「うっ、頭が痛いんだぜ。」
涙目になりながら頭をさする魔理沙。確かによく見るとたんこぶが出来ている。
「ご、ごめんね?まさかブレーキかけずに突っ込むとは思わなくて!」
自分が知っている魔理沙と重ねて考えてしまい、加減を間違えてしまったのだ。これから修正していかないと…。
「いや、反応出来なかったアタシが悪い。気にすんな!」
痛いのを我慢しながら笑顔を向けるが、やはりたんこぶが目に入る。言ったら文句を言われるかもなので隠れて治癒魔法をかける。
「そうだ!霊夢!」
「なによ、騒々しいわね。」
「霧の湖の奥に赤い建物が現れたんだ!それを言いに来たんだぜ!」
赤い建物…。あぁ、良かった。どうやら狙った時間に戻れたようだ。
「へぇ、、なるほど。じゃああの薄気味悪い雲ももしかして。」
「ふふふ…。間違いないんじゃないかしら?」
紅魔異変。レミリア陣営達が幻想郷入りをして、太陽を隠してしまう。ただ問題はそこだけじゃなかった。
「零、貴方も手伝ってあげなさいな?」
「もちろん。」
僕の事情を知っているからこそ、その申し出なんだと思うけど。凄く有難い。
「アンタが行くなら私は行かなくても」
「幻想郷の巫女が何を言っているんだぜ?お前が解決しなくちゃ意味が無いんだぜ!」
「はぁ、それもそうね。洗濯物も乾きにくそうだし、さっさと終わらせに行きましょ。」
「先に行ってるんだぜ!」
「零も早く来なさい!」
「うん。分かってる!」
後ろを振り向く。
紫しかいないが、それでも言わなくちゃって思ったから。
「任せて。僕が今度こそ守るから。」
ただ呟いただけであったが、紫の心には重く強く響いた。私に言ったわけじゃないと分かっていても。
「今度は救って見せなさい。」
決して幻想郷だけを救えと言ってるわけじゃない。零自身の心も救ってあげてという、お願い。
「私達妖怪から見ても、人から見てもまだまだ若いというのに…。」
どうしてあんな目になってしまったのだろうか。
「ここがその建物?」
「近くで見ると目が悪くなりそうだぜ。」
「確かに趣味が良いとは言えないね。」
「それで、あれが門番だと思うんだけど。」
「寝てるね。」
「寝てるんだぜ。」
「やっぱり寝てるわよね。」
紅美鈴。紅魔館の門番を務める武術家。1度も手合わせをする事も無かったし、話すことも無かった。理由はその前に死んでしまったから。
「先に行ってて。この人の相手は僕がするから。」
死因はフランドール・スカーレットの暴走だ。魔理沙と会い、レミリアと戦い、その過程で能力が暴走。レミリアに向けた致命傷となる攻撃を美鈴が庇ったのだ。
「寝てるんだからほっといていいんじゃない?」
「単純に僕が気になったからだよ。恐らく武闘家、だから手合わせをしたいんだ。」
半分本音で半分嘘。手合わせをしたいのは本音だ。ただ気にしているのはそこでは無い。紅魔館の構造をよく把握していないが故に、迷う可能性もある。建物の外で戦っていた思い出を頼りに外で待ち構えることにした。
「でも、」
「魔理沙、零にも考えがあるのよ。任せましょ。」
「霊夢まで…。まぁ心配はしてないけどさ。」
効率を考えればここで足踏みすることは無いはずなのだ。魔理沙はどうも気になったが、
「じゃあ私達は先に行くわよ。」
「負けんじゃないぜ!」
霊夢にが良いと言うなら止める必要と無いと割り切ることにした。
「うん。任せて。」
負ける気など毛頭ない。僕の我儘であるからこそ負ける訳にはいかない。勝って救わなくちゃいけない。
「さて、2人は行ったことだし…。そろそろ起きてください。」
「おや、バレていましたか。まあ起きていたは途中からですが。相当な手練とお手合わせ出来ると聞いて流れに身を任せてみて正解ですね。」
「貴女にそう言われるとは嬉しい限りです。」
「そんな他人行儀にならなくてもいいですよ?これから拳を合わせる相手に遠慮など不要。」
「貴女は僕にとって尊敬するべき人です。それは難しいですね。けど、もちろん遠慮などしませんよ。」
我が身を持って主を守った凄い人。守る事において貴女以上を僕は知らない。
「そうですか。知らぬ間に有名人になっていたのでしょうか?あぁ言葉はもう要りませんよ。後は、」
「拳で、ですよね?」
ふぅ。と呼吸を整える
「紅魔館の門番。紅美鈴です。」
「零。ただの零です。」
「では、零。行きます!」
構えたまま一足で間合いに入る。
「ハッ!!」
飛び込みながらの右突き。それを左手で捌く。
「甘いですよ!」
その捌きは重心をずらすまで至ら無かったため、次の攻撃動作にすぐ移る事が可能。受け流された力に反発せず、左脚胴回し回転蹴りの体勢に入る。
虚を突いた攻撃だったのならば対応出来なかっただろう。
「こっちのセリフですよ。」
美鈴の左脚による攻撃を腕でカバーしながら、隙だらけになった背面への膝蹴り。
「ガッ!?」
甘い攻撃ではなかったが、零は即座に対応して見せた。地に履いながら美鈴は再度理解した。この人は強い、私よりも!と。
「ゲホッ、まさかカウンターをもらうとは思いませんでしたよ。本当に人間ですか?」
「まぁ、一応人間ですよ。これで僕の力量は分かったはず。…全力でかかって来い。」
挑発ではないのは百も承知。ただひたすらに、この紅美鈴と打ち合いたい。そういう意思が伝わってくるのだ。
「まさか人間にそんな事を言われる時が来るなんて、人生何があるか分からないものですね。」
そう言いながら、構え直す。
「侮っていた事を謝罪します。貴方は強い。私よりも、強い。だからこそ本気で行かせていただきます!」
気迫だけで肌がビリビリ来る。ここからが本番。
「何処からでも。」
だからこそ全身全霊で貴女の技を真正面から捩じ伏せる。尊敬しているからこそ全力で超える。貴女を守るためには貴女より強く在らなければならないんだ。
「シッ!!」
素早い貫手。突き。蹴り。全て捌く、そして
「っ、ココ!!」
軸足を入れ替える瞬間に美鈴が足払いを掛ける。それに対応出来るはずなく、零の体が宙に浮く。
「発勁!!」
中国拳法の代名詞、発勁。美鈴程の手練が使えば威力は絶大である。空中で踏ん張ることも出来ず吹っ飛ばされる。
だが、
「今のは、効いたよ。発勁、一度は体験して見たかったんだ。」
「ハァハァ、、化け物じみた耐久力ですね。普通なら死んでる筈なんですが?」
手応えはあった。なのに平然と立ち上がる。何事も無かったかのように。不気味、、その言葉に尽きる。
「効いたって言ってるじゃないか。さて、じゃあ今度は僕から行こうか。」
視線を逸らした訳では無い、むしろ注意していた。次の技の起こり、重心、構え、一挙動も逃すまいと注視していたのに、
「どこ、ガッ!?」
「ダメじゃないか。見失っちゃ。」
視界外からの攻撃。何をしたかすら分からなかった。能力?一体どんな、
「残念ながら能力は使ってないよ。言ったじゃないか、拳でと。」
ただ移動しただけ。それなのにその起こりも見せることも無く私に攻撃したというのだ。
「恐ろしいですね。」
そう言いながら構えを変える。
「ハッ!!」
飛ぶ突きという表現が正しいのか。文字通り突きを空気の弾として飛ばしてくる。それを難なく避けるが、その間に美鈴は間合いを詰める。
「終わりにしよう。」
その言葉が聞こえた瞬間、美鈴の意識が途切れていく。最後に見た光景は貫手を突き出す零の姿だった。
戦闘描写難しすぎて時間がかかりました!