「魔理沙!!その傷は!?」
これは?夢なのかしら…。
「あぁ、油断しちまったぜ。」
魔理沙と呼ばれた少女の顔には頬から目を通り額まで深い切傷が出来ていた。
「零!治るの!?」
私の知っている博麗の巫女とは思えないほど取り乱している。こんなものは私の記憶には無いのに、どうしてこんな夢を?
「分からない!でもやるだけやるから!」
どう見てもその程度の魔法じゃ治せない。分かっていても認められない。
(どうしてこんな事になっているのかしら?)
「私が、私がもっと強ければ…。」
「霊夢。勝ちはしたけれど、苦い思いをしたわね。」
私の数少ない友人の紫が巫女に話しかける。
「噛み締めなさい。こんな思いを二度としないように。」
「あ、あの…。」
あれは、妖夢かしら?
「幽々子様は、何処でしょうか…。」
「アンタが!アンタ達のせいで!」
「霊夢!!」
巫女が妖夢に詰め寄り胸ぐらを掴む。
「あの、何が何だか…。」
「西行寺幽々子はあの桜の木と共に封印したわ。いえ、少し違うわね。アレに取り込まれ、幽々子は死んだのよ。そして封印した。」
「え…。」
何が何だか分からない顔をしている妖夢。
(これはきっとこうなったかもしれないって言う夢なのかしら…。)
「じゃあ、幽々子様は…。」
現実を受け止めきれないのか涙が出そうになる妖夢。
「お前が泣くなよ。お前に泣く権利は無いはずだ。知的好奇心で招いた結果、こうなった。お前の主人の自業自得だよ。」
「零…。」
「でも、主人に振り回されたお前もまた、被害者なのかもしれない。だから僕はお前を責めないよ。」
ある意味1番辛い扱いを選ばれる。
「そんなに気に病まなくていいんだぜ。この怪我はアタシのミスだ。だから霊夢、そんな顔をしないで欲しいんだぜ…。」
「分かってる。もう間違えないから安心していいわ。」
あぁ、この巫女はもう壊れかけてしまっている。あと少しの衝撃で崩れ去ってしまうほどに、心が荒んでしまった。
「零も、次こんな事があった時の為に、鍛えておいてくれよ!」
一生付き合っていかなくてはならない傷を負ってもなお笑顔を振りまく。これが彼女の強さなのかもしれない。
「うん。任せて。もし、幽々子様とやらにもう一度会えたなら、生きてることを後悔する程のグーパンをお見舞い出来るくらい強くなるよ。」
「う、ん?ここは?」
「幽々子様ぁ!!」
「あら、妖夢?」
「もう、お目覚めななられないかと思いました…。本当に、良かった…。」
相当心配させてしまったことに罪悪感を覚える幽々子。
「大袈裟よ〜。ほら、ピンピンしてるわよ?」
「幽々子、貴女何を仕出かしたか分かってるの?」
「紫…。あの桜はどうなったのかしら?ちゃんと満開になったの?」
「貴女ねぇ、どれだけこっちが苦労したと思ってるの!」
あまりにも能天気な彼女に紫の堪忍袋の緒が切れる。
「その様子だと、失敗したみたいねぇ。残念。またの機会のお楽しみね。」
「おいおい、どうしたんだぜ?って、起きてたのか。」
「他人の家で煩いわよ。」
「幽々子、止めろと言っても止めないのね。」
「紫?」
霊夢と魔理沙はいつもの紫では無い事に気づき、幽々子が何を口走っているかも理解した。
「えぇ、ここは幻想郷なのよ?何をしようとも私の自由。そうでしょ?」
「なら全力で、ここで阻止するわ。」
「へぇ、どうやってかしら?」
「ちょっとちょっと!2人とも落ち着きなさい!」
他所の喧嘩なら止めはしない。だが、妖怪の賢者と言われる紫が本気でやるというのならば話は別だ。
「ふふっ、博麗の巫女さんは冷静みたいよ〜?私と貴女が全力で戦ったらタダですまないことは分かってるでしょ?」
それはお互いの身を思っての言葉ではなく、幻想郷を思いやっての言葉だ。確かにお互いも無事では済まないだろう。それ以上に幻想郷の存続に関わるレベルの戦いになる可能性がある。それほど2人の持つ能力は強大なのだ。
「紫、私は誰にも止められないわよ?」
「へぇ、面白い話をしてるね。」
そこへ1度紅魔館へ戻り、レミリアに報告を済ませた零が現れる。
「あら、貴方が私を助けてくれたのね?感謝するわ〜。」
「気にしなくていいよ。どうせついでだったから。」
何処かいつも話す時よりも棘がある。
「ついで、ね。もう安心していいわよ?あんなヘマはもうしないから。」
誰もが不味いと思った。紫以外は事情は知らないが、それでもあの異変に対する零の思い込みは尋常ではないと知っていたから。
「その口ぶりだと、もう1回アレをやる気?」
「勿論よ〜。貴方も満開の桜を見たくないかしら?気になって仕方ないのよ〜。」
一瞬の静寂。他からすれば数分に思えるほどの感覚。
「なるほど。じゃあ次は取り込まれないでね?」
出てきた言葉は予想外の言葉だった。
「次は殺してやるって約束したから、また次があるとは思ってなかったけどさ。」
この時紫は疑問だった。零は未来から幻想郷の皆を救う為に来たはず、それなのに幽々子を死ににいく事に大して反対していないのだ。
「零、実は、」
もしかしたらあの桜の木が何を封印しているのか気づいてないのか、と考え急いで小声で伝えようとする。
「知ってる。でも僕は死にたがりを助ける気は無い。そんな人を何度助けたって意味が無いからね。」
何とも冷たい言葉。死にたければ勝手に死ねとそう言っているのだ。
「僕は貴女が嫌いだ。とてつもなく嫌いだ。」
「あら、初対面だと言うのに酷いわ〜。私は貴方に興味津々だと言うのに?」
「僕は全くない。だけど、確かにあの木をもう一度復活させられたら、霊夢達に迷惑がかかるから。」
「から、何かしら?」
「ここで選んで、皆の意見を否定して僕に殺されるか、それとも諦めるか。僕はどっちでもいいよ?」
そう言いながら刀の鍔に指をかける。
「…。貴方に死人の私を殺せるとは思えないけれど?」
「試してみる?」
はったりでは無い。間違いなくこの男は霊体の私を切ることが出来る。理由は無い、でもそう確信した。
「はぁ、分かったわ。諦めてあげるからその物騒なもの下げてちょうだい。」
「…随分な心変わりじゃないか。」
「夢を見たのよ。私が死んでしまった夢。関係無いと言いきれないのよね〜。」
零には心当たりがあった。フランの時もそうだったのだ。終わったあとフランから話を聞いた。僕が非力だった頃の記憶が夢として現れたのだ。
「なるほどね。じゃあその夢で僕がなんて言ってたか覚えてる?」
先程とは違い、冷たい雰囲気は全く無い。が、何処か怖い。
「え、えぇと?覚えてないわね〜。」
明らかな同様。誰が見ても心当たりがあるようにしか見えない。
「グーパン。それも生きてることを後悔するレベルの、って言ってなかった?」
「そ、そうだったかしら?」
あぁ、これは終わったな。と全員が思った。
「よ、妖夢?助けてくれない?」
「幽々子様は少し反省するべきだと思います。」
まさかの自分の従者から見捨てられる。
「ゆ、紫?」
「この幻想郷は全てを受け入れるのよ?」
先程の意趣返しだと言わんばかりの笑顔だ。後ろにいる魔理沙や霊夢はもはや目も合わせてくれない。
「さて、約束事だからさ。」
そう言いながら構え始める。
「零式組手術」
「え!ちょっと待って!?ただのパンチじゃないの!?」
この技はたった今考えた技だけど、幽々子という人物にくらわせるに相応しい技だ。
「一ノ型。」
どうやら当の本人は怖くて腰を抜かしているらしい。でも関係ない。約束だから、振り抜く。
「彼岸花。」
その声を聞いた後、幽々子は何も考えられなくなった。痛すぎて。
ちなみに読んでてわかるかと思いますが、零は幽々子のことがあまり好きではありません。ちなみに作者は妖夢が好きです。