ロミッタバンド団のお通りだ! かわいいでしょ? 作:カトラス@リトルジャックP
【来電座・舞台裏】
昼頃の劇場裏、出番を待っている三人の芸ゴブリンが居た。
「良い感じ!」
「今日のロミッタちゃん、超良い感じ♪」
その中で一人で踊り出しそうなぐらい盛り上がるゴブリンが居た。
ピンクの肌を黄色いドレスに包んで独り言を言っている。
他二人はそれについて特に気にもしていない様だ。
「さあ皆さん!来電座の歌姫の時間がやってきました~!」
舞台から呼び声が上がる、三人は準備万端と歩み出す。
「拍手でお迎えください!ロミッタちゃんだー!!」
パチパチパチ!
「みんなー!待ってたー?」
「…ああ、まあ」「早くうたえよ!」
「じゃあ早速一曲行くよー!」
パチパチパチ
【来電座・演者用下宿】
「何がダメなのかねぇ…」
そうゴチるのはロミッタバンドの小太鼓担当、ローギ。
「さあなぁ…俺達やれる事はやってると思うが」
と返すのはロミッタバンドのギター担当、ゲグ。
二人は悩んでいた。
「正直な話さ、あたしとあんたはロミッタが居ないとショーにも出れない三流の演奏家だよ?」
「またローギ姉さんの自己肯定感の欠如がはーじまっーた。ちょっとはロミッタを見習え」
「あんたとロミッタは良いさ、まだ若いんだから…36にもなって芽が出ない気持ちはわからないよ」
まあ言ってる様な事で悩んでいた。
「ローギ姉さんまた落ち込んでるの?」
そこへロミッタが三人分の芋煮をお盆に乗せて戻ってきた。
「ああ噂してたら元気の大将がやってきた」
やれやれと腕を振り出迎えるローギ。
「ええ!元気なロミッタよ!」
自信満々の彼女はロミッタ、ゴブリンの歌姫である。
「おお、飯食って忘れようぜ」
ゲグの宣言と共に将来への悲観は一旦話題替えとなった。
―――
「うーん。」
二人が起きてくる前、まあ寝てるのはゲグだけでロミッタは絶賛お化粧タイムなのだが、そろばんを弄りながらローギは呻る。
今月のロミッタバンドの収支がこのままでは赤になってしまう。
ストリートショーか、バイトか、アドベンチャーか。
何かをしないといけない。
まあいつも自分とこにツケで飲み食いしてるから最悪食うには困らないが…
「おはよう!」
「おはよう。朝から化粧が綺麗だね」
「顔見ながら言いなさいよ!」
プンプンとしているロミッタを軽く無視して、昨日の座に集まっていた求人を見るローギ。
「おお、これなんか出来そうだな」
「なに?」
覗き込むロミッタに求人紙を見せるローギ。
「市場のアクセサリー屋が珍しいもん仕入れたらしいから護衛に強そうなヤツ募集してる、一人銅貨10枚」
「私達ゴブリンだよ?雇ってもらえる?」
「店主もゴブリンだから大丈夫さ。あんたみたいな美人が居たらきっと購買意欲が上がるよ」
そう言われた瞬間ロミッタはみなぎった!
「そうね!その仕事やるわ!!」
「へいへい」
と言う訳で本日のロミッタ団の目的が決定されたのだった。
―――
【市場】
「んじゃ、お願いしますよ」
「ええ!このロミッタ団に任せれば商売繁盛間違いなしだわ!」
「…ああ、そうですか」
店主は(めんどくせー)と思っている。
「よし、ゲグは店主の後ろに座ってな、ロミッタは前に。あたしが立ってるから」
「へいよ」
「わかったわ」
約20分後。
「おい、この店でサファイアを仕入れたって本当か?」
「ああ!たまたま捨て値で仕入れられてな!こんな露店で売るのは心配だから護衛まで雇っちまったよ!」
店主が視線を振るとロミッタは店主と話し相手に満面の笑みを浮かべて見せた。
「こんにちは!なにか買いますか?」
「ロミッタ、黙ってな」
ばっさり制したローギだが声色は決して厳しいものではなかった。
「まあ俺ら露天商には高嶺の花だよな、こんなとこまで門着きが買いに来るとは思えねえし…ん?」
ローギは明らかに警戒態勢に入る。
そこには五六人の人間からなるオルゾフの集団が集まっていた。
「へ、へいいらっしゃい!何か買いますか?」
「店主、お前が売っているサファイアはオルゾフの金庫から盗まれた物だ!」
オルゾフの男は高圧的に言い放った。
触発の雰囲気にロミッタとゲグも立ち上がる。
「え、いや、俺は仕入れ市場で買って…」
「二ヶ月前のイゼットの大爆発は知っているな、あの時我々の金庫も破損したのだ。中身が洗浄されて売りに出され始めたのが先週の事だ」
「ああ…それは災難で、…サファイアをお渡ししましょうか?」
そうして謙る店主を制してローギは前に出た。
「おいあんた、まさか利子付けようなんて考えてないだろうね?」
話に割って入ると、図星を突かれたオルゾフの男は不愉快そうに顔を顰めた。
他二人も状況を理解し、構えていく。
「おい、俺達はラクドスのもんだ、こんな事でギルド同士のトラブルになったらおっさんも困るんじゃないのか?」
ゲグが店主を押しのけてそう言い放つ。
「大体売り出されたのがわかってるなら売った方に文句言いなさいよ!この店は買っただけよ!」
ロミッタもメイスを手にして前に出る。
「…ふん、小賢しい芸ゴブリン共め。…分かった、サファイアだけ貰って帰ろう。」
そう言われると店主が小袋に入ったサファイアを出した。
「あたしが手渡す、下がってな」
「あんた達も店から少し離れて」
そう言って、ローギはサファイアを店主から受け取り、ロミッタはメイスで威嚇する。
「ほら、サファイアだ」
ゴブリンと言えど、明らかに鍛え抜かれた身体と所作の女に睨まれたオルゾフの男は何も言わずサファイアを受け取ると部下を引き連れ引き上げていった。
「なんとか何も起こらなかったな…」
ゲグがそう言うと、店主は本当に危機が去ったのだと安堵し始めた。
「相変わらずオルゾフはろくでもないわね!」
「ロミッタ、口は災いの元だ、人の悪口を言うのはかわいくないよ」
そう言われるとロミッタは本当にいけない事をした言う顔で口を抑えた。
ローギは店主に向かう。
「災難だったねぇ、店主」
「いや、無事に済んだだけでなによりだよ、本当に助かった」
「何か意趣返しが来るかもしれないから店仕舞いまでは全員立ってようか」
そうしてさっきまで騒然としていた市場もいつもの平静と活気を取り戻していく。
――
【夕暮れ・ゴブリン向けアパート前】
「家まで送って戴けて、本当に有難いです!本当にお世話になりました!」
深々と頭を下げる店主、家にも荒らされた形跡はなかったらしい。
「ああ、あの後何もなかったから安心したよ」
と、ゲグがやっと警戒を解くと、ローギが気まずそうに話しだす。
「で、ここからはみみっちい話にはなるんだけどさ…」
「はい。」
店主も大体流れで察して居る。
「あたしら金に困ってんだよ。助けてやった報酬って事でおまけしてくんないかね?」
「…ああ、でしたら…銀貨30枚ぐらいで許してもらえますか?」
店主の言い値にロミッタ団は沸き立つ。
「おお!大金じゃねえか!」
「すごい!太っ腹!!」
「じゃあそれで頼むよ、本当に恩に着るよ」
ローギも大層喜んでいる、来月の貯蓄まで出来る額だ。
そうして報酬を受け取り、ロミッタ団のアクセサリー屋警備騒動は無事に解決しましたとさ。