ロミッタバンド団のお通りだ! かわいいでしょ?   作:カトラス@リトルジャックP

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注意書き。

結構マイルドに表現したけど、例のロミッタの過去編です。

R15ですし所謂…あれですね。
性的被害描写が有りますんで!

そういうのが苦手な方は気をつけてください!


ロミッタナイトメア(R-15)

夢を見ている、と言う感覚がある。

 

私には、稀にある。

 

自分は小さな劇場の客席に座らされて居て、自分が昔体験した出来事が演目として行われるのを、身動ぎ一つ出来ず見ているのだ。

 

 

私は今、悪夢を見ている。

 

何が悪かっただろうか?

何が許されなかっただろうか?

 

 

これは私が今日まで積み重ねた、失意の演目だ。

 

―――

 

私は、「かわいい」に成ろうとした。

 

誰もが嘲笑した、だが、なりたかった。

 

 

いろんな事を試していた。

 

周りを黙らせる為に、より芸を高めようとし続けた。

 

 

そして、騙されてきた。

 

中傷が、略奪が、暴力が、陵辱が、

 

繰り返される内に、私の中で二つの現象が起きたのだ。

 

 

一つは、虚栄に近しいナルシズムの肥大化。

一つは、他者への諦観。

 

この二つが私を悪しき道へ導く事も多い。

 

だが、道具は使い方だ。

 

”頭のおかしいナルシストに成れば良い。”

 

そうすれば、他人の悪い言葉に惑う事は無くなる。

 

十代の私は、そう動いていた。

 

 

けれど、この思想には酷い副作用があった。

 

私は、「私をかわいいと言う者」の言う事ならば、何でも聞く様になってしまったのだ。

 

 

そうして、私の十代は破滅に満ちたモノとなった。

 

あるいはその方が、ラクドスらしかったかもしれない。

 

 

今日もあの頃のワンシーンが流れる。

 

殴られ、辱められ、嘲笑われる、あの日の私。

 

それを目の前にして、身体も動かず、言葉も出ない今の自分。

 

 

目の前の惨状を、どうにかしたいはずなのに、何も出来ない。

過去を変える術など、誰も持たない。

 

―――

 

 

ふと、意識が戻る。

 

ここは私のベッド、私の部屋だ。

 

「…ッ!ローギ!ゲグ!」

 

咄嗟に不安になって大声を上げる。

 

二人は居るのか?

あの二人は私が作り上げた架空の存在じゃないのか?

あの二人も私を騙して―

 

「煩いよぉ!ロミッタ!!何時だと思ってんだぁ!!!」

 

その大きな怒鳴り声一つで、心の底から安堵したロミッタが居た。

 

とても良かったと、”戻って来れた”と。

 

 

そしてロミッタがすすり泣きを隠す様な声を上げ出して、ローギはやれやれと思いつつまた目を閉じる。

 

こんな時は、ボロスで身に付いた危機を察知したら目覚める技能が役に立つ。

などと思いながら。

 

 

――

 

二時間後。

 

「おはよう、ローギ姉さん」

 

相変わらず一番最初に起きて細々とした書類に目を通すローギに挨拶をする寝起きのゲグ。

 

「おお、おはよう。ロミッタは起こすな」

 

「またうなされてたんすか?」

 

ロミッタが自分より遅く起きる日は大概そうだとゲグは思っていたのでそう聞いた。

 

「まあね、昨日の酒が悪かったんかね。ともかく、今は寝かせとけ」

 

「へいへい」

 

ゲグはそう言うと、洗面所に向かうべく部屋を出た。

 

 

「まだ起きなくていい」

 

ローギは突然そう言う、動きすらしないベッドの上の小さな塊から声がする。

 

「いいえ、今起きたの、本当よ」

 

ロミッタのいつもよりか細く、正気臭い声に、ローギは更に続ける。

 

「あたしとゲグが不安になるから元気なロミッタちゃんになるまで寝てろ」

 

「…うん、ごめんなさい」

 

 

「ほら、紅茶飲め」

 

ローギはロミッタに紅茶を差し出す。

ロミッタはそれを受け取らない。

 

「置いとくよ、何も答えなくていい」

 

とだけ残すとベッド際から離れていった。

 

 

 

 

―――

 

眠るのは恐ろしいので、記憶の中で再生する。

 

私の原初の記憶。

 

何故私がロミッタとなったかの記憶。

 

芸ゴブリンの一座で生まれ、ずっと芸事を修めて生きてきた私の初舞台の記憶。

 

幼い芸ゴブリン達が一同に男女も問わずドレスと化粧をして踊って歌うと言う演目がある。

 

嘲笑の為の芸であると共に、実戦度胸を着ける演目だった。

 

多くのゴブリンの子供にとって、それは気恥ずかしく、けれど幼い日の思い出になる様な。

そんな他愛のないモノである。

 

だが、カロッサという一人の男にとって、その演目は運命だった。

その男は、出会ったのだ。

 

【この世で最も美しく可愛らしい女】に。

 

それは、”女装した”カロッサ自身だった。

 

 

それからカロッサと言う名前は消えた。

 

”私はロミッタと名乗り、今日まで、どうにかこうにか生き延びてきた。”

 

 

そしてあの日から地続きに、あの悪夢があり、今日がある。

 

それは、とてもとても、得難い。

 

 

―――

 

昼間頃。

 

「我こそは!最強かわいいロミッタちゃん!!」

 

ロミッタは姿見の前で何度もポーズを取っては大層愉しそうにしていた。

 

ゴブリンの男がドレスを何着も着せ替えしながらそうしている、そう聞いただけでは大半の者は正気を疑うだろう。

 

だが、ゲグとローギにとってこの姿こそが日常である。

 

「まあ大分安定してる、今日は大丈夫だろう」

 

「無理してないかな?」

 

「ゲグ、こういうのは”多少無理に修正しないと駄目なんだ”よ」

 

「…姉さんがそう言うなら、そうなんだろうな」

 

 

「ゴブリン史上!最もオレンジが似合う美少女!ロミッタ様!」

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