黄金芋酒で乾杯を   作:zok.

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59杯目 翼が折れていても飛竜

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 今年もだいぶ寒くなった。

 路上では夜風が吹き荒れ、枯れた雑草を揺らしている。

 店の中の温かさとは対照的なことを示すように、窓には大粒の結露ができていた。

 

 そして、季節を感じることはもう一つ。

 

「へっ……きし!」

「気色悪いくしゃみだなァ」

「うるせえな。こいつは自分でもどうにもならないんだよ」 

 

 あたしは鼻をすすりながらハルチカに怒鳴る。彼はぴんぴんしていて、どこ吹く風というふうな顔で窓に雑巾をかけていた。

 ……バカと飛竜は風邪をひかないのか?

 

 

 

 今日、あたしは風邪気味だった。鼻水とくしゃみが出る。熱がないのが幸いだけど、嫌な悪寒が続いている。

 じつは結構長引いていて、かれこれ数日はこんな感じだった。

 

 流行り病で、洛中の住人みんな、こんなふうにぐずぐずしているのだと聞く。ギルドナイトのオズも、陶器屋のジジイも、土竜族のオヤジも、酒屋のオバチャンもね。

 今年はとくに、山から吹き下ろす空っ風が冷たいからに違いない。

 

「決めた。今日は質屋もバルも休みだ。どうせ馴染みのやつらもみんな風邪ひいてるし、客入りも悪いだろ」

「えぇー、急に休み宣言かよ。儂の開店準備の努力は? というか姐サン、そう言いつつ酒出してるけど?」

「ぐちゃぐちゃうるせえな、開店準備ぶんの給料はやってやるよ。あと酒飲んでりゃ、酒精で風邪の菌も死ぬ」

「はやく医者にかかれよバカ」

「あたしゃ医者が嫌いなんだ」

 

 そうぶつぶつ言いながら、あたしは玄関のドアベルを外そうと手を伸ばす。すると、扉のすぐ外で人が身を引く気配があった。

 

「ひゃ」気づかなかった。とんだ気配消しの達人もいるものだ。いつからそこにいたのだろう。

 ハルチカは質屋のはじまりを察すると、ぴゅっとすばやく部屋の隅に引っ込んだ。

こいつはいつも、「あくまでバルの従業員だからだ」と言い訳して、質屋のことには関わらないようにしている。

 

「今日、店は終わりだよ」

 あたしは来客に向けて、扉を押し開けながら濁声(だみごえ)を上げる。「冷やかしなら明日以降に買うから、とっとと帰り……」

 

 勢いで飛び出しそうな「やがれ」という語尾を、あたしは飲み込む。

 玄関の前にたたずんでいたのは、あたしと背丈が変わらないくらいの人物だった。

 むっつりと押し黙り、擦れた外套ですっぽり身を包んでいる。フードを用心深くかぶっていた。

 この仕事をしていりゃあ、身元を明かしたがらない客は少なくない。し、そういう人のために質屋はあるものだ。

 あたしは別段、その風貌には驚かなかった。

 

「金を……」と、その人物は言った。

 ひどくかすれた声から、まだ幼さの残る若者なのだと判別がついた。

 おそらく、ハルチカやアキツネと変わらないくらいだろう。

 

 彼は自分の声のかすれ具合に驚いたように、いちど言葉を飲み込んだ。数回咳ばらいをしてから、今度はもうすこし低く、つとめて厳めしい声を出した。

 

「金を借りたく、参上した。質屋の《七竈堂》とは、こちらで間違いないだろうか」

 

 おおきな虚勢と、その裏にある「自分の話を聞いてくれるだろうか」という切願にも似た緊張が、言葉の外にひしひしと伝わってくる。

 そんな彼の不器用な感じは、正直、ちょっぴり、素直な好感が持てた。

 

「金を借りたい? 明日にしな」

「今日だ。今晩、必要なのだ」

「ダメ。今日は終わりだ。あんたを妥協したら、あたしはこの先ずっと、誰を相手にしても時間外労働を許し続けるハメになる」

 

 そう言いながら、あたしは内心で溜め息をつく。確かに、質屋の規則は守らなきゃならないけどさ。

 小物商人みたいな態度を、取らざるを得ない自分に、かなり嫌気がさしていた。

 

「では、前言を撤回する」彼は再び身じろぎした。外套の下で姿勢を正したのだと、少し経ってからわかった。

 

「俺は薬師の、たまご(なり)。こちらの主人であるエウラリア・ロペス殿が風邪をお召しになられていると耳にし、馳せ参じた。俺に治療させて頂けないだろうか」

 

 くししし、とハルチカが笑いを噛み殺す気配が、部屋の隅にあった。それを聞こえないふりをしながら、あたしは答える。

「いらねえよ、そんな胡散くさいセールスは。帰りやがれ」

 

 しばしの沈黙が流れる。ああ()だな。これじゃまるで、あたしが悪党じゃないか。

 あたしは青年をじっと見つめる。

 

「あんたの耳は飾りか? 帰れって言ってんだよ。邪魔だ」

「……」

「どっちにしろ、そこに立ってちゃ玄関が閉めらンねえなァ」そう言ったのは、ハルチカだった。

 

「風が冷たくてかなわねエから、とりあえず中に入りなヨ。金を借りに来た客じゃなくて、訪問販売の薬師サマなんだろ?」

 

 憎き弟弟子は、部屋の隅のソファに沈んで、煙管に火をつけているところだった。

 青年は疑うように、あたしとハルチカの顔を何度も見比べる。

 あたしの沈黙を肯定ととらえると、

 

「かたじけない。失礼いたす」

 

 そう言って黒狼鳥のついばみのように頭を、また何度も下げながら、恐る恐る玄関に踏み入る。

 外套の下からかすかに聞こえる、革の擦れる音で、彼が何らかの装備を着ているのがわかった。

 

 彼は薬師兼、現役のハンターなのだという。

 

 

 

 ###

 

 

 

「無理を言って申し訳ない。この恩、必ずやお返しいたす」

「訪問販売に来た身分で申し訳ないなんて二度とほざくんじゃないよ。あんたは客なのかい?」

「……」

 

 押し黙った青年は、外套と頭装備(ヘルム)を脱いだ。

 擦れきったギアノス一式装備、しかもガンナー専用のだ。アシンメトリーなデザインが左右が逆なことから、彼が左利きなことがわかる。

 この装備は、素材元となるモンスターが地方でしか見られないけど、この町では着ている者は珍しくない。腕前も大したことない奴だ。

 

 それでも防具は手入れされているし、胸元や腰のベルトは一つ一つきっちりと留められている。

 武器は置いてきているみたいだけど、彼は、狩りに出かけるくらい最上の正装だった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ま、座りな。突っ立った姿勢でいられんのも、気味悪いからさ」

「失礼致す」青年は腰を直角に折って、勧められるがままにカウンターに座った。はじめてスツールに座ったらしく、足が床から離れてぶらぶらしているのを、居心地悪そうにしている。

 

「それで? 薬師サマはあたしの風邪を治してくれるんだ? 薬の指示だけするから薬は自分で用意しろ、とかじゃないよね?」

 

 あたしは水を出しながら訊ねるた。彼は恐縮したようにぶんぶんと首を横に振る。手に持っていた上等な薬箱を、カウンターの上に置いた。

 両手で持てるくらいの大きさのそれを、大切そうに指でなでる。

 

「このように薬は持って来ている。まず貴女の所見を取って、そこから俺が診断し、治療方針を決定するのだ」

「へえ、けっこう本格的じゃないか。ハイハイって話を聞いて、薬を出すだけのヘボ医者も少なくないのに」

「ならぬ。薬師たるもの、患者の疾病とそのステージを適切に把握すべきだ。稟告だけで判断など、ましてや当てずっぽうな処方などあってはならぬ。患者のためだけでなく、自身の勉強にもならぬではないか……」

 

 いつの間にか前傾姿勢になっていた青年を手で制し、はやく薬を出せと顎をしゃくってやった。

 青年はしぶしぶといった様子で身を引く。

 

「俺はタマゴである。正式な薬師でない(ゆえ)、不完全な診察も致し方なし」そう自分に言い聞かせるように呟いて、彼は、肩を落とした。

 

 結局、青年の語った、なにやら壮大な診察は行われず、簡単な問答だけで薬はあっけなく処方された。

 薬箱から見たことのない薬草と道具が取り出され、手際よく調合が展開されるのは面白かったけれど、カウンターの上の手品のようだったそれもすぐに終わる。

 半分はあたしに渡して、もう半分をその場で一気に飲み下す。毒でないことの証左だと、()せながら言う。

 

「喫煙と飲酒を控え、バランスの良い食事と適切な運動、質の良い睡眠を心掛けるように」

 そんな業務的でありきたりな指示で、彼は薬師としての仕事を終えた。

 

 

 

「あんたが薬師のタマゴだってのは、どうやら本当のようだ。その交換条件として、質屋の時間外労働をしてやろう」

「お頼み申す」

 

 あたしが抽斗(ひきだし)から書類を取り出すと、彼は分厚い冊子をいくつか取り出した。

 あたしは受け取るとすぐに、ぱらぱらと中身をめくって目算で鑑定する。

 

「調合書か……」こいつは薬師として、商売道具ではなかったか。ということは、そうとう切羽詰まっているのか。

「需要はあるかもしれないけど、書き込みも多いし、だいぶくたびれてるから、高くはならないよ。

 相場は、元値の十から十五パーセント。こいつは元値が一万のところ、せいぜい八パーセントの八百でどうだ」

 

 彼は、ぐっと歯を食いしばる。予想よりも低いのか。彼は、「八では飲めん」と苦々しく答えた。

「八から引き上げて、十二だ」

「十二ぃ? 質屋を舐めてんのかい」

 

 情のなかでゆれても、いつだって公平を保つのが質屋の誇りだ。どんな温情をかけても、この品質で十二パーセントはのせられない。

 あたしは互いの立場を諭すため、脅すような低い声音で言った。

 

「交渉したいんなら、ブツの上乗せをしな。ものによっちゃ、考えてやらないこともないさね。……それに、あんたのくれた薬も、治る保障だってないだろ」

「俺の腕を侮辱するか。それは、貴女の示す相場が不当だと讒言(ざんげん)するに等しい」

「あんたはあくまで、薬師のタマゴなんだろ。あんたは今、不利な状況なんだよ」

 

 彼は、あたしをじっと睨んだ。目線で射殺せぬのが残念でならない、と無言で語っている。

 そのとき、あたしは初めて彼の目を見た。隻眼だった。右目をくたびれた眼帯で覆っている。

 瞳の色は、黄金の散る淡い緑。陽を透かした木の葉を思い出させた。

 

「……」

 

 しばしの沈黙ののちに、彼はカウンターへ腰のポーチを放り投げた。

 開けると、中にはあたしにとって馴染み深い手触りがあった。弾倉だ。

 

 通常弾に火炎弾。回復弾もある。散弾がないことから、彼には共に狩りに出るひとのいることが推測できた。

 弾は雑貨屋やギルドストアで買えるような揃った品質じゃなくて、ひとつひとつの接着面がでこぼこしていたり、大小不揃いだったりしている。

 ……これじゃ弾の価格は抑えられたって、一発の飛距離だとか威力が、ばらつくだろうに。

 それでも弾は、不器用ながらも、丁寧に手作りされていた。

 

「俺の手持ちの弾、すべてを賭ける。売っても大した金額にはならないが……ガンナーにとって、手持ちの弾すべてが何を意味するか。貴方ならば、ご存知であろう」

 

 弾を持たぬガンナーは、刃欠けの剣士とも言える。

 牙のない獣。鰭のない魚。羽のない鳥。翼のない飛竜。

 つまり、役立たず。自然界には不要だ。すなわち死ね、と言うことだ。

 彼は、あたしが治るまで狩場に出ない。つまりハンターとして稼がない、ということを意味していた。

 

「貴女の症状が治らなければ、弾は安値で売るか、捨ててもいい。治れば、返して頂く」

「質屋は賭博を好まないんだけどねえ」

「だが、ハンターは賭博を好む」

 

 どこまでも真剣な彼の姿勢に、あたしは唇の端を吊り上げた。その殺し文句は、あまりにも、ずるい。

 あたしは書類を差し出した。ここに、あたしが品物の分類と掛け金を、客が名前を書くことで、契約が成立する仕組みだ。

 

「あんたの覚悟に免じて、飲んでやろう。交渉成立だ。身分がわかるもんを出して、契約書に署名しな」

「感謝する。この借り、必ずや」

 

 彼は(うやうや)しく両手でペンを受け取ってから、ギルドカードを渡してきた。

「借りもなにも、商売だからねえ」

 舌打ちしそうになるのを堪えて、あたしは差し出されたギルドカードを受け取る。これは古くからハンターの身分を示す、最強の証明とされていた。

 ハンターランクは1。

 数年のハンター歴に華々しい狩猟の結果はなく、細々と採集クエストをこなしているようだった。

 

 横目で見ると、彼は書類の文章を黙々と目で追っている。

 質屋の客には、文字が読めない者も少なくない。例えば最近、うちに通っていた――ここひと月くらいは見てないけど――若造のハンターは、読めなかったわけだし。

 だから、この薬師のタマゴは、粗末な身なりに反して、それなりの教養があるのがわかった。

 

「それでね」あたしは身を乗り出す。彼は読む手を止めて、わずかに身を縮こめた。

「あたしの質屋には特別なルールがあるんだけど……どんな客が相手でも、取引するときに、なぜ金を借りるのか訊ねてんのさ。別にどんな理由だって、あたしはいちゃもんをつけたりなんかしない。聞くだけさ」

 

 あたしはそう言いながら、何気なくパイプに煙草を仕込もうとして、やめた。そういえばさっき禁煙を指示されたばかりだった。

「あんたは、なんで金を借りるんだい?」

 

 青年は身を縮こめたまま、固まる。逡巡していた。

 嘘を考えているふうには見えない。何を言うべきで、何を言わぬべきかを、考えあぐねている。

 

 しばらくしてから、ぽつりと、

「弟が、怪我をしてしまって」とだけ呟き、口をつぐんだ。

「おい、あたしに薬を売ってる場合か?」あたしが訊ねても、彼は黙ったまま契約書を押し付けるようにして返した。

 これ以上ものを言うと、心の内があふれてしまいそうといった感じだった。

 

 契約書の署名欄。綺麗ではないが文字を書き慣れている風で、「メヅキ」と記されている。

 苗字はない。ほぼ確実に、偽名だと直感した。

 育ちの家は無いのか、隠しているのか、捨てたのか。

 

 彼の来し方を、その名から読みかけて、やめた。

 なんとなく、先日ハルチカの話していた片翼のイャンクックが、頭に浮かんだからだ。

 

 そのとき厨房から、沈黙をひと段落と察したアキツネが、ひょっこりと顔を出した。

 

「おい、薬師サマ」

 声をかけられ、彼は怯えたように肩を跳ねあげる。

 

「今日よ、急にバルのほう、やンねぐなッてよ……飯、あまってンだ。わーか(ちょっと)食ってけ。金、とらねエから」

 

 あたしは書類控えを書き込むペンを止めずに、横目で彼を眺める。青年の目には複雑な色が浮かんでいた。

 とまどい、うたがい、恐怖、期待。

 頼りたくても、頼れない。

 青年の、思いつめたような横顔。彼の置かれている立場がどんなものか、あたしにはすぐに読めてしまった。

 ……読まなくていいものも、世の中にはあるものだ。

 

 それなりに長い時間を経て、彼は「ひとりぶん」と小さく言いかけ、即座に言葉を飲み込むと、

「要らぬ。親しい者に、分け与えるのがいいだろう」はっきりとした語尾でそう告げた。

 

 性根からの真面目さ、真っ直ぐさ。

 はたから見るだけだとうつくしい。けれど、きっと、この社会では生きづらいに違いない。

 その性質は、やわらかく(しな)るでもなく、(たわ)むでもなく、外部から力が加わると音を立てて折れるものだ。

 

 うまく動かぬ翼を引きずったまま、牙竜にも獣竜にもなりきれず、飛竜のできそこないとして死にゆくしか、選択肢のない生き物。

 自然界では放っておかれるのみだけれど、人間の世界はそう簡単に殺しちゃくれない。社会の皺寄せを押しつけ続ける。

 逃げられぬお前が悪いのだ、と言わんばかりに。

 

 あたしはそんなことを茫洋と考えながら、書類に押した印のインクを乾かさんと、ぱたぱた手で仰いでいた。

 

「取引完了だ。これが代金と領収書で、指定の日までに利息を乗っけた金を持って来るんだよ」

「承知した。重ねて、本当に感謝する」

「フン。礼儀だけは、なってんだね。またのご利用を待ってるよ」

 

 分厚い調合書も、掛け金十二パーセントの代金では大した金額にはならない。千二百ゼニーは、数日ぼーっとしたらなくなってしまうくらいだ。

 それでも彼は、小銭を大事そうに外套の内側へしまった。

 

 彼は振り返ることなくカウンターを離れると、外套を羽織りながら扉を開けた。寒風にたなびく外套の裾。

 アキツネはその背を眺めながら、揚げ油で軽く火傷した頬を搔いている。

 

 ドアベルの余韻が弱く響いていた。

 すすった茶が、美味くない。

 

「さ、薬師サマがお帰りになったから店じまいだ。あんたたち、風邪ひかないように帰るんだよ」

 

 あたしは手を叩きながら号令すると、アキツネは緩慢な動作でうなずいて厨房へ引っ込んだ。おおかた、余った料理を詰めて弁当を作り始めるのだろう。

 あの青年の言う通り、というか言われずとも、風邪で床に伏した知人たちへお裾分けするためだ。

 彼は無口だ。喋るのが面倒だと思っている。でも、料理を介したやり取りのおかげで、彼の人付き合いはつつましくも比較的良好だった。

 

 ……風邪ひかないように帰るんだよ、ってあたしの言ったこと、ろくに聞いてねえだろ。このやろう。

 

 一方、部屋の隅で置物のように黙りこみ、すべてのやり取りを見ていたハルチカ。

 火の消えた煙管を片手に、ひょこひょこと外へ出て行く。

 こちらはおおかた、あの子に興味を示したのだろう。飛べないイャンクックを語るときと同じ目をしていたから。

 

 野暮なやつだ。そんなやつは狩人の素質がない、と教えたのはいつのことだったか。

 あたしはグラス片手に窓際へ近寄る。こっそりと耳をそばだてた。

 あたしもまた、あんなふうに野暮な若者だったんだよな、と思いながら。

 

「なぁ、(アン)ちゃん」

 

 しばらくして、ハルチカがあの子を呼び止める声がした。

 

 

 

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