ロミッタバンド団のお通りだ! かわいいでしょ? 作:カトラス@リトルジャックP
【来電座・演者用下宿】
「美しきかわいい!ロミッタ様!」
ロミッタは姿見の前で何度もポーズを取っては大層愉しそうにしていた。
ゴブリンの男がドレスを何着も着せ替えしながらそうしている、そう聞いただけでは大半の者は正気を疑うだろう。
だが、ゲグとローギにとってこの姿は敢えて特筆する感情が何も湧かない日常である。
「ああ、私ってなんてかわいいだろう?すごい!」
最初はバンド組む覚悟で付き合っててもその行為に正気を疑ったし、
一週間ぐらい続くと「飽きないのか?」とも悩んだが、
こうしてさして広くもない下宿で半年も一緒に居ると、先に飽きたのはこっちだった。
「いぇい!ロミッタピース♪」
二人は全然違う話をしていた。
「それで今度の昇給試験はなにするかね?」
二人の議題はそれであった。
「ローギ姉さんはネタ切れっすか?」
「ああ、ああー芸人って大変だよな~…なんで月イチで新しい出しもん出せとか言われるんだ」
来電座では意欲のある演者を育てようと、月イチで昇給試験をしている。
人格はともかく歌姫であり、長年の芸歴がある生粋のラクドス育ちのロミッタと異なり、
中途採用でかつ「ロミッタのおまけ」とみんなに思われている二人からするとこの試験は重要なのだ。
実際問題、この部屋は”ロミッタの部屋”だ。
ロミッタが貰っている給料は、ゲグとローギの収入を足しても一人分足りないぐらいの額なのだ。
そうだ、話を戻そう。
この二人にはそもそもこの部屋でロミッタがやる事を否定する権利がないのだ。
「ゲグはなんかあんの?」
「先月ピアノをやったんだが、それの新曲を覚えようかと」
ちなみに先月のゲグの試験結果は【可】であった。
更にちなみに、ローギの結果は【不可】だった。
「あー、あんたは何でも出来ていいねえ!」
「いやぁ、ロミッタせんせーの教え方が上手いんだよ」
中途のこの二人に芸を仕込んでるのはロミッタである。
ますます本来逆らう事も出来ないのだ。
「あのね、人生の半分をマッチョになる事と相手ぶちのめす事に費やしたおばちゃんには新しい事覚えるのだけで大変なんだよ…」
そう言ってうんざり顔で紅茶を一気に飲みだすローギ。
「自分でおばちゃんなんて言っちゃダメよ!かわいくないじゃない!」
「グブッ!!」
「うわおい!テーブルが!」
急にこっちの世界に介入してきたロミッタに思わず紅茶を吹き出すローギと、大慌てで楽譜とネタ帳を避難させるゲグ。
「ハァッ、ふぅ…かぁわいいロミッタちゃん、鏡さんはもう良いのかい?」
ローギの煽りも気にせず、いやこの場合気にする頭がなく。
「だってローギ姉さんがネタ切れだって言うから…かわいいロミッタちゃんとしてはほっとけなくない?」
「へぇ、お師匠様の優しさが五臓六腑に染み渡りますわ」
こんな日常がロミッタ団の普段である。