宗のことどう思っているの?」

 

 どう思っているかなんてそれは、ここ最近はなんだか正宗の顔を見て話せていない気がする。それに正宗を見ていると胸が痛くなる。特にいま紗夜と二人っきりでいるところを見ているとなおさら痛く感じる。

 

「別に、何も感じてないわ。強いて言うなら友達かしら」

 

「じゃあ、今正宗と紗夜が二人でいるのを見てどう思う」

 

「…………別に正宗が誰とでかけていたって私には関係ないわ」

 

「ふーん。なら今度はあたしが正宗と一緒に出かけようかなぁ」

 

 リサがこちらを見つめてきてニヤニヤしている。正宗は馬鹿だからリサに誘惑されたらホイホイついていってしまう。そうなったら私のところにはもう戻ってきてくれなくなってしまう。

 

「それはだめ!!」

 

「えぇー、だって正宗が誰とでかけても友希那には関係ないんでしょ」

 

「そ、それは。あ、正宗はよくセクハラをしてくるからリサとなんか二人っきりになんてできないわ」

 

「そっか、そっか。なら、やめておこうかなぁ」

 

「そうよ。そのほうがいいわ」

 

 そんな事を話しているうちに2人が店から出て移動し始めた。

 

「絶対逃さないんだから」

 

「あ、まってよ友希那ー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に二人が入って行ったのは雑貨屋さんだった。

 

「いかにもって場所ね」

 

「まあ、2人とも最初にしては仲良く見えるね」

 

 なんでかしら、さっきは胸が痛かったのに、今はイライラしてきた。

 

「絶対明日オシオキするんだから」

 

「オシオキするのは、確定事項なんだ」

 

「ええ、もうこれは言い逃れできないわね」

 

 その時正宗が犬の置物を持ってレジに向かった。猫好きの正宗が犬の置物なんか買うはずがないのは私が一番良く知っている。そしてそのままレジでお会計をすると、その犬の置物が入っているであろう紙袋を紗夜に手渡した。

 

 私になんか一度もプレゼントをもらったことなんかないのに、なんで今日初めてあった紗夜にはプレゼントなんか渡しているのよ。用は済んだのか2人は店を出ていった。

 

「友希那大丈夫?ほら、もういい時間だし今日はここまでにして帰ろうよ」

 

「……………………いえ、最後まで見届けるわ」

 

 すっかり重くなった、足取りで2人のあとを追った。これ以上正宗が誰かと一緒にいるところは見ていたくない。

 

 だけどそれ以上に私のこの複雑な感情はなんなのかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人が入ってのはジャンクフード店だった。そのままリサと席を取り正宗と紗夜を観察する。それにしても2人で楽しそうに食べている。私と2人で食べるときなんて会話のひとつもないくせに。次はだんだんとイライラが収まってきてモヤモヤしてきた。

 

「友希那、実はね今日のことなんだけれど」

 

「何かしらリサ、今耳に集中しているからちょっとまってて」

 

 2人の会話が聞こえてくる。

 

「今井さんのことはどう思っているのでしょうか」

 

「今井さんですか。そうですね。いい友達といったところでしょうか」

 

「いい友達ですか?」

 

「はい、今井さんとはそのくらいの関係ですよ」

 

 リサとはいい友達。なら、私はどうなの。いま一番聞きたいことでもあって一番聞きたくもないことだった。

 

「そうですか。なら湊さんはどうですか」

 

「湊ですか」

 

「あいつは、バカで、運動もできなくて、スタイルも良くなくて、その上ポンコツで、かまってちゃんで、最近なんかよくわからないことで怒っていて、うざいやつですよ。でも、」

 

「ちょっと、友希那待って!!」

 

 気がついたら正宗の胸ぐらを掴んでいた。そしてそのまま頬を叩いていた。

 

「……………湊。どうしてここに」

 

「正宗なんて大っきらい」

 

 そのまま、店を飛び出して家まで走る。いまは何も考えたくなかった。その一心で足を動かしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私…………………最低だ」

 

 勝手に正宗に八つ当たりして。今までの扱いからしてみれば当然よね。むしろ正宗がああ答えるのも必然だった。

 

 なのになんでこんなに胸が痛いのかしら。さっきから胸の動悸が止まらない。

 

 崩壊したダムのように涙が止まらない。

 

 ホントはわかっていた。この感情が何なのか。でも絶対に認めたくなかった。だけど、今日の正宗を見ていると認めざる負えなかった。

 

 私は正宗のことが好きなんだと。

 

「………正宗ごめんなさい」

 

 猫のぬいぐるみを抱きしめて、あふれる涙をこらえるように部屋の隅で一人で啜り泣いていた。

 

 

 

 

 

 




蘭ちゃんのも始めたのでよかったら見てやってください
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